財産分与で家はどうする?売る・住み続ける・名義を移す3つの選択肢
離婚で家をどうするかは、売る、どちらかが住み続ける、名義を移すのどれかに分かれます。選ぶ手がかりは、住宅ローンが残っているか、名義が誰か、子どもがどこで暮らすかの三つです。財産分与で家を扱うときは、民法768条3項が挙げる「婚姻中に取得・維持した財産の額」と各自の寄与の程度などを見ながら、この三つの選択肢を比べます。この記事は選び方の入口で、細かい手順は個別の記事に渡します。
3つの選択肢を一枚で比べる
先に、三つの選択肢を比べた表を置きます。「住み続ける」と「名義を移す」は重なることが多いので、分けて書きます。
| 項目 | 売る | 住み続ける(名義は変えない) | 名義を移す |
|---|---|---|---|
| ローンが残っている場合 | 売却代金で返す。足りないときは不足分の手当てが要る | 名義人が払い続けるのが基本。払う人と住む人が違うこともある | 名義だけ変えると、金融機関の承諾が要ることが多い |
| 名義 | 買主に移る | そのまま | 受け取る側に変える(登記) |
| 子ども | 転居・転校の可能性が出る | 住環境を保ちやすい | 受け取る側が子と住む形が多い |
| お金の分け方 | 代金からローン・費用を引いて分ける | 住む側が持ち分に見合う額を払う、または使用期間を取り決める | 受け取る側が相手に代償金を払う形がある |
| 税金 | 売主に譲渡所得の課税が問題になる | 名義が動かなければ課税の場面は少ない | 渡す側に譲渡所得の課税が問題になる |
| 先に確かめる先 | 不動産会社、金融機関 | 金融機関、弁護士 | 金融機関、法務局、税務署 |
表は一般的な整理で、あなたの家に当てはまる結論ではありません。同じ「名義を移す」でも、ローンの有無で話はまったく変わります。
売る:ローンが残っても、売却代金で整理する道
家を売ると、売却代金から住宅ローンの残りと売却にかかる費用を引いて、残った額を夫婦で分ける形になります。名義や子どもの事情に左右されにくく、後に残る関係が少ないのが特徴です。一方、売却額がローン残高を下回るオーバーローンの場合は、不足分を預貯金などで手当てする必要が出ます。この場合の整理は住宅ローンが残る家の財産分与:オーバーローンと名義・連帯保証の整理で扱います。売却の進め方は離婚で家を売却するときの流れにあります。
税金の面では、国税庁のタックスアンサーNo.3114は、財産分与を土地や建物で行うと渡した側に譲渡所得の課税が問題になる、と説明しています。売った場合の特例の使い方は、税務署や税理士に確かめます。
住み続ける:名義とローンの支払いを別にして考える
一方が住み続けるとき、よくあるのは「名義は夫のままで、妻と子が住み、夫がローンを払う」形です。この形は、払う人が払えなくなると住む人が家を失うおそれがあります。日本公証人連合会も、夫がローン残額の支払いを約束しても、支払いが止まれば、妻は自分で返済するか家を失う危険がある、と説明しています。
住み続ける場合は、次の項目を書面に残します。
- 誰がローンを払うか、いつまで払うか
- 住む人が払う費用(固定資産税、修繕費、管理費)
- 住む期間(子が成人するまで、など)と、期間が終わった後の扱い(売る、名義を移す)
- 払う人が払えなくなったとき、再婚したとき、亡くなったときの扱い
書き方と注意点は離婚後も今の家に住み続けるには:名義・ローン・使用の取り決めに詳しくあります。
名義を移す:銀行の承諾と登記を忘れない
ローンが残る家の名義を変えるとき、多くの銀行のローン約款では、無断で名義を変えると残りを一括で返すよう求められる、と日本公証人連合会は説明しています。名義の変更には事前に銀行の承諾が必要で、承諾が得られないことも多いとされています。同じページには、ローン完済後に所有権を移す約束をして、離婚時に所有権移転請求権の仮登記をしておく方法も紹介されています。
税金については、国税庁のタックスアンサーNo.4414が、離婚で財産をもらっても原則として贈与税はかからないが、多すぎる部分などには課税される、と説明しています。家を受け取る側の登録免許税や不動産取得税、渡す側の譲渡所得は、別々に確かめます。税の判断は税務署や税理士の仕事です。
決める前に集める資料
どの選択肢でも、次の資料がないと話が進みません。
- 不動産登記事項証明書(名義・抵当権の記載を見る)
- 住宅ローンの返済予定表と、現時点の残高証明書
- 連帯保証人や連帯債務者の有無が分かる契約書
- 固定資産評価証明書または固定資産税の納税通知書
- 不動産会社の査定書(複数社の比較が望ましい)
査定は売ると決めていなくても、家の価値を知る材料になります。売る場合の流れは離婚で家を売るときの流れ:査定・売却の時期・代金の分け方で確かめられます。
暴力や脅しがあって家を離れたい場合は、家の話より先に、配偶者暴力相談支援センターなどの窓口が必要です。相談できる窓口と番号は、正本の浮気・不倫の相談先一覧で確かめられます。全体の流れは浮気が原因の離婚とお金:婚姻費用・養育費・財産分与・慰謝料の全体像で確認できます。
よくある質問
Q. 家の名義が私になっていれば、家は私のものとして分けなくてよいですか?
財産分与の対象かどうかは、名義ではなく、婚姻中に夫婦で築いた財産かどうかを中心に見ます。民法768条3項は、婚姻中に取得・維持した財産の額とそれぞれの寄与の程度などを考慮するとしています。名義が一方でも、分与の話に入ることがあります。対象の考え方は[財産分与の対象になる財産・ならない財産の早見表](/bunyo-taishou/)で確かめられます。
Q. 家を売るか住み続けるかで夫婦の意見が割れたら、どうなりますか?
話し合いで決まらなければ、離婚前なら離婚調停の中で、離婚後なら財産分与請求調停で話し合います。調停でも合意できない場合は、財産分与の審判に移り、裁判官が判断します。手続の流れは[財産分与請求調停の流れ:離婚後に申し立てる方法と費用](/bunyo-chotei/)にあります。
Q. 子どもの学区を変えたくないとき、家は住み続けるしかないのですか?
学区は住み続ける理由の一つですが、売却して近くに住み替える選択もあります。家を残すかどうかは、ローンの支払い、名義、数年後の見通しの三つを合わせて決めます。住み続ける場合の取り決めは[離婚後も今の家に住み続けるには](/rikon-ie-sumitsuzukeru/)で整理しています。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第768条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 離婚の公正証書(住宅ローンが残る家のQ&A)(日本公証人連合会)
- No.3114 離婚して土地建物などを渡したとき(国税庁)
- No.4414 離婚して財産をもらったとき(国税庁)
- 財産分与請求調停(裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。