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求償権の放棄とは?示談で放棄を求められたときに確かめること

この記事のもくじ
  1. 求償権の放棄とは:誰が・誰に対する権利を手放すのか
  2. 示談で求償権の放棄がよく話題になる3つの理由
  3. 放棄と金額の関係:仮の数字で比べる
  4. 示談書で確かめる5つの点
  5. 請求された側・離婚する場合に考えること

求償権の放棄とは、慰謝料を払う人が「後で、もう一人に負担分を求めることはしない」と約束することです。不倫の示談では、不倫相手が慰謝料を払う代わりに、不倫をした配偶者への求償権を放棄する条項が話し合われることがよくあります。放棄を求められたら、確かめることは大きく3つです。①放棄するのは誰の、誰に対する権利か、②放棄と引き換えに金額がどう変わるか、③夫婦が離婚するかどうかで放棄の意味がどう変わるか。この記事では、放棄が話題になる理由から順に、示談書で見る点を整理します。

求償権の放棄とは:誰が・誰に対する権利を手放すのか

不倫の慰謝料は、配偶者と不倫相手の二人が連帯して責任を負う形で考えられています(民法719条1項)。一人が払った後、もう一人に負担分を求めるのが求償権で、仕組みは不倫の求償権とは何かの記事で詳しく説明しています。

示談で「求償権を放棄する」と書くとき、多くは次の形です。

項目 よくある形
放棄する人 慰謝料を払う不倫相手
放棄の相手 された側の配偶者(不倫をした人)
放棄するもの この不倫について配偶者に負担分を求める権利
示談書の当事者 された側と不倫相手(配偶者が加わる場合もある)

注意したいのは、放棄の相手である配偶者が示談書の当事者に入っていない場合があることです。誰と誰の約束として書かれているかで、後で配偶者が条項を持ち出せるかどうかの議論が変わりうるので、当事者の欄と条項の主語を確かめます。

文例(条項の一般的な形の例):「乙は、甲に対し、本件不貞行為に関し、丙に対する求償権を行使しないことを約する。」 (甲=された側、乙=不倫相手、丙=甲の配偶者。実際の文言は事情に合わせて弁護士と作る)

示談で求償権の放棄がよく話題になる3つの理由

1. 離婚しない夫婦では、お金が家計から出ていくのを防げる。 不倫相手が慰謝料を払った後に配偶者へ求償すると、配偶者は同じ家計からその分を払うことになります。夫婦として暮らし続けるなら、受け取ったお金の一部が戻っていくのと同じです。放棄の条項は、この「行って戻る」流れを止めるために入れられます。

2. 配偶者を許しても、求償は残りうる。 民法445条は、連帯債務者の一人が債務を免除されても、他の連帯債務者はその一人に求償権を行使できるとしています。不倫の慰謝料にこの条文がそのまま当てはまるかは解釈の問題ですが、された側が「夫には請求しない」と決めるだけでは、不倫相手から夫への求償を止められない可能性があります。止めたいなら、不倫相手との約束として書いておく必要があります。

3. 紛争を一度で終わらせられる。 民法696条は、和解で権利を認めた(または認めなかった)後に、反対の確かな証拠が出てきても、権利は和解のとおりに移転・消滅したものとすると定めています。求償の扱いまで示談に含めて清算すれば、示談の後に配偶者と不倫相手の間で新しい争いが始まるのを避けやすくなります。

放棄と金額の関係:仮の数字で比べる

求償権の放棄は、慰謝料の額の話し合いとセットで出てくることが多い項目です。不倫相手の側からは「放棄する代わりに、配偶者の負担分にあたる額を差し引いてほしい」という提案が出ることがあります。

放棄の有無で家計に残る額を比べる(仮の数字・筆者の計算)
比べる形 示談で受け取る額 後の求償 離婚しない場合に家計に残る額 離婚する場合に自分に残る額
A:放棄なし 100万円 配偶者に50万円の求償がありうる 差し引き50万円 100万円(求償は元配偶者が負う)
B:放棄あり・減額なし 100万円 なし 100万円 100万円
C:放棄あり・半額に減額 50万円 なし 50万円 50万円

※100万円・負担は半分ずつという前提は、説明のための仮の数字。実際の額や割合を示すものではない。

この表から分かるのは次のことです。

  • 離婚しないなら、AとCは家計に残る額が同じになりうる。違いは、Aでは配偶者と不倫相手の間で求償の争いが残ること。
  • 離婚するなら、Cは自分の受け取りだけが減る形になりうる。
  • Bは請求する側にとって最も有利な形ですが、不倫相手が受け入れるかどうかの問題が残る。

金額をいくらにするか、放棄と減額のどちらを優先するかは、交渉そのものです。弁護士法72条は、弁護士でない人が報酬を得る目的で和解などの法律事務を扱うことを禁じているので、他人の代わりの交渉は弁護士の仕事です。そのため、交渉の進め方は依頼した弁護士と決めてください。

示談書で確かめる5つの点

放棄を求められた・求めたいとき、示談書の案で次の5点を確かめます。

  1. 主語と相手:誰が、誰に対する求償権を放棄するのか。「丙に対する」など相手が特定されているか。
  2. 対象の範囲:「本件不貞行為に関し」など、どの出来事についての放棄か。範囲があいまいだと、別の請求まで含むかで争いになる。
  3. 清算の条項との関係:「本示談書に定めるほか、甲乙間に何らの債権債務がないことを確認する」という清算の条項は甲乙の間の確認で、丙(配偶者)への求償を当然に止めるものとは限らない。放棄は別の条項として書く。
  4. 支払いの方法:分割払いなら、遅れたときの扱い(残額の一括請求など)と、放棄の条項の効力の関係。
  5. 書面の形:私文書の示談書は、それだけでは強制執行の根拠になりません。払われない場合に備えるなら、金銭の支払いについて強制執行を受け入れる旨を入れた公正証書(執行証書、民事執行法22条5号)にする方法があります。

示談書全体に入れる条項の並びは不倫の示談書の書き方で、公証役場での作り方は示談書を公正証書にする流れで確かめられます。

請求された側・離婚する場合に考えること

請求された側(不倫相手)から見た放棄

求償権を放棄すると、払った後に配偶者側へ負担分を求める道を自分で閉じることになります。その代わりに金額を下げてもらえるのか、放棄しても金額が変わらないのかで、受け入れるかどうかの判断は変わります。請求された側が示談書で確かめる条項(清算・求償・口外しない約束)は、不倫の示談に請求された側が応じるときの記事で整理しています。

離婚する予定がある場合

離婚すれば家計が分かれるので、放棄の目的だった「お金が家計から戻っていくのを防ぐ」意味は薄れます。離婚するかどうか決めきれていない段階で放棄と減額を受け入れると、後で離婚したときに、表のCのように受け取りだけが少なくなったと感じることがあります。示談の前に、離婚する場合としない場合の両方の額を弁護士と並べておくと、後悔を減らせます。

話し合いの場での注意

放棄の条件をのませようとして、「応じないなら職場に知らせる」などと告げると、脅迫や名誉毀損の問題になりうる言い方になります。請求する側が逆に責任を問われる線は、次の不倫を周囲に知らせると名誉毀損になるかの記事で確かめてください。

よくある質問

Q. 不倫相手に求償権の放棄を求めたら断られました。どうすればよいですか?

放棄は相手が同意して初めて示談の条項になるので、無理に書かせることはできません。断られたときは、放棄なしで受け取る額と、放棄を条件に下げた額とを比べ、どちらが自分たちの家計にとって意味があるかを考え直します。言い方が強くなると脅しと受け取られるおそれがあるため、条件の調整は弁護士を通すのが安全です。

Q. 求償権の放棄は口約束でも有効ですか?

示談(和解)は互いに譲り合って争いをやめる約束で、民法上は書面がなくても成り立ちます。ただし、放棄したかどうかを後から証明できないと、求償を受けたときに争いになります。放棄の条項は、示談書に誰の誰に対する権利かを特定して書き残しておきます。

Q. 放棄の条項を入れて示談した後で離婚することになったら、どうなりますか?

示談で放棄された求償権は、離婚しても示談の内容のままです。ただ、離婚を考え始めた段階で放棄を前提に金額を下げていた場合、受け取りの考え方が変わったと感じることがあります。離婚の可能性が少しでもあるなら、示談の前に弁護士と両方の場合の金額を並べておきます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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