浮気の復讐を考えたとき:やってはいけない仕返しと法律で認められる手段
この記事のもくじ
浮気をした配偶者や不倫相手に復讐したい、と思うのは自然な気持ちです。ただ、職場やSNSに広める、脅してお金や謝罪を出させる、物を壊す、家に押しかけるといった仕返しは、刑法などが禁じる行為に当たるおそれがあり、自分が罪や賠償を問われる側に回りかねません。怒りをぶつける先は、慰謝料の請求や離婚の手続きといった、法律で認められた手段に置きかえることができます。この記事では、その線と置きかえ方を順に整理します。
いま気持ちが抑えられない、相手か自分を傷つけてしまいそうなときは、先に話してください。
- 危険が迫っているとき:110番
- 死にたい・消えたいほどつらいとき:#いのちSOS 0120-061-338(24時間365日)
- どこに話せばよいか分からないとき:よりそいホットライン 0120-279-338(24時間)
ほかの窓口は浮気・不倫の相談先一覧に、死にたいほどつらいときの相談先は浮気や不倫で死にたいほどつらいときにまとめています。
浮気の復讐をしたい気持ちは自然:まず「何を取り戻したいか」を分ける
復讐したい気持ちの中には、いくつかの別々の願いが混ざっています。それを分けてみると、仕返し以外の道が見えやすくなります。
| 気持ちの中身 | 本当に欲しいもの | 置きかえ先の例 |
|---|---|---|
| 同じ苦しみを味わわせたい | 自分が受けた傷を認めてほしい | 慰謝料の請求、謝罪を書面にする話し合い |
| 周りに本当のことを知ってほしい | 自分が悪者にされたくない | 信頼できる人に事実を話す、弁護士に経過を伝える |
| 二度と会わないでほしい | 関係が終わったと確かめたい | 関係を断つ約束を書面にする(誓約書・示談書) |
| 生活を壊された分を返してほしい | お金と暮らしの見通し | 生活費・財産分与・養育費の取り決め |
| 自分ばかり損をしたくない | 公平に扱われたい | 離婚するかどうかを自分で選ぶ |
表の右の列は、どれも相手に何かを求める手段です。仕返しと違うのは、自分の立場を悪くせずに、形として残るものが得られる点です。どれを選ぶかは今すぐ決めなくてかまいません。
やってはいけない仕返し:自分が加害側になる行為の線
怒りが強いときに思いつく仕返しの多くは、関係する法律があります。罪になるかは、目的・場所・言い方などの事情で決まり、最後は捜査機関と裁判所が判断します。ここでは「禁じる法律がある行為」として挙げます。
| 仕返しの例 | 関係する法律(要旨) | 起こりうること |
|---|---|---|
| 不倫相手の職場・近所・SNSに不倫を知らせる | 刑法230条(名誉毀損):公然と事実を示して名誉を傷つける行為。事実があってもなくても対象 | 処罰の対象になりうる。民事で賠償や名誉回復の措置を求められることも(民法709条・710条・723条) |
| SNSで相手をののしる書き込みをする | 刑法231条(侮辱):事実を示さなくても、公然と人を侮辱する行為 | 同上 |
| 「払わないと家族にばらす」「画像を流す」と迫る | 刑法222条(脅迫:2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金)、249条(恐喝:脅して財物を出させる行為は10年以下の拘禁刑) | 請求する権利があっても、言い方次第で問題になりうる |
| 相手の家や部屋に押しかけ、帰るよう言われても居座る | 刑法130条(住居侵入・不退去) | 警察を呼ばれる、相手から相談される |
| 相手の車・スマホ・持ち物を壊す | 刑法261条(器物損壊) | 処罰の対象になりうる。修理代などの賠償 |
| 見つけた性的な画像をネットに流す | 私事性的画像記録提供等被害防止法3条:撮影対象者を特定できる方法で、ネットなどを通じて不特定又は多数の人に提供する行為 | 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の定め |
表の行為をした後で慰謝料の話し合いに入ると、相手から「こちらこそ被害を受けた」と持ち出され、話がこじれる原因にもなります。浮気をされたことと、その後に自分がしたことは、法律の上では別々に見られるからです。
不倫相手の家に乗り込みたい、晒したいという気持ちが特に強いときは、浮気相手を晒す・家に乗り込む前に:加害側にならないための線で、場面ごとの線をさらに細かく整理しています。
法律で認められる手段:慰謝料の請求と離婚の手続き
仕返しの代わりになるのは、次のような手段です。どれも、自分の受けた傷を相手に認めさせる正面からの方法です。
1. 慰謝料を請求する
民法709条は、故意又は過失で他人の権利や法律上保護される利益を侵害した者に賠償の責任を定め、710条は精神的な損害の賠償も含むとしています。最高裁昭和54年3月30日判決は、夫婦の一方と肉体関係を持った第三者は、故意又は過失がある限り、もう一方の配偶者の精神的苦痛を慰謝する義務があると判断しています。請求の相手は配偶者と不倫相手の両方が考えられ、民法719条は共同の不法行為について各自が連帯して賠償する責任を定めています。
ただし、不倫相手に「離婚させられたこと」の慰謝料を求めることは、最高裁平成31年2月19日判決により、特段の事情がない限りできないとされています。不貞行為そのものを理由とする責任とは別の話です。請求には期限もあり、民法724条は損害と加害者を知った時から3年で時効になると定めています。仕組みの全体は不貞行為の慰謝料の仕組みで確かめてください。
2. 離婚を選ぶ、または選ばない
民法770条1項1号は、裁判で離婚を求められる理由の一つに「配偶者に不貞な行為があったとき」を挙げています。夫婦の話し合い(協議)で離婚するなら理由は問われません。離婚するかどうかは、された側が選べる大きな決定です。
3. 自分で動かず、弁護士に任せる
慰謝料の額の見込みや、相手にどう伝えるかは、自分の事情を知った弁護士でないと判断できません。直接やりとりすると感情がぶつかりやすいので、連絡そのものを弁護士に任せるのも一つの方法です。費用が心配なら、法テラスや弁護士会の相談から始められます。
衝動が強い日に:仕返しをしないための5つの手順
頭では分かっていても、夜中や相手の顔を見た後に衝動が強くなることがあります。そのときのための手順を、先に決めておきます。
- その場を離れる。 相手と同じ部屋にいる、スマホを持っている、という状況から物理的に離れます。外を歩く、シャワーを浴びるなど、体を動かすことを一つします。
- 送らない手紙を書く。 言いたいことを紙かメモアプリに全部書きます。宛先には送りません。書いたものは翌日に読み返し、本当に伝えたいことだけを残します。
- 24時間置く。 連絡・投稿・訪問は、思いついてから24時間は実行しないと決めます。翌日も同じことをしたいかを確かめます。
- 人に話す。 信頼できる友人か家族に「いま復讐したい気持ちが強い」とだけ伝えます。内容を広める相手ではなく、止めてくれる相手を選びます。
- 相談先に話す。 夜でもつながる電話は、この記事の冒頭に挙げた窓口です。法律の手段を考えるなら、日中に弁護士の相談を予約します。
自分あてのメモの例:「今日は○○を見て、相手の職場に電話したくなった。24時間置く。明日の朝もしたいかを確かめる」
妻の浮気に対して制裁を加えたい気持ちが中心にある夫は、妻の浮気に制裁したい夫へ:怒りを法的な手続きに置きかえる考え方を、自分も浮気して仕返ししたい気持ちがあるときは、浮気の仕返しに自分も浮気したくなったらを続けて読んでください。気持ち全体の整理は浮気されたらどうする?今日すること・急がなくてよいこと・気持ちの整理にあります。
よくある質問
Q. 匿名のアカウントでSNSに書くなら、問題になりませんか?
匿名でも、書いた内容から誰のことか分かれば、名誉毀損や侮辱の問題になりえます。ネットの書き込みについては、書いた人を特定する方法があり、その方法を助言する公的な窓口も置かれています。匿名だから安全と考えて書くと、後で自分が賠償を求められる側に回るおそれがあるので、書く前に止まってください。
Q. 復讐したいと思ってしまう自分は、おかしいのでしょうか?
おかしくありません。信じていた人に裏切られたとき、相手にも同じだけ苦しんでほしいと思うのは、多くの人に起きる反応です。問題になるのは気持ちではなく、それを行動にしたときです。気持ちは書き出したり人に話したりして外に出し、行動は法律で認められた手段に置きかえる、と分けて考えてください。
出典・参考にした公的な情報
- 刑法 第130条・第222条・第230条・第231条・第249条・第261条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律 第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第709条・第710条・第719条・第723条・第724条・第770条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 最高裁判所 昭和54年3月30日 第二小法廷判決(裁判例検索)(裁判所)
- 最高裁判所 平成31年2月19日 第三小法廷判決(裁判例検索)(裁判所)
- まもろうよ こころ 電話相談(厚生労働省)(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。