再婚したら養育費はどうなる?減額が問題になる場面と手続き
養育費は、再婚したというだけで自動的に変わるものではありません。取り決めた額は、父母の合意か、家庭裁判所の調停・審判で見直されるまでは、取り決めどおりが基準です。ただし、再婚に伴って養子縁組をした、収入や家族の人数が変わったといった「事情の変更」があれば、増額・減額の話し合いや調停を求める理由になります。裁判所の養育費請求調停のページも、再婚や子の進学など事情の変更があった場合に、養育費の額の変更(増額・減額)を求める調停・審判を申し立てられると案内しています。
再婚で養育費の見直しが問題になる3つの場面
「再婚」と言っても、誰が再婚したか、養子縁組をしたかで、話が変わります。
| 場面 | 見直しが問題になる理由 | 準備すること |
|---|---|---|
| ① 子を育てている親が再婚した(養子縁組なし) | 再婚相手と子の間に、法律上の親子関係は生じない。収入が増える・家計が変わることは事情の一つになりうる | 世帯の収入や家計の変化を、事実として整理する |
| ② 再婚相手が子と養子縁組をした | 養子と養親は、縁組の日から血族間と同じ親族関係になり(民法727条)、養親が親権者になる(818条3項)。養親にも扶養の義務が及ぶ | 縁組の届出日、戸籍の記載を確かめる |
| ③ 養育費を払う親が再婚した(子が生まれた・再婚相手を扶養する) | 扶養する家族が増え、収入のうち子に回せる額が変わる | 家族構成、収入の資料を整える |
①と②は、受け取る側の再婚です。民法877条1項は、直系血族と兄弟姉妹が互いに扶養する義務を負うと定めています。再婚相手が子と養子縁組をすると、養親は直系血族になるため、扶養の義務の話に加わります。縁組をしていなければ、再婚相手は子の直系血族ではなく、原則として法律上の扶養義務の相手にはなりません。そのため、同じ「再婚」でも、縁組の有無が見直しの大きな分かれ目になります。ただし、縁組があれば実親の養育費が自動でなくなる、とは条文に書かれていません。縁組後の養育費をどうするかは、家庭裁判所が収入や生活の状況を見て判断する事柄です。
③は、支払う側の再婚です。新しい家族を扶養する事情は、見直しを話し合うきっかけになります。これも、増減の有無と幅は、双方の収入や子の状況を合わせて決まります。
なお、浮気が原因の離婚で、相手が不倫相手と再婚した場合も、養育費の仕組みは同じです。養育費は子の養育のための費用で、浮気の責任を問う慰謝料とは別の請求です。
養育費を見直す根拠と、見直しを求める手続
養育費の定めは、協議離婚なら父母の協議で決めますが(民法766条1項)、事情が変わったときは、家庭裁判所が定めを変更できます(同条3項)。扶養に関する協議や審判についても、事情に変更が生じたときの変更を認める規定(880条)があります。日本公証人連合会も、養育費は事情が変われば合意や家庭裁判所の調停で変更でき、「これ以上請求しない」という条項があっても、将来の変更を妨げるものではないと案内しています。
見直しの手続は、次の順です。
- まず話し合う:裁判所のQ&Aでも、一度決めた養育費は、まず元の配偶者との話し合いで取り決め、話し合いが進まなければ養育費請求の手続(調停)で増額・減額を話し合うと案内しています。
- 話し合いの記録を残す:申入れの日付、相手の返事、変更を求める理由を、メールや書面で残します。
- 養育費請求調停を申し立てる:申立人は父または母です。収入印紙は子1人につき1,200円分と連絡用の郵便切手が必要です。相手方の住所地の家庭裁判所か、合意で定めた家庭裁判所に申し立てます。
- 調停が不成立なら審判へ:養育費の調停が不成立になると、引き続き審判の手続で審理されます(家事事件手続法272条4項)。
申し立てに添える主な書類は、申立書とその写し、対象の子の戸籍謄本、申立人の収入に関する資料(源泉徴収票、給与明細、確定申告書、非課税証明書の写しなど)、事情説明書(養育費)、進行に関する照会回答書、送達場所等届出書です。再婚や縁組の事実を示す戸籍の記載も、事情の変更を説明する資料になります。
減額を求められたときの返事の考え方
支払う側から減額を言われたときは、その場で承諾せず、次のように整理します。
- 理由を書面で出してもらう:再婚の日、養子縁組の有無、相手の現在の収入、新しく扶養する家族の人数を確かめます。
- 自分側の事情も整理する:子の年齢、進学の予定、医療費、あなたの収入の変化を書き出します。
- 合意するなら書面に残す:減額の額と開始時期、終わりの時期を書き、公正証書にすることも検討します(養育費を公正証書にする手順:強制執行できる文言と費用)。
文例:「再婚されたとのことですが、養子縁組の有無と、現在のご収入が分かる資料を送っていただけますか。内容を見てから、養育費の見直しについて話し合いたいと思います。」
感情的な言い合いを避け、事実の確認から始めるほうが、調停になったときにも説明が通りやすくなります。
算定の前提が変わるところを確かめる
養育費の額の目安として、家庭裁判所は算定表を使います(令和元年版)。算定表は、支払う側と受け取る側の年収、子の人数と年齢から幅を読む表です。再婚や縁組で見直しが問題になるのは、この前提が動くときです。
- 収入が変わった(転職、失業、昇給)。
- 子の人数や年齢の区分が変わった(子が15歳以上の区分になった、など)。
- 支払う側に、新しく扶養する家族が増えた。
- 養子縁組により、子を扶養する人が増えた。
算定表は標準的な額を簡単に出す目的のもので、裁判所の最終判断と常に一致するわけではありません。そのため、表を自分で当てはめた結果だけを根拠にせず、調停の場で資料を出して話し合います。調停が不成立になって審判に移った場合には、必要があるとき、家庭裁判所が当事者に収入や資産の状況に関する情報の開示を命じることができ、正当な理由なく開示しない場合は10万円以下の過料の定めがあります(家事事件手続法152条の2)。
養育費の見直しの相談先と、関連する手続
見直しの話し合いが難しいときは、調停の前に相談する先があります。養育費・親子交流相談支援センターや法テラスの番号と受付時間は、浮気・不倫の相談先一覧:悩み別の窓口と番号・受付時間の早見表にまとめています。
2026年4月1日以後に、取り決めなしで離婚した場合は、再婚の話の前に、法定養育費(子1人あたり月2万円)が生じる仕組みを確かめます(法定養育費とは?2026年4月以後の離婚で取り決めがない場合の仕組み)。調停の申立てから審判までの流れは養育費調停の流れ:申立て・費用・決まらないときの審判にまとめています。お金の全体像は浮気が原因の離婚とお金:婚姻費用・養育費・財産分与・慰謝料の全体像で見渡せます。
よくある質問
Q. 元配偶者が再婚したと聞きました。養育費は払わなくてよくなりますか?
再婚しただけで、取り決めた養育費が自動的になくなることはありません。減額が問題になるのは、再婚相手が子と養子縁組をした、子の生活を再婚相手が支える状況になった、といった事情の変更があったときです。見直すには、話し合いか養育費請求調停で変更の合意や判断を得る必要があります。
Q. 自分が再婚して子どもが生まれました。養育費を減らしてもらえますか?
新しく扶養する家族が増えるのは、見直しの話し合いをするときの事情の一つになります。ただし減るかどうか、いくら減るかは、双方の収入や子の状況を合わせて判断されます。一方的に減らして払うと差額が未払いとして扱われるおそれがあるので、話し合いか調停で取り決め直します。
出典・参考にした公的な情報
- 養育費請求調停(増額・減額を含む。申立人・費用・書類)(裁判所)
- 家事事件Q&A(一度決められた養育費の増額・減額、調停が不成立の場合)(裁判所)
- 民法 第727条・第766条・第818条・第877条・第880条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 家事事件手続法 第152条の2・第272条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 離婚(Q7・Q8 養育費の変更)(日本公証人連合会)
- 養育費・婚姻費用算定表について(令和元年版)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。