離婚慰謝料の時効:離婚した日と不倫を知った日のどちらから数えるか
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離婚の慰謝料の時効は、民法724条により「損害と加害者を知った時から3年」と「不法行為の時から20年」が基本です。ただし同じ「慰謝料」でも、**離婚させられたことによる慰謝料(離婚慰謝料)**と、**不貞行為そのものによる慰謝料(不貞慰謝料)**では、損害が生じる時期が違うため、数え始めが違いえます。離婚慰謝料は離婚が成立して初めて損害が生じると考えられるので、数え始めを離婚した日と見る整理が有力で、不貞慰謝料は不倫と相手を知った日が基準です。さらに配偶者に対しては、婚姻の解消から6か月は時効が完成しない特例(民法159条)があります。
Q. 離婚慰謝料の時効は、離婚した日と不倫を知った日のどちらから数える?
答えは「どちらの慰謝料を請求するかで変わる」です。724条1号の数え始めは、被害者が「損害及び加害者を知った時」です。そこで、それぞれの慰謝料の「損害」がいつ生じるかを考えます。
| 慰謝料の種類 | 何についての損害か | 損害が生じる時期 | 3年の数え始めの考え方 |
|---|---|---|---|
| 離婚慰謝料 | 相手の有責な行為によって離婚せざるを得なくなった苦痛 | 離婚が成立した時 | 早くても離婚した日 |
| 不貞慰謝料 | 不貞行為そのものによる苦痛 | 不貞行為の時 | 不貞行為と相手を知った日 |
二つの慰謝料を分けて考える枠組みは、最高裁平成31年2月19日判決が示しています。判決は、不倫相手に対しては、夫婦を離婚させる意図で婚姻関係に不当に干渉したなどの特段の事情がない限り、離婚慰謝料は請求できないとし、不貞行為そのものを理由とする責任は別だと述べました。あわせて、夫婦の一方は、有責な行為で離婚をやむなくされた苦痛について、配偶者に対して損害賠償を求められるという前提も述べています。
ただし、この判決は時効の数え始めには触れていません。上の表の「離婚した日」は、条文の「損害を知った時」に当てはめた整理で、判決が決めた起算日ではありません。事件の事実によって判断が分かれる部分もあるので、自分の場合の起算日は弁護士に確かめてください。二つの慰謝料の違いそのものは離婚の慰謝料と不倫の慰謝料の違いの記事で詳しく扱っています。
| 時点 | 出来事の例 | 不貞慰謝料の3年 | 離婚慰謝料の3年 |
|---|---|---|---|
| 2023年6月 | 不倫と相手の名前を知る | ここから進む考え方 | まだ損害が生じていない |
| 2024年3月 | 別居を始める | 進行中 | まだ損害が生じていない |
| 2025年10月 | 調停で離婚が成立 | 進行中 | ここから進む考え方 |
| 2026年6月 | 不貞慰謝料の3年の満了(筆者の計算) | 不倫相手への請求は期間に注意 | 進行中 |
| 2028年10月 | 離婚慰謝料の3年の満了(筆者の計算) | ― | 元配偶者への請求の期限の目安 |
Q. 浮気が原因で離婚した場合、配偶者と不倫相手で時効は変わる?
変わることがあります。請求できる中身と、使える特例が相手ごとに違うからです。
| 相手 | 請求の中身 | 数え始め | 民法159条の特例 |
|---|---|---|---|
| 元配偶者 | 離婚慰謝料、不貞慰謝料 | 離婚慰謝料は離婚の時、不貞慰謝料は知った時 | ある(婚姻の解消から6か月は完成しない) |
| 不倫相手 | 原則として不貞慰謝料のみ | 不貞行為と相手を知った時 | ない |
民法159条は、夫婦の一方が他方に対して持つ権利について、婚姻の解消の時から6か月を経過するまでは時効が完成しないと定めています。婚姻中に3年が過ぎてしまっても、配偶者への請求権については離婚から6か月は時効が完成しない、という意味です。この特例は「夫婦の一方が他の一方に対して有する権利」の規定なので、不倫相手への請求には使えません。
そのため、不倫を知ってから離婚までに時間がかかった場合、不倫相手への請求のほうが先に期限を迎えやすいという点に注意が要ります。離婚の話し合いが長引いているときは、不倫相手への請求をどうするかを別に考えておきます。不倫相手に請求するときの考え方は不倫相手に慰謝料を請求するときの記事にあります。
Q. 離婚後に不倫が分かった場合、離婚慰謝料の時効はどうなる?
離婚した後で、実は婚姻中に不倫があったと知る場合があります。このときは、不貞慰謝料の3年は「不倫と相手を知った日」から進み、20年は不貞行為の時から進みます。離婚慰謝料として請求する場合は、離婚と不倫との関係(不倫が原因で離婚に至ったといえるか)が問題になりますが、離婚の時点で不倫を知らなかった事情は、その判断に影響しえます。
離婚後の発覚で考える点(証拠、離婚協議書の清算条項、相手の特定)は離婚後に不倫が発覚したときの記事にまとめています。手元で確かめておくものは次のとおりです。
- 離婚協議書・調停調書・判決書に、慰謝料や「その他一切の請求をしない」といった条項があるか
- 不倫を知った日と、そのきっかけになった資料
- 不倫があった時期(婚姻中か、別居後か、離婚後か)
- 不倫相手の氏名・連絡先を知った日
Q. 離婚慰謝料の期限と、財産分与・養育費の期限は同じ?
同じではありません。離婚の時に一緒に決めることが多いお金でも、期限を定める条文が別々です。
| お金の種類 | 期限の決まり | 条文 |
|---|---|---|
| 慰謝料 | 知った時から3年・行為の時から20年(離婚慰謝料は離婚の時が基準になりやすい) | 民法724条 |
| 財産分与 | 家庭裁判所に請求できる期間に限りがある(2026年4月1日以後の離婚は離婚から5年、3月31日以前の離婚は2年) | 民法768条2項 |
| 養育費 | 決め方と取り決めの形で扱いが変わる | 民法766条など |
慰謝料と財産分与は、離婚の後に家庭裁判所の調停を使う場合も別々の手続です。裁判所は、離婚後に慰謝料の話し合いがまとまらないときは慰謝料請求調停、財産の分け方は財産分与請求調停を案内しています。財産分与の期限は財産分与の基本の記事、2026年4月の改正の内容は離婚の法改正2026の記事を確かめてください。
Q. 期限が近い・過ぎているかもしれないときはどうする?
まず、上の表に沿って「どの相手に」「どちらの慰謝料を」請求するのかを決め、その起算日を書き出します。そのうえで残り期間が短いなら、時効の完成を止める手続を早めに取る必要があります。調停の申立てや訴えの提起、内容証明による催告(6か月だけ延びる)、話し合いをする合意の書面などの違いは慰謝料請求の時効が迫っているときの記事で整理しています。
期間が過ぎているかもしれない場合でも、相手が時効を主張しなければ裁判所は時効を理由に判断しません(民法145条)。自分で「もう無理だ」と決めてしまう前に、離婚協議書や日付のメモを持って弁護士に相談してください。不倫の慰謝料の時効全般は不倫の慰謝料の時効の記事で扱っています。
よくある質問
Q. 離婚して2年たちました。元配偶者に慰謝料を請求できますか?
離婚に伴う慰謝料は、離婚によって生じる損害についての請求なので、724条1号の3年は早くても離婚の時から進むと考えられます。離婚から2年であれば、その考え方では期間が残っている計算です。ただし離婚の時に慰謝料を含めて清算する合意をしていないかなど、時効以外の点も確かめる必要があるので、離婚協議書や調停調書を持って弁護士に相談してください。
Q. 離婚の慰謝料と財産分与の期限は同じですか?
別の決まりです。慰謝料は民法724条の時効(知った時から3年・行為の時から20年)で、財産分与は民法768条で家庭裁判所に請求できる期間が決まっています。財産分与の期間は、2026年4月1日以後の離婚なら離婚から5年、3月31日以前の離婚なら2年なので、詳しくは財産分与の記事で確かめてください。
Q. 離婚の時に慰謝料の話をしなかった場合、もう請求できませんか?
話をしなかったこと自体で権利がなくなるわけではありません。ただし離婚協議書に「これ以外に請求しない」という清算の条項を入れている場合は、その合意の意味が問題になります。書面の文言を弁護士に見てもらうのが堅い確かめ方です。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第724条・第159条・第768条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 最高裁判所 平成31年2月19日 第三小法廷判決(平成29年(受)第1456号)(裁判所)
- 慰謝料請求調停(裁判所)(裁判所)
- 財産分与請求調停(裁判所)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。