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不倫の慰謝料の減額が検討される事情:請求された側が整理する材料

この記事のもくじ
  1. 不倫の慰謝料の減額はどんなときに検討される?
  2. 婚姻関係の状態:関係を持った当時、相手の夫婦は破綻していたか
  3. 既婚の認識:知っていたか・知ることができたか
  4. 請求の中身に関わる事情:名目・二重の受け取り・時効
  5. 材料を整理して弁護士に渡す:チェックリストと聞き方

不倫の慰謝料は、請求された額がそのまま決まった額ではなく、話し合いや裁判の中で事情を示して、減額を求めることができます。民法には慰謝料の額の基準がなく、この記事で挙げる最高裁の判決にも金額の目安は示されていないため、額は個別の事情で決まります。請求された側がまず整理するのは、関係を持った当時の相手の夫婦の状態、相手が既婚だと知っていたか、請求の名目、すでに支払われたお金、時効の5つです。この記事では、それぞれの事情の考え方と、相談に持っていく材料の整理の仕方を示します。どの事情がどれだけ額に響くかの判断は、弁護士に委ねます。

不倫の慰謝料の減額はどんなときに検討される?

慰謝料の根拠は、故意または過失で他人の権利や法律上保護される利益を侵害した人の賠償責任を定めた民法709条と、財産以外の損害の賠償を定めた710条です。条文に額の決め方は書かれていません。そのため、減額が問題になる事情は、大きく次の2種類に分けて考えると整理しやすくなります。

減額が検討される事情の2つの種類
種類 中身 主な根拠
責任そのものに関わる事情 関係を持った当時、相手の婚姻関係がすでに破綻していた。既婚と知らず、知ることもできなかった 最高裁 昭和54年・平成8年・令和8年の判決
請求の中身に関わる事情 請求の名目が「離婚に伴う慰謝料」になっている。同じ損害について配偶者側からすでに支払われている。時効の期間が過ぎている 最高裁 平成31年の判決、民法719条・724条・145条

責任そのものに関わる事情が認められれば、減額にとどまらず、責任を負わないと判断されることもあります。反対に、責任があることを前提に、額の大きさを左右する事情(婚姻期間、関係の期間、相手の夫婦への影響など)が論じられることもあります。額を上下させうる事情を一覧で見たいときは離婚慰謝料が高額になる事情とは?判決と条文で確かめられる範囲のチェックリストが参考になります。

婚姻関係の状態:関係を持った当時、相手の夫婦は破綻していたか

最高裁は平成8年3月26日の判決で、配偶者と第三者が肉体関係を持った当時、夫婦の婚姻関係がすでに破綻していたときは、特段の事情がない限り、第三者はもう一方の配偶者に対して不法行為の責任を負わないと判断しました。不倫が責任を生むのは、それが「婚姻共同生活の平和の維持」という利益を侵すからで、すでに破綻していればその利益があるとはいえない、という理由です。

ただし、この判決は「別居していれば破綻」「別居から何年で破綻」と線を引いたものではありません。その事件では、別居に至るまでの長い対立や調停の申立てなどの事情も含めて、破綻していたと認められました。「家庭内別居だと聞いていた」「夫婦仲は冷めていると言われた」というだけで破綻と言えるわけではないので、次のような具体的な事実を書き出します。

  • 相手の夫婦が別居していたか。いつから、どんな形で。
  • 離婚の話し合いや調停が始まっていたか。
  • 相手から見せられたもの(離婚届、夫婦間のメッセージなど)や、聞いた話の中身と時期。
  • 関係を持ち始めた時期と、上の事情の時期の前後。

既婚の認識:知っていたか・知ることができたか

昭和54年3月30日の最高裁判決は、配偶者のいる人と関係を持った第三者の責任を、故意または過失がある限りとしています。相手が独身だと偽っていて、それを信じる事情があった場合は、この「故意・過失」の有無が問題になります。既婚と知らなかった場合の考え方は既婚者だと知らなかったのに慰謝料を請求されたら:故意・過失の考え方で扱っています。

2026年6月5日の最高裁判決は、相手から「離婚するつもり」と伝えられ、相手が記入した離婚届を見せられていた人の過失をめぐる事件で、「相手がすでに離婚したと信じた相当の理由があったか」だけを検討して過失ありとした原審を誤りとし、「婚姻関係が破綻していると信じ、そう信じる相当の理由があったか」まで検討するべきだとして、審理をやり直させました。差し戻しなので最終的な結論は判決からは見えず、「離婚届を見せられれば責任がない」と言ったものでもありません。請求された側にとっての意味は、既婚と知らなかった事情や、相手から聞かされた夫婦の状態、破綻していると信じた事情を、具体的に示す材料が大切になるということです。

請求の中身に関わる事情:名目・二重の受け取り・時効

責任があるとしても、請求の中身を見直す余地がある場合があります。

1. 請求の名目。 不貞行為そのものの慰謝料と、「夫婦を離婚させたこと」への慰謝料は、最高裁の平成31年2月19日の判決で区別されています。判決は、不貞の相手に後者を請求できるのは、離婚させる意図で婚姻関係に不当に干渉したといった特段の事情がある場合に限るとしました。ここで気をつけたいのは、判決が不貞行為そのものの責任は別の話としている点です。名目を言い換えれば請求が消えるわけではなく、減額の材料になるのは「離婚に伴う慰謝料」の部分が請求に混ざっているときです。名目の見分け方は不倫の慰謝料を請求されたらすること:無視しない・すぐ払わない理由と順番にあり、ここでは相談の論点として挙げるにとどめます。

2. 同じ損害についての支払い。 民法719条1項は、共同の不法行為をした人は各自が連帯して賠償する責任を負うと定めています。請求する側は配偶者と不倫相手のどちらにも請求できますが、同じ損害を二重に受け取れるわけではありません。相手の夫婦の間で、配偶者からすでに慰謝料にあたるお金が支払われていないか、離婚の際の取り決めがどうなっているかは、整理しておきたい事情です。払った後に配偶者側へ負担を求める考え方(求償)は求償権の放棄とは?示談で放棄を求められたときに確かめることで扱っています。

3. 時効。 慰謝料の請求権は、損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で時効により消えます(民法724条)。ただし、時効は当事者が援用しなければ裁判所はそれによって判断できません(民法145条)。途中で支払いを約束した、一部を払ったといった事情があると、時効が新たに進み直すこともあるので、期間が過ぎているかどうかは弁護士に確かめます。

材料を整理して弁護士に渡す:チェックリストと聞き方

減額を求めるかどうか、どの事情をどの順番で示すかは、事実と証拠の組み合わせで決まります。相談の前に、次の表を埋めておくと、限られた時間で見通しを聞けます。

整理する事情 書き出すこと 手元に残す材料
関係の時期 始まった日と終わった日(おおよそでも) メッセージの日付、予定表
既婚と知った時期 いつ、どうやって知ったか プロフィール、相手の言葉の記録
相手の夫婦の状態 別居、離婚の話し合い、聞いていた話 見せられた書面、メッセージ
請求の名目と内訳 書面に書かれた名目と金額の内訳 請求の書面、封筒
すでにした支払いや約束 払った額、書いた誓約書や謝罪文 振込の記録、書面の写し
相手の夫婦の今の状況 離婚したか、同居を続けているか(分かる範囲で) 書面の記載、相手の話

相談で聞く例:「この請求の名目と額について、こちらが示せる事情はどれですか。示すならどの順番がよいですか。示した場合に、話し合いや裁判で相手が反論してきそうな点は何ですか。」

手元にある材料は、自分に不利に見えるものも消さずに持っていきます。都合のよいものだけを選んで見せると、弁護士も見通しを誤ります。

裁判を起こされて訴状が届いた場合は、こうした事情を答弁書などで主張することになり、期限のある手続になります。その場合の進め方は、次の記事不倫で訴えられて訴状が届いたら:答弁書の期限と弁護士への相談で扱います。減額の事情があっても、それを示す場面で何も答えなければ使えません。請求が届いた段階から順番に準備していくことが、結果として額の見直しにもつながります。

よくある質問

Q. 「相手から誘われた」ことは、減額の事情になりますか?

最高裁は昭和54年3月30日の判決で、配偶者のいる人と関係を持った第三者は、故意または過失がある限り、どちらが誘惑したかにかかわらず責任を負うとしています。誘われたことだけで責任がなくなるわけではありません。額の判断でどう扱われるかは事情しだいなので、言い分として書き出し、弁護士に伝えたうえで使い方を決めます。

Q. 収入が少ないことを伝えれば、減額してもらえますか?

収入の少なさは、分割や支払い時期を相談するときの大事な材料ですが、慰謝料の額そのものを決める事情とは分けて考えます。話し合いで相手が事情をくんで額を下げることはあっても、それは合意の結果です。払い方の相談の進め方は[不倫の慰謝料が払えないとき:分割払いの決め方と自己破産で残るもの](/isharyo-haraenai/)で扱っています。

Q. 減額の交渉を自分でしてもいいですか?

自分で相手と話し合うことはできます。ただ、話し合いの中で事実を認める発言をしたり、根拠のないまま額に同意したりすると、後で覆すのは難しくなります。少なくとも一度は弁護士に相談し、こちらが示せる事情と、示し方の順番を決めてから話すほうが安全です。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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