離婚とお金・家 / 制度解説

財産分与とは?対象・割合・請求の期限(離婚から5年)の基本を整理

この記事のもくじ
  1. 財産分与とは:どこで、どう決まるか
  2. 対象になる財産・ならない財産
  3. 割合:条文の考え方(詳しくは別記事)
  4. 請求の期限:離婚から5年(2026年3月31日以前の離婚は2年)
  5. 手続の流れ・費用・必要書類
  6. 離婚の前に財産の資料をそろえるチェックリスト

財産分与とは、結婚している間に夫婦が協力して築いた財産を、離婚するときや離婚した後に分ける制度です(民法768条)。対象は、名義に関係なく、婚姻中に協力して取得・維持した財産です。割合は、寄与の程度が異なることが明らかでなければ相等しいとされます。家庭裁判所に請求できる期間は、2026年4月1日以後の離婚なら離婚の時から5年、2026年3月31日以前の離婚なら従来どおり2年です。

財産分与とは:どこで、どう決まるか

民法768条1項は、協議で離婚した人の一方は、相手方に財産の分与を請求できると定めています。2項は、話し合いがまとまらない、または話し合いができないとき、家庭裁判所に協議に代わる処分を請求できるとしています。流れは次の3段階です。

  1. 夫婦で話し合う:離婚の前でも後でもできます。合意したら、書面に残します。
  2. 家庭裁判所の調停:離婚前なら夫婦関係調整調停(離婚)の中で、離婚後なら財産分与請求調停で話し合います。
  3. 審判:調停が不成立になると、審判の手続が始まり、裁判官が一切の事情を考えて判断します。

裁判所は、財産分与請求調停の申立人を「離婚した元夫または元妻」とし、離婚前なら離婚調停の中で話し合えると案内しています。浮気が離婚の原因でも、財産分与は慰謝料とは別の制度で、別の考え方で決まります(浮気した側も財産分与を受けられる?慰謝料との関係の整理)。

対象になる財産・ならない財産

裁判所の家事事件Q&Aは、財産分与の対象を「婚姻中に夫婦の協力で取得し又は維持した財産(建物や土地、預金、株式など)」と説明しています。対象外とされるのは、婚姻前から各自が持っていたもの、婚姻中でも相続や贈与で一方が取得したもの、社会通念上一方の固有財産とみられる衣類や装身具などです。

民法762条も、同じ考え方の土台になっています。夫婦の一方が婚姻前から持つ財産と、婚姻中に自分の名で得た財産はその人の特有財産とされ、どちらのものか明らかでない財産は共有と推定されます。ここで「自分の名で得た」財産が、すべて財産分与の対象外になるわけではありません。財産分与の対象は、名義ではなく、夫婦の協力で取得・維持したかで考えます。

早見表:財産分与の対象になる財産・ならない財産
区分 例 考え方
対象になる 婚姻中に貯めた預貯金(どちらの名義でも)、婚姻中に買った不動産、株式、夫婦で使う目的で買った車 婚姻中に夫婦の協力で取得・維持した財産
対象になりにくい 婚姻前から持っていた預金・不動産、親からの相続・贈与で得た財産、衣類・装身具 特有財産、または固有財産とみられるもの
判断が分かれやすい 退職金、住宅ローンが残る家、生命保険の解約返戻金、事業用の財産、子名義の預金、別居後に増減した財産 個別の事情で変わるため、専用の記事で整理

判断が分かれやすい財産は、記事を分けて整理しています。退職金は財産分与で退職金は対象になる?支給前・支給後で変わる考え方、家は財産分与で家はどうする?売る・住み続ける・名義を移す3つの選択肢、財産全体の早見表は財産分与の対象になる財産・ならない財産の早見表と判断が分かれる例です。

なお、厚生年金の分割は財産分与とは別の手続です。裁判所のQ&Aも、年金の分割割合を定めたいときは財産分与ではなく年金分割の手続によると案内しています(年金分割とは?合意分割と3号分割の違いと手続きの流れ・請求期限)。

割合:条文の考え方(詳しくは別記事)

分け方を決めるときの考慮要素は、2026年4月1日から施行された改正後の民法768条3項に並んでいます。婚姻中に取得・維持した財産の額とその取得・維持への各当事者の寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力と扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、職業と収入、その他一切の事情です。

そのうえで、寄与の程度は「その程度が異なることが明らかでないときは、相等しいものとする」と定められました。これは寄与の程度の推定の規定で、「財産分与はいつも半分ずつ」という意味ではありません。条文の考慮事項に、浮気をしたことそのものは書かれていません。割合の考え方と、寄与が違うと言えるのはどんな場合かは、財産分与の割合は2分の1が原則?寄与が違うと言えるのはどんな場合で扱います。

改正の経過措置にも注意が要ります。令和6年法律第33号の附則2条は、特別の定めがない限り、改正後の民法を施行前に生じた事項にも適用するとしています。財産分与の請求期間については、附則4条が従前の例(2年)によると定めています。

請求の期限:離婚から5年(2026年3月31日以前の離婚は2年)

財産分与を家庭裁判所に求められる期間は、離婚の日によって違います。

早見表:離婚の日で変わる、財産分与の請求期間
離婚の日 家庭裁判所への請求期間 根拠
2026年4月1日以後 離婚の時から5年 民法768条2項ただし書(改正後)
2026年3月31日以前 離婚の時から2年(従来のまま) 令和6年法律第33号附則4条

裁判所の財産分与請求調停のページは、離婚した日の翌日から起算して5年以内に申し立てる必要があると案内し、令和8年4月1日より前に離婚等をした場合は2年以内としています。

筆者の計算では、2026年10月15日に離婚した人は、2031年10月15日ごろが申立ての最終日の目安です。2026年3月31日に離婚した人は、2028年3月31日ごろです。2024年6月に離婚した人は、2年の期間が2026年6月ごろに終わっているので、家庭裁判所への請求はできなくなっています。正確な最終日は、申し立てる前に家庭裁判所の手続案内で確かめてください。

検索では「財産分与の時効」と呼ばれることがありますが、条文の書き方は「離婚の時から五年を経過したときは、この限りでない」です。制限されているのは家庭裁判所への請求で、夫婦が話し合って合意すること自体を禁じる条文ではありません。ただし、期間が過ぎた後は相手が応じなければ、裁判所を使って決めることができなくなります。迷う間にも日付は進むので、離婚の前から財産の資料を集め、離婚後は期間内に調停を申し立てます。

手続の流れ・費用・必要書類

離婚後に、家庭裁判所に財産分与を求める場合の手続は、裁判所のページによると次のとおりです。

項目 内容
申立人 離婚した元夫または元妻
申立先 相手方の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で決めた家庭裁判所
費用 収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手
書類 申立書とその写し1通、離婚時の夫婦の戸籍謄本、夫婦の財産に関する資料(不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金通帳の写しまたは残高証明書など)、事情説明書(財産分与)、進行に関する照会回答書、送達場所等届出書
不成立のとき 審判の手続が始まる

2026年4月の改正で、家庭裁判所は、財産分与の審判事件で、当事者に財産の状況の情報を開示するよう命じられるようになりました(家事事件手続法152条の2第2項)。正当な理由なく開示しない、または虚偽の情報を開示すると、10万円以下の過料です。調停にも準用されます(258条3項)。相手が財産を隠していると疑うときの考え方は財産分与で隠し財産が疑われるとき:開示を求める手続きと調べ方にあります。手続の流れは財産分与請求調停の流れ:離婚後に申し立てる方法と費用で詳しく扱います。

参考までに、司法統計年報(家事編)令和7年(2025年)の第27表で、家庭裁判所の調停成立などで離婚した事件は23,261件でした。そのうち財産分与の取り決めがあったのは8,605件で、筆者の計算では37.0%です。協議離婚は含まれません。取り決めがあった件の額の分布は、次のとおりです。

財産分与の額 件数 割合(筆者の計算)
100万円以下 1,635件 19.0%
100万円超200万円以下 963件 11.2%
200万円超400万円以下 1,097件 12.7%
400万円超600万円以下 735件 8.5%
600万円超1,000万円以下 1,042件 12.1%
1,000万円超2,000万円以下 929件 10.8%
2,000万円超 573件 6.7%
総額が決まらず・算定不能 1,631件 19.0%

額は婚姻の期間や財産の内容で大きく変わるため、1つの数字を「相場」とは言えません。自分の場合の見込みは、弁護士に財産の資料を見せて確かめます。弁護士に頼む場面と費用は財産分与を弁護士に頼むとき:費用と頼んだ方がよい場合にまとめています。

離婚の前に財産の資料をそろえるチェックリスト

  • 預貯金:夫婦それぞれの通帳の写し(別居日と離婚日の残高が分かるもの)
  • 不動産:登記事項証明書、固定資産評価証明書、住宅ローンの残高が分かる書類
  • 保険:保険証券、解約返戻金の見込み額の通知
  • 株式・投資信託:残高が分かる取引報告書
  • 退職金:勤務先の退職金規程、見込み額の資料
  • 車・その他の高額な動産:車検証、購入時の資料
  • 婚姻前から持っていた財産・相続や贈与で得た財産を示す資料(特有財産の主張に使う)

相手名義の財産は、見える範囲で記録します。相手のスマートフォンやメールを無断で見る方法は、法律で禁じられている行為に当たる場合があります。財産の調べ方の線引きは財産分与で隠し財産が疑われるとき:開示を求める手続きと調べ方で整理しています。お金の全体の見取り図は浮気が原因の離婚とお金:婚姻費用・養育費・財産分与・慰謝料の全体像にあります。

よくある質問

Q. 専業主婦(主夫)で収入がなくても、財産分与は受けられますか?

財産分与の対象は、婚姻中に夫婦の協力で取得し、または維持した財産で、名義が誰かでは決まりません。収入がなく、預金が相手名義でも対象になりえます。分け方は、民法768条3項が定める考慮要素(財産の額と寄与の程度、婚姻の期間、生活水準など)で決まるので、割合は割合の記事で、個別の見込みは弁護士に確かめてください。

Q. 財産分与、慰謝料、年金分割は、同じ手続で決まりますか?

3つは別々の制度です。離婚前なら、夫婦関係調整調停(離婚)の中で、財産分与も慰謝料も一緒に話し合えます。厚生年金などの分割割合は、財産分与ではなく年金分割の手続で決めると裁判所のQ&Aは案内しています。請求期限も制度ごとに違うので、まとめて決めるときも、それぞれの期限を別に数えます。

Q. 離婚して3年たちましたが、まだ財産分与を請求できますか?

請求期間は離婚の日で違います。2026年3月31日以前の離婚は離婚の時から2年なので、3年たっていれば家庭裁判所への請求はできません。2026年4月1日以後の離婚は5年なので、離婚から3年なら期間内です。離婚の日は戸籍の記載で確かめ、日付で判断してください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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