保護命令とは?配偶者からの暴力で申し立てる手続きと相談先
保護命令は、DV防止法にもとづいて、被害者の申立てを受けた地方裁判所が、加害者に対して「近づくな」「電話やメッセージをするな」「家から出ていけ」などを命じる制度です。申し立てられるのは、身体に対する暴力、または命・身体・自由・名誉・財産に害を加えると告げる脅迫を受け、さらに重大な危害を受けるおそれが大きい人です。ここでは、種類、要件、流れ、費用、命令が出たあとの扱いを順に整理します。
いま危険が迫っているなら110番。手続の相談先は、近くの配偶者暴力相談支援センターにつながる**#8008か、24時間電話を受けるDV相談+(0120-279-889)**です。相談先の番号と時間をまとめて見たいときは浮気・不倫の相談先一覧:悩み別の窓口と番号・受付時間の早見表にあります。
保護命令の6つの種類と期間
内閣府は、保護命令を6つに整理しています。
| 種類 | 内容 | 期間 |
|---|---|---|
| 被害者への接近禁止命令(10条1項) | 住居や勤務先の付近でのつきまとい、はいかいを禁じる(同居中の住居を除く) | 1年 |
| 被害者への電話等禁止命令(10条2項) | 面会の要求、無言電話、連続した電話・メッセージ、午後10時〜午前6時の連絡、位置情報の無断取得などを禁じる | 接近禁止命令の効力発生から1年まで |
| 子への接近禁止命令(10条3項) | 同居の未成年の子を連れ戻すと疑う言動があるときなど。子の住居や学校付近でのつきまといを禁じる。15歳以上の子は子の同意が必要 | 被害者への接近禁止命令とあわせて出る |
| 子への電話等禁止命令(10条3項) | 子への面会要求や連続した連絡などを禁じる。15歳以上の子は同意が必要 | 同上 |
| 親族等への接近禁止命令(10条4項・5項) | 親族の住居に押し掛けて粗野・乱暴な言動をしているなどのとき。親族等の同意が必要 | 同上 |
| 退去等命令(10条の2) | 一緒に住んでいる住居から出ていくことと、付近のはいかいを禁じる | 2か月。住居の所有者・賃借人が被害者のみで被害者が申し立てたときは6か月 |
ポイントは三つです。
- 電話等禁止、子、親族等に関する命令は、被害者への接近禁止命令が前提で、単独では出ません。
- 電話等禁止命令に含まれる行為には、現在は、承諾なく位置情報記録・送信装置(GPS機器など)の位置情報を取る、紛失防止タグの位置情報を取る、所持品にそうした装置を取り付ける行為も入っています。
- 退去等命令は、申立て時に一緒に生活の本拠にしている場合に限られます。
1年を超える接近禁止命令が必要になる場合は、再度の申立てが可能で、その判断は申立てに基づいて行われると、内閣府のQ&Aは説明しています。
申し立てられる人と、発令の要件
申立てができるのは、配偶者からの次の行為を受けた人です。
- 身体に対する暴力
- 生命・身体・自由・名誉・財産に対し害を加える旨を告知してする脅迫
令和5年の改正(令和6年4月1日施行)で、自由・名誉・財産に対する脅迫を受けた人も申立てできるようになり、発令の要件も「生命または身体」から「生命または心身」に重大な危害を受けるおそれが大きいときへと広がりました。ただし、暴言や無視などの精神的な暴力だけでは、申立ての前提を満たしません。精神的な暴力の悩みはモラハラ夫と浮気が重なるとき:記録の残し方と安全のための相談先で、相談の方法を整理しています。
「配偶者」には、事実婚の相手と、離婚したあとの元配偶者も含まれます(1条1項・3項)。同居している交際相手に対する暴力にも、この制度が準用されます(28条の2)。
暴力を受けてから時間がたっていても、一律に申し立てられないわけではありません。内閣府のQ&Aは、経過した期間は判断材料になるが、「これ以上たっているからダメ」とは決まっていない、と説明しています。
相談の入口:配偶者暴力相談支援センター
申立ての前に通ることが多い窓口が、配偶者暴力相談支援センターです。都道府県の女性相談支援センターなどがこの機能を担い、市町村も努めることになっています(DV防止法3条)。内閣府によると、センターの業務には、相談や相談機関の紹介、カウンセリング、緊急時の安全確保と一時保護、自立のための情報提供、そして保護命令制度の利用についての情報提供や援助が入っています。センターが命令を出すのではなく、裁判所に出す命令の手続を知らせ、助ける立場です。#8008に電話すると、近くのセンターにつながります(通話料がかかり、受付はつながった先の時間内です)。センターへ行く前に、各都道府県の連絡先を問い合わせたり、#8008で相談機関の案内を受けたりできると内閣府は案内しています。
申立てから命令までの流れ
- 相談する。 配偶者暴力相談支援センターや警察に相談します。センターは、申立先の裁判所や申立書の書き方についても助言します。
- 申立書を作る。 暴力や脅迫を受けた状況、重大な危害を受けるおそれが大きいと認められる事情を書きます。子や親族に関する命令を求めるなら、その必要の事情も書きます。
- 相談の事実を書く。 申立書には、支援センターか警察に相談して援助や保護を求めた事実の有無を書きます。相談していない場合は、本人の供述を書いた書面を公証人に認証してもらい添付します(12条3項)。認証には11,000円が必要と内閣府が案内しています。
- 地方裁判所に出す。 申立てには手数料1,000円のほか、書類を相手に送るための費用の予納が必要です。予納の額は裁判所ごとに異なります。
- 審理。 裁判所は速やかに判断することになっています。原則として、口頭弁論か、相手が立ち会える審尋の期日が開かれます。申立書に相談の記載があれば、裁判所は支援センターや警察に状況の書面提出を求めることがあります。
- 発令。 決定書が相手に送達されるか、期日で言い渡されると、効力が生じます。裁判所書記官は、申立人の住所地の警察に通知し、相談したセンターにも通知します。
発令までの日数は、事案によって違うと、内閣府のQ&Aは述べています。「何日で出る」と言うことはできません。
- 支援センター・警察に相談(相談記録が申立書の材料になる)
- 申立書の作成(状況・危害のおそれ・相談の事実)
- 地方裁判所へ申立て(手数料1,000円+予納)
- 審理(相手が立ち会える期日が原則)
- 発令 → 警察とセンターへ通知
命令が出たあと
命令に違反した人には、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金が定められています(29条)。相手が命令に反して近づいたり、連絡したりしたときは、警察に通報します。警察庁によると、令和7年に警察が裁判所から受理した保護命令の通知は1,061件で、そのうち接近禁止命令に電話等禁止命令を加えたものが多数でした。この件数は、警察が通知を受けた数であり、全国の発令数そのものではありません。
取消しも制度に組み込まれています。申立人が申し立てれば取り消されます。相手方が申し立てる場合は、接近禁止命令なら効力が生じて3か月を過ぎてから、退去等命令なら2週間を過ぎてからで、申立人に異議がないかが確認されます(17条)。
申立書に虚偽の記載があると、10万円以下の過料の対象です(31条)。実際に受けたことを、そのまま書きます。
申し立てる前に知っておきたいこと
- 家庭裁判所ではなく地方裁判所に申し立てます。離婚調停の申立先とは違います。
- 相手方が出席できる期日があることを前提に、申立ての前後の安全は、避難先の確保とあわせて窓口で相談します。避難の準備はDVから逃げる準備:持ち出すもの・相談先・住所を知られない手続きに書いています。
- 弁護士に頼むこともできます。費用が心配なときの窓口は弁護士の無料相談を使うには:自治体・弁護士会・法テラスの違いと準備で確認できます。
- 状況の整理から始めたいときは、浮気を問い詰めたら暴力を受けた:DVの相談窓口と安全のための準備へ。
保護命令は、被害者を守るための選択肢の一つです。出すかどうか、いつ申し立てるかは、命の安全と生活の見通しを見ながら、支援センターや弁護士と決めていきます。
よくある質問
Q. 保護命令の申立ては、どこの裁判所にしますか?
地方裁判所です。家庭裁判所ではありません。相手方の住所(なければ居所)を管轄する地方裁判所が基本で、接近禁止命令などは、申立人の住所・居所や、暴力が行われた場所を管轄する地方裁判所にも申し立てられます。
Q. 保護命令が出れば、相手は近づけなくなりますか?
保護命令そのものに、相手を強制的に従わせる執行力はありません(DV防止法15条5項)。ただし、違反した人には2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金が定められていて、違反があれば警察に通報することになります。安全の見通しは、避難先の確保など他の手段と合わせて窓口で考えます。
Q. 相手に知られずに申し立てられますか?
申立てがあったことは、原則として相手にも伝わります。口頭弁論か、相手が立ち会える審尋の期日を経て判断されます。申し立てる前に支援センターや弁護士に安全の工夫を相談してください。
出典・参考にした公的な情報
- 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律 第10条〜第18条・第29条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 保護命令制度について(内閣府男女共同参画局)
- 配偶者暴力防止法に関するよくある質問(内閣府男女共同参画局)
- 令和7年におけるストーカー事案、配偶者からの暴力事案等、児童虐待事案等への対応状況について(警察庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。