不倫で訴えられて訴状が届いたら:答弁書の期限と弁護士への相談
この記事のもくじ
不倫で訴えられて訴状が届いたら、放置せず、まず「期日」と「答弁書を出す期限」を封筒の書類から書き出し、答弁書を出す前に弁護士の相談を予約するのが基本です。期限に間に合いそうにないときは、担当の書記官へ早めに連絡します。答弁書の提出期限は法律が一律に決めた日数ではなく、裁判所から届く呼出状に書かれた日です。答弁書を出さず期日にも出ないと、原告の言い分どおりの判決が出ることがあります。この記事では、同封書類の見方、答弁書の出し方、相談先を選ぶ順番を整理します。
訴状と一緒に届く書類の見方:まず期日と期限を書き出す
訴状は、原告が裁判所に出した「何を求め、なぜ求めるのか」を書いた書面で、民事訴訟法138条により被告に送達されます。同じ封筒には、多くの場合、最初の口頭弁論期日を知らせる呼出状や、答弁書の出し方の案内が入っています。裁判所によって入っている書類は少しずつ違うので、届いたものを全部広げて、次の表の項目を拾います。
| 書類 | 見るところ | 書き出すこと |
|---|---|---|
| 訴状 | 「請求の趣旨」「請求の原因」 | 求められている金額、名目、関係があったとされる時期 |
| 呼出状 | 事件番号・事件名、期日の日時と場所、答弁書の提出期限 | 期日の日付、提出期限の日付、提出先の裁判所と担当の係 |
| 答弁書の書式・案内 | 書き方の注意、提出方法、通数 | 郵送・FAX・持参のどれで出せるか、何通必要か |
| 証拠書類の写し | 原告が出している資料の一覧 | 自分の記憶と合わない点、見覚えのない資料 |
最初に見るのは、請求の金額です。慰謝料の請求額が140万円以下なら簡易裁判所、超えれば地方裁判所が第一審になります(裁判所法33条1項1号)。60万円以下の金銭の支払いを求める訴えでは、少額訴訟が選ばれていることがあります(民事訴訟法368条)。少額訴訟は、判決に対する不服の申立てが、地方裁判所への控訴ではなく同じ簡易裁判所への異議になる点が通常の訴訟と違います。どの手続かは、呼出状や訴状の表題で確かめます。
届いた書類が本物の裁判所からのものかどうかが不安な場合は、書面に書かれた電話番号にはかけず、電話帳や裁判所のサイトで調べた番号で、裁判所に直接問い合わせます。書面を裁判所へ持って行くこともできます。身に覚えがなくても、放置すると架空の請求について判決が出て強制執行を受けるおそれがある、と裁判所は注意しています。見分け方は身に覚えのない不倫の慰謝料請求が来たら:詐欺を疑うときの確かめ方で扱っています。
答弁書の期限と出し方:何を書き、どこまで争うか
答弁書は、訴状に書かれた原告の言い分に対して、被告が自分の言い分を伝える書面です。裁判所の案内では、訴状と呼出状が届いたら内容をよく読み、言い分は答弁書に書いて、最初の期日の前までに出しておくよう勧めています。期日の直前に出すと、裁判所にも原告にも読む時間がありません。期限が呼出状に書かれていたら、その日を動かせない締切として手帳に入れます。
答弁書には、大きく2つのことを書きます。
- 請求の趣旨に対する答え。 裁判所の記載例では「原告の請求を棄却する」と書く形が示されています。これは「原告の請求は認めない」という意味です。請求の一部は認めて争わない、という書き方もあり得ますが、どちらにするかは相談してから決めます。
- 請求の原因に対する認否。 訴状に書かれた事実について、「認める」「間違っている」「知らない」を選んで答えます。民事訴訟法159条1項は、相手の主張した事実を争うことを明らかにしない場合は、その事実を自白したものとみなすと定めています(弁論の全趣旨から争ったと認められるときを除く)。反論しない事実は、認めたことになる、という点が最大の注意です。
裁判所が公開している答弁書の記載例(簡易裁判所の民事訴訟)でも、請求の原因については「全て間違いありません」「次の部分が間違っています」「次の部分は知りません」から選び、間違いの中身は簡単に書く形になっています。同じ書式には、話合いによる解決(和解)を希望するかどうか、分割払いか一括払いか、そう希望する理由を書く欄もあります。不倫の訴えでは、次のような点を、訴状の記載と見比べます。
| 訴状に書かれていること | 自分の記録と照らす点 |
|---|---|
| 関係を持った時期・期間 | メッセージの日付、会った日の記録とずれていないか |
| 相手が既婚だと知っていたという主張 | いつ、どうやって知ったか。知った時期の裏づけがあるか |
| 相手の夫婦の状態 | 関係を持ったころ、別居や離婚の話が出ていたか |
| 請求の名目と金額の内訳 | 被告が不倫相手の場合、「離婚に伴う慰謝料」になっていないか。弁護士費用など別の費用が混じっていないか |
名目については、最高裁平成31年2月19日判決が、不貞行為の相手方に離婚に伴う慰謝料を求められるのは、夫婦を離婚させる意図で不当に干渉したなどの特段の事情がある場合に限られる、という判断を示しています。不貞行為そのものを理由とする責任は別の問題です。既婚の認識や夫婦の状態がどう評価されるかは事件ごとに裁判所が判断するため、不倫の慰謝料の減額が検討される事情:請求された側が整理する材料で材料の集め方を確認し、弁護士と相談して答弁書に反映します。
相談の準備として用意する一文:「訴状の請求の原因のうち、事実として認める部分、違う部分、知らない部分を、次のとおり分けました。裏づけになる資料はこれです。」
答弁書だけを先に出しておく意味もあります。最初の期日に出られなくても、出した答弁書に書いた事項は陳述したものとみなされ、出席した原告が弁論をする形で進みます(民事訴訟法158条)。ただし、期日そのものに出られない事情があるなら、書記官へ連絡します。
答弁書を出さず欠席すると:判決までの流れ
答弁書を出さず、最初の期日にも出席しないと、原告の請求どおりの判決が出ることがある、と裁判所は案内しています。仕組みは民事訴訟法の条文で説明できます。争うことを明らかにしない事実は自白とみなされ(159条1項)、期日に出ない場合にも同じ扱いが準用されます(同条3項)。そこから先は、判決、確定、強制執行の順です。
- 判決は、財産権の請求なら、確定を待たずに強制執行できる旨の「仮執行宣言」が付くことがあります(259条)。
- 判決に不服があるときの控訴は、判決の送達を受けた日から2週間以内です(285条)。少額訴訟では異議の期間が同じく2週間とされています。
- 期間内に何もしないと判決が確定し、給料や預金の差押えの根拠になります。
放置のあと実際に何が起きるかは、請求された慰謝料を払わないとどうなる?訴訟・判決・差押えの流れで順番に整理しています。この記事で押さえるのは、「期日と提出期限を知っているのは自分だけ」という点です。原告は待ってくれず、裁判所が期限を延ばしてくれるとも限りません。
弁護士・認定司法書士・法テラスへの相談:期日から逆算して動く
相談の予約は、期日の日付から逆算して決めます。目安として、次の順に動くと間に合いやすくなります。
- 届いた当日: 封筒と書類の写真を撮り、期日・提出期限・提出先をメモする。
- 数日以内: 相談先を決めて予約する。予約の電話で「訴状が届いている」「期日はいつ」と伝える。
- 相談の日まで: 時系列のメモ(知り合った日、関係の期間、既婚と知った時期、これまでの連絡と支払い)と、訴状一式を用意する。
- 提出期限の前: 答弁書を提出する。弁護士に頼むなら、書類の渡し方と期限を先に確かめる。
誰に相談するかで、できることが違います。裁判所での代理は、原則として弁護士です。簡易裁判所の訴訟では、許可を得て弁護士でない人が代理人になれる例外があります(民事訴訟法54条1項)。法務大臣の認定を受けた司法書士(認定司法書士)は、訴訟の目的の価額が140万円を超えない簡易裁判所の民事訴訟の代理ができます(司法書士法3条1項6号)。請求額が140万円を超える、あるいは地方裁判所の事件なら、弁護士が相談先になります。費用の見方は慰謝料請求された側の弁護士の選び方:費用と相談で聞くことにまとめています。
費用が心配なら、法テラス(日本司法支援センター)の法律相談や、弁護士費用の立替えの制度があります。収入と資産の基準があり、立替えは原則として返す仕組みです。条件と流れは法テラスとは?浮気・離婚の相談で使える無料相談と費用の立替えの条件で扱っています。
訴訟の途中でも、相手が応じれば、裁判所で話し合って解決する和解の道があります。和解が成立すると和解調書が作られ、効力は確定判決と同じです。裁判の流れと費用は不倫の裁判で訴えるときの流れ:訴状・期日・判決・和解と準備も参考になります。
訴えられている間の過ごし方
裁判が続く間は、気持ちの面でも負担が大きくなります。日々の行動で、次の点に気をつけます。
- 原告や相手の家族に、自分から連絡を取らない。連絡の内容が、後から裁判で使われることがあります。
- 不倫の相手との連絡は、必要最小限にする。関係が続いているなら、終わらせる手順は不倫をやめたいのにやめられないとき:終わらせる5段階と状況別の分かれ道が参考になります。
- 手元のメッセージや書類は、自分に不利に見えても消さずに残す。
- 脅しや待ち伏せがあれば、裁判とは分けて警察に相談する。
訴えられることは、人生で何度もある出来事ではありません。慌てて動くより、期日と期限を書き出し、答弁書を出す、という順番を守ることが、自分の言い分を裁判に届ける最初の一歩になります。
よくある質問
Q. 仕事の都合で期日に出られないときは、期日を変えてもらえますか?
裁判所の案内では、病気などやむを得ない事情があれば担当の書記官に相談でき、診断書などの提出を求められることがあるとされています。仕事の都合だけでは、原則として変更できないと説明されています。出られない日が分かった時点で、早めに書記官へ連絡し、答弁書は先に出しておきます。
Q. 訴状が届いたことは、相手の配偶者や会社に知られますか?
訴状は被告であるあなた本人に送達されるもので、勤務先に自動で知らされる仕組みはありません。届く場所や受け取る人は、書類に書かれた送達先と、あなたが裁判所に伝えた送達場所で決まります。送達場所を自宅以外にしたいときは、書記官に相談します。
Q. 金額に納得できない部分があるとき、どこまで争ってよいのですか?
争うかどうか、どの事実を争うかは、あなたが決めてよいことです。ただ、訴状の事実に反論しないと、その事実を認めたものとして扱われます。何を認め、何を争うかを決める前に、手元の記録と照らして弁護士に相談します。
出典・参考にした公的な情報
- 民事訴訟法 第54条・第104条・第138条・第158条・第159条・第259条・第285条・第368条・第378条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 簡易裁判所の民事事件Q&A(訴訟・少額訴訟)(裁判所)
- 裁判所の手続を悪用した架空請求等にご注意ください。(裁判所)
- 答弁書の説明・記載例(簡易裁判所の民事訴訟)(裁判所)
- 最高裁判所第三小法廷 平成31年2月19日判決(平成29年(受)第1456号)(裁判所)
- 裁判所法 第33条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 司法書士法 第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。