慰謝料・内容証明・示談 / Q&A

慰謝料請求の時効が迫っているとき:完成猶予・更新の仕組みと急ぐこと

この記事のもくじ
  1. Q. 慰謝料請求の時効が近いとき、何をすれば完成を止められる?
  2. Q. 内容証明を送れば時効は止まる?催告の6か月の使い方
  3. Q. 相手と話し合い中なら、時効は進まない?協議の合意を書面にする
  4. Q. 残りが短いときは訴える?調停する?手続ごとの違い
  5. Q. なぜ時効が近いときは弁護士に急いで相談するのか

慰謝料請求の時効が迫っているときは、時効の「完成猶予」(一定の間、完成しない)と「更新」(そこから数え直す)の仕組みを使って、完成を先に延ばします。内容証明などで請求する「催告」は6か月だけ、訴えや調停は手続が続く間、協議をする合意を書面で交わせば原則1年、完成しません。どれも条件と使える回数に限りがあるので、残りが数か月なら、日付の資料を持ってすぐ弁護士に相談するのが現実的です。

Q. 慰謝料請求の時効が近いとき、何をすれば完成を止められる?

民法は、時効の完成を止める道を「完成猶予」と「更新」に分けて定めています(2020年4月1日施行の改正前は「中断・停止」と呼ばれていました)。不倫の慰謝料で使うことが多いのは、次の5つです。

手段 条文 効果 注意点
内容証明などで請求する(催告) 150条 催告の時から6か月、完成しない 2回目の催告は効かない。6か月の間に次の手を打つ
協議をする合意を書面で交わす 151条 合意から1年(短い期間を決めたらその期間)、完成しない 相手が書面で協議を断ると、その通知から6か月で終わる
訴えを起こす(裁判上の請求) 147条 手続の間、完成しない。判決で確定すれば更新 取下げなどで確定せず終わると、そこから6か月まで
調停を申し立てる 147条 同上(家事調停・民事調停) 不成立で終わった後の動き方に期限がある
相手が支払義務を認める(承認) 152条 その時から新たに進む(更新) 何が承認に当たるかは個別に判断される

時効の期間そのもの(損害と加害者を知った時から3年、不貞行為の時から20年)の数え方は不倫の慰謝料の時効の記事、離婚の慰謝料で起算日がずれる話は離婚慰謝料の時効の記事で扱っています。この記事は「期限が近い」ときの動き方に絞ります。

Q. 内容証明を送れば時効は止まる?催告の6か月の使い方

内容証明郵便で支払いを求めると、民法150条の「催告」として、その時から6か月は時効が完成しません。ただし止まるのではなく、完成が6か月先に延びるだけです。しかも、その6か月の間にもう一度催告しても、猶予の効力はありません(150条2項)。

そのため催告は「時間を稼ぐための最初の一手」と考え、6か月以内に訴えや調停へ進める準備を同時に始めます。届いた日を証明できるよう、配達証明を付けるのが一般的です。内容証明の仕組みと出し方は内容証明郵便の仕組みの記事にあります。

時系列で見る:催告から6か月の間にすること
時点 すること 根拠
0日目 内容証明(配達証明付き)で請求。到達日を記録 150条1項
〜1か月 弁護士に相談し、訴えか調停か、相手の住所・証拠を確認 ―
〜4か月 訴状・申立書と証拠の写しをそろえる ―
6か月以内 訴えの提起や調停の申立て(催告の猶予中に交わした協議の合意には猶予の効力がない) 147条・151条3項
6か月経過 何もしていなければ、猶予は終わる 150条1項

※催告の日から6か月の数え方の細部(初日を入れるかなど)は、弁護士に確かめる。

Q. 相手と話し合い中なら、時効は進まない?協議の合意を書面にする

話し合いをしているだけでは、時効は進み続けます。民法151条は、権利についての協議を行う旨の合意を書面(メールなどの電磁的記録を含む)で交わしたときに限って、完成が猶予されると定めています。猶予の終わりは、次のうち早い時です。

  1. 合意から1年
  2. 合意で1年より短い協議期間を決めたときは、その期間の終わり
  3. 一方が書面で協議の続行を断ったときは、その通知から6か月

再度の合意で延ばすこともできますが、本来の時効が完成すべき時から通算して5年が上限です(151条2項)。また、催告で猶予されている間に交わした協議の合意には猶予の効力がありません(151条3項)。催告と協議の合意を重ねて使えるわけではない点に注意します。

文面の例:「〇〇年〇月〇日の不貞行為に関する慰謝料の請求について、当事者双方は協議を行うことに合意する。協議期間は本書面の日付から6か月とする。」

上の文面は条文の要件(協議を行う旨の合意・書面)を確かめるための例です。慰謝料の額や支払い方法まで書き込む示談とは別物で、実際に交わす前に、弁護士に文言を見てもらいます。話し合いで合意をまとめる手順は不倫の示談の進め方の記事にあります。

Q. 残りが短いときは訴える?調停する?手続ごとの違い

訴えを起こす(裁判上の請求)か、調停を申し立てると、その手続が続く間は時効が完成しません(民法147条1項)。判決や調停の成立で権利が確定すれば、そこから時効は新たに進み、その期間は10年になります(147条2項・169条)。

場面 主な手続 時効との関係で気をつけること
不倫相手に請求する 訴えの提起(地方裁判所・簡易裁判所) 訴状に相手の氏名・住所が要る。特定が遅れると間に合わない
離婚した元配偶者に請求する 慰謝料請求調停(家庭裁判所)または訴え 調停が不成立なら、通知から2週間以内に訴えると申立ての時に訴えたものとみなされる(家事事件手続法272条3項)
婚姻中の配偶者に請求する 離婚調停の中で話し合う、離婚訴訟とあわせて請求 婚姻の解消から6か月は完成しない特例がある(民法159条)

調停は話し合いの手続なので、相手が出てこなかったり合意できなかったりすると不成立で終わります。取下げなどで権利が確定しないまま終わった場合は、その終了から6か月までしか猶予されません(147条1項かっこ書き)。残り期間がごく短く、相手が応じないと見込まれるときは、調停を経ずに訴える選択肢も弁護士と検討します。訴えの流れは不倫の裁判で訴えるときの流れの記事、どこの裁判所に出すかは慰謝料請求の管轄の記事にまとめています。

Q. なぜ時効が近いときは弁護士に急いで相談するのか

理由は3つあります。1つ目は、起算日の判断が人によって違いうることです。「知った時」がいつかは手元の事実で決まるので、自分の数え方より早く期限が来ている可能性があります。2つ目は、手続の選び方を誤ると猶予が効かないことです。催告を重ねる、催告中に協議の合意をする、といった使い方では延びません。3つ目は、訴状の準備に時間がかかることです。相手の住所の確認、証拠の整理、手数料の納付まで、短い日数でこなすのは負担が大きくなります。

相談に持っていくものは次のとおりです。

  • 不貞行為があった時期と、それを知った日・きっかけの資料
  • 不倫相手の氏名・住所を知った日
  • 送った内容証明の控えと配達証明、相手とのやりとり(日付が分かる形)
  • 離婚している場合は、離婚の日と、離婚協議書・調停調書

期間が過ぎているかもしれない場合でも、時効は相手が援用しなければ、裁判所はそれを理由に判断できません(民法145条)。あきらめる前に日付を確かめてもらいます。弁護士の探し方は不倫慰謝料を弁護士に頼むときの選び方の記事、請求の全体の流れは浮気・不倫の慰謝料とは?請求できる場面・金額の決まり方・進め方の全体像を参考にしてください。

よくある質問

Q. 内容証明を2回送れば、時効は1年延びますか?

延びません。民法150条2項は、催告で完成が猶予されている間にもう一度催告しても、猶予の効力はないと定めています。1回目の催告から6か月の間に、訴えや調停などの手続を取る必要があります。催告で猶予されている間に協議の合意を書面にしても、その合意には猶予の効力がありません(民法151条3項)。

Q. 相手が「払うつもりはある」とLINEで言いました。時効はどうなりますか?

民法152条は、権利の承認があったときは時効がその時から新たに進むと定めています。ただ、その言葉が「承認」に当たるかは文面と前後のやりとりで判断されるので、画面を日付ごと保存して弁護士に見てもらいます。承認があると決めつけて手続を遅らせないことが大切です。

Q. 訴えを起こした後に取り下げたら、時効はどうなりますか?

民法147条1項は、判決などで権利が確定しないまま手続が終わった場合、その終了の時から6か月は時効が完成しないと定めています。取り下げた後は、その6か月の間に次の手続を取らないと、時効が完成するおそれがあります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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