不倫の裁判で訴えるときの流れ:訴状・期日・判決・和解と準備
この記事のもくじ
不倫の慰謝料を裁判で請求するときは、訴状を裁判所に出し(民事訴訟法134条)、訴状が相手に送られ(138条)、口頭弁論の期日で互いの主張と証拠を出し合い、最後は判決か和解で終わります。不倫相手だけを訴えるなら地方裁判所か簡易裁判所、離婚の訴えと一緒に請求するなら家庭裁判所です。訴える側が先にそろえるのは、相手の氏名と住所、請求する額、不貞行為を示す証拠、時効の残り期間の4つです。
不倫の裁判で訴えるときの流れ:7つの段階
民事訴訟の流れを、条文に沿って並べると次のようになります。話し合い(示談)や内容証明で解決しなかった後に進むのが一般的ですが、それらを経ないと訴えられないという決まりはありません。
| 段階 | 何が起きるか | 条文 |
|---|---|---|
| ① 訴状の提出 | 当事者、請求の趣旨(いくら払えと求めるか)と原因を書いて出す | 134条 |
| ② 送達と期日の指定 | 裁判所が訴状を相手に送り、第1回口頭弁論の期日を決めて双方を呼び出す | 138条・139条 |
| ③ 答弁書 | 相手が認めるか争うかを書面で出す。出さずに欠席すると、主張を争わないものとして扱われうる | 158条・159条 |
| ④ 主張の整理 | 準備書面と証拠を出し合い、争点を絞る。弁論準備手続に付されることもある | 161条・168条 |
| ⑤ 尋問 | 証人を調べ、続いて当事者本人を尋問する | 207条 |
| ⑥ 和解 | どの段階でも、裁判所は和解を試みることができる | 89条 |
| ⑦ 判決・控訴 | 判決は言渡しで効力を生じ、不服なら判決書の送達から2週間以内に控訴 | 243条・250条・285条 |
訴状が届いたときに答弁書を出さず、最初の期日にも出ないと、訴状の主張を争わなかったものとして扱われることがあります(159条)。訴えられた側の対応は訴状が届いたときの記事にまとめているので、この記事は訴える側の手順に絞ります。
- 訴状と証拠の写しを裁判所に出し、手数料を納める
- 裁判所が訴状を相手に送達し、第1回口頭弁論期日を指定
- 相手が答弁書を出す(争う/認める)
- 準備書面と証拠のやりとりを数回くり返す(争点整理)
- 必要なら証人尋問・本人尋問
- 分かれ道:和解が成立 → 和解の調書(確定判決と同じ効力)/成立しない → 判決
- 判決に不服があれば2週間以内に控訴。確定後も払われなければ強制執行へ
訴える前の準備:相手・請求額・証拠・裁判所を決める
訴状には当事者を書かなければならないので、不倫相手の氏名と住所が分からないと訴えを起こせません。相手が誰か分からない段階なら、まず特定の方法から考えます。正当な手段は浮気相手を特定したいときの記事で整理しています。
次に、請求する額(訴額)を決めます。訴額は手数料の額を決めるだけでなく、提出先にも関わります。慰謝料だけを請求するなら、140万円以下は簡易裁判所、それを超えると地方裁判所です(裁判所法33条・24条)。離婚の訴えとあわせて配偶者に請求する場合は、人事訴訟法17条により家庭裁判所で一緒に審理できます。分かれ目の詳しい整理は慰謝料請求の管轄の記事にあります。
証拠は、不貞行為があったこと、相手が既婚と知っていたか知ることができたこと、受けた苦痛の大きさを示すものに分けて並べます。並べ方は慰謝料請求の証拠をそろえる手順の記事が参考になります。最後に時効の残り期間を確かめ、短ければ準備の順番を入れ替えます(慰謝料請求の時効が迫っているときの記事)。
準備メモの例:「被告=〇〇〇〇(住所は調査報告書に記載)/請求額=〇〇万円とその遅延損害金/証拠=甲1 写真、甲2 メッセージの画面、甲3 診療記録/不貞を知った日=〇〇年〇月〇日」
訴状の出し方と期日の進み方:2026年5月からの変更点
訴状は「請求の趣旨」(例:被告は原告に〇〇万円を支払え)と「請求の原因」(いつ、どんな不貞行為があり、どんな損害が生じたか)を中心に書き、証拠の写しを添えて出します。2026年5月21日に施行された改正民事訴訟法の適用を受ける事件では、手数料の額が書面で出すか電子で出すかで分かれます(裁判所の手数料額早見表)。また、委任を受けた訴訟代理人(簡易裁判所で許可を得た弁護士以外の代理人を除く)は、申立てをオンラインで行う決まりです(132条の11)。額の調べ方は不倫の裁判費用の内訳の記事で扱います。
期日では、口頭弁論は書面で準備しなければならないとされ(161条)、実際には期日の前に準備書面を出し合い、期日で確認する形が中心です。争点と証拠の整理が必要なときは、弁論準備手続に付されることもあります(168条)。この手続は、傍聴できる人が裁判所の許す人などに限られます(169条2項)。尋問では、まず証人を、次に当事者本人を尋問するのが原則です(207条2項)。本人尋問でも、申し出た側に続いて相手方からも質問を受けます(202条・210条)。
請求額が60万円以下なら、簡易裁判所で原則1回の期日で審理する「少額訴訟」を求めることもできます(368条)。ただし相手は、最初の期日で弁論するまでなら通常の手続への移行を求めることができ(373条)、争いが大きい事件に向くとは限りません。
和解と判決:どちらで終わるかと、その後
裁判所は、訴訟がどの程度進んでいても和解を試みることができます(89条)。和解が成立して調書に記録されると、確定判決と同一の効力を持ちます(267条)。和解では、金額のほか、分割払い、接触しないことの約束、口外しないことなど、判決では命じられない内容を入れられる場合があります。和解をすすめられたときに考える点は不倫の裁判で和解をすすめられたときの記事にまとめています。
和解が成立しなければ判決です。判決は言渡しで効力を生じ(250条)、不服がある側は判決書の送達を受けた日から2週間以内に控訴できます(285条)。判決が確定しても相手が払わない場合は、給与や預金の差押えなどの強制執行を考えます。手続は慰謝料が支払われないときの強制執行の記事にあります。
本人でやるか弁護士に頼むか:判断の材料
訴訟は本人だけでも進められますが、訴状や準備書面で何を主張し、どの証拠をどの順で出すかは結論に影響します。次のような場合は、弁護士への依頼を検討する材料になります。
- 相手が不貞行為そのものを否定している、または「既婚と知らなかった」と主張しそう
- 配偶者と不倫相手の両方に請求する、離婚の訴えとあわせて請求する
- 時効の残りが短い、相手から反訴を起こされるおそれがある
- 平日の期日に自分で出頭し続けるのが難しい
弁護士に頼む場合は、着手金・報酬金・実費の見積もりを書面で受け取って比べます。選び方は不倫慰謝料を弁護士に頼むときの選び方の記事、費用の払い方に不安があるときは法テラスの無料相談と費用の立替えの記事を確かめてください。慰謝料請求の全体の流れは浮気・不倫の慰謝料とは?請求できる場面・金額の決まり方・進め方の全体像にあります。
よくある質問
Q. 不倫の裁判は、弁護士を付けずに本人だけでできますか?
できます。民事訴訟法は本人が自分で訴えることを禁じていません。ただし代理人を立てる場合、地方裁判所では弁護士でなければ代理人になれず、簡易裁判所では裁判所の許可を得れば弁護士以外の人も代理人になれます(同法54条)。請求額が140万円以下の事件では、認定を受けた司法書士が代理できる仕組みもあります。
Q. 裁判になると、不倫のことが他人に知られますか?
憲法82条は、裁判の対審と判決を公開の法廷で行うと定めているので、口頭弁論や尋問は原則として傍聴できます。一方で、和解による解決や、書面のやりとりが中心の期日もあります。知られることへの不安は、手続の選び方とあわせて弁護士に伝えておきます。
Q. 訴えてから判決までどのくらいかかりますか?
争点の数、証人の有無、和解の話し合いをするかで大きく変わり、一律の期間は決まっていません。期日は1回で終わることは少なく、書面の提出と期日を何度か繰り返すのが通常の進み方です。段階ごとの目安の考え方は、慰謝料請求にかかる期間の記事でまとめています。
出典・参考にした公的な情報
- 民事訴訟法 第54条・第89条・第132条の11・第134条・第138条・第139条・第158条・第159条・第161条・第168条・第169条・第202条・第207条・第210条・第243条・第250条・第267条・第285条・第368条・第373条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 司法書士法 第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 人事訴訟法 第17条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 裁判所法 第24条・第33条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 日本国憲法 第82条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 手数料(裁判所。令和8年5月21日施行の改正民事訴訟法の適用の有無で額が異なる)(裁判所)
- 離婚訴訟(裁判所)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。