財産分与請求調停の流れ:離婚後に申し立てる方法と費用
離婚した後に財産分与を求めるときは、家庭裁判所に財産分与請求調停を申し立てるのが基本の方法です。申立先は相手方の住所地の家庭裁判所(または双方が合意した家庭裁判所)、費用は収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手、期限は離婚から5年(2026年3月31日以前に離婚した場合は2年)です。この記事は、申立ての準備から調停の終わり方までを手順に分けて説明します。
申し立てる前に:期限と対象の確認
最初に確かめるのは、期限が残っているかどうかです。民法768条2項は、家庭裁判所に財産分与を求められるのは離婚の時から5年以内とし、2026年4月1日施行の改正で2年から延びました。裁判所の案内は、2026年4月1日より前に離婚した場合は経過措置で2年のままとしています。
| 離婚した日 | 申立てができる期間 | 2026年10月24日時点の見方(筆者の計算) |
|---|---|---|
| 2026年4月1日以後 | 5年以内 | 期限はまだ先 |
| 2024年10月24日〜2026年3月31日 | 2年以内(離婚した日の翌日から起算) | 期間内。2024年10月24日に離婚した場合は、2026年10月24日が最後の日。早めに動く |
| 2024年10月23日以前 | 2年以内 | 2年が過ぎている。それでも事情がある場合は、申立先の裁判所に確かめる |
期限を過ぎそうなときは、準備が完全にそろうのを待たずに申し立てる方が安全です。資料は申立て後に追加できます。
申立人になれるのは離婚した元夫または元妻で、浮気をした側・された側の区別はありません。財産分与の考慮事項に有責性は書かれていないので、浮気の事情は別の請求である慰謝料の話に分けて考えます。分与の割合や対象は財産分与の対象になる財産・ならない財産の早見表で確認できます。
申立ての手順:準備から提出まで
- 財産の一覧を作る。 離婚時点の預貯金、不動産、保険、有価証券、車、退職金の見込み、借入を、名義を問わず書き出します。
- 資料を集める。 裁判所のページが挙げる標準的な書類は、離婚時の戸籍謄本(全部事項証明書)、不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金通帳の写しまたは残高証明書などです。
- 書式を入手して記入する。 申立書とその写し1通、事情説明書(財産分与)、進行に関する照会回答書、送達場所等届出書を使います。書式は裁判所のページから入手できます。
- 費用を用意する。 収入印紙1,200円分と、連絡用の郵便切手です。切手の組み合わせは裁判所ごとに違うので、申立先の家庭裁判所のページで確かめます。郵便料は保管金として電子納付もできます。
- 相手の住所地の家庭裁判所に提出する。 家事事件手続法245条1項は、調停事件の管轄を「相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所」としています。遠方のときは、ウェブ会議が使えるかを提出先に聞きます。
申立書の写しは、原則として相手方に送られます(家事事件手続法256条)。相手に知られたくない情報(避難先の住所など)は、書き方を提出先の窓口に相談してください。
調停の進み方:当日から終わり方まで
調停は、裁判官と調停委員が双方から別々に話を聞き、合意を探す手続です。財産分与の調停で、よく話題になる点は次のとおりです。
- 対象財産の範囲(どこまでが婚姻中に築いた財産か)
- 各財産の評価額(不動産はいくらか、保険の解約返戻金はいくらか)
- 分け方(現金で払うか、不動産の名義を移すか)
- 分与の割合(寄与の程度。民法768条3項は、寄与の程度が異なることが明らかでないときは相等しいとします)
当日に調停委員へ伝えるときは、感情の説明より、数字と資料を先に出す方が話が進みます。
話し方の例:「離婚時点の預貯金は、私名義がこの二口座、相手名義が分かっているのは三口座です。相手名義の残高は離婚前の通帳の写しで確認できます」
家庭裁判所は、必要があれば当事者に財産の状況を開示するよう命じることができます(家事事件手続法152条の2。財産分与の調停・審判にも準用)。
終わり方は三つです。
| 終わり方 | その後 |
|---|---|
| 調停成立 | 調書に記載され、確定した審判と同一の効力を持つ(家事事件手続法268条1項。財産分与のような別表第二の事項の場合)。支払いや名義変更を進める |
| 調停不成立 | 審判手続に自動的に移る(同法272条4項)。裁判官が一切の事情を考慮して判断する |
| 取下げ | 申立人が取り下げる。期限が残っているかを確認してから判断する |
司法統計年報(家事編)令和7年(2025年)の第33表では、離婚後の財産分与事件の既済は1,932件で、調停成立が1,058件、認容が267件、取下げが402件でした。筆者の計算では、調停成立が54.8%、取下げが20.8%です。
弁護士に頼むかどうかの目安
調停は、本人だけで申し立てることもできます。対象財産が少なく、資料がそろっている場合は、本人で進める人もいます。一方、不動産が絡む場合や、相手の財産が分からない場合は、早めに弁護士に相談する理由が増えます。相談先を探すなら、法テラス(日本司法支援センター)のサポートダイヤル 0570-078374(平日9時〜21時、土曜9時〜17時)が入口になります。
財産の調べ方や分け方の組み立てを任せたいときは、弁護士に頼む選択肢があります。選ぶときは、財産分与の取扱いの経験と、費用の内訳(着手金・報酬金・実費)を確かめます。
不動産が対象のときの考え方は財産分与で家はどうする?売る・住み続ける・名義を移す3つの選択肢、離婚時に「しない」と合意していた場合の注意は財産分与をしない・放棄する合意の注意で扱います。財産分与の全体像は財産分与とは?対象・割合・請求の期限の基本にあります。
よくある質問
Q. 離婚の前に財産分与の調停を申し立てることはできますか?
離婚前なら、財産分与の請求調停ではなく、夫婦関係調整調停(離婚)の中で財産分与も一緒に話し合うのが裁判所の案内です。離婚後に財産分与だけを話し合うときに使うのが、この記事の財産分与請求調停です。離婚調停の流れは[離婚調停の流れ:申立てから成立・不成立まで](/rikon-chotei/)にあります。
Q. 調停が不成立だったら、財産分与は諦めるしかありませんか?
財産分与の調停が不成立になると、調停を申し立てた時に審判の申立てがあったものとみなされ、審判の手続に移ります(家事事件手続法272条4項)。自分で新たに訴えを起こす必要はありません。審判では、裁判官が一切の事情を考慮して判断します。
Q. 相手が通帳や財産を見せないときは、どうなりますか?
2026年4月から、財産分与の調停・審判で、家庭裁判所が当事者に財産の状況の開示を命じられるようになりました。正当な理由なく開示しなかったり、虚偽の開示をしたりすると、10万円以下の過料の定めがあります。詳しくは[財産分与で隠し財産が疑われるとき](/bunyo-kakushi/)で説明しています。
出典・参考にした公的な情報
- 財産分与請求調停(裁判所)
- 家事事件手続法 第245条・第256条・第258条・第268条・第272条・第152条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第768条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後の子の養育に関する見直し)について(法務省)
- 司法統計年報(家事編)令和7年 第33表(裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。