浮気・不倫が原因の離婚 / Q&A

DVがあるときの離婚調停:顔を合わせない工夫と安全のための申出

この記事のもくじ
  1. 顔を合わせない工夫:ウェブ会議と、裁判所への事前の相談
  2. 住所・氏名を相手に知られたくないとき
  3. 調停とは別の安全の手段:保護命令と、法テラスの相談
  4. 申し出る順番と、決める前に考えておくこと

暴力や脅しのある相手と離婚調停をするときは、申立ての前後に「顔を合わせない工夫」と「住所を知られない手当て」を家庭裁判所に申し出ることができます。裁判所は、DVの被害などで相手方と顔を合わせたくない場合に、ウェブ会議などを使って、裁判所の中でも当事者が顔を合わせないよう工夫して進めることが少なくないと案内しています。何をしてもらえるかは事情と裁判所によって変わるので、早めに不安を伝えるのが第一歩です。

いま危険が迫っているときは 110番 に通報してください。そこまでではなくても、次の窓口は調停の前から使えます。

  • DV相談+:0120-279-889(電話は24時間。チャットは12時〜22時)
  • DV相談ナビ:#8008(近くの配偶者暴力相談支援センターにつながる。受付はつながった先の時間内)
  • 警察相談専用電話:#9110(平日8時30分〜17時15分が基本。都道府県警察ごとに異なり、夜間・休日は当直や音声案内で対応)

ほかの窓口と受付時間は浮気・不倫の相談先一覧:悩み別の窓口と番号・受付時間の早見表にまとめています。調停の手続そのものを知りたい人は、先に離婚調停の流れ:申立てから成立・不成立までと浮気が原因のときの準備も開いてみてください。

顔を合わせない工夫:ウェブ会議と、裁判所への事前の相談

裁判所の家事事件Q&Aには、DVがあって相手方と顔を合わせたくない場合の項目があります。個別の事情に応じてウェブ会議を使うなどして、当事者同士が裁判所の構内で顔を合わせることがないよう工夫しながら調停を進める場合が少なくない、不安な点は申立先の家庭裁判所に相談できる、という内容です。ウェブ会議そのものについては、家庭裁判所が相当と認めるときに、当事者の意見を聴いたうえで利用できます。相手と同じ空間では安心して話せない場合は、その理由の一つとして挙げられています。

大切なのは、自分から具体的に伝えることです。裁判所の公式ページに、待合室や入退室の時間の扱いまでを定めた一覧はありません。次のような項目を、申立ての前に家庭裁判所へ相談するときに、順に聞いてみてください。

  1. 相手と同じ日の同じ時間に裁判所へ行かなくて済む形にできるか
  2. 待つ場所を相手と別にできるか
  3. 終わった後に、相手より先(または後)に帰る形にできるか
  4. 自分の期日だけでもウェブ会議にできるか
  5. 暴力や脅しがあったことを、調停委員にどう伝えておくか

調停は、裁判官1人と民間から選ばれた調停委員2人以上で作る調停委員会が、双方から事情を聞いて進めます。相手から暴力を受けた経緯は、調停委員に早めに伝えておくと、話し合いの進め方や席の配慮を考えてもらいやすくなります。伝えるときは、時期・場所・けがや通院の有無・警察や相談窓口に連絡した日を、メモにして持っていくと話しやすくなります。メモの作り方は暴力がある相手の浮気の証拠集め:安全を先にする理由と相談先で扱っています。

ウェブ会議には、離婚の成立にかかわる決まりもあります。令和7年(2025年)3月1日以降、離婚の調停はウェブ会議で成立させることができますが、電話会議では成立させられません(家事事件手続法268条3項、裁判所Q&A)。ウェブ会議にすれば相手と一度も同じ部屋にならずに離婚が決まる、という道が条文の上でも用意されています。

住所・氏名を相手に知られたくないとき

調停を申し立てると、家庭裁判所は申立書の写しを原則として相手方に送ります(家事事件手続法256条)。避難先の住所や新しい勤務先を書くと、そのまま相手に伝わるおそれがあります。ここは次の順番で考えます。

順番 することと、その理由
1 申立書や添付書類に、知られたくない住所・氏名・勤務先を書かない(マスキングする)
2 どうしても書く必要がある情報は、秘匿決定の申立てを検討する(秘匿決定申立書・秘匿事項届出書面・支障のおそれを示す資料を出す。認められないこともある)
3 秘匿の対象にならない部分は、相手から記録の閲覧を求められたときに備えて、非開示を希望する部分を申し出る(認められるとは限らない)
4 申立ての手順は裁判所ごとに案内が異なるので、申立先の家庭裁判所に問い合わせる

秘匿決定が出ると、住所や氏名は「代替住所A」「代替氏名A」のような代わりの表示で書けばよくなります。ただし、決定が出る前に提出した書類や、秘匿事項届出書面以外の書面に書いた住所は、決定後も直ちに閲覧が制限されるわけではありません。秘匿の申立てをする前に出す書類には、最初から書かないのが安全です。

住民票についても別の仕組みがあります。DVの被害者で、加害者に住所を知られると生命や心身に危害を受けるおそれがある人は、住民票の写しの交付や閲覧を制限する支援措置を、市区町村に申し出ることができます。まず警察・配偶者暴力相談支援センター・児童相談所などの相談機関に相談し、そのうえで市区町村へ申出書を出す流れで、期間は確認から1年、期限の1か月前から延長の申出ができます。延長を忘れると切れる点に注意してください。引っ越しと手続の順番はDVから逃げる準備:持ち出すもの・相談先・住所を知られない手続きで整理しています。

調停とは別の安全の手段:保護命令と、法テラスの相談

調停は話合いの場であり、相手の接近や連絡を止める力はありません。身体への暴力や、生命・身体・自由・名誉・財産に害を加えると告げる脅迫を受けていて、さらに生命や心身に重大な危害を受けるおそれが大きいときには、地方裁判所に保護命令を申し立てる道があります。調停を扱う家庭裁判所とは窓口が違います。

  • 接近禁止命令:期間は1年。住居や勤務先の付近でのつきまといやはいかいを禁じる
  • 電話等禁止命令:面会の要求、連続した電話やメッセージ、位置情報の無断取得などを禁じる
  • 退去等命令:同居の住居から退去させる。期間は2か月(住居の所有者や賃借人が被害者のみで被害者が申し立てたときは6か月)
  • 手数料は1,000円(内閣府Q&A)。書類の送達などの費用は別に予納する

申立書には、配偶者暴力相談支援センターか警察に相談した事実を書く欄があります。順番としては、窓口に相談したうえで保護命令を考えるのが自然です。審理では、原則として相手方が立ち会える期日が開かれる点も、あらかじめ知っておいてください(申立ての目的を達せられない事情があるときは例外)。発令されるかどうかは裁判所の判断で、日数も事案で変わります。仕組みの詳細は保護命令とは?配偶者からの暴力で申し立てる手続きと相談先で扱っています。

法律の相談先としては、法テラス(日本司法支援センター)が、配偶者からの暴力を現に受けている疑いがある人の被害防止に関する法律相談を行うと、総合法律支援法30条に定められています。利用の条件や予約の方法は、法テラスで離婚の弁護士費用を立て替えてもらうにはと相談先一覧で確かめてください。弁護士会の法律相談を使う場合の流れは弁護士会の法律相談センターの使い方:予約・費用・離婚相談の流れにあります。

早見表:離婚調停でDVがあるとき、だれに何を伝えるか
伝える先 伝えること 得られるもの
110番・警察 いま危険が迫っている 出動・保護
DV相談+・配偶者暴力相談支援センター 状況全体、調停を考えていること 安全の計画、保護命令や支援措置の情報提供
申立先の家庭裁判所 顔を合わせたくない、ウェブ会議を希望する、住所を伏せたい 期日の進め方の調整、秘匿・非開示の手続の案内
調停委員 暴力や脅しの経緯、メモにした日付 話し合いの配慮、席や順番の工夫の検討
弁護士・法テラス 離婚条件の見通し、手続の代理 手続の依頼、費用の相談

申し出る順番と、決める前に考えておくこと

実際の順番は、次のように組み立てると迷いにくくなります。

  1. 安全の確保:別居するか、どこに住むかを先に決める。相手に知られると危険な場合は、相談機関に相談したうえで動く
  2. 相談:DV相談+・配偶者暴力相談支援センターで、状況の整理と支援措置・保護命令の情報を得る
  3. 申立ての前の確認:申立先の家庭裁判所に、ウェブ会議・顔を合わせない工夫・住所の扱いを問い合わせる
  4. 申立て:収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手が実費。住所を書かない形で書類を作る
  5. 期日:調停委員に暴力の経緯を伝え、自分の希望(ウェブ会議、順番)をもう一度確認する

子どもがいる場合、親権の決まり方にもDVが関係します。民法819条7項は、子の心身に害悪を及ぼすおそれがあるときや、父母の一方が他の一方から暴力等を受けるおそれがあるなどで共同して親権を行うことが困難なときは、一方を親権者と定めなければならないとしています。くわしくはDVがあるときの親権:単独親権と定めなければならない場合を読んでください。浮気が離婚の理由であっても、暴力があるときは「条件を詰めること」より「安全に手続を終えること」を優先して構いません。

離婚の全体の道すじは浮気・不倫が原因の離婚:準備・話し合い・調停の流れと決めることにあります。裁判までの費用の全体は離婚裁判の費用:印紙・郵便料・弁護士費用の内訳と調べ方で比べられますが、DVがある場合は費用の見通しより、まず窓口に相談する順番を守ってください。

よくある質問

Q. 調停の前に、窓口へ相談しておくと手続で役に立ちますか?

保護命令の申立書には、配偶者暴力相談支援センターか警察に相談した事実を書く欄があるため、相談しておくと手続を進めやすくなります。調停そのものでも、顔を合わせない工夫は、早めに不安を家庭裁判所へ伝えることから始まります。弁護士に頼むかどうかは必須ではなく、費用と安全の両面から窓口で相談して決められます。

Q. 相手と同じ場所に行くのが怖くて、期日に出られないときはどうなりますか?

出られないと決める前に、申立先の家庭裁判所に事情を伝えてください。裁判所はウェブ会議の利用などを個別の事情に応じて検討します。調停は双方の出席と協力が前提で、相手方が出席しない場合などは不成立として終了し、離婚を求めるなら離婚訴訟を起こす必要があると裁判所は案内しています。

Q. 調停で話したことは相手に伝わりますか?

家庭裁判所の調停は非公開の話合いで、調停委員会が双方から事情を聞いて進めます。ただし申立書の写しは原則として相手方に送られ、記録は相手方が閲覧を求めることもできます。知られたくない情報は、書く前に秘匿の申出や非開示を希望する部分の申出を使って守ります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

離婚調停の流れ:申立てから成立・不成立までと浮気が原因のときの準備

保護命令とは?配偶者からの暴力で申し立てる手続きと相談先

DVから逃げる準備:持ち出すもの・相談先・住所を知られない手続き

離婚調停の申立書の書き方:浮気の事情をどこにどう書くか