慰謝料の請求書に書く項目:内容証明と普通の書面の使い分け
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慰謝料の請求書は、「誰が、誰に、どの事実を理由に、いくらを、いつまでに、どう払ってほしいか」を1枚にまとめた書面です。送り方は、届いた内容と日付を後から証明したいなら内容証明に配達証明を付けて送り、話し合いの入口として穏やかに伝えたいなら普通の手紙やメールを使う、というのが基本の使い分けです。どちらを選んでも、相手を脅すと受け取られる一文は入れません。この記事では、請求書に入れる項目、送り方ごとの違い、場面別の選び方、一般的な形の例、作成を頼める相手の順に説明します。
慰謝料の請求書に入れる項目
請求書に法律で決まった様式はありません。ただ、受け取った相手が読み違えないよう、次の項目をそろえておくと、後で「何を求めたか」で争いになりにくくなります。
| 項目 | 書く内容 | 抜けると困ること |
|---|---|---|
| 表題 | 「請求書」「通知書」など | 何の書面か分かりにくい |
| 作成日 | 書面を作った年月日 | いつ請求したかが曖昧になる |
| 宛先 | 相手の住所と氏名 | 別人あてと言われる |
| 差出人 | 自分の住所と氏名、署名 | 誰からの請求か分からない |
| 請求の原因 | 不倫の事実の要点(時期と相手との関係) | 何に対する請求か伝わらない |
| 請求額 | 慰謝料として求める金額 | 交渉の出発点が定まらない |
| 支払期限 | 支払い、または回答をしてほしい日 | いつまで待つかが決まらない |
| 支払方法 | 振込先の口座、一括か分割の相談に応じるか | 払う意思があっても払えない |
| 回答先 | 返事を受ける住所や方法(書面で、など) | 職場や家族あてに連絡が来るおそれ |
このうち「請求の原因」は、詳しく書くほどよいわけではありません。日付と関係の性質を短く書き、性的な描写や証拠の中身を並べることは避けます。証拠を先に全部見せると、相手が言い分を整える材料にもなります。
回答先は意外に大切な項目です。連絡先を書かずに送ると、相手が自宅に来たり、家族あてに返事を送ってきたりすることがあります。「書面にて下記住所まで」と方法と宛先を指定しておくと、その後のやりとりを記録として残しやすくなります。
送り方の使い分け:内容証明・普通の書面・メールやLINE
同じ請求書でも、送り方によって後から証明できることが違います。
| 送り方 | 送った内容の証明 | 届いたことの証明 | 相手が受ける印象 | 手間と費用 |
|---|---|---|---|---|
| 内容証明+配達証明 | できる(郵便局が謄本と照合して日付を入れる) | できる(配達証明) | 改まった請求として受け止められやすい | 窓口へ行くか電子内容証明。加算料金がかかる |
| 書留 | 中身は証明されない | 引受けと配達の記録が残る | やや改まった印象 | 書留の料金 |
| 普通郵便 | されない(控えのコピーを自分で残す) | されない | 手紙として受け取られる | 郵便料金のみ |
| メール・LINE | 送信した画面の記録は残る | 既読や返信で推し量る程度 | 気軽だが、軽く扱われることも | ほぼかからない |
| 手渡し | 写しに受領の署名をもらえば残る | 受領の署名で残る | 対面のため感情的になりやすい | 会う段取りが要る |
内容証明は郵便法48条で文書の内容を、配達証明は47条で配達した事実を証明する扱いです。内容証明だけでは届いたことまでは証明されないので、届いた日を残したいときは配達証明も付けます。内容証明の書式や文面の組み立ては不倫慰謝料の内容証明の書き方で、郵便の扱いの仕組みは内容証明郵便とは?で詳しく説明しています。
時効との関係でも送り方は効いてきます。不倫の慰謝料は、損害と加害者を知った時から3年で時効にかかり(民法724条)、書面などで請求(催告)すると6か月だけ時効の完成が猶予されます(民法150条)。ただ、その請求がいつ届いたかを後から示せなければ、猶予の始まりをめぐって争いになりえます。時効が近いときに内容証明と配達証明が選ばれるのは、このためです。
場面別:どの送り方を選ぶかの分かれ道
送り方は、時効までの残り時間と、相手との関係で選びます。
- 知った時から3年が近い → 内容証明+配達証明で送り、6か月の間に調停や訴えを検討する
- 相手と話し合える関係で、まず穏やかに伝えたい → 普通の手紙かメールで「話し合いたい」と伝え、送った文面の控えを残す
- 普通の手紙やメールに返事がない → 同じ内容を内容証明で送り直し、期限を区切る
- 話し合いを続けることで合意できそう → 「この件について協議する」と書面(メールなど電磁的記録を含む)で合意すると、原則として合意から1年は時効が完成しない(民法151条)
- 相手が弁護士を立ててきた → 以後の連絡は相手の弁護士あてにする。自分も弁護士に相談する
相手と同居している配偶者に請求する場合は、書面より先に話し合いの場をどう持つかが問題になることが多く、書面を送ること自体が関係を大きく動かします。配偶者への請求と離婚の話し合いを並べて進める場合は、協議離婚で慰謝料を決めるときの手順も見ておくと、請求書に何を書くかを決めやすくなります。
請求書の一般的な形と、書くときの注意
メールや普通の手紙で送る場合の、一般的な形の例です。内容証明よりも文面を柔らかくし、話し合いの余地を残しています。
文例(一般的な形の例): 「○○○○様 突然のご連絡失礼いたします。私は○○○○の妻の○○○○です。 令和○年○月頃から、あなたが○○と交際していた事実を知りました。 このことで受けた精神的な苦痛について、慰謝料として○○○万円をお支払いいただきたく、ご連絡しました。 お支払い方法や時期について相談がある場合も、令和○年○月○日までに、書面で下記の住所までご回答ください。 令和○年○月○日 住所 氏名」
書くときは、次の点に気をつけます。
- 金額は「請求します」と書く:「支払う義務があります」と確定したように書かない
- 周囲に知らせることを匂わせない:「会社に知られたくなければ」のような一文は、脅しと受け取られるおそれがある。言い換えの例は不倫慰謝料の内容証明の書き方の表にある
- 謝罪文や誓約を一方的に求めない:金銭以外の約束は、話し合って合意したものを書面に残す
- 控えを残す:普通郵便やメールでも、送った文面と日付の記録を保存する
返事がない場合にとれる次の手続きは慰謝料請求を無視されたらで、家庭裁判所で話し合う方法は慰謝料請求調停とは?家庭裁判所での流れと申立ての費用で整理しています。
請求書の作成を頼める相手と、その範囲
請求書は自分で作って送れますが、他人に作成や交渉を頼むときは、頼める範囲が資格によって違います。
| 頼む相手 | できること | できないこと |
|---|---|---|
| 弁護士 | 請求書の作成、弁護士名での通知、その後の交渉・調停・訴訟の代理 | ― |
| 認定司法書士 | 請求額が140万円以下の民事の争いで、相談や裁判外の和解の代理、簡易裁判所の訴訟の代理 | 140万円を超える争いの代理、家庭裁判所の離婚の手続きの代理 |
| 行政書士 | 権利義務に関する書類の作成(行政書士法1条の3) | 相手と争いがある請求で、代わりに交渉すること(弁護士法72条) |
弁護士でない者が、報酬を得る目的で法律事件の交渉などを扱うことは弁護士法72条で禁じられています。「請求書の作成から交渉まで任せられる」とうたうサービスを使うときは、誰が何をするのかを契約前に確かめてください。
慰謝料の請求全体の流れは浮気・不倫の慰謝料とは?請求できる場面・金額の決まり方・進め方の全体像にまとめています。
よくある質問
Q. 慰謝料の請求書は手書きでなければいけませんか?
手書きである必要はなく、パソコンで作った書面でもかまいません。署名だけは自筆にしておくと、誰が出した書面かがはっきりします。内容証明で送る場合は、1行の字数と1枚の行数に決まりがあるので、先に[内容証明の書き方の決まり](/naiyou-kakikata/)を確かめてから作ってください。
Q. 請求額の根拠として、計算の内訳を書く必要はありますか?
慰謝料は精神的な損害の賠償なので、物の修理代のような明細はありません。請求書には金額と、請求の原因となった事実を書けば足ります。金額の決め方の考え方は個別の事情で変わるので、迷うときは弁護士に資料を見せて相談してください。
Q. 配偶者の不倫相手の名前しか分かりません。請求書を出せますか?
書面を届けるには住所が要ります。名前しか分からないときに、自分で尾行したり勤務先に問い合わせたりすると、別の問題を生むおそれがあります。住所の調べ方は、相手を特定するための手段を持つ弁護士に相談するのが安全です。
出典・参考にした公的な情報
- 郵便法 第44条・第47条・第48条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第150条・第151条・第724条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 弁護士法 第72条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 行政書士法 第1条の3(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 司法書士法 第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。