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不倫慰謝料の相場に公的な基準はある?ネットの金額を読む7つの確認点

この記事のもくじ
  1. なぜ不倫慰謝料の相場は一律に言えないのか
  2. ネットの「相場」の数字を読むときの7つの確認点
  3. 請求額をどう決めるかで変わること:話し合いと裁判の費用
  4. 自分の場合の見込みを確かめる方法

不倫慰謝料の相場を、一つの数字で示す公的な統計や基準はありません。民法は慰謝料の金額を決めておらず、不倫の慰謝料について判断した最高裁判決にも金額の基準は出てきません。最高裁判所の司法統計年報(家事編)にも、慰謝料の金額を区分した表はありません。ネットで見る「相場は○〜○万円」という数字は、書き手が集めた事例や経験から作ったもので、どんな事例を集めたかで大きく変わります。自分の場合の見込みは、事情を整理して弁護士に聞くのが近道です。この記事では、なぜ一律に言えないのかと、数字を読むときの確認点をまとめます。

なぜ不倫慰謝料の相場は一律に言えないのか

理由は、金額を決める仕組みそのものにあります。

  1. 法律が金額を決めていない:民法709条は「生じた損害を賠償する責任」を、710条は財産以外の損害の賠償を定めるだけで、金額の表や上限はありません。精神的な苦痛の大きさは事件ごとに違うという前提です
  2. 最高裁判決は考え方を示し、金額は示していない:最高裁平成8年3月26日判決(婚姻関係の破綻後の関係)や平成31年2月19日判決(不倫相手への離婚に伴う慰謝料)は、誰がどんな場合に責任を負うかの考え方を示したもので、いくらが相当かの基準ではありません
  3. 公的な統計に慰謝料だけの表がない:司法統計年報(家事編)令和7年版には、離婚の調停などで取り決めた財産分与の額や養育費の月額の表はありますが、慰謝料の金額を区分した表はなく、慰謝料に関する調停事件の件数が数えられているだけです
  4. 多くは話し合いで決まり、記録が公開されない:示談で決まった金額は当事者の間の書面にとどまり、まとまった数字として集計されていません

家庭裁判所の家事手続案内も、手続の案内をする窓口で、法律相談には応じていません。裁判所のページは、応じない相談の例として「慰謝料は幾らくらいもらえるか」を挙げています。公的な窓口で「相場」を聞いて答えが返ってくる仕組みにはなっていない、ということです。

ネットの「相場」の数字を読むときの7つの確認点

相場の数字を見たら、次の点を確かめると、その数字が自分の事情にどこまで近いかが見えてきます。

確認点 見るところ 数字が変わる理由
1. 何の金額か 請求した額か、判決で認められた額か、示談で決まった額か 請求額は認められた額より大きく出やすい
2. 誰に対する請求か 配偶者か、不倫相手か 不倫相手には原則として離婚に伴う慰謝料を請求できない(平成31年判決)
3. 離婚したかどうか 離婚した事例と、夫婦を続けた事例が混ざっていないか 婚姻関係への影響の大きさが違う
4. 事例の集め方 何件の事例か、どの期間・どの裁判所か 少数の目立つ事例で範囲が広がる
5. いつの事例か 古い事例が中心になっていないか 年代で事情や考え方が変わりうる
6. 誰が書いたか 法律事務所や探偵社の広告ページか 依頼を受ける側の説明で、条件の書き方に偏りが出やすい
7. 費用を引く前か後か 受け取った額から弁護士費用・実費を引いた手取りか 同じ金額でも手元に残る額が違う

特に1と2は混ざりやすい点です。「不倫の慰謝料」と書かれていても、配偶者への離婚に伴う慰謝料と、不倫相手への不倫行為そのものの慰謝料が一緒に並んでいることがあります。言葉の違いは離婚の慰謝料とは?不倫の慰謝料との違い、配偶者と不倫相手の両方に求める場合は配偶者と不倫相手の両方に慰謝料を請求できる?で整理しています。

計算ツールに事情を入れて金額を出すサイトもありますが、何を根拠に計算しているかが示されていなければ、上の確認点を当てはめられません。ツールの数字の扱い方は慰謝料の相場は計算できる?計算ツールの数字をうのみにしない理由で扱います。

図解:相場の数字が人によって違って見える仕組み
  • 集めた事例の種類(請求額・判決額・示談額)が違う
  • 請求の相手(配偶者・不倫相手)が違う
  • 離婚した事例と、しなかった事例の比率が違う
  • 古い事例・目立つ事例の混ざり方が違う → 同じ「相場」という言葉でも、別のものを数えていることがある

請求額をどう決めるかで変わること:話し合いと裁判の費用

相場の数字が気になるのは、いくらを求めればよいかを決めたいからです。金額の決め方で、先々の手続にも違いが出ます。

まず話し合いでは、根拠を説明できない高い金額を求めると、相手が反発して話がまとまりにくくなります。反対に、急いで低い金額で示談すると、清算の文言が入った書面のせいで後から上乗せを求めにくくなります。

裁判になる場合、不倫相手への慰謝料請求は地方裁判所か簡易裁判所の民事訴訟になり、訴えるときの手数料は請求額(訴額)で決まります。2026年5月21日から、書面で出すか電子で出すかで額が分かれました。裁判所の手数料額早見表(令和8年9月15日改訂)の民事訴訟の欄は次のとおりです。

請求額(訴額) 書面で申し立てる場合 電子で申し立てる場合
100万円 12,500円 11,400円
200万円 17,500円 16,400円
300万円 22,500円 21,400円
500万円 32,500円 31,400円

古い記事にある「300万円の請求なら印紙2万円」は、2026年5月21日より前に訴えた事件の額です。ほかに郵便料や、依頼すれば弁護士費用がかかります。裁判の費用の内訳は不倫の裁判費用の内訳:印紙代・郵便料・弁護士費用の見方にまとめています。

自分の場合の見込みを確かめる方法

一律の相場がない以上、自分の場合の見込みは、事情を具体的に伝えて聞くしかありません。相談の前に、次のメモを作っておくと話が早く進みます。

  1. 婚姻した時期、子どもの有無と年齢
  2. 不倫の期間(いつ始まり、いつ知ったか、今も続いているか)
  3. 不倫相手が既婚と知っていたと考える理由
  4. 夫婦の状態(同居か別居か、離婚するか続けるか)
  5. 手元にある証拠の一覧(日付・種類)
  6. 求めたいこと(金額・謝罪・接触しない約束など)

見込みを聞く相手は、個別の事情に当てはめた判断ができる弁護士です。弁護士の選び方は不倫慰謝料を弁護士に頼むときの選び方、費用の見方は慰謝料請求の弁護士費用の内訳で扱っています。

金額を左右しうる事情を一覧で見たいときは、離婚慰謝料が高額になる事情とは?判決と条文で確かめられる範囲のチェックリストが参考になります。離婚した場合に家庭裁判所の統計で分かる範囲は、次の記事離婚慰謝料の相場は統計で分かる?家庭裁判所の財産分与の額から読めることで扱います。慰謝料の全体像は浮気・不倫の慰謝料とは?請求できる場面・金額の決まり方・進め方の全体像へ。

よくある質問

Q. ネットで見た「相場」の範囲で請求すれば安全ですか?

安全とは言えません。どの範囲が自分に近いかは、離婚したか、関係の期間、相手が既婚と知っていたかなどの事情で変わり、ネットの数字はその事情をそろえていないことが多いからです。根拠のない高額を求めると話し合いがこじれ、低すぎれば後から取り戻しにくくなります。事情を整理して弁護士に見込みを聞いてから金額を決めてください。

Q. 家庭裁判所の窓口で慰謝料の相場を教えてもらえますか?

家庭裁判所の家事手続案内は、手続を使えるか、どう申し立てるかを案内する窓口で、法律相談には応じていません。裁判所のページも、応じない相談の例として「慰謝料は幾らくらいもらえるか」を挙げています。金額の見込みは弁護士の法律相談で聞く話になります。

Q. 不倫相手が払えるお金を持っていない場合、金額は下がりますか?

金額の決まり方と、決まった額を実際に払ってもらえるかは、分けて考えると整理しやすくなります。相手に払えるお金がないと、取り決めても受け取れない、分割になるといった問題が起きます。相手の資力をどう扱うかは事件ごとの判断なので、分かっている相手の仕事や財産の情報をまとめて弁護士に伝えてください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

離婚慰謝料の相場は統計で分かる?家庭裁判所の財産分与の額から読めること

浮気・不倫の慰謝料とは?請求できる場面・金額の決まり方・進め方の全体像

慰謝料の相場は計算できる?計算ツールの数字をうのみにしない理由

不倫慰謝料を弁護士に頼むときの選び方:取扱い分野・費用・相談の準備