離婚とお金・家 / Q&A

財産分与で退職金は対象になる?支給前・支給後で変わる考え方

この記事のもくじ
  1. 支給済み・支給前・退職間近:場面ごとの考え方
  2. 年金とは手続が別:財産分与で言えること、言えないこと
  3. 退職金の有無と見込額を確かめる手順
  4. 弁護士に確かめること・税金との関係

退職金は、財産分与で話し合いの対象になりえる財産です。民法768条3項は、婚姻中に取得し、または維持した財産の額とその寄与の程度を考慮して分与を決めると定めています。すでに受け取って預貯金などになった退職金は、他の財産と同じ入口で見ます。まだ受け取っていない退職金は、いつの時点の何を、どう見積もるかが論点になり、事案によって判断が分かれます。

退職金の計算方法について、裁判所が公開している一般向けの資料には、割合や計算式は示されていません。この記事では、条文と裁判所の案内から言える範囲で、場面ごとの考え方と、集めておく資料を整理します。個別の金額や見込みは弁護士の領域です。

支給済み・支給前・退職間近:場面ごとの考え方

退職金は勤務先が支払う時期が人によって違うため、離婚のタイミングとの前後関係で考え方が変わります。

早見表:退職金の支給時期と、話し合いで確かめる点
場面 話し合いの入口 論点になりうる点 集める資料
すでに支給された(離婚前に受け取って預貯金等になっている) 通常の預貯金などと同じ。婚姻中に受け取ったものは、夫婦の財産の一覧に載せる 受け取った後に使った分、特有財産と混ざっていないか 退職所得の源泉徴収票、振込先の通帳
離婚時にはまだ支給されていないが、退職が近い 見込額を一覧に載せて話し合う 勤務期間のうち婚姻期間に当たる部分、算定の基準時 会社の退職金試算、退職金規程
退職まで長い(支給が先) 退職金制度の有無と規程を確かめる 将来の見込みをどう扱うか、分与の請求期間との関係 就業規則(退職手当の章)、勤続年数の記録
離婚後に支給された 離婚の時から5年以内に家庭裁判所へ請求する枠の中で考える 離婚前の婚姻期間に当たる部分があるか 離婚日が分かる戸籍、退職金の支給明細
企業年金・確定拠出年金などがある 加入先に残高や受給額の通知を求める 厚生年金の分割(年金分割)とは別の手続になる点 加入先の通知書、残高明細

考え方の軸は二つです。一つめは、何を対象に見るかです。裁判所の家事事件Q&Aは、財産分与の対象を、婚姻中に夫婦の協力で取得し、または維持した財産だと説明しています。退職金は勤務期間全体に対して払われるお金なので、婚姻前から勤めていた会社の退職金には、婚姻前の勤務に対応する部分が含まれます。そのため、婚姻期間に対応する部分を対象に見るのか、全体を見るのかという整理が、論点の中心になります。

二つめは、いつの時点で見るかです。裁判所の財産分与の事情説明書では、調停や審判で対立すると思われる点を選ぶ欄に「算定の基準時(別居の時期)」があります。別居の時期をどこに置くかで、婚姻期間に当たる勤続年数が変わるため、別居した日の記録が資料になります。

年金とは手続が別:財産分与で言えること、言えないこと

「財産分与 年金」で調べて来た方が混同しやすいのが、退職金と年金の関係です。裁判所の家事事件Q&Aは、厚生年金等の分割割合を定めたい場合は、財産分与ではなく、年金分割の手続によるとしています。

  • 退職金:勤務先が支払うお金。財産分与の話し合いに載せる。
  • 厚生年金の記録:婚姻期間中の記録を、離婚後に分け合う。年金事務所へ請求し、請求期限は離婚等をした日の翌日から5年以内(2026年4月1日より前に離婚等をした場合は2年以内)。
  • 企業年金・確定拠出年金:加入先で扱いが異なるので、加入先の通知書で内容を確かめる。

年金分割は割合の上限が2分の1で、国民年金(基礎年金)は分割の対象になりません。手続は年金分割とは?合意分割と3号分割の違いと手続きの流れ・請求期限で説明しています。年金事務所への請求を忘れると、調停で割合を決めても反映されないので、離婚後の手続の一覧に入れます。

退職金の有無と見込額を確かめる手順

相手の勤務先の退職金は、本人が教えてくれないと分からないことが多い資料です。次の順で確かめます。

  1. 自分の側の資料から確かめる。 配偶者の給与明細や源泉徴収票、家に届いた会社の書類を日付つきで写真に撮ります。持ち出さず、写真で残すのが安全です。
  2. 就業規則の退職金の章を探す。 労働基準法89条は、常時10人以上の労働者を使う事業所に就業規則の作成と届出を求め、退職手当の定めをする場合は、適用される労働者の範囲、決定・計算・支払の方法、支払の時期を書くことを求めています。106条により、就業規則は労働者に周知する義務があります。10人未満の事業所は作成の義務がないので、規程がない会社もあります。自分の勤務先なら、閲覧を求められます。
  3. 任意で会社に試算を出してもらう。 自分の退職金なら、人事に自己都合退職の場合の見込額の試算を依頼できることがあります。配偶者の退職金は、本人でないと依頼できません。
  4. 応じてもらえないときは調停・審判の手続を使う。 家事事件手続法152条の2は、2026年4月の改正で、財産分与の審判事件で当事者に財産の状況の開示を命じられるとし、258条3項で調停にも準用しています。正当な理由なく開示しない、または虚偽の情報を開示したときは、10万円以下の過料に処せられると定められています。さらに62条は、家庭裁判所が銀行や関係人の使用者などに、収入その他の事項について報告を求められるとしています。調査が行われるかどうかは裁判所の判断です。

勤務先に話が伝わるのが心配な場合は、家庭裁判所が使用者に報告を求める手続があること自体を知っておき、弁護士に相談するときに、勤務先への影響を心配していることも伝えます。開示の手続の詳細は財産分与で隠し財産が疑われるとき:開示を求める手続きと調べ方に分けています。

弁護士に確かめること・税金との関係

退職金が絡むと、個別の判断が必要になる点が多くなります。弁護士への相談では、次の点を聞きます。

  • 自分の場合、婚姻期間に当たる部分と全体のどちらで見るのが話し合いの出発点になるか
  • 算定の基準時を別居日に置く場合、必要な記録は何か
  • 支給が先の場合、離婚時に何を取り決めておくか(調停調書や合意書への書き方)
  • 離婚の時から5年という請求期間との関係

退職金を受け取った後に財産分与として渡す場合や、不動産などで渡す場合の税金は、財産分与に税金はかかる?不動産を渡す側・受け取る側の扱いで確かめられます。対象となる財産の全体像は財産分与の対象になる財産・ならない財産の早見表と判断が分かれる例にあります。基本の期限と割合は財産分与とは?対象・割合・請求の期限(離婚から5年)の基本を整理を読んでください。

よくある質問

Q. 定年まで10年以上あって、退職金がいつ出るか分かりません。それでも離婚のときに話し合えますか?

話し合うこと自体はできます。ただし、まだ受け取っていない退職金を対象に含めるか、含めるならどう見積もるかは、事案によって判断が分かれる論点です。家庭裁判所への請求は離婚の時から5年(2026年3月31日以前の離婚は2年)という期間の制限があるため、支給がそれより先になる場合の扱いは、離婚前に弁護士へ確かめてください。

Q. 会社に退職金制度があるのかどうかも知りません。どう確かめますか?

就業規則を見ます。労働基準法89条は、退職手当の定めをする場合には、適用される労働者の範囲、決定・計算・支払の方法、支払の時期を就業規則に書くよう定めています。106条により就業規則は労働者に周知する決まりなので、自分の就業規則を閲覧するのが最初の一歩です。配偶者の勤務先の資料は、本人が出さない場合、調停で開示を求める手続があります。

Q. 退職金も年金も、まとめて財産分与で請求できますか?

手続が別です。裁判所の家事事件Q&Aは、厚生年金等の分割割合は財産分与ではなく年金分割の手続によると説明しています。退職金は財産分与で話題になりうる財産で、年金は年金事務所への請求が別に要ります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

財産分与の対象になる財産・ならない財産の早見表と判断が分かれる例

財産分与に税金はかかる?不動産を渡す側・受け取る側の扱い

財産分与とは?対象・割合・請求の期限(離婚から5年)の基本を整理

年金分割とは?合意分割と3号分割の違いと手続きの流れ・請求期限