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不倫の裁判で和解をすすめられたら:判決との違いと考える点

この記事のもくじ
  1. 不倫の裁判の和解とは:判決との違いを先に比べる
  2. 和解をすすめられる時期と、裁判所が示す「和解案」
  3. 和解でだけ決められること:条項の例
  4. 和解に応じるか考えるチェックリスト
  5. 和解が成立した後にすること

不倫の慰謝料の裁判で裁判官から和解をすすめられたら、まず押さえたいのは、**和解は判決と同じ強さを持つ「話し合いでの決着」**だということです。和解の内容を記録した調書は確定判決と同一の効力を持ち(民事訴訟法267条)、払われなければ強制執行に進めます。違いは、判決のように控訴で争い直せないこと、そして判決では決められない約束(分割払い・接触しない約束・口外しない約束など)を条項に入れられることです。この記事では、和解と判決の違いを表で比べ、応じるかを考えるときの確認点を順に示します。

不倫の裁判の和解とは:判決との違いを先に比べる

和解は、民法695条のとおり、当事者が互いに譲歩して争いをやめることを約束するものです。裁判の途中で成立した和解は「訴訟上の和解」と呼ばれ、裁判所書記官が調書を作ると、その記録は確定判決と同一の効力を持ちます(民事訴訟法267条1項)。慰謝料の支払いを約束した和解調書は、民事執行法22条7号の「確定判決と同一の効力を有するもの」として債務名義になります。

判決と和解の違いを、慰謝料を請求した側から見ると次のようになります。

比べる点 判決 和解
結論を決める人 裁判官 当事者の合意(合意しなければ成立しない)
決められる中身 申し立てた請求の範囲だけ(民事訴訟法246条) 分割・期限・謝罪・接触しない約束・口外しない約束・清算なども入れられる
不服があるとき 送達を受けた日から2週間以内に控訴できる(285条) 控訴はない。成立した時点で終わる
終わるまでの時間 判決の後に控訴があれば、さらに続く 成立した日に終わる
支払いの見込み 相手に払うお金がなければ、判決があっても回収は難しい 相手が払える形(分割など)にして、自分から払う約束を取りつけられる
強制執行 確定判決などで可能 和解調書で可能(民事執行法22条7号)

「判決なら全部認められるかもしれないのに、なぜ和解をすすめられるのか」と感じる人は多いはずです。和解をすすめられたこと自体が、どちらが勝ちそうかを示すとは限りません。見込みは、記録を見た弁護士に聞きます。民事訴訟法89条1項は、裁判所は訴訟がどの段階にあっても和解を試みることができると定めており、すすめるのは裁判所の通常の手続の一つです。

和解をすすめられる時期と、裁判所が示す「和解案」

和解をすすめる時期について法律の決まりはなく、89条のとおり「どの段階でも」です。第1回の期日の直後に話が出ることも、尋問を終えて判決の直前に出ることもありえます。同じ条文の2項は、裁判所が相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、電話のように音声で同時に話せる方法で和解の期日を開けるとしています。遠方に住んでいて出向くのが負担なら、その事情を弁護士や裁判所に伝えます。和解案の示され方(金額だけか、条項の文案まで出るか)は事件によって違うので、案を受け取ったら書き写して手元に残します。

和解案を受け取ったときは、その場で答えず、次の質問を書き出して弁護士や裁判所に確かめると、判断の材料がそろいます。

  1. 案の金額は、何の名目(慰謝料・解決金など)の分か。内訳は書かれているか
  2. 支払いは一括か分割か。分割なら、払われなくなったときに強制執行できる条項になっているか(和解調書は確定判決と同一の効力を持つ。民事訴訟法267条)
  3. 「これ以外に請求しない」という清算条項は、どこまでの範囲か。ほかの相手への請求は残るか
  4. 接触をしない、口外しないといった約束は入っているか。破ったときの扱いは書かれているか
  5. 返事の期限はいつまでか。期限を延ばしてもらえるか
  6. 断ったら、このあとの審理(尋問・判決)はどう進むか。見通しを弁護士に聞けるか

和解は、判決と違い、双方が納得して初めて成立します。案に納得できない点があれば、条項の文案を直してもらう交渉もできます。

裁判所に出向けないときの方法も法律で用意されています。

  • 書面で受諾する和解(民事訴訟法264条):出頭が難しい当事者が、あらかじめ示された和解条項案を受諾する書面を出し、相手が期日に出頭して受諾すると、和解が成立したものとみなされる。
  • 裁判所が定める和解条項(265条):双方が書面で共同して申し立てると、裁判所が適当な和解条項を定め、告知によって成立したものとみなされる。
  • 離婚訴訟の中の和解:離婚そのものを決める和解は、人事訴訟法37条により、上の書面受諾や裁判所が定める条項の方法ではできません。電話会議で離婚の和解はできませんが、映像と音声で互いの様子が分かるウェブ会議の方法なら可能です。

和解でだけ決められること:条項の例

判決は、申し立てられた請求(たとえば「○円を支払え」)にしか答えません。和解なら、お金以外の約束も一緒に決められます。不倫の慰謝料の裁判で、和解条項として話し合われることの多い項目は次のとおりです。

  1. 支払う額と方法:一括か分割か、振込先、支払日。
  2. 分割を怠ったとき:何回分遅れたら残りを一度に払うか(期限の利益の喪失)と、遅延損害金。
  3. 謝罪:謝罪の言葉を条項に入れるか、入れるならどんな文か。
  4. 接触しない約束:配偶者と連絡を取らない・会わない約束と、破ったときの違約金。
  5. 口外しない約束:お互いに、この件を職場・SNS・知人に話さない約束。
  6. 求償の扱い:不倫相手が払った後、配偶者に負担分を求めるかどうか(求償権の放棄)。
  7. 清算の条項:この和解に定めるほか、互いに何も請求しないという確認。
  8. 訴訟費用:各自の負担とする、など。

このうち2〜5は、和解でなければ決めにくい内容です。ただし、お金の支払い以外の約束(接触しない・口外しない)は、破られたときに強制執行でそのまま止めることが難しい性質があります。違約金を定めるかどうか、定めるならどんな書き方にするかは、弁護士と条項の文言まで確かめます。6の求償は、離婚しない夫婦にとって金額の意味を左右する項目です。仕組みは不倫の求償権とは何かの記事、示談で放棄を求められたときの確認点は求償権の放棄の記事にまとめています。

和解条項の確認表:請求した側が見る点
条項 確かめること 決めないと起きやすいこと
金額・支払日 一括か分割か、最終の支払日 支払いが遅れても催促しかできない状態になる
期限の利益の喪失 何回分の遅れで残額を一度に請求できるか 遅れのたびに少額ずつしか求められない
接触しない約束 対象(配偶者・家族)、方法(電話・SNS・面会)、違約金 約束の範囲をめぐって再び争いになる
口外しない約束 双方に課すか、例外(弁護士・家族への相談)を置くか 自分の側が話したことで責任を問われる
求償 放棄の有無と範囲 払われた慰謝料が求償で家計から出ていく
清算 何についての清算か(この不倫の件か、すべてか) 別の請求まで消えてしまう、または残ってしまう

和解に応じるか考えるチェックリスト

和解に応じるかどうかの答えは、金額の大小だけでは決まりません。次の点を、弁護士と話す前に自分の言葉で書き出しておくと、短い打ち合わせでも判断がしやすくなります。

  • 判決になった場合の見込みを弁護士から聞いたか(認められそうな点・争われている点)
  • 相手に払う力があるか。判決で高い額が出ても、回収できなければ受け取れない
  • 分割なら、最後の支払日まで相手とつながりが続くことを受け入れられるか
  • 判決の後に控訴されたとき、さらに時間と費用をかけられるか
  • お金以外に、謝罪・接触しない約束・口外しない約束のどれが自分に必要か
  • 離婚するかどうかが決まっているか(求償の条項の意味が変わる)
  • 気持ちの区切りとして、裁判所の判断そのものを受けたいのか、早く終えたいのか

迷うときは、和解案のうち「受け入れられる点」と「受け入れられない点」を分けて弁護士に伝えます。

文例(弁護士への伝え方):「金額は案のとおりでかまいません。ただ、分割の回数を減らすことと、遅れたときに残りを一括で請求できる条項を入れることが条件です。接触しない約束も入れたいです。」

弁護士に依頼せずに本人で裁判をしている場合は、和解の期日の前に、法テラスや弁護士会の法律相談で和解案を見てもらう方法があります。相談の窓口は弁護士に相談する前の準備で、持っていく資料と一緒に整理しています。

和解が成立した後にすること

和解が成立したら、調書の写し(電子調書の場合は送達されたもの)を受け取り、条項どおりに進んでいるかを記録します。

  1. 調書の内容を読み直す:金額、支払日、振込先、清算の範囲が話し合ったとおりかを確かめる。
  2. 支払いを記録する:入金のたびに日付と金額を表にする。
  3. 遅れたら早めに動く:期限の利益を失う条件に当たったら、弁護士に連絡する。払われない場合の強制執行は、決まった慰謝料が支払われないときの記事で必要な書面と流れを確かめられます。
  4. 約束を自分も守る:口外しない約束がある場合、SNSや職場で話すと、自分が約束違反を問われるおそれがあります。

裁判の全体の流れ(訴状・期日・判決)を知りたい人は不倫の裁判で訴えるときの流れを、どの裁判所で手続が進むのかが分からない人は慰謝料請求の管轄の記事を先に読んでください。慰謝料の請求全体の考え方は不倫の慰謝料の全体像にあります。この記事は和解という手続の一般的な仕組みの説明で、あなたの事件で和解に応じるべきかどうかは、記録を見た弁護士と決めてください。

よくある質問

Q. 和解をすすめられて断ったら、裁判で不利になりますか?

和解は当事者が互いに譲り合って争いをやめる約束なので、合意しなければ成立しません。断れば、裁判はそのまま判決に向けて進みます。和解案の中身のどこが受け入れられないのかを弁護士に具体的に伝えると、条件を変えた案が出ることもあります。

Q. 和解した後で、もっと請求できる事実が分かったらどうなりますか?

民法696条は、和解で権利を認めた(または認めなかった)後に、反対の確かな証拠が出ても、権利は和解のとおりに移転・消滅したものとすると定めています。この条文が個々の事情にどう当たるかは弁護士の判断になりますが、和解条項に「本件に関し、この条項に定めるほか債権債務がない」という清算の条項が入ると、その範囲で蒸し返しはしにくくなります。清算の範囲が何についてかを、成立の前に確かめます。

Q. 和解で決めたお金が払われなかったら、また裁判をするのですか?

和解を記録した調書は確定判決と同じ効力を持ち、民事執行法22条7号の債務名義に当たるので、改めて訴えなくても強制執行の申立てに進めます。差押えの流れは、決まった慰謝料が支払われないときの記事で確かめてください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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