浮気の証拠集めで違法になりうること:スマホ・GPS・侵入の線引き
この記事のもくじ
浮気の証拠を自分で集めるときに禁じる法律がある行為は、大きく7つあります。相手のIDとパスワードでアカウントに入ること、GPS機器や紛失防止タグで無断で位置を取ること、相手のスマホに監視アプリを入れること、他人の家に入ること、封をした手紙を開けること、性行為の場面をひそかに撮ることや会話を盗聴して漏らすこと、そして集めたものを晒したり脅しに使ったりすることです。罪になるかどうかは目的・承諾・やり方などの事情で決まり、最後は捜査機関と裁判所が判断します。迷う方法は、実行する前に弁護士に確かめてください。
浮気の証拠集めで禁じる法律がある行為の早見表
まず全体を一枚で見ます。左の行為をしたら罪になる、と決めつける表ではありません。「この行為にはこの条文がある」という地図として使い、右端の代わりの方法から選ぶのがこの表の役目です。
| 行為 | 関係する条文 | 法定刑(条文の上限) | 代わりの方法 |
|---|---|---|---|
| 相手のIDとパスワードで、LINE・メール・クラウドに入る | 不正アクセス禁止法3条(11条) | 3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金 | 自分の目で見たことを日時つきで記録する |
| ログインに使うためにパスワードを盗み見て控える | 同法4条(12条1号) | 1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 | 同上 |
| 車や鞄にGPS機器・紛失防止タグを付け、位置を取る | ストーカー規制法2条3項・3条(反復なら18条) | 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(ストーカー行為) | 帰宅時刻と本人の説明を並べて記録する |
| 相手のスマホに、位置や通話を送るアプリを無断で入れる | 刑法168条の2、ストーカー規制法2条3項 | 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(168条の2) | 位置の共有は合意して始める |
| 不倫相手の家に入る、帰るよう言われても居座る | 刑法130条 | 3年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金 | 調査は探偵業者、話し合いは弁護士へ |
| 封をしてある手紙を開ける | 刑法133条(親告罪) | 1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金 | 封筒の外側を撮って記録する |
| 性行為の場面をひそかに撮る | 性的姿態撮影等処罰法2条 | 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金 | 撮らない。出入りの記録にとどめる |
| 無線の通信を傍受して、内容を人に漏らす・使う | 電波法59条・109条 | 1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 | 自分が参加する会話だけを記録する |
| 不倫を職場やSNSに知らせる、「ばらす」と迫る | 刑法230条・222条・249条 | 名誉毀損は3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 | 弁護士を通じて請求する |
罰則の表記は、2025年6月1日からの「拘禁刑」に合わせています。古い解説では「懲役」と書かれていることがありますが、今の条文は拘禁刑です。
スマホとアカウント:ログインと監視アプリが分かれ目
不正アクセス禁止法が禁じる「不正アクセス行為」は、電気通信回線を通じて、他人のID・パスワードなどの「識別符号」を入力し、制限された利用をできる状態にすることです(2条4項1号、3条)。典型は、相手のLINE・Gmail・iCloud・SNSに、自分のスマホやパソコンから相手の情報でログインすることです。本人の承諾があれば除かれますが、夫婦を除く定めはありません。
ログインのためにパスワードを盗み見てメモする、聞き出す、といった行為も、ログインに使う目的なら「識別符号の不正取得」として4条で禁じられています。つまりログインする前の段階でも問題になりうるということです。
一方、警察庁の「不正アクセス行為の禁止等に関する法律の解説」は、ネットワークにつながったコンピュータでも、その機械のキーボードを直接操作して無断で使う行為は「電気通信回線を通じて」行うものではないため、不正アクセス行為には当たらない、と説明しています。置いてあるスマホを手に取って見ることと、別の端末からアカウントに入ることは、この法律では扱いが分かれます。ただし、罪にならないことと問題がないことは別です。勝手に見たことはプライバシーの侵害として損害賠償を求められる理由になりえます(民法709条・710条)。場面ごとの細かい区別は配偶者のスマホで浮気のLINEを見るのは問題か:ロック解除とログインの違いで整理しています。
もう一つの線が監視アプリです。刑法168条の2は、使う人の意図に反する動作をさせるプログラムを、正当な理由なく人のコンピュータで実行させることを罰しています。位置・メッセージ・通話を相手に知られずに送るアプリを無断で入れることは、これに当たりうるうえ、位置を取る部分はストーカー規制法の問題にもなります。
位置情報:GPS機器・紛失防止タグ・位置情報アプリ
ストーカー規制法は、恋愛感情その他の好意の感情、又はそれが満たされなかった怨恨の感情を満たす目的で、相手の承諾を得ずに、GPS機器などの位置情報を取ること、相手の持ち物にそうした機器を取り付けることを「位置情報無承諾取得等」として規制しています(2条3項)。紛失防止タグ(周りの機器を使って位置を知らせる、いわゆるスマートタグ)も、2025年12月30日施行の改正で対象に加わりました。
この法律には目的の要件があるため、浮気を確かめたい配偶者の行為がいつも当てはまるとは言えません。それでも「配偶者だから対象外」と読める条文もありません。相手に不安を覚えさせ、さらに繰り返すおそれがあれば、1回の行為でも警告(4条)や禁止命令(5条)の対象になりえ、反復すれば「ストーカー行為」として処罰の対象になります(18条)。2025年12月30日からは、相手の申出がなくても警察が職権で警告できるようになっています。
配偶者からの暴力で保護命令が出た場合、その相手にはGPS機器や紛失防止タグによる無断の位置取得・取り付けも禁じられます(DV防止法10条2項)。機器ごとの考え方は浮気調査にGPSは使えるか:位置情報の無断取得を禁じる法律と代わりの方法と浮気調査に紛失防止タグを使うのが危うい理由に分けました。合意して使う共有アプリの扱いは位置情報の共有アプリと浮気で扱います。
家・手紙・撮影・盗聴:立ち入りと「ひそかに」が線になる
体を動かして集める方法にも、それぞれ条文があります。
- 住居への立ち入り(刑法130条):正当な理由なく人の住居に入ること、帰るよう求められても出ていかないこと。不倫相手の部屋に乗り込む、カメラや盗聴器を置くために入る場面がこれに関わります。未遂も罰せられます(132条)。
- 手紙の開封(刑法133条):正当な理由なく、封をしてある信書を開けること。告訴がなければ起訴されない親告罪です(135条)。配偶者あての郵便でも、夫婦を除く定めはありません。詳しくは配偶者あての手紙を開けるのは問題かへ。
- 性的な場面の撮影(性的姿態撮影等処罰法2条):正当な理由なく、ひそかに、性交等がされている間の姿などを撮影すること。寝室に隠しカメラを置く方法は、この線に近づきます。ホテルに出入りする姿の記録とは別の話です。撮った映像を人に渡すと3条の「提供」の問題も出ます。
- 盗聴(電波法59条など):禁じられているのは、特定の相手に向けた無線の通信を傍受して、その内容を漏らすこと・使うことです。設置のための立ち入りなど、ほかの法律も絡みます。自分が参加する会話の録音は、これとは分けて考えます。違いは浮気調査に盗聴器を使ってよいか:録音と盗聴の違いにまとめました。
集めた後に加害側にならないための線
証拠が手に入ったあとにも、越えると立場が逆になる線があります。
- 晒す・知らせる:公然と事実を示して人の名誉を傷つけると、その事実が本当でも名誉毀損になりえます(刑法230条。「事実の有無にかかわらず」と書かれています)。不倫相手の職場への連絡やSNSへの投稿がこれに当たります。
- 「払わないとばらす」と迫る:名誉に害を加えると告げて脅すことは脅迫(222条)、それでお金を払わせれば恐喝(249条)の問題になりえます。慰謝料を求めること自体は正当でも、言い方しだいで別の責任が生じます。
- 性的な画像を広める:撮影された人が分かる形で、私事性的画像を不特定・多数に出すことは、私事性的画像記録提供等被害防止法3条で罰せられます。
- 相手の物を持ち出す:相手のスマホや書類を無断で持ち出すと、窃盗(235条)の問題になりえます。配偶者の間では刑が免除される定め(244条)がありますが、「罪にならない」という定めではなく、手伝った友人や業者には及びません。持ち出さず、写真で残す方が安全です。
刑事の責任とは別に、プライバシーや名誉を傷つけた側は、損害賠償を求められることがあります(民法709条・710条)。慰謝料を求める側だったはずが、求められる側にもなる、という構図です。
やる前に確かめる順番と、自分で集めない選択肢
迷う方法を思いついたら、次の順番で止まって考えます。
- その方法は、相手の承諾なしに相手のアカウント・持ち物・部屋・郵便に触れるか。 触れるなら、上の早見表のどれかに近い行為です。
- 自分の目と、自分あての連絡と、家族で共有している物だけで足りないか。 日時つきの記録、自分のスマホで撮った写真、家計の記録で残せる範囲は浮気の証拠を自分で集める方法:法律に触れない範囲の手順にまとめています。
- 相手に暴力や強い支配があるか。 あるなら、証拠集めより安全を先にします。暴力がある相手の浮気の証拠集めを先に読んでください。
- それでも必要なら、実行前に弁護士に確かめる。 「何を、どこで、どうやって集めようとしているか」をメモにして相談すると、話が早く進みます。
探偵業者に頼む場合も、線は変わりません。探偵業法6条は、探偵業の届出をしても、ほかの法律で禁じられた行為ができるようになるわけではないと定めています。探偵ができるのは、尾行・張込み・聞込みなどの方法で行動を調べ、結果を報告することです。何を頼めて何を頼めないかは探偵ができること・できないことで確かめてください。
何が証拠として意味を持つかの全体像は浮気の証拠になるもの一覧:強い証拠・弱い証拠と自分で集めてよい範囲で、集めたものの残し方は浮気の証拠の保管方法で扱っています。
よくある質問
Q. 夫婦なら、相手のアカウントにログインしても罪にならないのでは?
不正アクセス禁止法には、夫婦や家族を除く定めがありません。除かれるのは、アクセス管理者や、そのIDの持ち主本人の承諾がある場合です。夫婦であることは、承諾があったことの代わりにはならない、と考えておくのが安全です。
Q. 違法なやり方で集めた証拠は、裁判で使えなくなりますか?
民事の裁判で証拠として扱われるかどうかを決める条文はなく、集め方や内容などの事情を見て判断されます。使える・使えないを自分で決めず、集め方を含めて弁護士に話し、どう使うかを相談してください。集め方そのものが責任を問われる理由になる点にも注意が要ります。
Q. すでにやってしまった場合はどうすればよいですか?
まず、同じことを繰り返さないでください。付けた機器や入れたアプリをどうするか、手に入れたデータをどう扱うかは、自分の判断で動かすと状況を悪くすることがあります。何をいつしたかをメモにまとめ、そのメモを持って弁護士に相談するのが順番です。
出典・参考にした公的な情報
- 不正アクセス行為の禁止等に関する法律 第2条・第3条・第4条・第11条・第12条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 不正アクセス行為の禁止等に関する法律の解説(警察庁)(警察庁)
- ストーカー行為等の規制等に関する法律 第2条・第3条・第4条・第5条・第18条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- ストーカー規制法が改正されました(警察庁)(警察庁)
- 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律 第10条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 刑法 第130条・第133条・第135条・第168条の2・第222条・第230条・第235条・第244条・第249条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律 第2条・第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律 第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 電波法 第59条・第109条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 探偵業の業務の適正化に関する法律 第6条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第709条・第710条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。