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不貞行為の慰謝料は民法の何条?709条・719条・724条と最高裁の考え方

この記事のもくじ
  1. 不貞行為の慰謝料は民法の何条か:4つの条文の役割
  2. 709条の要件と不貞行為:最高裁が補った「守られる利益」
  3. 不貞慰謝料と離婚慰謝料:平成31年判決の区別
  4. 慰謝料の請求権を持つのは誰か・誰に対してか
  5. 仕組みを自分の状況に当てはめる前に

不貞行為の慰謝料は、**民法709条(不法行為の損害賠償)と710条(財産以外の損害の賠償)**を根拠に請求します。配偶者と不倫相手の関係は719条(共同不法行為)、請求できる期間は724条(3年・20年)が決めています。ただし条文には「不貞」「浮気」という言葉がなく、不貞行為がどんなときに賠償の対象になるかは、最高裁の判決が示してきました。この記事は条文と判例を要件ごとに並べる「仕組み」の記事で、金額の話は扱いません。

不貞行為の慰謝料は民法の何条か:4つの条文の役割

「慰謝料請求は何条か」と聞かれたら、まず709条と710条を挙げます。そのうえで、相手が複数いるときの719条と、期限の724条をセットで押さえると、仕組みの骨組みがそろいます。

条文 定めていること(要旨) 不貞行為の慰謝料での役割
709条 故意・過失で他人の権利や法律上保護される利益を侵害した人は、生じた損害を賠償する 請求の土台。どんな「利益」が侵害されたかを判例が補う
710条 709条で責任を負う人は、財産以外の損害も賠償する 精神的な苦痛の賠償=慰謝料の根拠
719条1項 数人が共同の不法行為で損害を加えたときは、各自が連帯して賠償する 不倫をした配偶者と不倫相手の関係
724条 損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で時効により消滅 請求できる期間

この4つに加えて、722条1項が準用する417条により、賠償は特に決めがなければ金銭で額を定めます。722条2項は、被害者にも過失があったときに裁判所がそれを考慮して額を定められるとしています。また159条は、夫婦の一方が他方に対して持つ権利について、婚姻の解消から6か月を経過するまで時効が完成しないと定めており、配偶者への請求にだけ関係します。

709条の要件と不貞行為:最高裁が補った「守られる利益」

709条の要件は、①故意または過失、②権利または法律上保護される利益の侵害、③損害、④行為と損害の因果関係、の4つに分けて整理できます。不貞行為の慰謝料で特に問題になるのは①と②で、ここを最高裁の判決が具体化してきました。

昭和54年3月30日判決は、配偶者のある人と性的関係を持った第三者は、故意または過失がある限り、他方の配偶者の「夫又は妻としての権利」を侵害したことになると述べました。関係が自然な愛情から生じたかどうか、どちらが誘ったかは、責任を否定する理由にならないとしています。

平成8年3月26日判決は、侵害される利益を「婚姻共同生活の平和の維持」という権利・利益と表現し、関係を持った当時すでに婚姻関係が破綻していた場合は、特段の事情のない限り、その利益がないので第三者は責任を負わないとしました。ここから、②の要件は「関係の当時、守るべき夫婦の共同生活があったか」という問いになります。

2026年(令和8年)6月5日判決は、①の過失の判断について、不倫相手が婚姻関係は破綻していると信じ、そう信じる相当の理由があったかまで検討しないで過失を認めるのは誤りだとして、事件を高等裁判所に差し戻しました。この判決に付いた尾島明裁判官の補足意見は、審理の順序を次のように示しています。

流れ図:不貞慰謝料の審理の順序(令和8年判決の補足意見から)
  1. 配偶者と第三者の間に性的関係があったか
  2. 関係の当時、婚姻関係が破綻していたか
  3. 破綻していたなら、破綻の時期と関係の時期のどちらが先か(破綻の後の関係なら、相手の認識にかかわらず請求は退けられる)
  4. 破綻の前の関係なら、第三者に「破綻していると信じる相当の理由」があったか
  5. 相当の理由があれば過失はないとして退けられ、なければ請求を認める余地が出てくる

補足意見は判決そのもの(法廷意見)とは区別されますが、裁判でどの事実が争点になるかを知る手がかりになります。それぞれの判決の事件の中身は不貞行為の判例の記事で読めます。

不貞慰謝料と離婚慰謝料:平成31年判決の区別

不貞行為の慰謝料には、性質の違う2つの請求があります。一つは不貞行為そのものによる精神的苦痛の賠償、もう一つはその結果として離婚に至ったことによる精神的苦痛の賠償(離婚慰謝料)です。

平成31年2月19日判決は、不倫相手(第三者)に対しては、特段の事情がない限り、離婚に伴う慰謝料を請求できないとしました。特段の事情とは、夫婦を離婚させることを意図して婚姻関係に不当な干渉をするなどして、離婚のやむなきに至らしめたと評価される事情です。理由は、離婚するかどうかは本来その夫婦の間で決める事柄だからです。

請求の種類 不倫をした配偶者に対して 不倫相手に対して
不貞行為そのものの慰謝料 709条・710条で問われうる 故意・過失があり、破綻前の関係なら問われうる(昭和54年・平成8年判決)
離婚に伴う慰謝料 有責行為で離婚をやむなくされた苦痛の賠償を求められる(平成31年判決が前提として述べる) 特段の事情がない限り請求できない(平成31年判決)

この区別は、請求する相手の選び方と、時効の数え始めにも関わります。違いの詳しい整理は離婚の慰謝料と不倫の慰謝料の違いの記事、不倫相手を相手にする場合は不倫相手に慰謝料を請求するときの記事に分けています。

慰謝料の請求権を持つのは誰か・誰に対してか

慰謝料の請求権は、不貞行為によって「婚姻共同生活の平和」を害された配偶者が持つ権利です。昭和54年判決は、不倫相手が父親と同棲した事件で、子どもからの請求については、害意をもって父親の監護を積極的に阻止するなどの特段の事情がない限り、不法行為にならないとしました(反対意見があります)。子ども自身の請求は、配偶者の請求とは別に考える必要があります。

請求を受ける側は、不倫をした配偶者と不倫相手です。719条1項の「連帯」により、請求する側はどちらにも賠償を求められますが、二人から重ねて損害の全額を受け取れるわけではありません。一方が払うと、もう一方に請求できる範囲にも影響します。払った人がもう一方に負担を求める「求償」は719条には書かれておらず、判例と解釈の話になります。線の引き方は配偶者と不倫相手の両方に慰謝料を請求できるかの記事と不倫の求償権の記事で扱っています。

期限は724条の3年と20年で、「知った時」は損害と加害者の両方を知った時です。不倫相手の氏名や住所が分からないうちは、数え始めが問題になることがあります。時効の考え方は不倫の慰謝料の時効の記事へ進んでください。

仕組みを自分の状況に当てはめる前に

条文と判例の仕組みが分かっても、自分の場合に請求できるか、どちらに請求するのがよいかは、事実関係で変わります。当てはめは弁護士の仕事なので、相談の前に次の点を整理しておくと、仕組みのどこが争点になるかを短い時間で確かめられます。

  • 関係が始まった時期と、それを知った日
  • その頃の夫婦の状態(同居か別居か、調停の申立てや離婚の話が出ていたか)
  • 不倫相手が既婚と知っていた、または「離婚する」「破綻している」と聞かされていた事情
  • 求めたいのが不貞行為そのものの慰謝料か、離婚に伴う慰謝料か
  • 不倫相手の氏名・住所が分かっているか

請求できるかを判断する材料の並べ方は慰謝料請求の条件の記事、慰謝料という言葉の意味から確かめたい場合は慰謝料とは何かの記事が入口です。

よくある質問

Q. 不貞行為の慰謝料を請求するとき、訴状には何条を書くのですか?

一般には、不法行為による損害賠償として民法709条と710条を根拠にします。配偶者と不倫相手の両方を相手にする場合は、共同不法行為を定める719条も関係します。実際の訴状の書き方や請求の組み立ては事件ごとに違うので、裁判を考える段階では弁護士に依頼するのが一般的です。

Q. 不貞行為が分かった時点で、慰謝料の請求権は当然に生まれるのですか?

不貞行為があっただけで当然に決まるわけではありません。709条の要件(故意・過失、守られる利益の侵害、損害、因果関係)に当たる必要があり、関係の当時に婚姻関係が破綻していたときは、不倫相手は原則として責任を負わないとされています。どの要件が争点になりそうかは、事実を整理して弁護士に確かめます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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