慰謝料・内容証明・示談 / 制度解説

離婚の慰謝料とは?不倫の慰謝料との違いと請求する相手の考え方

この記事のもくじ
  1. 離婚の慰謝料とは:離婚せざるを得なくなった苦痛の賠償
  2. 離婚の慰謝料と不倫の慰謝料の違い
  3. 離婚の慰謝料を請求する相手:配偶者と不倫相手
  4. 離婚の慰謝料を決める手続:協議・調停・訴訟
  5. 離婚の慰謝料と財産分与を分けて考える

離婚の慰謝料とは、相手の行為によって離婚せざるを得なくなった精神的苦痛を償うための損害賠償です。浮気が原因の離婚では、これとは別に、不貞行為そのものによる精神的苦痛の慰謝料も考えられます。最高裁平成31年2月19日判決は、不倫相手に対しては、特段の事情がない限り離婚に伴う慰謝料は請求できないとしたので、離婚の慰謝料を請求する相手は原則として配偶者になります。不貞行為そのものの慰謝料は、要件を満たせば配偶者と不倫相手のどちらにも請求できます。

離婚の慰謝料とは:離婚せざるを得なくなった苦痛の賠償

裁判所の慰謝料請求調停のページは、慰謝料を、相手方の不法行為で受けた精神的苦痛を償う損害賠償と説明し、「相手方の行為により離婚せざるを得なくなった場合など」に請求できると案内しています。根拠になる条文は、不貞行為の慰謝料と同じく民法709条と710条です。言葉の意味や、示談金・解決金との呼び方の違いは慰謝料とは?意味・損害賠償との違い・浮気で問題になる場面で整理しています。

離婚の慰謝料が問題になるのは、浮気(不貞行為)のほか、相手の暴力など、一方の行為が原因で離婚に至った場合です。反対に、価値観の違いなどで、どちらか一方の行為が原因とは言いにくい離婚では、慰謝料が問題にならないこともあります。その違いは離婚で慰謝料なしになる場合の記事で扱っています。暴力がある場合は、慰謝料より先に安全を確保することを考え、DVがあった離婚の慰謝料の記事を読んでください。

離婚の慰謝料と不倫の慰謝料の違い

浮気が原因で離婚する場合、「何に対する慰謝料か」で2つに分けると、請求する相手と考える点が整理できます。

比較表:離婚の慰謝料と不倫(不貞行為そのもの)の慰謝料
離婚に伴う慰謝料 不貞行為そのものの慰謝料
何に対する賠償か 離婚せざるを得なくなったことによる精神的苦痛 不貞行為によって受けた精神的苦痛
離婚が前提か 離婚に至ったことが前提 離婚しない場合も問題になる
配偶者に対して 有責行為で離婚をやむなくされた場合に問題になる 問題になる
不倫相手に対して 特段の事情がない限り請求できない(平成31年判決) 故意・過失などの要件を満たせば問題になる
期限の考え方 離婚との関係で数え始めを考える 不貞行為と不倫相手を知った時が基準になる

この区別が表れたのが平成31年判決の事件です。この事件では、夫が不倫を知った頃に妻は不倫相手との関係を解消し、その後も同居を続けていました。離婚調停が成立したのはそれから約5年後で、夫は不倫相手に「離婚に伴う慰謝料」を請求しましたが、最高裁は特段の事情はうかがわれないとして請求を退けました。期限の数え方の違いは離婚慰謝料の時効の記事に分けています。

金額について、民法に基準額や計算式はなく、最高裁の平成31年判決にも金額の基準は出てきません。「離婚慰謝料の相場」として出回る数字は、出どころと対象の事件を確かめてから読みます。読み方は離婚慰謝料の相場の記事で扱っています。

離婚の慰謝料を請求する相手:配偶者と不倫相手

平成31年判決は、離婚するかどうかは本来その夫婦の間で決める事柄だという理由で、不倫相手の責任を「不貞行為を理由とする責任」と「夫婦を離婚させたことの責任」に分けました。後者を負うのは、不倫相手が夫婦を離婚させることを意図して婚姻関係に不当な干渉をするなどして、離婚のやむなきに至らしめたと評価される特段の事情があるときに限られます。

請求先 離婚に伴う慰謝料 考えるときの手がかり
不倫をした配偶者 請求の中心になる 判決も、配偶者に対しては有責行為で離婚をやむなくされた苦痛の賠償を求められることを前提にしている
不倫相手 原則として請求できない 不貞行為そのものの慰謝料として請求できるかを別に検討する

不倫相手に請求する場合の考え方は不倫相手に慰謝料を請求するときの記事、その前提となる条件は慰謝料請求の条件の記事にまとめています。配偶者に請求する場合、民法159条により、夫婦の一方が他方に持つ権利は婚姻の解消から6か月を経過するまで時効が完成しません。

離婚の慰謝料を決める手続:協議・調停・訴訟

離婚の慰謝料は、離婚そのものと一緒に決めることが多いお金です。どの手続で決めるかによって、使える場と費用が変わります。

  1. 協議離婚の話し合いで決める:金額と支払い方法を合意し、書面に残します。残し方は協議離婚で慰謝料を決めるときの記事へ。
  2. 夫婦関係調整調停(離婚)で決める:裁判所は、離婚そのものだけでなく慰謝料も一緒に話し合えると案内しています。費用は収入印紙1,200円分と、裁判所ごとに額が違う連絡用の郵便切手です。
  3. 離婚後に慰謝料請求調停で決める:離婚した元夫・元妻が申し立てる手続で、費用は同じく収入印紙1,200円分と郵便切手です。
  4. 離婚訴訟とあわせて請求する:人事訴訟法17条により、離婚の請求と、その原因となった事実による損害賠償の請求は、一つの訴えで家庭裁判所に出せます。

慰謝料の調停がまとまらずに終わった場合は、養育費や財産分与の調停と違って審判へ自動では移らないので、訴えを起こすかどうかを自分で決めることになります。調停が終了した旨の通知を受けた日から2週間以内に訴えを起こすと、調停を申し立てた時に訴えを起こしたものとみなされます(家事事件手続法272条3項)。手続全体の比較は不倫慰謝料の請求方法の記事にあります。

離婚の慰謝料と財産分与を分けて考える

離婚の話し合いでは、慰謝料と財産分与が一緒に出てきます。財産分与は、婚姻中に夫婦で得た財産を分ける制度で(民法768条)、不貞行為をしたかどうかとは別の制度です。2026年4月1日以後の離婚なら離婚の時から5年、それより前の離婚なら2年が、家庭裁判所に請求できる期間です。

離婚前に、次の点を書き出しておくと、何を慰謝料として求め、何を財産分与として分けるのかが混ざりません。

  • 求めたいのは、不貞行為そのものの慰謝料か、離婚に伴う慰謝料か、その両方か
  • 請求する相手は配偶者だけか、不倫相手にも請求するか
  • 夫婦の財産(預貯金・家・保険・退職金の見込み)の一覧
  • 一括で受け取るか、分割にするか、支払いが止まったときにどうするか

財産分与の詳しい仕組みは財産分与の基本の記事、不倫の慰謝料全体の流れは浮気・不倫の慰謝料とは?請求できる場面・金額の決まり方・進め方の全体像で確かめられます。

よくある質問

Q. 浮気をされて離婚する場合、慰謝料は二つ請求できるのですか?

不貞行為そのものによる苦痛と、離婚せざるを得なくなった苦痛は、理屈の上では別の損害として区別されます。ただ、同じ配偶者に請求する場面では、まとめて一つの慰謝料として話し合われることもあります。どう組み立てるかは時効や相手の状況で変わるので、弁護士に相談して決めます。

Q. 離婚届を出した後でも、離婚の慰謝料を請求できますか?

離婚した後でも、話し合いがまとまらなければ家庭裁判所の慰謝料請求調停を使えると、裁判所が案内しています。ただし民法724条の時効があるので、離婚した日や不倫を知った日を確かめ、早めに動きます。離婚後に不倫が分かった場合の考え方は別の記事で扱っています。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

慰謝料請求の条件は5つ:不貞行為・故意過失・婚姻関係・時効・支払い済みか

不倫相手に慰謝料を請求できる?既婚の認識・破綻・配偶者との二重取りの3点

離婚慰謝料の時効:離婚した日と不倫を知った日のどちらから数えるか

協議離婚で慰謝料を決めるとき:金額・支払い方法・書面の残し方