離婚したくないのに離婚を求められたら:応じない場合に起きることと準備
配偶者から離婚を求められても、あなたが合意しなければ、協議でも調停でも離婚は成立しません。離婚は夫婦の合意と届出で成り立つ手続きだからです(民法763条)。ただし、応じないまま何も準備しないでいると、相手が調停を申し立て、調停が不成立になれば離婚の訴えに進むことがあります。裁判では夫婦の合意ではなく、民法770条1項の理由があるかが問われます。この記事は、協議・調停・裁判の各段階で応じなかったときに起きることと、その間にしておく準備を並べます。
段階ごとに、応じなかったときに起きること
離婚の手続きは、協議、調停、裁判の順に進みます。応じない意思を持ち続けた場合、各段階で次のことが起きます。
| 段階 | 応じないと起きること | あなたができること |
|---|---|---|
| 協議 | 離婚届は出せず、離婚は成立しない | 署名しない、不受理申出をする |
| 調停 | 合意がなければ不成立で終わる | 呼出しに出席し、応じない理由と条件を伝える |
| 裁判 | 裁判所が770条の理由の有無を判断する | 答弁書を出し、言い分と証拠を示す |
調停は、離婚の訴えを起こそうとする人が原則として先に申し立てるものです(家事事件手続法257条)。いきなり裁判になるのではなく、まず調停が開かれます。調停は勝ち負けを決める場ではなく、裁判官1人と調停委員2人以上が双方の話を聞き、合意を探る手続きです。合意できなければ不成立で終わり、離婚を求める側は離婚訴訟を起こす必要があると裁判所は説明しています。手続き全体の地図は浮気・不倫が原因の離婚:準備・話し合い・調停の流れと決めることにあります。
裁判になったとき:応じなくても離婚が認められる場合がある
裁判の段階では、「相手が嫌がっているから離婚できない」とは限りません。民法770条1項は、離婚の訴えを起こせる場合を次の4つに限っています。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
同条2項は、1号から3号の理由があっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却できると定めています。離婚を求められた側が、関係を続けたい事情を示す余地は条文の上にもあります。
求めてきた相手が浮気をした側(有責配偶者)の場合は、さらに別の問題が出ます。最高裁の判例は、有責配偶者からの請求でも、別居の長さ、未成熟の子の有無、相手が苛酷な状態におかれないかといった事情を総合して見ており、「別居○年」という線はありません。応じない側から見ると、別居の長さ、子の年齢、生活費を払っているか、離婚後の暮らしの手当てがされるか、が見られる点です。判決の中身は有責配偶者とは?浮気した側からの離婚請求が問題になる理由で整理しています。
応じない間にしておく準備
応じない意思があるなら、その間に次の準備をしておくと、調停や裁判になっても慌てずにすみます。
- 離婚届を勝手に出されない対策:市区町村に不受理申出を出しておく。手順は離婚届の不受理申出とは?を見る
- 離婚届に署名しない・渡さない:条件を決めていない段階での署名は避ける
- 家計の資料を控える:双方の収入と財産が分かる資料。離婚になった場合に決める項目は、応じるかどうかと別に必要になる
- 別居の生活費を確かめる:別居しても夫婦である間は、資産・収入その他一切の事情を考慮して生活費を分担する決まりがある(民法760条)。払われないときは婚姻費用の分担請求調停を申し立てられる
- 子どもの毎日の記録:送り迎え、食事、通院など、誰が何をしているかを日付つきで残す
- 相談の予約:弁護士の初回相談。費用に不安があれば浮気・不倫の相談先一覧の法テラスなどを確かめる
離婚そのものには応じなくても、「離婚になった場合の条件」は別に考える必要があります。子がいれば親権、養育費、親子交流が、財産があれば財産分与や年金分割が決められます。裁判になったときに初めて考え始めると、期日に間に合いません。
調停の呼出状が届いたときの手順
家庭裁判所から調停の呼出状が届くと、動揺するものです。次の順で整理します。
- 期日と場所を確かめる:日時、裁判所の名前、同封された書類(申立書の写しなど)を一通り読む
- 出席できない事情を早めに連絡する:遠方、仕事、相手と同じ空間が不安といった理由があれば、家庭裁判所が相当と認めればウェブ会議が使えると裁判所は案内している
- 相手の主張を読み、自分の言い分を書き出す:離婚を求める理由、条件、子どものことについて、事実と気持ちを分けてメモする
- 応じたくない理由を一言にまとめる:長くなると調停委員に伝わりにくい
- 離婚になった場合の条件も用意する:希望する親権、養育費、財産の扱いを整理しておく
調停委員への伝え方の例です。
「離婚には、いまは応じられません。理由は、子どもの生活が変わることが心配なことと、話し合いの時間がまだ足りていないと感じていることです。夫婦だけで話し合うのが難しいので、この場でお願いしたいと思っています」
感情的に責める言葉より、事実と希望を短く伝えるほうが調停委員に伝わりやすくなります。円満な関係の回復を目指して話し合う家庭裁判所の円満調停もあり、申立人は夫または妻です。相手がすでに離婚調停を申し立てている場合に円満調停をどう扱うかは、申立先の家庭裁判所の窓口か弁護士に確かめてください。まずは期日に出席して、関係を続けたい希望を調停委員に伝えます。
応じない自分の気持ちを整理する
「離婚したくない」の中身は人によって違います。次の問いに答えてみてください。
- 相手を愛している、または関係を続けたい
- 離婚後の生活(お金、住まい、子ども)が不安
- 相手の浮気を認めたくない、相手に負けたくない
- 周りにどう思われるかが心配
どれが強いかで、次の動きが変わります。生活の不安が強いなら、離婚になった場合の条件を整えておくことが力になります。関係を続けたい気持ちが強いなら、浮気されても離婚しない選択で、続けるために整えることを確かめてください。逆に、本当は離れたい気持ちもあるなら、離婚して後悔する人が見落としやすいことで決める前の確認をしてください。夫婦で話し合いが続かないときの手続きの流れは離婚調停の流れにまとめています。
よくある質問
Q. 離婚届に署名しなければ、離婚は成立しませんか?
協議離婚は夫婦が合意して届出をすることで成立する方法なので(民法763条)、署名や合意がなければ、協議では成立しません。ただし相手が調停や裁判に進むことはできます。相手が勝手に離婚届を出すおそれがあるときは、[離婚届の不受理申出とは?勝手に出されるのを防ぐ手続き](/rikon-fujuri/)で事前の対策を確かめてください。
Q. 調停の呼出状が届いたのに、出席したくありません。無視してもよいですか?
調停は双方の出席と協力が前提で、相手方が出席しない場合は不成立で終わり、離婚を求める側は離婚訴訟を起こす必要がある、と裁判所は案内しています。呼出しを受けた人が正当な理由なく出頭しないときは5万円以下の過料に処する定めもあります(家事事件手続法51条3項。調停には258条1項で準用)。出席が難しい理由があるときは、期日の前に家庭裁判所へ相談してください。
Q. 浮気をした側から離婚を求められました。応じなくても離婚されてしまいますか?
協議と調停では、あなたが合意しなければ離婚は成立しません。裁判になると、浮気をした側(有責配偶者)からの請求は、別居の期間、未成熟の子の有無、離婚で相手が苛酷な状態にならないかなどを総合して判断された例があります(最高裁昭和62年9月2日判決)。年数で線が引かれているわけではなく、見通しは弁護士に確かめてください。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第760条・第763条・第770条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 家事事件手続法 第51条・第257条・第272条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 夫婦関係調整調停(離婚)(裁判所)
- 夫婦関係調整調停(円満)(裁判所)
- 離婚訴訟(裁判所)
- 家事事件Q&A(調停の出席・ウェブ会議)(裁判所)
- 最高裁判所大法廷判決 昭和62年9月2日(有責配偶者からの離婚請求)(裁判所)
- 最高裁判所第三小法廷判決 平成6年2月8日(有責配偶者からの離婚請求)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。