探偵費用は相手に請求できる?慰謝料と一緒に求めるときの考え方
探偵費用を相手に請求できるかどうかは、法律に「浮気調査の費用は相手が払う」と決めた条文がなく、一律には決まりません。相手に求めるときは、慰謝料と一緒に、不貞行為によって生じた「損害」の一部として請求に含めて求めることになります。そのうえで、調査費用が損害に当たるか、どこまで当たるかは、話し合いなら当事者の合意で、裁判なら裁判所の判断で決まります。どう組み立てるかは弁護士に確かめる前提で、この記事では仕組みと、相談の前にそろえておく書類を整理します。
探偵費用を相手に請求できるかは一律ではない
浮気や不倫の慰謝料の請求(仕組みの全体は浮気・不倫の慰謝料とは?請求できる場面・金額の決まり方・進め方の全体像)は、民法709条(故意・過失で他人の権利や法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する)と、710条(財産以外の損害も賠償の対象になる)を土台にしています。探偵に払った調査費用は、精神的な損害である慰謝料とは別の、お金の出費です。これを相手に求めるには、709条の「これによって生じた損害」、つまり不貞行為と結びついた出費だと言える必要があります。
ここで押さえておきたいのは、調査費用が自動的に相手の負担になる仕組みはない、という点です。
| 場面 | 探偵費用の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 裁判の「訴訟費用」 | 一覧に入っていない。敗訴者負担(民事訴訟法61条)の対象外 | 民事訴訟費用等に関する法律2条 |
| 裁判で損害として請求 | 慰謝料と一緒に請求の中に入れる。認められる範囲は裁判所が判断 | 民法709条 |
| 家庭裁判所の調停 | 調停の手続費用(申立ての費用など)は各自の負担。探偵費用は手続費用ではなく、話し合いの中で扱いが決まる | 家事事件手続法28条 |
| 当事者の話し合い・示談 | 合意すれば支払いを取り決められる。合意がなければ払わせる仕組みはない | 民法の契約の一般原則 |
訴訟費用の範囲は、民事訴訟費用等に関する法律2条が、裁判所に納める手数料、期日に出頭する旅費・日当、書類の作成・提出の費用などと決めています。依頼者が自分で選んで払った探偵の費用は、この一覧のどれにも当たりません。だから「勝てば調査費用も相手持ち」と考えるのは早合点で、求めるなら損害として主張する必要があります。
探偵費用を慰謝料と一緒に求めるときの考え方
調査費用を相手に求める場面は、大きく3つに分かれます。請求する相手と、手続の場によって、考える順番が少し変わります。
不倫相手と配偶者のどちらに求めるか。 不貞行為(民法770条1項1号の「不貞な行為」から来た法律上の言葉)は配偶者と不倫相手の二人で行うもので、民法719条1項は、数人が共同で不法行為をしたときは各自が連帯して賠償する責任を負うとしています。請求する側は、どちらに対しても求めうる一方、同じ損害を二重に受け取れるわけではありません。離婚せずに再構築する場合、配偶者に求めることは家計の中でお金が動くだけになることもあるので、誰に求めるかは目的と合わせて考えます。
離婚の裁判と一緒にするか。 人事訴訟法17条は、離婚の訴えと、その原因になった事実による損害賠償の請求を、一つの訴えで起こせると定めています。離婚の裁判で慰謝料を求めるなら、調査費用も同じ手続の中で損害として主張する、という組み立てがありえます。
時効に気をつける。 不法行為の損害賠償請求権は、損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で時効により消えます(民法724条)。調査費用も損害の一部として求めるなら、同じ期限の中で動くことになります。数え方は不倫の慰謝料の時効は3年と20年:いつから数えるかの考え方で扱っています。
どの相手に、どの手続で、いくらを求めるか、調査費用をどこまで含めるかは、個別の事情による法律判断です。弁護士に相談するときは、「調査費用も請求に含められるか、含めるならどの範囲か」を質問に入れておきましょう。
| 段階 | すること | 誰が担うか |
|---|---|---|
| 1. 書類をそろえる | 契約書・見積もり・請求書・領収書・報告書を一式にする | 依頼者 |
| 2. 支出を整理する | 何の調査に、いつ、いくら払ったかを表にする | 依頼者 |
| 3. 相談する | 調査費用を請求に含めるか、範囲をどうするかを聞く | 弁護士 |
| 4. 請求・交渉 | 慰謝料と一緒に損害として求める | 依頼者本人か弁護士 |
| 5. 合意・裁判 | 合意書に書く、または裁判所の判断を受ける | 当事者・裁判所 |
弁護士に相談する前にそろえる書類
調査費用を損害として主張するには、「何のために、いつ、いくら払ったか」を書類で示せることが出発点です。探偵業法8条は、契約前と契約後に業者が書面を渡すことを求めているので、まずその2つを探します。
- 契約前に受け取った重要事項説明書(探偵業法8条1項。調査の内容、概算額と支払時期などが書かれている)
- 契約後に受け取った契約書(同条2項。調査の内容・期間・方法、金額と支払の時期・方法が書かれている)
- 見積書(総額と内訳)
- 請求書と領収書、振込の記録(日付と金額が分かるもの)
- 延長や追加の費用を承諾したときのメール・メッセージ
- 調査報告書(どの日に何を調べ、何が分かったか)
あわせて、次のような整理表を作っておくと、相談の時間を有効に使えます。
| 支払日 | 支払先 | 名目 | 金額 | 対応する調査日 | 書類 |
|---|---|---|---|---|---|
| ○月○日 | ○○探偵事務所 | 着手金 | ○円 | ○月○日・○日 | 契約書・領収書 |
| ○月○日 | 同上 | 延長料金・経費 | ○円 | ○月○日 | 承諾のメール・請求書 |
報告書の中身の確かめ方は浮気調査の報告書には何が書かれる?受け取ったら確かめる項目で、証拠を弁護士に見せる前の並べ方は慰謝料請求の証拠をそろえる手順:弁護士に見せる前の並べ方と写しの作り方で扱っています。相談の準備全体は弁護士に相談する前の準備:時系列メモと持ち物・聞くことの一覧も役に立ちます。
相手に調査費用を求めるときにしてはいけないこと
調査費用を払わせたい気持ちが強いと、言い方や手段が行き過ぎることがあります。次の点は、自分の側が責任を問われないために守ってください。
- 脅すような言い方をしない。 「払わなければ会社や家族に知らせる」と迫ると、刑法222条(脅迫)や249条(恐喝)の問題になりうる。
- 探偵に交渉を頼まない。 探偵業法の探偵業務は調査と報告までで、相手への請求や交渉は含まれない。国民生活センターも、2016年の注意喚起(アダルトサイト関連の相談)で、弁護士等の資格なく返金などの交渉をすることは弁護士法等に違反するおそれがあると指摘している。
- 報告書を広めない。 不倫相手の職場や知人に見せると、名誉毀損などの問題になりうる。見せる相手は弁護士など必要な人に限る。
相手と直接話すなら、求める内容と根拠を書面で示し、やり取りの記録を残すのが基本です。自分で話すのが難しいときや、相手が応じないときは、弁護士に依頼する選択肢があります。探偵と弁護士の役割の違いは浮気調査は探偵と弁護士のどちらに先に相談する?役割の違いと順番で、慰謝料の全体像は浮気・不倫の慰謝料とは?請求できる場面・金額の決まり方・進め方の全体像で確かめられます。弁護士費用の工面が心配なら弁護士費用が払えないとき:法テラスの立替えと分割の相談を読んでください。
調査の費用そのものを抑える工夫は浮気調査を安い費用で頼むには?抑える工夫と安さだけで選ぶ危うさで、後から費用でもめないための決め方は探偵の追加料金でもめないために:浮気調査の延長・経費・車両費の決め方で扱います。
よくある質問
Q. 裁判で勝てば、探偵費用は相手が払うことになりますか?
判決で負けた側が負担する「訴訟費用」は、民事訴訟費用等に関する法律2条に挙げられた手数料や書類の費用などに限られ、探偵に払った調査費用はその一覧に入っていません。調査費用を相手に求めるなら、慰謝料と一緒に「損害」として請求の中に入れる形になり、認められるか、どこまで認められるかは裁判所が事案ごとに判断します。
Q. 探偵に頼んで、相手に調査費用を払うよう交渉してもらえますか?
探偵業法が定める探偵業務は、聞込み・尾行・張込みなどの調査と結果の報告までで、相手への請求や交渉は含まれていません。国民生活センターも、アダルトサイト関連の相談への注意喚起の中で、弁護士等の資格なく返金などの交渉をすることは弁護士法等に違反するおそれがあると指摘しています(弁護士法72条)。相手との交渉は自分で行うか、弁護士に依頼してください。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第709条・第710条・第719条・第724条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事訴訟法 第61条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事訴訟費用等に関する法律 第2条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 家事事件手続法 第28条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 人事訴訟法 第17条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 探偵業の業務の適正化に関する法律 第8条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 弁護士法 第72条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 刑法 第222条・第249条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 「アダルトサイトとのトラブル解決」をうたう探偵業者にご注意!(2016年12月15日)(国民生活センター)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。