不倫の慰謝料を請求されたらすること:無視しない・すぐ払わない理由と順番
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不倫の慰謝料を請求されたら、無視もせず、その場で払うと答えもせず、まず請求の中身を確かめて、返事をする前に弁護士などに相談するのが基本の順番です。無視すると相手は調停や訴訟に進むことができ、裁判で何も答えなければ相手の言い分を認めたものとして扱われるおそれがあります。反対に、言われた額をすぐに払ったり認めたりすると、根拠の分からない金額で決まってしまったり、後で追加の請求が来たりすることがあります。この記事では、その理由と、請求を受けた日から相談までの進め方を整理します。
不倫の慰謝料を請求されたら最初にすること:無視しない・その場で払わない
請求は、内容証明郵便、手紙、メッセージ、電話、直接の呼び出しなど、さまざまな形で届きます。どの形でも、最初の数日は次の3つだけに絞ります。
- 届いたものを保管する。 封筒、書面、メッセージの画面、電話の日時と相手の名乗りをそのまま残します。腹が立っても、破ったり消したりしません。
- 期限を確かめる。 「○日以内に回答」「○月○日までに支払え」といった期限を書き出します。期限までに相談が間に合わないときは、返事の時期だけを伝える方法があります(下の文例)。
- その場で約束しない。 電話や対面で「払うと言え」「認めろ」と迫られても、「書面で確認してから返事します」とだけ伝えます。
無視とすぐの支払いを避ける理由は、次のとおりです。
| やってしまいがちな対応 | 起きうること |
|---|---|
| 連絡を無視する | 相手は調停や訴訟に進むことができる。訴えられて裁判の期日に何も答えずに欠席すると、相手の主張した事実を認めたものとみなされることがある(民事訴訟法159条1項・3項) |
| 言われた額をその場で払う | 金額の根拠が分からないまま決まる。合意の範囲を書面にしていないと、後で別の名目の請求が来たときに「もう済んだ」と示しにくい |
| 電話で「認めます」「払います」と言う | 支払いや支払いの約束が、相手の権利を認めた「承認」に当たると判断されると、時効がその時から新たに進み直す(民法152条)。当たるかどうかは個別の事情しだい |
| 交際相手と口裏を合わせる | 二人の言い分が食い違ったときに信用を失う。立場が違うので、それぞれが相談したほうがよい |
訴状が届いた場合は、答弁書の期限があり、扱いが急ぎになります。その場合の進め方は不倫で訴えられて訴状が届いたら:答弁書の期限と弁護士への相談で扱っています。
文例(期限までに相談が間に合わないとき):「○月○日付のご連絡を受け取りました。内容を確認したうえで、○月○日までに書面でお返事します。」
この文は受け取ったことと返事の時期を伝えるだけのものです。事実を認める言葉や、謝罪と支払いをまとめて約束する言葉は入れません。
請求の中身を確かめる:誰から・何について・いくら・いつまで
書面が届いたら、感情とは切り離して、書かれていることを項目ごとに抜き出します。
| 項目 | 見るところ | 確かめる理由 |
|---|---|---|
| 差出人 | 相手の配偶者本人か、代理人の弁護士か、それ以外か | 代理人が弁護士なら、以後の連絡はその弁護士とする。差出人が分からない・連絡先が不自然なら詐欺も疑う |
| 誰の何についての請求か | 不倫の相手方は誰か、関係の時期はいつと書かれているか | 自分の記憶と違う点がないかを見る |
| 請求の名目 | 「不貞行為の慰謝料」か「離婚に伴う慰謝料」か | 名目で考え方が変わる(下で説明) |
| 金額 | 慰謝料のほか、調査費用・弁護士費用などが含まれているか | 内訳ごとに根拠を確かめる |
| 期限 | 回答の期限と支払いの期限 | 返事の段取りを決める |
| 金銭以外の要求 | 謝罪文、連絡しない約束、退職・転居など | 応じられるか、応じるなら書面にするかを考える |
| 書面の形 | 内容証明郵便か、普通の手紙・メッセージか | 内容証明なら、出した日と内容が証明される |
名目の違いは大切です。不貞行為そのものの慰謝料と、夫婦が離婚したことに伴う慰謝料は別のもので、最高裁の平成31年2月19日の判決は、後者を不貞の相手に請求できるのは特段の事情がある場合に限ると示しています。書面が「離婚に伴う慰謝料」を不倫相手である自分に求めているなら、相談のときに真っ先に見てもらう点です。ただし、不貞行為そのものの責任は別の話なので、名目だけで請求が退けられると考えてはいけません。減額の材料としての整理は不倫の慰謝料の減額が検討される事情:請求された側が整理する材料に譲ります。
請求には期限の決まりもあります。不法行為による損害賠償の請求権は、損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で時効により消えます(民法724条)。ただし、時効は当事者が「援用」しなければ裁判所はそれによって判断できず(民法145条)、数え始めや途中で止まる事情も絡むので、自分の場合に当たるかは弁護士に確かめます。差出人の確かめ方は、身に覚えがない請求なら身に覚えのない不倫の慰謝料請求が来たら:詐欺を疑うときの確かめ方、内容証明郵便が届いた場合の読み方は次の記事不倫の内容証明が届いたら:中身の確かめ方と返事をする前の準備で扱います。
自分の側の事実を整理する:相談の前に書き出すこと
請求する側の言い分だけでなく、自分の側の事実を時系列で書き出しておくと、相談の時間を有効に使えます。慰謝料の責任を考えるときに問われやすい点に沿って、次の順で書きます。
- 相手が既婚者だと知った時期ときっかけ。 責任の前提になるのは「故意または過失」です(昭和54年3月30日の最高裁判決)。知らなかった、知りようがなかったという事情があるなら、それを示す材料(相手の言葉、プロフィール、メッセージ)を残します。
- 関係を持った時期と、そのころの相手の夫婦の様子。 関係を持った当時に相手の夫婦の婚姻関係がすでに破綻していたときは、特段の事情がない限り責任を負わないとする最高裁判決があります(平成8年3月26日)。「破綻していた」と言えるかは事実関係しだいなので、自分で決めつけず、聞いていた話や見ていた事情を書き出すだけにします。
- 関係が今も続いているか。 終わっているなら、いつ、どう終わったか。
- すでにしたこと。 相手の配偶者と会った、謝罪文や誓約書を書いた、お金を払った、などは全部書きます。書かされた誓約書がある場合は不倫の誓約書や念書を書かされたときも参考になります。
- 払える範囲。 毎月の収入、貯金、借入れ。払えない額を約束すると、後の支払いで行き詰まります。払えない場合の考え方は不倫の慰謝料が払えないとき:分割払いの決め方と自己破産で残るもので扱っています。
手元にあるメッセージや写真は、自分に不利に見えるものも消さずに残します。消したことが後で分かると、説明全体が信じてもらいにくくなります。
相談の順番:弁護士・認定司法書士・法テラス
返事をする前に、次の順で相談先を決めます。
- 書面と、上で書き出したメモをそろえる。 相談の予約のときに、請求の額と期限を伝えます。
- 相談先を選ぶ。 相手方との交渉や、裁判所の手続の代理を頼めるのは原則として弁護士です。請求されている額が140万円以下なら、法務大臣の認定を受けた司法書士(認定司法書士)も、裁判外の和解の交渉や簡易裁判所の訴訟の代理ができます(司法書士法3条1項6号・7号、2項)。140万円は頼める相手の範囲の線で、慰謝料の目安ではありません。
- 費用が心配なら法テラスを使う。 法テラス(日本司法支援センター)は、費用を払う力がない人などを対象に、法律相談や、弁護士に依頼する費用の立替えを業務としています(総合法律支援法30条1項2号)。立替えは原則として返す仕組みで、利用には収入などの基準があります。手順は法テラスとは?浮気・離婚の相談で使える無料相談と費用の立替えの条件で扱っています。
- 相談で聞くことを決めておく。 請求の名目と額の根拠、こちらが示せる事情、返事の仕方と期限、依頼した場合の費用。
- 合意するときは書面にする。 金額や支払い方法、清算の範囲を書面で確かめてから応じます。示談書で見る条項は不倫の示談に請求された側が応じるとき:示談書で確かめる条項にまとめています。
請求された側の事件を扱う弁護士の探し方と、費用の確かめ方は慰謝料請求された側の弁護士の選び方:費用と相談で聞くことで扱っています。
請求された後の生活で気をつけること
請求への対応が続く間、日々の行動でも話がこじれることがあります。次の点に気をつけます。
- 相手の配偶者や家族に、自分から連絡を重ねない。 謝罪のつもりでも、相手には圧力や言い訳に映ることがあります。連絡するなら、弁護士に相談してからにします。
- SNSに請求のことを書かない。 相手の配偶者を責める投稿や、事情をほのめかす投稿は、新たな争いのもとになります。
- 交際相手との関係をどうするか決める。 関係を続けながら謝罪や減額を求めると、話し合いの前提が崩れます。終わらせる場合の手順は不倫をやめたいのにやめられないとき:終わらせる5段階と状況別の分かれ道を参照してください。
- 脅しや待ち伏せがあれば、安全を先にする。 「職場にばらす」「家に行く」などと言われたら、請求の話とは分けて警察に相談します。
慰謝料を請求されたことは重い出来事ですが、書面を読み、事実を整理し、相談してから返事をする、という順番を守れば、焦って不利な約束をすることは避けられます。
よくある質問
Q. 慰謝料を請求されたことは、会社に知られてしまいますか?
請求の書面は自宅に届くこともあれば、勤務先しか連絡先を知られていない場合などに職場へ届くこともあります。届いた場所にかかわらず、請求への対応と勤務先での扱いは別の問題として考えます。懲戒の考え方と就業規則の確かめ方は[不倫が会社にバレるとどうなる?懲戒の考え方と就業規則の確かめ方](/furin-kaisha/)で扱っています。
Q. 相手の配偶者に直接会って謝りたいのですが、会ってもいいですか?
謝りたい気持ちがあっても、請求を受けた後に一人で会うと、その場で金額や条件の約束を求められたり、話した内容が後の話し合いで使われたりすることがあります。会う前に弁護士に相談し、謝罪の言葉と金額の話を分けておくのが安全です。脅すような言葉や、職場・家族に知らせるという話が出ている場合は、会わずに[不倫で脅迫されたとき:110番と#9110の使い分けと最初にすること](/uwaki-kiken-anzen-saki/)を先に読んでください。
Q. 一緒に不倫をしていた相手と、対応を相談してもいいですか?
気持ちは分かりますが、請求への答え方を二人で合わせることはおすすめしません。民法719条は、共同の不法行為をした人は各自が連帯して賠償する責任を負うと定めており、請求する側はどちらにも請求できる立場にあります。二人の利害は同じとは限らないので、それぞれが自分の弁護士に相談し、連絡のやり取りも最小限にします。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第145条・第150条・第152条・第709条・第710条・第719条・第724条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事訴訟法 第158条・第159条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 最高裁判所 昭和54年3月30日 第二小法廷判決(裁判所)
- 最高裁判所 平成8年3月26日 第三小法廷判決(裁判所)
- 最高裁判所 平成31年2月19日 第三小法廷判決(裁判所)
- 司法書士法 第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 総合法律支援法 第30条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。