した側・請求された側 / 手順

慰謝料の調停を申し立てられたら:呼出状が届いた後の準備

この記事のもくじ
  1. 呼出状の見方:裁判所の種類で手続が変わる
  2. 欠席するとどうなる:出頭の義務と出られない場合
  3. 期日までの準備:読む・分ける・数える・決める
  4. 調停が終わるとき:成立・不成立・決定

慰謝料の調停を申し立てられて呼出状が届いたら、まず差出人の裁判所が簡易裁判所か家庭裁判所かを確かめ、期日を手帳に入れたうえで、申立書の写しを読み、事実の認否と払える範囲を書き出すのが最初の準備です。調停は勝ち負けを決める裁判ではなく、調停委員会を間に置いて合意を目指す話し合いですが、呼出しには応じる義務があり、正当な理由なく出頭しないと過料に処される定めがあります。この記事では、呼出状の見方、期日までの準備、調停のあとの流れを整理します。

呼出状の見方:裁判所の種類で手続が変わる

呼出状は、調停の期日を知らせる書面です。次の表の項目を拾って、期日を中心にメモにまとめます。

呼出状から拾う項目と、裁判所による違い
見るところ 内容 補足
裁判所の名前 簡易裁判所/家庭裁判所 簡易裁判所は民事調停、家庭裁判所は家事調停
事件名・事件番号 「慰謝料」「夫婦関係調整」などの表示 自分がどの立場(相手方)で呼ばれているかを確かめる
申立人・相手方 誰が申し立てたか 申立人は配偶者、元配偶者、不倫の相手の配偶者などのどれか
期日 日時、場所、階数・部屋 出られない場合は、すぐ書記官へ連絡
同封書類 申立書の写し、案内文など 請求の趣旨(求めている額と名目)を探す

簡易裁判所からの呼出状は、民事調停です。民事調停は、原則として相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てられ、裁判官1人と民間から選ばれた調停委員2人以上の調停委員会が、双方の意見を聴いて解決案を示します。合意すると調停調書が作られます。

家庭裁判所からの呼出状は、家事調停です。離婚についての夫婦関係調整調停では、離婚そのものだけでなく、慰謝料も一緒に話し合えます。離婚したあとに慰謝料の話し合いがつかない場合は、裁判所の案内では、離婚した元夫・元妻が慰謝料請求調停を申し立てることができます。不倫相手として呼ばれた場合に、簡易裁判所と家庭裁判所のどちらの手続になるかは、呼出状の裁判所名と事件名で確かめます。自分がなぜ呼ばれているのかが読み取れなければ、裁判所の書記官に問い合わせます。

家庭裁判所の調停では、申立書の写しが相手方に送られるのが原則です(家事事件手続法256条1項)。同封されていれば、そこに書かれた請求の内容と経過が、相手の言い分です。

欠席するとどうなる:出頭の義務と出られない場合

調停の呼出しを受けたら、出頭するのが原則です。条文でも、裁判所または調停委員会の呼出しを受けた事件の関係人が正当な事由なく出頭しないときは、5万円以下の過料に処すると定められています(民事調停法34条、家事事件手続法51条・258条1項で準用)。条文がある以上、呼出しを軽く扱うことはできません。

欠席が続くとどうなるかも整理します。家庭裁判所の案内では、調停は双方の出席と協力が前提で、相手方が出席しない場合は、調停は不成立として終了します。不成立で終わると、申立人は訴訟に進むことができます。出席して話し合えば、訴訟より早く、非公開で解決できる可能性があった、という機会を失うことになります。

簡易裁判所の民事調停では、さらに注意が要ります。話合いの見込みがないとき、裁判所は解決案として「調停に代わる決定」を出すことがあります(民事調停法17条)。条文は、この決定の条件に当事者の出席を挙げていません。決定の書面が届いて、2週間以内に異議を出さなければ、裁判上の和解と同じ効力になります(同法18条)。欠席のまま、あとで決定だけが届く、という流れもあり得るため、届いた書面は開封して日付を確かめます。

どうしても出られないときは、期日の前に裁判所へ連絡します。一般に、病気などのやむを得ない事情があれば期日の変更を相談できます。呼出状を受け取ったその日に、変更が必要かどうかを見ておきます。

期日までの準備:読む・分ける・数える・決める

準備は、次の順に進めます。

  1. 申立書を読み、請求の趣旨を書き出す。 求められている額、名目(不貞行為の慰謝料か、離婚に伴う慰謝料か)、含まれている費用の内訳を表にします。
  2. 事実を3つに分ける。 申立書に書かれた事実を「そのとおり」「違う」「知らない」に分け、違う部分には、メッセージの日付などの裏づけを添えます。
  3. 払える範囲を数える。 毎月の収入、貯金、借入れ、家族の生活費を並べ、一括でいくら、分割なら月いくらまで出せるかを決めます。
  4. 希望の条件を決める。 額だけでなく、支払いの時期、口外禁止、連絡の取り方など、合意に入れたい条件を書きます。決め方は不倫の示談に請求された側が応じるとき:示談書で確かめる条項が参考になります。
  5. 代理人を立てるかを決める。 弁護士に頼めば、本人の代わりに手続を進められます。家庭裁判所の手続代理人は、許可がない限り弁護士です(家事事件手続法22条1項)。簡易裁判所の民事調停で、弁護士以外の人を代理人にできるかどうかは、裁判所ごとの許可などの条件によるため、出られない事情があるときは書記官に相談します。民事調停では、調停を求める事項の価額が140万円を超えない場合に、認定司法書士が簡易裁判所の民事調停の代理をできます(司法書士法3条1項6号)。弁護士の探し方は慰謝料請求された側の弁護士の選び方:費用と相談で聞くことに整理しました。

調停委員に話すときは、感情より事実を先に伝えると、整理した内容が届きやすくなります。たとえば次のような形です。

話し方の例:「申立書は読みました。事実として認める部分は○○、違う部分は○○です。支払いについては、一括は難しく、月○円の分割なら検討できます。」

「払います」と言い切ったり、事実を認める発言をしたりする前に、その内容が合意書にどう書かれるかを確かめます。期日では、その場で結論を出さず、持ち帰って考える時間を求めても構いません。

調停が終わるとき:成立・不成立・決定

調停の終わり方は、3通りに分かれます。

終わり方 内容 注意
成立 合意の内容が調停調書に記載される 家庭裁判所・簡易裁判所のどちらでも、裁判所の案内では確定判決と同じ効力があり、払わなければ強制執行の根拠になる
不成立 合意の見込みがなく、事件が終了する 申立人は訴訟に進むことができる。不倫の慰謝料の調停は、不成立でも自動では審判に移らない
調停に代わる決定・審判 簡易裁判所は「決定」、家庭裁判所は「審判」で解決案を示す 告知から2週間以内に異議を出さなければ、決定は裁判上の和解、審判は確定判決と同じ効力になる

最後の行は、見落としやすい点です。民事調停では、調停に代わる決定に対して、告知を受けた日から2週間以内に異議を申し立てられ、適法な異議があれば決定は効力を失います(民事調停法18条)。異議がなければ、裁判上の和解と同一の効力になります。家庭裁判所の調停に代わる審判も、2週間以内の異議の定めがあります(家事事件手続法286条)。届いた決定の書面の「異議申立ての期間」を、受け取った日から数えてメモします。

時効にも関係します。調停の申立てがあると、調停が終わるまでは時効は完成せず、終了後に権利が確定しなければ、終了から6か月は完成しません(民法147条)。調停が不成立になったあと、申立人が通知を受けた日から2週間以内に訴えを提起すると、調停の申立ての時に訴えが提起されたとみなされる扱いもあります(民事調停法19条)。つまり、調停で話がつかなければ、次は訴訟が現実になります。訴訟に進んだ場合の対応は不倫で訴えられて訴状が届いたら:答弁書の期限と弁護士への相談に、放置したときの結果は請求された慰謝料を払わないとどうなる?訴訟・判決・差押えの流れにあります。

調停を、不利な約束をさせられる場ではなく、額と払い方を整理して合意する機会として使うために、期日の前に書き出した材料を持って臨みます。

よくある質問

Q. 調停の話し合いの内容は、周りに知られますか?

裁判所の案内では、民事調停も家事調停も非公開の話し合いで、訴訟のように公開の法廷で行われるものではありません。調停委員会は、双方の事情を聴いて解決案を考えます。ただし、申立書の写しなどが相手方に送られる点や、調停調書が作られる点は、手続の一部として知っておきます。

Q. 相手と顔を合わせたくないのですが、同じ部屋で話すことになりますか?

家庭裁判所の案内では、同じ空間で安心して話せない場合や遠方の場合は、裁判所が相当と認めれば、当事者の意見を聴いてウェブ会議を利用できるとされています。事情があるときは、呼出状を受け取ったあとに、申立先の裁判所へ早めに相談します。

Q. 調停で合意した金額は、あとから変えられますか?

合意が調停調書に記載されると、確定判決と同じ効力を持ち、強制執行の根拠にもなります。あとで変えたくなっても、一方の事情だけでは変えにくい仕組みです。署名や合意の前に、額、払い方、清算の範囲を紙に書いて見直し、必要なら弁護士に相談します。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

請求された慰謝料を払わないとどうなる?訴訟・判決・差押えの流れ

不倫の示談に請求された側が応じるとき:示談書で確かめる条項

慰謝料請求された側の弁護士の選び方:費用と相談で聞くこと

不倫で訴えられて訴状が届いたら:答弁書の期限と弁護士への相談