離婚調停中に浮気が発覚したら:進め方と慰謝料の考え方
離婚調停や話し合いの途中で浮気が分かったときは、手続を最初からやり直す必要はありません。調停の中で調停委員に伝え、資料を出し、慰謝料も含めて話し合うかどうかを決めることができます。裁判所は、離婚前であれば夫婦関係調整調停(離婚)のなかで慰謝料も話し合えると案内しています。ただし、調停が成立したあとに分かった場合は扱いが変わります。この記事では、発覚のタイミング別の進め方と、慰謝料の考え方、時効の注意点を整理します。
発覚したタイミングで、できることが変わる
まず、いまが手続のどこにあるかを確かめます。
| いまの状況 | できること | 注意すること |
|---|---|---|
| 協議(話し合い)中で、調停は未申立て | 条件に浮気の慰謝料を含めて話す。合意の前に新事実を伝える | 合意すると離婚協議書や公正証書の条項に縛られる |
| 調停の申立て後、成立前 | 調停委員に新しい事実と資料を伝える。慰謝料を話し合いに含める | 合意しなければ成立しない。条項は見てから合意する |
| 調停が成立した後 | 調停条項の内容で扱いが決まる | 調書は確定判決と同じ効力。蒸し返せるかは条項(清算条項)しだい |
| 調停が不成立になった後 | 離婚の訴えと慰謝料を一つの訴えで起こす(人事訴訟法17条) | 不成立の通知から2週間以内に訴えると、調停申立てのときに提起したものとみなされる |
どのタイミングでも共通するのは、分かった事実を日付つきで記録し、入手方法に問題がないかを先に確かめることです。相手のスマホにログインしたり、GPSを付けたりして得た資料は、それ自体が問題になるおそれがあります。禁じる法律の一覧は浮気の証拠集めで違法になりうることを先に読んでください。調停での証拠の出し方は離婚調停で浮気の証拠はどう使う?出す時期と出し方の考え方にまとめています。
調停委員に伝えるときの進め方
調停では、裁判官1人と調停委員2人以上で作る調停委員会が、双方から事情を聞いて進めます。途中で浮気が分かったら、次の順で動きます。
- 事実を整理する:いつ、どこで、何が分かったか。自分が直接見聞きしたことと、人から聞いたことを分けて書く
- 資料を選ぶ:写真、メッセージの画面、家計の記録など。入手方法に問題がないものに絞る
- 次の期日の前に伝える:期日の場で初めて出すより、調停委員が受け取りやすいよう、整理した書面を持っていく
- 何を求めるかを決める:慰謝料を話し合いに含めるか、話し合いの進め方を変えるか、弁護士に相談してから決めるか
- 話し合い方を相談する:相手と顔を合わせると感情的になるおそれがあれば、その旨を調停委員に伝える
伝え方の例を挙げます。
文例:「前回の期日のあとで、配偶者の不貞を示す資料が見つかりました。日付と内容を整理してきました。慰謝料を含めた話し合いにしたいので、調停でどう扱うか教えてください。」
相手から暴力を受けるおそれがあるなどの安全の問題があるときは、DVがあるときの離婚調停の順番を先に確認してください。
慰謝料の考え方:誰に、どの手続で、いつまでに
慰謝料は、民法709条(不法行為)と710条(財産以外の損害の賠償)をもとに考えます。不貞行為の慰謝料の仕組み全体は不貞行為の慰謝料は民法の何条?709条・719条・724条と最高裁の考え方で整理しています。ここでは、調停の途中で分かった場合に絞って整理します。
配偶者に対しては、離婚前であれば、夫婦関係調整調停(離婚)のなかで話し合えます。離婚後の話し合いなら、別に慰謝料請求調停(離婚した元夫・元妻が申立人)があります。調停で合意できなければ、離婚訴訟とあわせて慰謝料を求められます。人事訴訟法17条は、離婚の請求と、その原因となった事実による損害賠償の請求を一つの訴えですることを認めています。
不倫相手に対しては、最高裁平成31年2月19日判決が、不貞行為の相手に対して離婚に伴う慰謝料を請求できるのは特段の事情がある場合に限られる、としています。不貞行為そのものを理由とする責任は別とされています。夫婦の調停とは別に、不倫相手への請求をどの手続で行うかは、弁護士に確かめる点です。
もう一つ、相手から「関係が始まったとき、すでに夫婦関係は破綻していた」という反論が出ることがあります。これは別居や調停申立ての時期と、浮気の時期の前後関係によって問題になります。「婚姻関係の破綻」とは?で、争われやすい事情を説明しています。なお、確かめた最高裁の判決は、いずれも慰謝料の金額の基準を示していません。金額を話し合うときこそ、浮気の時期と分かった日を書面で正確に残しておくことが、後の話し合いの土台になります。
時効:発覚した日を記録する
不法行為による慰謝料の請求権は、損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で時効にかかります(民法724条)。調停の途中で浮気が分かったなら、その日が「知った時」の手がかりになるため、日付をメモや書面に残してください。
時効については、次の点に注意します。
- 家事調停の申立てがあると、その事由が終わるまで時効は完成しません。調停が合意に至らず終わったときは、終了から6か月は完成しない扱いです(民法147条)。ただし、慰謝料を求める内容が調停に含まれていたかどうかで扱いが変わりうるので、慰謝料も話し合いたいときは申立ての内容を弁護士か申立先の家庭裁判所の手続案内で確かめてください
- 夫婦の一方が他方に対して持つ権利は、婚姻の解消から6か月を経過するまで時効が完成しません(民法159条)。これは配偶者への請求だけの規定です
- 不倫相手への請求の時効が配偶者との調停の申立てで延びる、とは条文に書かれていません。別に確かめる必要があります
どの請求がどう扱われるかは事案で変わるので、自分で結論を出さず、弁護士に確かめてください。
調停が成立したあとと、不成立のとき
調停で合意が成立すると、調書の記載は確定判決と同じ効力を持ちます(家事事件手続法268条)。成立したあとに新しい事実が分かった場合にどこまで請求できるかは、調停条項の書き方で変わります。「この件に関して、ほかに債権債務がない」という内容の清算条項があれば、その範囲が問題になります。成立の前に、条項を弁護士に見せて、浮気に関する請求が残るか、どこまで含まれているかを確かめてください。
合意できずに調停が不成立になった場合、離婚を求める側は訴えを起こします(調停の流れは離婚調停の流れ:申立てから成立・不成立までと浮気が原因のときの準備)。家事事件手続法272条3項により、不成立の通知から2週間以内に訴えれば、調停の申立ての時に訴えを提起したものとみなされます。2週間を過ぎると訴えられない、という意味ではありません。
浮気の慰謝料だけを請求する訴えは、離婚訴訟とは別に、請求額(訴訟の目的の価額)が140万円を超えなければ簡易裁判所、超えれば地方裁判所が扱うのが原則です。慰謝料を含めた条件で合意する前(調停条項に署名する前)が、弁護士に条項を見せる最後の機会になりやすいので、成立の期日が決まったら早めに相談の予約を入れてください。離婚全体の段階は浮気・不倫が原因の離婚:準備・話し合い・調停の流れと決めることで確かめられます。
よくある質問
Q. 調停が成立する直前に浮気が分かったとき、成立を止められますか?
調停は双方が合意して初めて成立します。合意しないと決めれば、成立しないまま不成立で終わります。ただし、調停が成立すると調書の記載は確定判決と同じ効力を持つので、条項に署名や合意をする前に、新しく分かった事実を調停委員に伝え、弁護士に条項を見せて確かめてください。
Q. 離婚調停の途中で、不倫相手への慰謝料も一緒に話し合えますか?
裁判所は、夫婦関係調整調停(離婚)で、離婚や親権、養育費などと並んで慰謝料も話し合えると案内しています。これは夫婦間の話です。不倫相手を相手方とする請求を家庭裁判所の調停で扱えるかは、裁判所のページに記載がないため、申立先の家庭裁判所の手続案内に問い合わせてください。
Q. 浮気を指摘された側は、調停でどう答えればよいですか?
調停は、双方から事情を聞く場で、事実と違うことを述べると、後の話し合いや裁判で信用を失うおそれがあります。事実関係に争いがあるなら、答える前に弁護士に経過を伝えて、何を認め何を争うかを整理してください。感情的な反論は、調停委員に伝わる印象にも影響します。
出典・参考にした公的な情報
- 家事事件手続法 第257条・第268条・第272条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 人事訴訟法 第17条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第147条・第159条・第709条・第710条・第724条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 裁判所法 第33条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 夫婦関係調整調停(離婚)(裁判所)
- 慰謝料請求調停(裁判所)
- 離婚訴訟(裁判所)
- 家事事件Q&A(調停手続一般)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。