浮気・不倫の慰謝料とは?請求できる場面・金額の決まり方・進め方の全体像
この記事のもくじ
不倫の慰謝料とは、配偶者の不貞行為によって受けた精神的な苦痛(財産以外の損害)に対する賠償金のことで、民法709条・710条が根拠です。請求できる相手は、不倫をした配偶者、不倫相手、またはその両方です。金額を決める表は法律になく、話し合いの合意か裁判所の判断で決まります。進め方は「話し合い・書面 → 調停 → 訴訟」の順で考え、時効(知った時から3年・行為の時から20年)に注意します。この記事は、慰謝料のハブにある各記事への入口として全体の地図を示します。
不倫の慰謝料を請求できる場面:まず4つの点を確かめる
浮気されたときに慰謝料を請求できるかどうかは、「浮気があった」だけでは決まりません。最高裁の判決と条文から、一般に問題になる点を4つに分けて確かめます。
| 確かめる点 | 何が問題になるか | 根拠 | 詳しく読む |
|---|---|---|---|
| ① 不貞行為があったか | 法律で問題にされるのは主に配偶者以外との性的関係。メッセージだけの関係は別の検討になる | 民法770条1項1号、709条 | 肉体関係なしでも慰謝料を請求されるかの記事 |
| ② 不倫相手に故意・過失があったか | 既婚と知っていた、または知ることができたか | 最高裁昭和54年判決、令和8年判決 | 慰謝料請求の条件の記事 |
| ③ 関係が始まった時に夫婦関係が破綻していなかったか | すでに破綻していれば、不倫相手は原則として責任を負わない | 最高裁平成8年判決 | 婚姻関係の破綻とは何かの記事 |
| ④ 時効が過ぎていないか | 損害と加害者を知った時から3年、不貞行為の時から20年 | 民法724条 | 不倫の慰謝料の時効の記事 |
最高裁昭和54年3月30日判決は、配偶者のある人と性的関係を持った第三者は、故意または過失がある限り、誘惑したかどうか、自然な愛情からかどうかにかかわらず、他方の配偶者の精神的苦痛を慰謝する義務があるとしました。一方で、平成8年3月26日判決は、関係を持った当時すでに婚姻関係が破綻していたときは、特段の事情のない限り第三者は責任を負わないとしています。2026年6月5日の最高裁判決は、不倫相手が「破綻していると信じた」と主張する場合に、そう信じる相当の理由があったかまで検討するよう求めました。
離婚するかどうかでも整理が変わります。離婚しない場合の請求は離婚しない場合の不倫の慰謝料の記事、離婚に伴う慰謝料との違いは離婚の慰謝料と不倫の慰謝料の違いの記事で扱っています。
不倫の慰謝料の金額の決まり方:法律に表はない
慰謝料の金額について、民法が定めているのは「お金で賠償する」という方法だけです。民法722条1項は、損害賠償を原則として金銭で定める417条を不法行為にも準用しています。いくら払うかの基準額や計算式は、条文にもこの記事で挙げた最高裁の判決にも出てきません。
公的な統計も同じです。最高裁判所の司法統計年報(令和7年家事編)は全70表ありますが、財産分与の額や養育費の月額の表はあっても、慰謝料だけを区分した表はありません。家庭裁判所の家事手続案内も、「慰謝料は幾らくらいもらえるか」という相談には応じていないと明記しています。ネット上で見かける「相場」の数字は、出どころと対象の事件を確かめないまま使わないほうが安全です。読み方は不倫慰謝料の相場の記事にまとめました。
では金額は何で決まるのか。話し合いなら当事者の合意で決まり、裁判なら裁判所が事件ごとの事実を見て決めます。被害を受けた側にも過失があるときは、裁判所がそれを考慮して額を定めることができる、という条文(722条2項)もあります。相談のときに聞かれやすい事実を、先に書き出しておくと話が早く進みます。
- 婚姻期間と、子どもの有無・年齢
- 不倫の始まった時期・続いた期間・知った経緯
- 関係が始まった頃の夫婦の状態(同居か別居か、会話や家計の様子)
- 不倫をきっかけに別居や離婚に至ったか
- 不倫相手が既婚と知っていたと考える理由
- すでに謝罪や支払いの申し出があったか
事情ごとの整理は離婚慰謝料が高額になりやすい事情の記事で扱っています。
浮気の慰謝料を請求する方法:話し合いから訴訟までの流れ
請求の方法は、相手と直接話す段階から裁判所の手続まで段階があります。どの段階から始めるかは、相手が話し合いに応じるか、離婚も一緒に決めるかで変わります。
| 段階 | 相手 | 中身 | 費用の目安(公的に決まっているもの) |
|---|---|---|---|
| 話し合い・書面での請求 | 配偶者・不倫相手 | 請求の意思と内容を伝え、合意できれば示談書にする | 内容証明郵便を使う場合は郵便料金 |
| 夫婦関係調整調停(離婚) | 配偶者 | 離婚と一緒に慰謝料も話し合える | 収入印紙1,200円分+郵便切手 |
| 慰謝料請求調停 | 離婚した元配偶者 | 離婚後に慰謝料だけを話し合う | 収入印紙1,200円分+郵便切手 |
| 民事訴訟 | 不倫相手・配偶者 | 請求額140万円以下は簡易裁判所、超えると地方裁判所 | 請求額に応じた手数料。2026年5月21日以後の訴えは書面と電子で額が違う |
| 離婚訴訟とあわせた請求 | 配偶者(要件に当たれば不倫相手も) | 離婚の原因となった事実による損害賠償を一つの訴えで出せる(人事訴訟法17条) | 提出先の家庭裁判所で確かめる |
郵便切手の額は裁判所ごとに違います。手順の詳しい流れは不倫慰謝料の請求方法の記事、書面で請求するときの仕組みは内容証明郵便とは何かの記事、合意したあとの残し方は不倫の示談の進め方の記事で扱います。家庭裁判所の手続は慰謝料請求調停の記事が詳しく、裁判の流れは不倫の裁判の流れの記事にあります。
請求の段階で気をつけたいのは、相手の職場や家族に知らせる、ネットに書き込む、といった手段を取らないことです。刑法には名誉毀損や脅迫を罰する条文があり、請求する側が責任を問われるおそれが出てきます。線の引き方は不倫を周囲に知らせると名誉毀損になるかの記事を読んでください。
慰謝料の相手と時効:両方への請求・3年と20年
請求する相手は、不倫をした配偶者、不倫相手、またはその両方です。民法719条1項は、共同の不法行為で損害を加えた数人が連帯して賠償すると定めているので、どちらに対しても請求することはできます。ただし、二人から重ねて損害の全額を受け取れるわけではありません。両方に請求するときの線は配偶者と不倫相手の両方に慰謝料を請求できるかの記事、不倫相手だけを相手にする考え方は不倫相手に慰謝料を請求するときの記事にあります。
もう一つの区別が、平成31年2月19日の最高裁判決です。不倫相手に対しては、夫婦を離婚させる意図で不当に干渉したなどの特段の事情がない限り、「離婚に伴う慰謝料」は請求できないとされました。不貞行為そのものを理由とする責任は別に残ります。
時効は民法724条で、損害と加害者を知った時から3年、不貞行為の時から20年です。配偶者に対する請求については、民法159条が、夫婦の一方が他方に対して持つ権利は婚姻の解消から6か月を経過するまで時効が完成しないと定めています。不倫相手の名前や住所を知った時期によって数え始めが問題になることもあるので、時期が迫っていると感じたら早めに弁護士へ相談します。
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- 結婚していない恋人の浮気は、彼氏や彼女の浮気で慰謝料は請求できるかから
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- 暴力があるときは、DVがあった離婚の慰謝料から(安全が先です)
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不倫相手やその家族から脅される、暴力を受けているといった危険があるときは、慰謝料の話より安全を先にします。窓口の番号と受付時間は浮気・不倫の相談先一覧にまとめています。
不倫の慰謝料の相談先:弁護士・認定司法書士・法テラス
慰謝料を請求できるか、いくらで合意するかといった個別の判断と、相手との交渉の代理は、弁護士の仕事です(弁護士法72条)。請求額が140万円以下の民事の争いであれば、認定を受けた司法書士も交渉や簡易裁判所の訴訟を代理できます(司法書士法3条)。この140万円は資格の範囲の線で、慰謝料の目安ではありません。
| 相談先 | できること | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 弁護士 | 見通しの説明、交渉・調停・訴訟の代理、示談書の作成 | 離婚もからむ、相手が争っている、金額が大きい |
| 認定司法書士 | 140万円以下の民事の争いの交渉・簡易裁判所の訴訟代理 | 不倫相手への請求で、請求額が140万円以下 |
| 法テラス | 収入などの条件に当たる人の無料法律相談、弁護士費用の立替えの入口 | 費用が心配 |
| 家庭裁判所の家事手続案内 | 調停の申立て方・費用・書類の説明(法律相談はしない) | 調停を自分で申し立てたい |
費用が心配なら法テラスの使い方の記事、弁護士の探し方は不倫慰謝料を弁護士に頼むときの選び方の記事、司法書士との違いは慰謝料請求を司法書士や行政書士に頼めるかの記事へ進んでください。相談に持っていくものは弁護士に相談する前の準備の記事で一覧にしています。
よくある質問
Q. 浮気された側は、不倫相手と配偶者のどちらに慰謝料を請求すべきですか?
どちらに請求するかは、離婚するかどうか、家計が同じかどうか、不倫相手が既婚と知っていたかなどで考え方が変わります。民法719条により両方に請求することもできますが、受け取れるのは損害の分までです。目的(謝罪・関係の終わり・お金)を書き出してから弁護士に相談すると、選び方を具体的に聞けます。
Q. 内容証明を出さずに、メッセージだけで慰謝料を請求してもよいですか?
内容証明は法律上の必須の手続ではなく、メールやメッセージで請求の意思を伝えることもできます。ただ、後から「いつ何を伝えたか」を示したいときは、郵便局が文面と日付を証明する内容証明が使われます。脅しと受け取られる書き方は避けます。出し方は内容証明郵便の記事にまとめています。
Q. 証拠がそろっていなくても、慰謝料の相談はできますか?
相談はできます。弁護士は、手元にある資料で何が言えて何が足りないかを一緒に整理します。足りない資料を集めるときは、相手のスマホへの無断ログインなど、禁じる法律がある方法を使わないことが前提です。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第709条・第710条・第719条・第722条・第724条・第159条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 最高裁判所 昭和54年3月30日 第二小法廷判決(裁判所)
- 最高裁判所 平成8年3月26日 第三小法廷判決(裁判所)
- 最高裁判所 平成31年2月19日 第三小法廷判決(裁判所)
- 最高裁判所 令和8年6月5日 第二小法廷判決(裁判所)
- 慰謝料請求調停(裁判所)(裁判所)
- 夫婦関係調整調停(離婚)(裁判所)(裁判所)
- 手数料・手数料額早見表(裁判所)(裁判所)
- 家事手続案内(裁判所)(裁判所)
- 司法統計年報(家事編)令和7年(最高裁判所)
- 人事訴訟法 第17条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 裁判所法 第33条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 司法書士法 第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。