慰謝料請求の証拠をそろえる手順:弁護士に見せる前の並べ方と写しの作り方
慰謝料請求の証拠は、集める→仕分ける→番号を振る→証拠一覧表にする→写しを作る→説明メモを1枚書く→持ち物をそろえて相談する、の7つの手順でそろえると、弁護士に短い時間で伝わります。ポイントは、記録ごとに「いつの・何の記録で・何を示したいのか」を一覧表の1行にまとめること、原本は手元に残して写しを見せること、写しは加工せずに元の形が分かるように作ることです。足りるかどうかの判断は弁護士に任せ、自分は「見せられる形」に整えるところまでを目指します。
慰謝料請求の証拠をそろえる7つの手順
裁判になれば、裁判所は出された証拠と口頭弁論の全趣旨から、自由な心証で事実を判断します(民事訴訟法247条)。一つひとつの記録の強さだけでなく、記録どうしがつながって一本の筋になっているかが大切です。その筋を見えるようにするのが、次の7つの手順です。
- 集める:家にある紙、スマホの写真・画面保存、録音、記録ノートを一か所に集める。新しく集めに行くのではなく、まず手元の物を出し切る
- 仕分ける:「二人の関係を示すもの」「時期を示すもの」「相手が既婚と知っていたことに関わるもの」「自分への影響を示すもの」の4つの箱に分ける
- 番号を振る:日付の古い順に、通し番号(証拠1、証拠2…)を付ける。一つの出来事に写真が複数あれば「証拠5-1、5-2」と枝番にする
- 証拠一覧表にする:番号ごとに1行で、日付・種類・中身・示したいこと・原本の場所・入手方法を書く(次の章)
- 写しを作る:原本は手元に置き、相談用の写しを作る。種類ごとの作り方は後の章で示す
- 説明メモを1枚書く:浮気を知った日、相手について分かっていること、今どうしたいかを、A4用紙1枚にまとめる
- 持ち物をそろえて相談する:一覧表、写し、説明メモ、聞きたいことのリストを1つのファイルに入れる
手順2の「自分への影響を示すもの」には、眠れなくなって受診した記録(領収書や診断書)、仕事を休んだ記録などが入ります。浮気が自分の生活にどう響いたかを、気持ちの言葉だけでなく記録で説明できるようにするためです。
証拠一覧表の作り方:列と記入例
証拠一覧表は、弁護士が最初に目を通す地図のようなものです。表計算ソフトでも手書きでも構いませんが、列は次の8つにそろえます。
| 列 | 書くこと |
|---|---|
| 番号 | 証拠1、証拠2…(枝番は5-1、5-2) |
| 日付 | 記録が示す出来事の日付と時刻 |
| 種類 | 写真、LINEの画面、録音、レシート、記録ノートなど |
| 中身 | 何が写っているか・書かれているかを一文で |
| 示したいこと | 関係の存在/時期・継続/既婚の認識/自分への影響 |
| 原本の場所 | 自宅のファイル、自分専用のクラウドなど |
| 入手方法 | 自分で撮影、家に届いた明細、自分あてのメッセージなど |
| 入手した日 | その記録を手に入れた日(出来事の日付とは別) |
記入例は次のとおりです。日付や店名は「○」にしてあります。
| 番号 | 日付 | 種類 | 中身 | 示したいこと | 原本の場所 | 入手方法 | 入手した日 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 証拠3 | ○月○日 20時12分 | レシート | ○○市の飲食店、2名分 | 時期・継続 | 自宅ファイル | 洗濯前の上着から見つけ撮影 | ○月○日 |
| 証拠5-1 | ○月○日 22時ごろ | LINEの画面 | 配偶者から相手への「今日はありがとう」 | 関係の存在 | 自分専用のクラウド | 配偶者の画面を自分のスマホで撮影 | ○月○日 |
| 証拠8 | ○月○日 14時 | 録音 | 話し合いで配偶者が関係を認めた部分 | 関係の存在・時期 | 自宅のパソコン | 自分が参加した会話を録音 | ○月○日 |
「入手方法」の欄は、空けずに正直に書いてください。集め方によっては記録の扱いが争いになることがあり、弁護士は使い方を考えるうえでその情報を必要とします。相手のアカウントに入って得たものなど、集め方に問題がありそうな記録は、使うかどうかを自分で決めず、その旨を書いて相談します。
「入手した日」の欄を設けるのは、慰謝料の請求権が損害と加害者を知った時から3年で時効にかかるため(民法724条)、いつ何を知ったかが後で問題になりうるからです。記録ノートからの書き写し方は浮気の記録ノートの付け方が参考になります。
番号 → 日付 → 種類 → 中身 → 示したいこと → 原本の場所 → 入手方法 → 入手した日 (「示したいこと」は4種類:関係の存在/時期・継続/既婚の認識/自分への影響)
写しの作り方:種類ごとの注意
写しは、元の形が分かることが何より大切です。見やすくしようとして切り取ったり書き込んだりすると、元の記録との対応が分かりにくくなります。
| 種類 | 写しの作り方 | 避けたいこと |
|---|---|---|
| 写真 | 撮ったままのファイルを残し、相談用には印刷したものを用意する | 切り取り、明るさの加工、書き込み |
| LINEなどの画面 | 相手の表示名・日付が入るように、前後のやりとりを含めて連続で保存する | 一言だけ切り出す、日付の見えない保存 |
| 録音 | ファイル名に日付を入れ、大事な部分の開始時刻と、そこで話された言葉の書き起こしを付ける | 編集でつなぐ、一部を消す |
| レシート・明細・手紙 | 表と裏の全体をコピーし、大事な部分は拡大コピーも付ける | 原本に印をつける、折り目で文字を隠す |
| 記録ノート | 該当するページを日付順にコピーする | 写しを作るときに書き足す |
画面の保存が途中で切れているものや、録音の一部しかないものは、そのことを一覧表の「中身」の欄に書き添えておきます。保存先は、自分専用の場所と別の媒体の2か所以上にしておくと安心で、保管の工夫は浮気の証拠の保管方法にまとめています。
弁護士に見せるときの持っていき方
ファイルの一番上に説明メモ、次に証拠一覧表、その後ろに番号順の写しを重ね、聞きたいことのリストは別紙で添えます。持ち物の全体と聞くことの一覧は弁護士に相談する前の準備:時系列メモと持ち物・聞くことの一覧にあるので、ここでは一覧表で足りない点が見えるようにする工夫だけを足します。
- 「示したいこと」の欄で、4種類のうち1行も埋まらないものを探す(たとえば「既婚の認識」の行がなければ、そこが薄い点)
- 入手方法に迷う記録には、一覧表の「中身」の欄に「入手方法を相談したい」と書いて印をつける
- 時効が気になる記録は、入手した日を太く書いておく
弁護士の選び方は不倫慰謝料を弁護士に頼むときの選び方にあります。慰謝料を求める相手との交渉や代理は弁護士の仕事で、弁護士でない者が報酬を得る目的で交渉などの法律事務を業として扱うことは、弁護士法72条が禁じています。証拠を預けて交渉まで任せる相手は、弁護士かどうかを確かめてください。
そろえた証拠を扱うときにしないこと
そろえた証拠は、話し合い・弁護士への相談・調停や裁判という決まった場面でだけ使います。次のことはしないでください。
- 関係のない人に見せる・送る:職場や親族、SNSに出すと、刑法230条の名誉毀損の問題になりえます。条文は、示した事実が本当かどうかにかかわらず対象にしています
- 性的な画像を人に渡す:人が特定できる形で不特定または多数に提供することは、私事性的画像記録提供等被害防止法3条が罰しています。相談の場でも、写しの扱いは弁護士の指示に従います
- 相手に全部を先に見せる:手の内を見せると、相手が反論の準備をしたり、残りの記録を消したりすることがあります。見せる時期と範囲は弁護士と決めます
材料の組み合わせ方は前の記事不貞行為の証拠は何回分必要?回数より「関係の継続」を示す材料で、離婚調停でそろえた証拠をどう出すかは、次の記事離婚調停で浮気の証拠はどう使う?で扱います。
よくある質問
Q. 証拠の原本は弁護士に預けたほうがよいですか?
原本は自分の手元で保管し、相談の場には写しと証拠一覧表を持っていくのが基本です。原本を見せる必要があるかは、予約のときに事務所に確かめておくと安心です。依頼した後に原本が要る場面が出てきたら、弁護士の指示に従って、何をいつ預けたかを一覧表の欄に書き残してください。
Q. 証拠が足りるか分からない段階で、弁護士に見せてもよいですか?
足りるかどうかを判断してもらうことこそ、相談の目的の一つです。一覧表に「この記録で示したいこと」の欄を作っておけば、弁護士はどの点の材料が薄いかを指摘しやすくなります。足りない点が分かってから、自分で記録を続けるか、探偵に頼むかを考えれば十分です。
Q. 離婚も考えている場合、証拠のそろえ方は変わりますか?
並べ方の基本は同じですが、離婚の裁判では、離婚の請求とその原因となった事実による損害賠償の請求を一つの訴えで起こせると人事訴訟法17条に定められているため、離婚の条件と慰謝料をまとめて相談することになりやすいです。一覧表に、子どもや家計に関わる記録も分けて加えておくと、話が一度に進みます。調停での使い方は[離婚調停で浮気の証拠はどう使う?](/chotei-shoko/)で扱っています。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第709条・第724条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事訴訟法 第247条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 人事訴訟法 第17条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 刑法 第230条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律 第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 弁護士法 第72条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。