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不倫の示談に請求された側が応じるとき:示談書で確かめる条項

この記事のもくじ
  1. 示談の効力と、署名の前に止まる理由
  2. 請求された側が確かめる条項の一覧
  3. 示談書を公正証書にするとき:払えなくなったらどうなるか
  4. 署名の前後の進め方

不倫の慰謝料を請求され、示談書を示されたら、その場で署名せずに持ち帰り、条項を一つずつ読んで、自分が約束する内容と、相手が約束する内容を分けて確かめるのが基本です。示談は、民法695条のいう和解にあたり、互いに譲り合って争いをやめる約束です。そして696条によって、成立したあとで新しい事情が出てきても、権利は和解で決まったとおりに移転・消滅したことになります。後から変えにくいからこそ、署名の前の確認が大切になります。この記事では、請求された側が示談書で確かめる条項を表にして示します。

示談の効力と、署名の前に止まる理由

示談書の署名は、請求された側にとって、争いを終わらせる手段であると同時に、約束の拘束を受ける行為でもあります。理由は3つあります。

  1. 蒸し返しにくい。 和解で決まったことは、後から反対の証拠が出ても、原則として和解のとおりに扱われます(民法696条)。
  2. 事実を認める文言が前提になる。 「不貞行為を行った」という記載があれば、その後の話し合いは、事実を認めた前提で進みます。支払いや一部の弁済は、権利の「承認」として時効が新たに進み始める原因になります(民法152条)。
  3. 払えない約束は後で困る。 分割払いや期限の利益を失う条件が書かれていると、1回の遅れで残りを一括で求められる場合があります。

示談書は、相手が作って持ってくることもあれば、請求された側が案を出すこともあります。どちらの場合も、書式の見た目ではなく、中身を確かめます。示談の全体の進め方は不倫の示談の進め方:話し合いで決める項目と合意の残し方、条項の例は不倫の示談書の書き方:入れる条項の例と作るときに気をつけることにあります。この記事は、請求された側が「署名前に何を見るか」に絞ります。

請求された側が確かめる条項の一覧

示談書で確かめる条項(請求された側)
条項 確かめること 見落としやすい点
事実の記載 関係の期間、既婚の認識、不貞行為という言葉が自分の認識と合うか 「知りながら」と書かれていると、既婚の認識を認めた形になる
解決金・慰謝料の額と名目 額の内訳、慰謝料以外の費用が混じっていないか 名目が「離婚に伴う慰謝料」か「不貞行為の慰謝料」か
支払い方法と期限 一括か分割か、振込先、手数料の負担 1回の遅れで残額を一括請求される条項(期限の利益の喪失)
清算条項 この書面に定めるほか、互いに債権債務がないと確認する条項があるか 条項がないと、同じ件の追加請求を止める根拠が弱い
求償権 自分が払った後に、請求した人の配偶者(不倫を一緒にした相手)へ負担を求める権利をどう扱うか 放棄を求められる場合、その代わりに何が得られるか
口外禁止 誰に、何を話してはいけないか。相手も同じ義務を負うか 家族、弁護士、医師、職場への相談が禁止に含まれるか
接触禁止 禁じる連絡の範囲、同じ職場や近所での偶然の接触の扱い 範囲が広すぎて、守れない約束にならないか
違約金 何をしたらいくら払うのか 金額が過大でないか。内容によっては無効とされることもある
金銭以外の約束 謝罪文、退職、転居などを求められていないか 示談書に書かない約束が別にないか

表のうち、いくつかは補足が必要です。

清算条項。 日本公証人連合会は、離婚の公正証書に入れる清算条項を、書面に記載した権利・義務関係のほかには何の債権債務もないことを、当事者双方が確認する条項だと説明しています。示談でも同じ考え方で、どこまでで解決とするかを決める条項です。ただ、清算の対象が「この件の慰謝料」なのか「あらゆる請求」なのかで範囲が違います。範囲が曖昧なまま署名すると、解決したつもりでも、別の名目で話が出ることがあります。

求償権。 配偶者と不倫相手は、共同の不法行為をした者として、各自が連帯して賠償する責任を負います(民法719条1項)。連帯債務者の一人が弁済して共同の免責を得たときは、他の連帯債務者に負担部分に応じた求償ができる、という民法442条の考え方が参考になります。示談でこの権利を放棄させる条項が入ることがあります。放棄すれば、自分が全額を払っても、請求した人の配偶者に負担を求めにくくなります。負担の割合は事情によって変わるので、割合を断定せず、放棄の意味を弁護士に確かめます。詳しくは求償権の放棄とは?示談で放棄を求められたときに確かめることにあります。

違約金。 当事者は、債務不履行の場合の損害賠償の額を予定できます(民法420条)。ただし、公序良俗に反する法律行為は無効です(民法90条)。「接触したら○○万円」のような条項は、金額と対象行為の範囲を読みます。

示談書を公正証書にするとき:払えなくなったらどうなるか

示談の内容を公正証書にする提案を受けることもあります。公正証書は公証人が作る公文書で、日本公証人連合会は、反証がない限り完全な証拠力があると説明しています。請求された側にとって大きいのは、強制執行認諾の文言です。

金銭の一定の額の支払いを目的とする請求について、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が書かれた公正証書は、債務名義になります(民事執行法22条5号)。この文言があると、払えなくなったときに、相手は訴訟を経ずに差押えの手続に進めます。署名した書面の効果として、次の違いがあります。

書面 払えなくなった場合
通常の示談書 相手が調停や訴訟で債務名義を得る必要がある
強制執行認諾文言つきの公正証書 相手が裁判をせずに、強制執行を申し立てられる

金銭以外の約束、たとえば接触しない、謝罪する、といった内容は、公正証書にしても、そのまま強制執行できる対象ではありません。また、公証人は、法令に違反する事項や無効な行為については、公正証書を作れません(公証人法26条)。公正証書にするかどうかは、払える額かどうかを確かめたうえで決めます。

署名の前後の進め方

示談書を示されてから、署名するまでの流れを整理します。

  1. 書面を持ち帰る。 返事の期限を聞き、期限に無理があれば、先に伝えます。
  2. 条項に印をつける。 上の表に沿って、「問題なし」「質問がある」「直したい」に分けます。
  3. 相談する。 示談の交渉は、弁護士が代理できます。請求額が140万円以下なら、認定司法書士も裁判外の和解の代理ができます。相談先の選び方は慰謝料請求された側の弁護士の選び方:費用と相談で聞くことにあります。
  4. 直したい点を伝える。 理由とあわせて、書面で伝えると行き違いが減ります。
  5. 署名のあとは記録を残す。 原本または控え、振込の記録、受け取りの書面を保管します。

相談で聞く例:「この示談書で、私が約束する内容と、相手が約束する内容を分けると、どうなりますか。清算条項と求償権の条項は、私に不利になっていませんか。」

調停の場で示談に近い合意をする場合も、見るべき点は同じです。調停の準備は慰謝料の調停を申し立てられたら:呼出状が届いた後の準備にまとめています。

署名の前に条項を確かめる時間は、決して長くありません。数日の間に、事実の記載、額、払い方、清算の範囲の4つだけでも読み直すと、後で困る約束を避けやすくなります。

よくある質問

Q. 示談書の署名は、相手の前でその場でするものですか?

その場で署名する決まりはありません。示談は、互いに譲り合って争いをやめる約束で、成立したあとは後から蒸し返しにくくなります。書面を受け取ったら持ち帰り、条項を読んで、必要なら弁護士に見てもらってから、返事の期限を相手に確かめます。

Q. 示談書に「不貞行為を認める」と書かれていたら、署名してよいですか?

書かれた事実が自分の認識と合っているかを、署名の前に確かめます。事実の書き方が、その後の請求や話し合いの前提になることがあります。違う点があれば直してほしいと伝え、直せない場合は、弁護士に相談してから決めます。

Q. 示談金を払い終えたあと、何を残しておけばよいですか?

示談書の原本または控え、振込の記録、受け取りを示す書面を残します。振込の名義や日付が、示談書に書かれた支払期限や額と合っているかも見ます。清算条項があれば、「これで済んだ」ことを示す根拠になります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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