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協議離婚で慰謝料を決めるとき:金額・支払い方法・書面の残し方

この記事のもくじ
  1. 協議離婚で慰謝料について決める項目
  2. 話し合いを進める手順
  3. 書面の残し方:離婚協議書と公正証書の違い
  4. 公正証書にするときの費用と必要なもの
  5. 支払いが止まったときに備えて決めておくこと

協議離婚で慰謝料を決めるときは、金額、支払いの時期、一括か分割か、遅れたときの扱い、振込先の5つを話し合い、離婚届を出す前に書面に残すのが基本です。書面は、夫婦で作る離婚協議書でも残せますが、払われなくなったときに裁判をせずに差押えまで進めたいなら、強制執行に服する旨を書いた公正証書(執行証書)にしておく必要があります。この記事では、話し合う項目、進め方の手順、書面の違い、公正証書の費用、支払いが止まったときへの備えの順に説明します。

協議離婚で慰謝料について決める項目

夫婦は話し合いで離婚でき(民法763条)、慰謝料も話し合いで決められます。決める項目に抜けがあると、離婚した後に「そんな約束はしていない」と言い分が分かれます。次の表で、話し合う項目と決め方の例を確かめてください。

チェックリスト:協議離婚の慰謝料で決める項目
項目 決めること 決め方の例
金額 慰謝料として支払う総額 「慰謝料として金○○○万円」
支払いの時期 いつまでに払うか 一括なら期日、分割なら毎月の支払日
支払いの方法 振込先、手数料の負担 受け取る側の名義の口座。振込手数料は払う側の負担など
一括か分割か 回数と1回の額 「令和○年○月から毎月末日限り金○万円を○回」
遅れたときの扱い 支払いが遅れた場合の取り決め 一定回数遅れたら残りを一括で払う、遅延損害金をつけるなど
ほかの取り決めとの関係 財産分与・養育費と分けて書くか 慰謝料と財産分与は別の項目として書く
清算の範囲 この取り決めで何が解決したことにするか 「本書に定めるほか債権債務がない」の範囲を確かめる

「遅れたときの扱い」と「清算の範囲」は、後から争いになりやすい項目です。遅延損害金や違約金のような取り決めは、損害賠償の額を前もって決めておくもの(民法420条)として置けますが、極端に重い内容は公の秩序に反するとして無効とされるおそれがあり、公証人は無効な内容の公正証書を作れません(公証人法26条)。清算条項は、和解した後は原則として蒸し返せない(民法695条・696条)こととつながるので、財産分与や養育費、不倫相手への請求まで含めてしまっていないかを読み返します。

分割払いを選ぶときの考え方は、慰謝料の分割払いの決め方で詳しく説明しています。

話し合いを進める手順

慰謝料の話し合いは、離婚の条件全体の中で進むことが多く、順番を決めておくと感情的になりにくくなります。

  1. 条件を書き出す:慰謝料のほか、親権者、養育費、親子交流、財産分与、年金分割など、離婚で決めることを一覧にする
  2. 自分の考えを先に整理する:慰謝料について、求める金額、一括か分割か、譲れる点と譲れない点を紙に書く
  3. 話し合う:日時と場所を決め、条件を1つずつ確かめる。話し合いの内容はメモに残し、決まったことは双方で読み合わせる
  4. 書面の案を作る:決まった内容を、項目ごとに書いた案にする。公正証書にするなら、この案を公証役場に持ち込む
  5. 書面を仕上げる:離婚協議書なら双方が署名する。公正証書なら公証役場で作成する
  6. 離婚届を出す:公正証書を作っただけでは離婚は成立せず、離婚届が受理されて離婚の効力が生じる。慰謝料の書面を整えてから届け出る

相手と2人では話し合いにならない、相手が条件を一方的に押しつけてくる、という場合は、家庭裁判所の夫婦関係調整調停(離婚)の中で慰謝料も話し合えます。協議離婚の流れ全体は協議離婚の流れ:浮気が原因のときに決めることと書面の残し方で整理しています。

書面の残し方:離婚協議書と公正証書の違い

慰謝料の取り決めは、口約束ではなく書面に残します。書面の形は大きく2つです。

比べる点 離婚協議書(当事者が作る書面) 公正証書(公証人が作る公文書)
作る人 夫婦。作成を行政書士や弁護士に頼むこともできる 公証人。夫婦が公証役場に依頼する
証拠としての強さ 署名があれば合意の証拠になる 公文書として真正に成立したと強く推定される
払われないとき 改めて調停や訴訟を起こし、判決などを得てから強制執行 強制執行に服する旨の記載があれば、裁判をせずに強制執行を申し立てられる(民事執行法22条5号)
費用 作成を頼まなければほぼかからない 公証人手数料がかかる
手間 夫婦だけで作れる 原案のやりとりと作成日の予約が要る

公正証書にすると強制執行ができるのは、「一定の額の金銭を支払う」約束と、「支払わないときは強制執行に服する」という本人の陳述の両方が書かれている場合です。慰謝料はお金の約束なので、この形にできます。離婚協議書の書き方と条項の例は離婚協議書の書き方で、公正証書の作り方は離婚公正証書の作り方で説明しています。

2025年10月1日以後は、法務大臣が指定する公証人が作る公正証書は原則としてPDFの電子データで作られ、署名も電子サインになりました。ウェブ会議で作成することも、公証人が相当と認め、もう一方の当事者に異議がない場合に限ってできます。出向けるかどうかの事情があるときは、早めに公証役場に相談します。

公正証書にするときの費用と必要なもの

公証人手数料は、取り決めの金額(目的の価額)で決まります。表は2025年10月1日改定後のもので、それより前の表とは金額が違います。

早見表:公証人手数料(2025年10月1日改定後・抜粋)
目的の価額 手数料
50万円以下 3,000円
50万円を超え100万円以下 5,000円
100万円を超え200万円以下 7,000円
200万円を超え500万円以下 13,000円
500万円を超え1,000万円以下 20,000円
1,000万円を超え3,000万円以下 26,000円

慰謝料と養育費は、それぞれ別の法律行為として手数料を計算し、合計した額がその公正証書の手数料になります。養育費のように長く続く支払いは、5年分を上限に数えます。

筆者の計算で例を示します。慰謝料150万円を一括で払う取り決めなら、100万円を超え200万円以下に当たるので7,000円です。同じ公正証書で、養育費を月4万円、子が20歳になるまで10年以上払う取り決めもするなら、5年分の240万円(4万円×60か月)が上限となって13,000円で、合計20,000円になります。このほかに、証書の枚数による加算(電子の公正証書は出力した書面が3枚を超えると1枚ごとに300円)や、正本などの交付の手数料がかかります。最終的な額は、公証役場の見積もりで確かめてください。

公証役場に行くときの本人確認は、印鑑登録証明書と実印、運転免許証と認印、マイナンバーカードと認印などのいずれかです。印鑑登録証明書などは発行から3か月以内のものに限られます。離婚の公正証書では戸籍謄本も求められます。代理人に頼む場合は、代理権の範囲を書いた委任状が要り、1人が夫婦双方の代理人を兼ねることは一般にできません。

支払いが止まったときに備えて決めておくこと

協議離婚で決めた慰謝料が、途中で払われなくなることもあります。書面を作る段階で、次の点を確かめておくと、止まったときに慌てずに済みます。

  • 執行証書にしておく:強制執行に服する旨の記載がある公正証書なら、判決を待たずに差押えを申し立てられる
  • 分割の遅れの扱いを決めておく:遅れたときに残りを一括で求められる取り決めがないと、期日が来た分しか請求できない
  • 養育費の特例は使えないと知っておく:将来の分まで給料を差し押さえる、差押えの範囲を広げるといった特例(民事執行法151条の2など)は、養育費や婚姻費用のためのもので、慰謝料には使えない
  • 住所や勤務先の変更を知らせる約束を入れる:連絡がつかなくなると、差押えの手続きが進めにくくなる

払われないときの手続きの流れは、決まった慰謝料が支払われないときで詳しく説明しています。

慰謝料の額や条項の書き方は、夫婦の事情しだいで考えることが変わります。不倫相手への請求も視野に入れている、財産分与と慰謝料をどう分けるか迷う、といった場合は、書面に署名する前に弁護士に案を見てもらうと安心です。

慰謝料の請求全体の流れと、どの段階で何を決めるかは浮気・不倫の慰謝料とは?請求できる場面・金額の決まり方・進め方の全体像にまとめています。話し合いが長引きそうなときの見通しは、慰謝料請求にかかる期間の目安も参考にしてください。

よくある質問

Q. 協議離婚で受け取る慰謝料に税金はかかりますか?

日本公証人連合会の離婚Q&Aは、慰謝料や財産分与を受け取る側には原則として贈与税や所得税はかからないが、金額が過大な場合などは課税されることがあると説明しています。家や土地で受け取る場合は登録免許税や不動産取得税、渡す側に譲渡所得税がかかる場合もあるので、不動産が絡むときは税務署か税理士に確かめてください。

Q. 慰謝料の取り決めをしないまま離婚届を出してしまいました。もう請求できませんか?

離婚届を出した後でも、慰謝料について話し合うことはできます。話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所の慰謝料請求調停を使う道があります。元配偶者への請求権は、婚姻が終わってから6か月を過ぎるまでは時効が完成しないと民法159条が定めていますが、その後は損害と加害者を知った時からの3年で考えるので、早めに動いてください。

Q. 配偶者から慰謝料を受け取ったら、不倫相手にはもう請求できませんか?

配偶者と不倫相手は連帯して責任を負うと考えられており(民法719条)、どちらかが払えば、その分は全体の損害に充てられます。配偶者との取り決めの書き方しだいで、不倫相手への請求に影響することがあるので、清算条項の範囲は書く前に弁護士に確かめてください。考え方は[配偶者と不倫相手の両方に慰謝料を請求できる?](/isharyo-ryouhou/)で整理しています。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

離婚協議書の書き方:浮気の慰謝料・養育費・財産分与の条項の例

離婚公正証書の作り方:公証役場での流れと強制執行できる条項

慰謝料の分割払いの決め方:受け取る側・払う側と不払いに備える書面

浮気・不倫の慰謝料とは?請求できる場面・金額の決まり方・進め方の全体像