浮気・不倫が原因の離婚 / 制度解説

「婚姻関係の破綻」とは?浮気と慰謝料・離婚で問題になる場面

この記事のもくじ
  1. 破綻という言葉は、慰謝料と離婚の2つの場面で出てくる
  2. 慰謝料の場面:破綻後の関係と、破綻していると信じていた場合
  3. 離婚の場面:民法770条1項4号と、有責配偶者の問題
  4. 「破綻」を主張される側・する側が、記録しておくこと

「婚姻関係の破綻」とは、夫婦の婚姻共同生活の平和がすでに失われていた、と評価される状態を指して使われる言葉です。民法に定義の条文はなく、裁判所の判断のなかで使われてきました。浮気の慰謝料を請求すると、相手が「そのときすでに夫婦関係は破綻していた」と反論することがあり、離婚の場面でも、夫婦の関係が戻る見込みがあるかを考えるときに出てきます。この記事では、どんな場面で問題になるかと、最高裁が示した考え方を整理します。個別の事案がどう判断されるかは、弁護士への相談が必要です。

破綻という言葉は、慰謝料と離婚の2つの場面で出てくる

民法の条文を読んでも、「破綻」という言葉は出てきません。使われるのは主に次の2つの場面です。

場面 問われること 関係する条文・判決
不貞の慰謝料(配偶者・不倫相手への請求) 関係を持った当時、すでに婚姻関係が破綻していたか 民法709条・710条、最高裁平成8年判決、令和8年判決
離婚の請求 婚姻を続けるのが難しいほど関係が壊れているか 民法770条1項4号(婚姻を継続し難い重大な事由)

どちらの場面でも、「破綻した」という結論そのものを裁判所が条文のとおりに確認するのではなく、夫婦の経過のなかの事実を積み上げて判断する点が共通しています。ここで書くのは仕組みの説明で、あなたの夫婦が破綻していたかどうかを判定するものではありません。

慰謝料の場面:破綻後の関係と、破綻していると信じていた場合

不倫相手が責任を負う理由について、最高裁は平成8年3月26日の判決で、次のように述べました。配偶者のある人と第三者が肉体関係を持った場合、夫婦の婚姻関係がその当時すでに破綻していたときは、特段の事情がない限り、第三者は他方の配偶者に対して不法行為責任を負わない。理由は、第三者の行為が不法行為になるのは、他方の配偶者の「婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益」を侵害するからであり、破綻していた場合には原則としてそのような利益がないからだ、とされています。

この平成8年判決の事案では、夫婦の関係は性格や金銭感覚の違いなどから悪化し、会社の債務の担保をめぐる対立がありました。妻が包丁をちらつかせることもあり、夫は別居を目的とする夫婦関係調整調停を申し立て(妻の欠席で取下げ)、その後に自宅を出て別居し、第三者との関係は別居の後に始まっています。別居の年数ではなく、別居の前から続いた経過全体が判断の材料になった事案です。

もう一つ、令和8年(2026年)6月5日の最高裁第二小法廷判決があります。夫が、妻と関係を持ったとされる相手に慰謝料を請求した事件で、原審は、相手が既婚者と知っていたとは認められないとしたうえで、「離婚した」と信じたことに相当の理由はないとして過失を認めました。最高裁は、相手が婚姻関係が破綻していると信じ、そう信じる相当の理由があったかどうかを検討せずに直ちに過失を認めた点に誤りがあるとして、その部分を破棄し、高等裁判所に差し戻しました。差戻しの判決なので、この事件で最終的に請求が認められたかどうかは、判決文からは分かりません。

事実としては、相手方は妻から離婚するつもりだと聞かされ、妻の欄を記入した離婚届を見せられ、夫婦が互いのプライバシーに干渉しないとやり取りしたメールも見せられていました。夫婦は同居していたものの会話はほとんどなく、メールで用件を伝え合う関係でした。判決は、こうした事情があれば破綻を信じる相当の理由があったとみる余地がある、と述べたにとどまり、離婚届を見せられれば責任がなくなる、とまでは言っていません。

なお、不倫相手への慰謝料には、不貞行為そのものの慰謝料と、夫婦を離婚させたことの慰謝料の2つの考え方があります。後者は、平成31年2月19日の最高裁判決が、第三者が離婚させる意図で不当に干渉したような特段の事情がない限り請求できないとしました。破綻の有無が正面から問われるのは、前者の不貞行為そのものの慰謝料です。

この判決には、尾島裁判官の補足意見が付いています。補足意見は判決そのものではなく、一人の裁判官の考え方ですが、不貞の慰謝料の審理の順序を整理した部分が参考になります。

図解:補足意見が示した不貞慰謝料の審理の順序
順 確かめること 結果
1 肉体関係があったか なければ請求は認められない
2 関係の当時、婚姻関係が破綻していたか(「離婚した」と信じたかどうかとは別に検討する) 破綻後の関係なら、相手の認識を問わず請求は退けられる
3 破綻前なら、破綻していると信じる相当の理由があったか 相当の理由があれば過失がなく、請求は退けられる
4 相当の理由がない場合 はじめて請求が認められる余地が出る

された側にとっては、相手が「夫婦は破綻していると聞いていた」と反論してくる場合があるという意味を持ちます。した側や不倫相手側にとっては、既婚と知らなかった事情、破綻していると信じた事情が、弁護士に具体的に伝えるべき材料になります。慰謝料全体の仕組みは不貞行為の慰謝料は民法の何条?709条・719条・724条と最高裁の考え方にあります。別居の前後で考え方が変わりうる点は別居中の不倫と慰謝料で扱っています。

離婚の場面:民法770条1項4号と、有責配偶者の問題

離婚の場面では、民法770条1項4号が「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」を裁判上の離婚の理由に挙げています(2026年4月1日の改正前は5号でした)。条文は具体的な基準を置いておらず、別居の年数や暴力の有無のような一つの基準で決まるわけではありません。別居の年数の考え方は別居期間は何年で離婚できる?年数の考え方と浮気がある場合の違い、別居が悪意の遺棄にあたるかは別居は悪意の遺棄に当たる?判断で見られる事情と浮気が原因の場合で扱っています。

また、離婚の請求をするのが浮気をした側のときには、有責配偶者からの請求として別の判断が加わります。この点は有責配偶者とは?浮気した側からの離婚請求が問題になる理由で整理しています。

「破綻」を主張される側・する側が、記録しておくこと

破綻の有無は、結論を決める言葉ではなく、事実の積み重ねで見られます。次のような事項を、日付つきで書き出しておくと、弁護士に相談するときに話が早くなります。

  1. 別居の有無と時期:家を出た日、帰ってきた日、生活費の受け渡し
  2. 離婚の話し合いの経過:離婚を切り出した日、離婚届や調停の動き、相手の返事
  3. 日常の関わり:会話や食事の有無、連絡の手段、旅行や行事を一緒にしたか
  4. 関係を持った時期との前後:別居や話し合いの日と、不貞の時期との前後関係
  5. 第三者から聞いた言葉:「離婚する」「別居中」と相手が言った内容と、それを裏づける書類やメッセージ

事実の食い違いが大きくなりやすい論点なので、自分だけで結論を出さず、弁護士に経過を見せて確かめてください。離婚の話し合いの途中で浮気が分かった場合の進め方は離婚調停中に浮気が発覚したら:進め方と慰謝料の考え方で扱っています。調停の申立てから裁判までの流れは浮気・不倫が原因の離婚:準備・話し合い・調停の流れと決めることにあります。

よくある質問

Q. 別居していれば、婚姻関係は破綻していると言えますか?

別居の有無だけで決まる扱いにはなっていません。平成8年の最高裁判決の事案では、別居の前から続いていた夫婦の対立や調停の申立てなど、それまでの経過全体が見られました。同居していても、別居していても、事情の積み重ねで判断されるため、時系列で記録を残すことが役に立ちます。

Q. 夫婦仲が冷めていたと言われたら、慰謝料は請求できませんか?

「冷めていた」という言い分だけで結論が決まるとは言えません。相手方が破綻を主張する場合は、いつから、どんな事情で、婚姻共同生活が失われていたのかが問題になります。反論の材料になる記録は、弁護士への相談のときに時系列でそろえて見せてください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

有責配偶者とは?浮気した側からの離婚請求が問題になる理由

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