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財産分与で隠し財産が疑われるとき:開示を求める手続きと調べ方

この記事のもくじ
  1. 手続と調べ方の早見表
  2. 調停・審判で使える手続:情報開示命令と調査の嘱託
  3. 自分でできる調べ方と、越えてはいけない線
  4. 疑いを資料で確かめる順番
  5. 調停までの準備と、次に読む記事

財産分与で相手が財産を隠しているのではないかと疑うとき、使える手続は、家庭裁判所に財産の状況の開示を命じてもらう方法と、裁判所が銀行などに報告を求める方法が中心です。2026年4月1日の民法等の改正(令和6年法律第33号)にあわせて、家事事件手続法に財産分与の事件で財産の状況の開示を命じる規定(152条の2)が加わりました。ただし、これらは「見つかる」ことを保証する手続ではなく、疑いを資料で確かめるための道筋です。

この記事では、調停・審判で使える手続と、自分で集められる資料の範囲、越えてはいけない線を順に説明します。弁護士に依頼するかどうかの判断は財産分与を弁護士に頼むとき:費用と頼んだ方がよい場合で扱います。

手続と調べ方の早見表

早見表:隠し財産が疑われるときの手段と限界
手段 使う人 根拠 できること 限界
自分で資料を集める 本人 自分の口座・共同名義・自宅の書類 取引履歴、家計の記録、登記事項証明書の取得 相手名義の口座の中身には届かない
調停での資料提出の求め 調停委員会(裁判所) 裁判所の案内 財産の範囲を双方に確認し、必要な資料の提出を求める 任意の提出が前提で、出さない相手に強制する力は弱い。出させる手段は次の開示命令
財産の状況の開示命令 家庭裁判所 家事事件手続法152条の2第2項、258条3項(2026年4月から) 当事者に財産の状況を開示するよう命じる 当事者本人の申告が出発点
調査の嘱託・報告の請求 家庭裁判所 家事事件手続法62条、258条1項 銀行・信託会社・使用者などに預金や収入などの報告を求める 行うかどうかは裁判所が必要と認めるとき
弁護士会照会 受任している弁護士 弁護士法23条の2 弁護士会を通じて公私の団体に報告を求める 弁護士会が適当でないと認めれば拒絶される

調停・審判で使える手続:情報開示命令と調査の嘱託

財産の状況の開示を命じる(2026年4月から)

家事事件手続法152条の2第2項は、財産の分与に関する審判事件で、家庭裁判所が必要があると認めるときに、申立てまたは職権で、当事者に財産の状況に関する情報の開示を命じられるとしています。258条3項により、この規定は財産分与の調停事件と、離婚の調停事件にも準用されます。命令を受けた当事者が、正当な理由なく開示しない、または虚偽の情報を開示したときは、10万円以下の過料に処せられると同条に定められています。

読み方の注意が二つあります。一つめは、命令の相手は当事者本人で、銀行や勤務先ではないことです。二つめは、2026年4月1日以後の施行で、それ以前に申し立てた事件にどう適用されるかは、申立先の家庭裁判所で確かめることです。

銀行や勤務先に報告を求める(調査の嘱託)

家事事件手続法62条は、家庭裁判所が必要な調査を官庁や適当と認める者に嘱託し、または銀行、信託会社、関係人の使用者などに、関係人の預金、信託財産、収入などについて必要な報告を求められるとしています。258条1項により、家事調停の手続にも準用されます。申立人が望めば行われる制度ではなく、裁判所が必要と判断したときに動くものです。

民事執行法の「財産開示」は、決まった後の手続

インターネット上では、民事執行法の財産開示手続や第三者からの情報取得手続が「隠し財産の調査方法」として紹介されることがあります。しかし、民事執行法の第三者からの情報取得手続(204条以下)は、強制執行の申立てに必要な情報を得るための制度で、手続を使えるのは、執行力のある債務名義の正本を持つ債権者など、条文が定める場合に限られます。財産分与の額を決める前の調査には使えません。分与の取り決めをした後に払われないときの話になります。

自分でできる調べ方と、越えてはいけない線

集められる資料

自分で請求したり、自宅で記録できる資料は多くあります。

  • 自分名義・共同名義の口座の取引履歴。 毎月の振込先、相手の口座への送金の記録が見えます。
  • 自宅に届く書類。 保険の通知、証券会社の取引報告書、固定資産税の納税通知書、確定申告書の控え、源泉徴収票を、日付つきで写真に残します。持ち出さず、写真で記録する方法が安全です。
  • 不動産の登記事項証明書。 不動産登記法119条により、何人も手数料を納付して登記事項証明書の交付を請求できます。ただし、請求には不動産の所在や地番が必要です。氏名から所有物件を探す道具として使えるわけではありません。
  • 家計の記録。 クレジットカードの明細、ポイントや電子マネーの履歴、自宅の郵便物の差出人。

別居前後の口座からの引き出しがある場合は、日付と金額を一覧にします。扱いは別居前の預金引き出しはどこまで?財産分与との関係と記録の残し方で説明しています。

越えてはいけない線

  • 相手のネットバンキングやメールにID・パスワードでログインする。 不正アクセス行為の禁止等に関する法律3条は不正アクセス行為を禁じ、11条は3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金を定めています。夫婦であっても、相手の承諾がなければ、条文上の除外にはなりません。
  • 相手のスマートフォンのパスワードを入力して画面ロックを開く。 そこからアカウントやアプリにログインすれば、上と同じ問題になります。
  • 金融機関や勤務先に、本人の許可なく相手の情報を聞き出そうとする。 正規の道は、上の表の裁判所の手続です。

疑わしいサインがあっても、資料で確かめられないうちは、結論を決めつけないことが大切です。

疑いを資料で確かめる順番

  1. 基準日の残高を一覧にする。 別居した日、または離婚を決めた日の財産を、確かな資料から書く。
  2. 過去2〜3年の動きを追う。 給与の入金先、ボーナスの行き先、大きな出金の日付を、自分の口座の履歴から並べる。
  3. 名義を分けて整理する。 相手名義、自分名義、共同名義、子ども名義、第三者名義。
  4. 一覧の空欄を、調停で確認する項目にする。 裁判所の財産分与の事情説明書では、対立すると思われる点に「相手方の財産の内容又は金額」を選ぶ欄があります。
  5. 調停の申立てに添える資料をそろえる。 裁判所の案内では、不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金通帳の写しまたは残高証明書などが標準的に必要です。

期限も確認します。家庭裁判所に財産分与を請求できるのは、離婚の時から5年(2026年3月31日以前の離婚は2年)です。基本の仕組みは財産分与とは?対象・割合・請求の期限(離婚から5年)の基本を整理にあります。

調停までの準備と、次に読む記事

調停では、対象となる財産の範囲などについて双方に確認し、必要な資料を提出してもらったうえで、助言やあっせんが行われます。疑いが強いときは、一覧の空欄に「調査の嘱託を求めたい金融機関」や「開示を求めたい項目」を書き添えて相談に持っていくと、弁護士や調停委員に伝わりやすくなります。

財産の対象かどうかの線引きは財産分与の対象になる財産・ならない財産の早見表と判断が分かれる例で、渡す側・受け取る側の税金は財産分与に税金はかかる?不動産を渡す側・受け取る側の扱いで確かめます。調査を弁護士に任せるかを考えるなら財産分与を弁護士に頼むとき:費用と頼んだ方がよい場合です。

よくある質問

Q. 情報開示命令を出してもらえば、隠している財産は見つかりますか?

開示を命じられるのは、財産分与の事件の当事者本人に対する「財産の状況」の開示です。本人が正直に出せば資料が増えますが、命令だけで隠した財産が見つかる仕組みではありません。条文は、正当な理由なく開示しない、または虚偽の情報を開示したときの過料(10万円以下)を定めているので、出された内容を通帳などの資料と照らして確かめます。

Q. 離婚の合意をした後に隠し財産が分かったら、追加で請求できますか?

追加で請求できるかは、合意書の文言と、財産が分かった時期によって変わります。離婚の時から5年(2026年3月31日以前の離婚は2年)という請求期間の枠もあります。後から争いにしないために、合意書には、相手が開示した財産の一覧を添付して残しておきます。

Q. 配偶者の銀行口座を、私の名前で金融機関に問い合わせることはできますか?

金融機関が配偶者の口座について、夫婦だからという理由で答えるとは限りません。口座の情報を得る正規の道は、家庭裁判所の手続(開示命令、調査の嘱託)か、弁護士を通した弁護士会照会です。自分の口座や共同名義の口座の履歴は、自分で請求できます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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