不倫の示談書の書き方:入れる条項の例と作るときに気をつけること
不倫の示談書は、話し合いで決めた条件を、後で読み違えられない言葉で書き残す書面です。一般には、①当事者と不倫の事実の確認、②示談金の額と支払方法、③接触しない約束、④口外しない約束、⑤求償権の扱い、⑥この書面のほかに請求し合わないという清算の6つを柱にし、最後に日付と双方の署名を入れます。示談は成立すると後から蒸し返しにくいので(民法696条)、清算条項の範囲と金額の書き方には特に気をつけます。下の文例は一般的な形の例で、個別の事情に合わせた作成は弁護士に相談してください。
不倫の示談書に入れる条項の一覧
示談書は、決めた順ではなく、読む人が流れを追える順に並べます。最初に誰と誰の書面かを示し、事実の確認、お金、約束、清算と進めるのが基本の形です。
| 順 | 条項 | 書く内容 | 抜けると起きやすいこと |
|---|---|---|---|
| 1 | 当事者 | 氏名・住所(甲・乙・丙などの呼び方) | 誰が義務を負うのかが分からない |
| 2 | 事実の確認 | 不倫の期間と、関係があったことの確認 | 示談の対象の範囲で争いになる |
| 3 | 謝罪 | 謝罪の意思の表明 | 気持ちの面での区切りがつきにくい |
| 4 | 示談金 | 総額・支払日・振込先・手数料の負担 | 支払いの時期があいまいになる |
| 5 | 接触禁止 | 会わない・連絡しないの範囲と例外 | どこまでが違反か判断できない |
| 6 | 口外禁止 | 第三者に話さない約束 | 片方だけ縛られて不公平になる |
| 7 | 求償権 | 不倫相手が配偶者に負担を求めない | 離婚しない家計に負担が戻ってくる |
| 8 | 清算 | この書面のほかに債権債務がない確認 | 後から別の名目で請求される |
| 9 | 日付・署名 | 作成日、各自の自筆の署名と押印 | 本人が作った書面か争われる |
条項ごとの文例(不倫相手と示談する場合)
ここでは、不倫をされた配偶者を「甲」、不倫相手を「乙」とした一般的な形の例を示します。配偶者も当事者に加える三者の示談なら、配偶者を「丙」とします。
① 題名と当事者
文例:「示談書 甲(住所・氏名)と乙(住所・氏名)は、乙と甲の配偶者である丙との不貞行為に関し、本日、次のとおり示談した。」
② 事実の確認と謝罪
文例:「第1条 乙は、令和○年○月頃から令和○年○月頃までの間、丙が甲の配偶者であることを知りながら丙と不貞行為を行ったことを認め、甲に対し謝罪する。」
期間は分かる範囲で書きます。「知りながら」の部分は、相手が既婚と知らなかったと主張している場合に争いになりやすいところです。
③ 示談金と支払方法(一括払い)
文例:「第2条 乙は甲に対し、本件の解決金として金○○万円の支払義務があることを認め、これを令和○年○月○日限り、甲の指定する次の口座に振り込む方法により支払う。振込手数料は乙の負担とする。(銀行名・支店名・口座の種類・口座番号・名義)」
「支払義務があることを認め」と書くと、相手が債務を認めた記録になります。分割で払う場合の書き方は慰謝料の分割払いの決め方:受け取る側・払う側と不払いに備える書面に回数や期限の利益の条項の例と一緒にまとめています。
④ 接触しない約束
文例:「第3条 乙は、今後、正当な理由なく丙と面会し、又は電話、電子メール、SNSその他の方法により連絡をとらないことを約束する。ただし、業務上やむを得ない連絡はこの限りでない。」
違反したときの違約金を定めるかどうか、例外の範囲をどう書くかは、不倫の示談書の接触禁止条項とは?決め方と違反したときの扱いで詳しく扱っています。
⑤ 口外しない約束
文例:「第4条 甲及び乙は、本件の内容及び本示談書の内容を、正当な理由なく第三者に口外しない。」
口外禁止は双方に課す形にすることが多く、相手が受け入れやすくなる面もあります。弁護士や家族に相談することまで妨げないよう「正当な理由なく」と入れておきます。
⑥ 求償権の扱い
文例:「第5条 乙は、本示談金の支払いに関し、丙に対する求償権を行使しない。」
離婚せずに夫婦を続ける場合、不倫相手から配偶者に負担を求められると、家計としては受け取ったお金が戻っていく形になります。入れるかどうかの考え方は求償権の放棄とは?示談で放棄を求められたときに確かめることを見てください。
⑦ 清算条項と署名
文例:「第6条 甲及び乙は、本件に関し、本示談書に定めるもののほか、互いに何らの債権債務がないことを確認する。 本示談の成立を証するため本書2通を作成し、甲乙各自署名押印のうえ各1通を保有する。 令和○年○月○日 甲(署名・押印) 乙(署名・押印)」
清算条項は、公正証書の説明でも「記載した権利義務のほかには何らの債権債務がないことを当事者双方が確認する条項」とされています(日本公証人連合会「離婚」Q23)。「本件に関し」と範囲を限るかどうかで、終わらせる請求の幅が変わります。
作るときに気をつけること
条項の言葉そのものより、書き方のあいまいさが後のもめごとにつながります。署名の前に次の点を確かめます。
- 当事者を特定する:氏名だけでなく住所も書きます。旧姓や通称を使っている相手は、戸籍上の氏名で書きます。
- 金額と日付を数字で書く:「近いうちに」「できるだけ早く」ではなく、何月何日までにいくらと書きます。
- 行き過ぎた約束を入れない:極端に高い違約金や、引っ越しや退職を求めるなど生活を過度に縛る約束は、公序良俗に反して無効とされるおそれがあります(民法90条)。
- 違約金は「賠償額の予定」と扱われる:民法420条3項は、違約金は賠償額の予定と推定すると定めています。金額の決め方は個別の判断になるので、迷ったら弁護士に見てもらいます。
- 署名は自筆で、同じものを2通:各自が1通ずつ持ちます。ページが複数なら、つなぎ目に双方の印を押す「契印」で差し替えを防ぎます。
- その場で署名しない選択肢を持つ:相手から示談書の案を出されたときは、持ち帰って読み直す時間をとります。
請求された側として相手の作った示談書にサインする立場の人は、不倫の示談に請求された側が応じるとき:示談書で確かめる条項で、確かめる条項を受け取る側の目線で並べています。
自分で作るか、人に頼むか
条件に争いがなく、一括で支払いが済むなら、上の文例を土台に当事者で作ることもできます。書き方に不安があるときや、相手との条件の話し合いがまだ終わっていないときは、頼む相手を選びます。
| 頼む相手 | 頼めること | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 行政書士 | 合意した内容の示談書の作成(行政書士法1条の3) | 条件は決まっていて、書面だけ整えたい |
| 弁護士 | 交渉から示談書の作成まで | 条件で対立している、相手が弁護士を立てた |
| 公証人(公証役場) | 示談の内容の公正証書の作成 | 分割払いなど、支払いを確保したい |
公正証書にすると、金銭の支払いについて強制執行に服する旨の陳述を入れれば、支払いが止まったときに裁判を経ずに強制執行できる書面になります(民事執行法22条5号)。流れは不倫の示談書を公正証書にするメリットと公証役場での流れで、示談の話し合いの進め方は不倫の示談の進め方:話し合いで決める項目と合意の残し方で扱っています。
弁護士に頼むときは、示談書の作成だけを頼めるのか、交渉からの依頼になるのか、それぞれの費用を最初の相談で確かめると、見積もりを比べやすくなります。
よくある質問
Q. 示談書はパソコンで作ってもかまいませんか?
かまいません。示談は当事者が合意すれば成立し(民法695条)、手書きでなければならないという決まりはありません。ただ、後で「自分が署名したものではない」と争われないよう、署名は各自が自筆でし、日付を書き、印鑑も押しておくと証拠としての力が増します。
Q. 示談書と誓約書は何が違いますか?
誓約書は一方が約束を差し入れる形の書面で、示談書は当事者の双方が条件に合意して争いを終わらせる書面です。示談書には示談金の支払いや清算条項が入り、署名も双方がします。浮気をした配偶者に今後の約束を書いてもらうなら誓約書、慰謝料を含めて争いを終えるなら示談書と考えると分かりやすくなります。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第90条(公序良俗)・第420条(賠償額の予定)・第695条(和解)・第696条(和解の効力)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事執行法 第22条第5号(執行証書)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 行政書士法 第1条の3・第1条の4(権利義務に関する書類の作成)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 離婚(Q3・Q23 清算条項)(日本公証人連合会)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。