離婚とお金・家 / 基本ガイド

浮気が原因の離婚とお金:婚姻費用・養育費・財産分与・慰謝料の全体像

この記事のもくじ
  1. 離婚のお金は5つに分かれる:時期・根拠・期限の早見表
  2. 別居中・離婚前のお金:婚姻費用
  3. 離婚が決まるとき・離婚した後のお金
  4. 手続の道筋:話し合い・調停・審判と訴訟
  5. 浮気が絡むと変わること・変わらないこと
  6. 今月の順番:5つのお金を整える手順

浮気が原因の離婚で動くお金は、婚姻費用・養育費・財産分与・慰謝料・年金分割の5種類で、始まる時期も、根拠になる法律も、決める手続もそれぞれ違います。別居している間の生活費が婚姻費用、離婚後に子どもの暮らしを支えるのが養育費、結婚中に二人で築いた財産の分け方が財産分与、浮気による精神的な苦痛への賠償が慰謝料、将来の年金の記録を分けるのが年金分割です。「浮気されたのだから全部まとめて請求できる」という一つの請求はなく、別々の請求を順番に整えます。

離婚のお金は5つに分かれる:時期・根拠・期限の早見表

最初に全体を表にします。「いつの話か」と「いつまでに動くか」の2列を見ると、いま急ぐものと後でよいものが分かれます。

早見表:離婚で動く5つのお金(2026年10月23日時点)
種類 いつの話か 根拠 決める手続 期限・終わり
婚姻費用 別居中〜離婚が成立するまでの生活費 民法760条(夫婦は資産・収入その他一切の事情を考慮して婚姻から生ずる費用を分担) 話し合い→婚姻費用の分担請求調停→審判 離婚の成立か同居の再開で終わる。民法760条に請求の期限は書かれていない
養育費 離婚後、子が成長するまで 民法766条(子の監護に要する費用の分担)。取り決めがない場合の法定養育費は766条の3 話し合い→養育費請求調停→審判 終わりは取り決めの内容で決まる。法定養育費は2026年4月1日以後の離婚で、子1人あたり月2万円
財産分与 離婚の時または離婚後 民法768条 話し合い→離婚調停の中で、または財産分与請求調停→審判 家庭裁判所に請求できるのは離婚の時から5年(2026年3月31日以前の離婚は2年)
慰謝料 浮気という不法行為による精神的な苦痛 民法709条・710条 話し合い→調停・訴訟 損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年(民法724条)
年金分割 離婚後の厚生年金の記録の分割 厚生年金保険法の分割制度(日本年金機構が案内) 合意または裁判所の定めで割合を決め、年金事務所に請求 離婚等をした日の翌日から5年(2026年4月1日以後の離婚。それ以前は2年)

読むコツは、婚姻費用だけが「まだ夫婦である間」のお金だという点です。離婚が成立すると、子どもの分は養育費に切り替わります。

別居中・離婚前のお金:婚姻費用

浮気が分かって家を出る、あるいは相手に出て行ってもらうと、収入の少ない側は生活費に困ります。民法752条は夫婦に「同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定め、760条は「資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」と定めています。この760条が婚姻費用の根拠です。

裁判所の家事事件Q&Aは、婚姻費用に衣食住の費用のほか、出産費、医療費、未成熟子の養育費や教育費、相当の交際費など、生活に必要な費用全般が含まれると説明しています。条文は別居の原因で区別していませんが、浮気をした側からの請求をどう扱うかは別の論点なので、浮気した側から婚姻費用を請求されたら?有責配偶者の請求と子の分の考え方で分けて説明します。

婚姻費用の記事は、仕組み、算定表の読み方、調停の申立て、払われないとき、終わる時期の順に並んでいます。入口は下の見取り図の「a 別居中の生活費」の行です。

離婚が決まるとき・離婚した後のお金

養育費:子どもの暮らしのためのお金

養育費は、離婚後の子の養育費用の分担です。民法766条1項は、協議離婚のときに子の監護に要する費用の分担を協議で定め、その際は子の利益を最も優先して考慮すると定めています。父母は、浮気の有無に関係なく子を扶養する責務を負います(817条の12)。浮気への怒りと子どものための費用は、切り分けて考えるのが出発点です。

2026年4月1日の改正で、養育費の取り決めをせずに協議離婚した場合でも、子を主として監護する親が、他方に対して毎月末に子1人あたり月2万円を請求できる「法定養育費」ができました。ただし取り決めまでのつなぎの額で、適正な養育費の基準ではなく、2026年3月31日以前の離婚には適用されません。決め方・法定養育費は養育費とは?決め方・算定表・法定養育費、金額の目安の読み方は養育費算定表の使い方にあります。

財産分与:結婚中に築いた財産の分け方

財産分与は、結婚中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚の際または離婚後に分ける手続です。民法768条3項は、婚姻中の財産の額と各当事者の寄与の程度、婚姻の期間、生活水準などを考慮するとし、寄与の程度が異なることが明らかでないときは相等しいものとすると定めています。

条文の考慮事項に「浮気」の語はなく、浮気の責任を問うお金は慰謝料の側です(浮気した側も財産分与を受けられる?慰謝料との関係の整理)。対象財産・期限・割合は財産分与とは?対象・割合・請求の期限(離婚から5年)の基本を整理、住まいが絡むときは財産分与で家はどうする?売る・住み続ける・名義を移す3つの選択肢を読んでください。

年金分割:将来の年金の記録を分ける

年金分割は、婚姻期間中の厚生年金の記録を、離婚後に分け合う制度です。日本年金機構は、請求期限が2年から5年に変わったと案内しており、5年が適用されるのは令和8年(2026年)4月1日以降に離婚等をした場合、それより前の離婚は従来どおり離婚から2年以内とされています。起算するのは離婚が成立した日の翌日です。仕組みと手続は年金分割とは?合意分割と3号分割の違いと請求期限で扱います。

慰謝料:浮気そのものへの賠償は別枠

慰謝料は、浮気という行為によって受けた精神的な苦痛への損害賠償です。民法709条が不法行為による賠償責任、710条が財産以外の損害(精神的な損害)の賠償を定めています。請求の相手は配偶者と不倫相手で考え方が違います(最高裁平成31年2月19日判決は、特段の事情がなければ不倫相手は離婚に伴う慰謝料の請求を受けないとしています)。仕組みは不貞行為の慰謝料は民法の何条?709条・719条・724条と最高裁の考え方、全体像は浮気・不倫の慰謝料とは?請求できる場面・金額の決まり方・進め方の全体像にあります。

全42本の見取り図:知りたいお金から入口を選ぶ

このハブの記事は5つのまとまりに分かれます。各行の「最初」から読み始め、「最後」まで進むと、そのお金の手続が一通り分かります。

見取り図:5つのまとまりと入口の記事
まとまり 扱うこと 最初の記事 最後の記事 あわせて読む
a 別居中の生活費 婚姻費用の仕組み・金額・調停・未払い 婚姻費用とは?別居中の生活費を請求する仕組みと決め方 婚姻費用はいつまで?離婚の成立や同居の再開で終わる場合 -
b 養育費 決め方・相場・法定養育費・払われないとき 養育費とは?決め方・算定表・2026年からの法定養育費まで 養育費を払わないなら面会させない?養育費と親子交流の関係 法定養育費とは?2026年4月以後の離婚で取り決めがない場合の仕組み、離婚の法改正2026年4月施行:共同親権・法定養育費・財産分与の変更点、養育費はいつまで?20歳・大学卒業など終わりの決め方、養育費を払わない相手には:先取特権・強制執行と相談先の使い分け
c 財産分与 対象・割合・期限・隠し財産・調停 財産分与とは?対象・割合・請求の期限(離婚から5年)の基本を整理 財産分与請求調停の流れ:離婚後に申し立てる方法と費用 -
d 家と住まい 売る・住み続ける・ローン・離婚後の住まい探し 財産分与で家はどうする?売る・住み続ける・名義を移す3つの選択肢 離婚後の住まい探し:公営住宅やひとり親向けの支援の調べ方 離婚で家を売却するときの流れ:査定・売る時期・代金の分け方、離婚後も今の家に住み続けるには:名義・ローン・使用の取り決め
e 年金と離婚後の暮らし 年金分割・手当・保険・生活費の表 年金分割とは?合意分割と3号分割の違いと手続きの流れ・請求期限 離婚後の健康保険と年金の切り替え:扶養から外れるときの手続き 離婚後の生活費の見通し:収入・手当・支出の表の作り方、児童扶養手当とは?離婚後に受け取れる条件と申請の流れ、ひとり親家庭の支援制度一覧:手当・医療費・住まい・仕事

手続の道筋:話し合い・調停・審判と訴訟

5つのお金は、手続の道筋が共通しています。まず夫婦の話し合い、まとまらなければ家庭裁判所の調停、調停でも決まらなければ、種類によって審判か訴訟に進みます。

手続 話せる内容 費用の目安(裁判所の案内) 不成立のとき
夫婦関係調整調停(離婚) 離婚、親権者、親子交流、養育費、財産分与、年金分割の割合、慰謝料 収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手 離婚訴訟(人事訴訟)へ
婚姻費用の分担請求調停 別居中の生活費 収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手 審判手続が始まる
養育費請求調停・財産分与請求調停 離婚後の養育費、財産分与 収入印紙1,200円分(養育費は子1人ごと)と郵便切手 審判手続が始まる

調停が不成立のときの分かれ道は、お金の種類で変わります。家事事件Q&Aによれば、婚姻費用・養育費の調停が不成立になると審判手続に移り、審理が続けられます。一方、離婚の調停が不成立になった場合は審判に移らず、離婚を求めるには離婚訴訟を起こす必要があります。離婚訴訟では、人事訴訟法17条により、離婚と、その原因となった事実から生じた損害賠償(浮気の慰謝料など)を一つの訴えでまとめて請求できます。離婚の方法の全体は離婚の方法は4種類:協議・調停・審判・裁判の流れと選び方、調停の進み方は離婚調停の流れ:成立・不成立までと浮気が原因のときの準備にあります。

浮気が絡むと変わること・変わらないこと

浮気が原因だと、お金の話すべてが傾くように思えますが、影響の出方は制度ごとに違います。

  • 婚姻費用:浮気をされた側が払う立場になることもあり、浮気をした側からの請求の扱いは争点になります。浮気した側から婚姻費用を請求されたら?有責配偶者の請求と子の分の考え方で考え方を整理しています。
  • 養育費:子どものためのお金で、親の浮気の有無で意味が変わりません。
  • 財産分与:条文の考慮事項に「有責」の語はありません。浮気を理由に金額を上げ下げできるかは、慰謝料との関係も含めた個別の判断になります。
  • 慰謝料:浮気そのものの責任を問う制度で、浮気の証拠に直接つながるのはここです。

今月の順番:5つのお金を整える手順

どの種類から着手するかは、状況で変わります。次の順に確認すると迷いにくくなります。

  1. 別居の有無を確認する。 別居している、またはこれから別居するなら、婚姻費用が先です。収入資料(源泉徴収票、給与明細、確定申告書の写し)を集めます。
  2. 子どもの有無を確認する。 子どもがいれば、離婚後の養育費と、離婚前の婚姻費用に含まれる子の分を分けて考えます。
  3. 家計と財産を書き出す。 預貯金、不動産、保険、ローンを一覧にします。
  4. 期限を数える。 財産分与と年金分割は離婚から5年(2026年3月31日以前の離婚は2年)、慰謝料は知った時から3年です。
  5. 相談先を決める。 手続の案内なら家庭裁判所の手続案内、制度の入口なら法テラス、請求の見込みや交渉は弁護士です。

費用が心配なときは法テラスとは?浮気・離婚の相談で使える無料相談と費用の立替えと弁護士費用の仕組み:相談料・着手金・報酬金・実費の違いを先に読むと見通しが立ちます。

合意書や調停調書を作る前に、弁護士に条件を見てもらう選択肢があります。離婚後の収支を表にしたいときは離婚後の生活費の見通し:収入・手当・支出の表が手がかりになります。

よくある質問

Q. まだ別居していません。離婚前でも子どもの生活費は請求できますか?

離婚前の子どもの生活費は、養育費ではなく婚姻費用に含まれて扱われます。裁判所の家事事件Q&Aも、婚姻費用に未成熟子の養育費や教育費など子の監護の費用が含まれると説明しています。仕組みは[婚姻費用とは?別居中の生活費を請求する仕組み](/konin-hiyou/)にあります。

Q. 離婚してから決めてもよいお金には、どんな期限がありますか?

財産分与は離婚の時から5年、年金分割は離婚等をした日の翌日から5年です。いずれも2026年4月1日より前に離婚した場合は2年のままです。慰謝料は損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で時効にかかります(民法724条)。数え方が種類ごとに違うので、早見表で自分の離婚日と照らしてください。

Q. 2026年3月31日以前に離婚しています。改正後の養育費や財産分与の新しいルールは使えますか?

施行日(2026年4月1日)より前の離婚では、法定養育費は発生せず、財産分与と年金分割の請求期間も2年のままです。養育費の先取特権は、施行日以後に支払期が来る分に限って適用されます。当てはまる規定は[離婚の法改正2026年4月施行](/rikon-hokaisei-2026/)の経過措置の表で確かめられます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

婚姻費用とは?別居中の生活費を請求する仕組みと決め方

養育費とは?決め方・算定表・2026年からの法定養育費まで

財産分与とは?対象・割合・請求の期限(離婚から5年)の基本を整理

不貞行為の慰謝料は民法の何条?709条・719条・724条と最高裁の考え方