不倫の求償権とは?配偶者と不倫相手の負担割合の考え方
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求償権とは、慰謝料を払った人が、一緒に責任を負うもう一人に「あなたの負担分を返してほしい」と求める権利です。不倫の慰謝料では、たとえば不倫相手が慰謝料を全額払った後、不倫をした配偶者に負担分を求める場面で問題になります。請求した側にとっては、受け取ったお金が求償によって自分の家計から出ていくことがあるので、離婚しない場合は特に見落とせません。この記事では、求償権が民法のどこに位置づけられるかと、不倫で問題になる場面、負担割合の決まり方を整理します。
求償権とは:不倫の慰謝料で「払った人」と「払っていない人」の関係
不倫の慰謝料は、不貞行為をした配偶者と不倫相手の二人が、された側に対して責任を負う形で考えられています。民法719条1項は、共同の不法行為で他人に損害を与えた数人は「各自が連帯して」賠償する責任を負うとしています。このため、された側は、配偶者と不倫相手のどちらにも損害の全部を求めることができる一方、二人から重ねて受け取ることはできません。
ここで問題が一つ残ります。された側に払ったのが一人だけだった場合、二人の間で負担をどう分けるかです。払った人が、払わなかった人に負担分を求める権利が求償権です。
| 登場する人 | 立場 | 求償との関係 |
|---|---|---|
| された側(請求する人) | 慰謝料を受け取る | 求償の当事者ではないが、家計を通じて影響を受けることがある |
| 不倫をした配偶者 | 責任を負う一人 | 払えば不倫相手に求償しうる。払わなければ求償される側になりうる |
| 不倫相手 | 責任を負うもう一人 | 払えば配偶者に求償しうる。払わなければ求償される側になりうる |
求償は、された側の請求とは別の、配偶者と不倫相手の間の話です。それでも、された側の示談や和解の中身に深く関わるため、請求する前に仕組みを知っておく意味があります。
民法の条文で見る求償権の位置
民法719条は「連帯して」責任を負うとだけ書き、二人の間の負担の分け方や求償については何も定めていません。求償の考え方の土台としてよく参照されるのは、連帯債務についての次の条文です。下の表は、2020年4月1日に施行された債権法の改正を反映した現在の条文で読んだものです。古い解説書にある「一人に生じた事情がほかの連帯債務者にも及ぶか」の説明は、改正前の条文を前提にしている場合があります。
| 条文 | 書かれていること(要旨) | 不倫の慰謝料に置きかえると |
|---|---|---|
| 436条 | 債権者は連帯債務者の一人に、または同時に・順に全員に、全部または一部の履行を請求できる | された側は、配偶者にも不倫相手にも請求できる |
| 441条 | 一部の例外を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に効力を生じない | 一人との間の約束が、もう一人に当然に及ぶとは限らない |
| 442条1項 | 連帯債務者の一人が弁済などで共同の免責を得たときは、その額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に各自の負担部分に応じた額を求償できる | 払った人は、もう一人に負担分を求めうる |
| 445条 | 連帯債務者の一人が債務を免除され、または時効が完成しても、他の連帯債務者はその一人に求償権を行使できる | された側が配偶者を許して請求しないことにしても、不倫相手から配偶者への求償は残りうる |
不倫の慰謝料のような共同不法行為の責任に、連帯債務の442条などがそのまま当てはまるかは、条文から直接は決まらず、解釈と裁判例の問題になります。そのため、この表は「求償を考えるときの枠組み」として読み、具体的な事件でどう扱われるかは弁護士に確かめてください。
445条の行は、された側にとって特に大事です。「夫は許すので、夫には請求しない」と決めても、不倫相手が慰謝料を払えば、不倫相手から夫への求償の問題は残りえます。これが、示談で求償権の放棄が話し合われる理由の一つです。
不倫で求償が問題になる4つの場面
求償の意味は、夫婦が離婚するかどうか、誰が払ったかで大きく変わります。
| 場面 | 慰謝料の流れ | 求償の流れ | された側から見た意味 |
|---|---|---|---|
| ① 離婚せず、不倫相手が払った | 不倫相手 → された側 | 不倫相手 → 配偶者に負担分を求める | 配偶者が払うお金は同じ家計から出るので、受け取りが実質的に減りうる |
| ② 離婚し、不倫相手が払った | 不倫相手 → された側 | 不倫相手 → 元配偶者に求める | 家計が別なので、された側の受け取りには直接響きにくい |
| ③ 配偶者だけが払った(離婚時など) | 配偶者 → された側 | 配偶者 → 不倫相手に負担分を求める | された側の受け取りには直接響きにくいが、元配偶者と不倫相手の争いが続く |
| ④ ダブル不倫 | 双方の家庭で請求し合う | それぞれの家庭で求償が起こりうる | 家計で見ると、受け取りと支払いが打ち消し合うことがある |
①を仮の数字で見ると、意味がはっきりします。不倫相手が示談で100万円を払い、その後の話し合いで「負担は半分ずつ」と決まったとします。不倫相手が配偶者に50万円を求償して配偶者が払えば、同じ家計に入ったのは差し引き50万円です(数字は説明のための仮のもので、筆者の計算)。示談の金額だけを見て判断すると、この差に後から気づくことになります。
④のダブル不倫は、双方の配偶者が請求し合う構図なので、求償まで含めると話がさらに入り組みます。構図の整理はダブル不倫の慰謝料の記事にまとめています。両方に請求するときの「二重取りにならない線」は配偶者と不倫相手の両方に慰謝料を請求できるかの記事で確かめてください。
負担割合はどう決まるか:話し合いと記録
求償で一番もめやすいのは、配偶者と不倫相手の負担を何対何にするかです。民法には不倫の場合の割合を定めた条文がないため、決まり方は次の2つです。
- 当事者の話し合い:配偶者と不倫相手の間で合意する。された側を交えた三者の示談で決めることもある。
- 裁判:話し合いがまとまらなければ、求償を求める側が訴えを起こし、裁判所が事情を見て判断する。
割合をめぐる話し合いでは、二人の関わり方を示す事実が材料になります。手元にある記録を、次の観点で時系列に並べておきます。
- 関係が始まったきっかけと、どちらから誘ったか
- 不倫相手が、相手が既婚だと知っていた時期
- 関係が続いた期間と、会っていた頻度
- 発覚した後のそれぞれの対応(謝罪、関係を終えたか)
どの事実がどの程度重く見られるかは事件ごとに違い、この記事で割合の目安を示すことはできません。「半分ずつが普通」という話をうのみにせず、記録をそろえて弁護士に見てもらうのが確かな進め方です。
求償を見越して、請求する側・請求された側が確かめること
求償は、示談や和解が成立した後に表に出てくることが多い問題です。合意の前に、それぞれの立場で次を確かめます。
請求する側(された側)
- 離婚するかどうか。離婚しないなら、場面①のように受け取りが実質的に減る可能性を計算に入れる
- 不倫相手との示談書に、求償権を放棄する条項を入れるかどうか
- 配偶者を許して請求しないことにした場合でも、不倫相手から配偶者への求償が残りうること(445条の考え方)
請求された側(不倫相手、または配偶者)
- 自分が払った後、もう一人に求償するつもりがあるか
- 示談書に「求償しない」と書かれていないか、書くよう求められていないか
- 清算の条項がどの範囲を対象にしているか(民法696条は、和解で認めた権利は後から反対の確かな証拠が出ても和解のとおりとする定め)
文例(弁護士に聞くこと):「離婚はしない予定です。不倫相手から慰謝料を受け取った後、夫に求償された場合に家計としていくら残るのか、求償権の放棄を条件にした場合と比べて説明してください。」
示談で求償権の放棄を求められた、あるいは求めたいときに確かめる点は、次の求償権の放棄の記事で扱います。裁判の途中で和解を考えているときは、求償の条項も含めて不倫の裁判で和解をすすめられたときの記事で確認点を整理しています。慰謝料全体の流れは不倫の慰謝料の全体像から読めます。
よくある質問
Q. 夫の不倫相手から慰謝料を受け取ったら、夫が不倫相手から請求されることはありますか?
不倫相手が慰謝料を払った後、夫の負担分を夫に求める「求償」をしてくることはありえます。離婚せずに同じ家計で暮らしているなら、受け取ったお金の一部が家計から出ていく形になります。これを避けたいときは、示談の段階で求償権を放棄する条項を入れるかどうかを話し合います。
Q. 配偶者だけに慰謝料を請求した場合も、求償は起きますか?
起こりえます。この場合は向きが逆になり、払った配偶者が不倫相手に負担分を求める形です。離婚して配偶者から慰謝料を受け取った後に、元配偶者が不倫相手に求償することもあるので、請求する側は自分の受け取りに影響しないかを弁護士と確かめておくと安心です。
Q. 求償の負担割合は、法律で半分ずつと決まっていますか?
民法には、不倫をした配偶者と不倫相手の負担を何対何にするという定めはありません。当事者の話し合いで決めるか、まとまらなければ裁判で争われます。関係の始まり方や続いた期間など、二人の関わり方を示す事実を記録しておくと、話し合いの材料になります。
出典・参考にした公的な情報
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。