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養育費を公正証書にする手順:強制執行できる文言と費用

この記事のもくじ
  1. 公正証書にする前に決めておく項目
  2. 公証役場での手順
  3. 強制執行認諾文言の意味と、強制執行できないもの
  4. 公証人の手数料の調べ方と計算例
  5. 相手が応じないとき、取り決めが済んでいないとき

養育費の取り決めを公正証書にするには、金額・支払日・終わりの時期を父母で決めたうえで、公証役場で「支払わないときは直ちに強制執行を受けても異議がない」という強制執行認諾の文言を入れて作成します。この文言のある公正証書(執行証書)は、払われないときに、調停や裁判を経ずに強制執行を申し立てる根拠になります(民事執行法22条5号)。手数料は養育費の部分では最大で5年分の額をもとに計算され、2025年10月1日改定後の表で決まります。

公正証書にする前に決めておく項目

公証人は養育費の額を算定せず、父母の合意を書面にします。先に決めておく項目は次のとおりです。

チェックリスト:養育費の公正証書に入れる主な項目
項目 決めること 書き方の注意
月額 子1人あたり、または合計の金額 子が複数なら、1人ごとの額と合計の両方を書く
支払日・方法 毎月○日までに、指定の口座へ振込み 振込手数料の負担も書く
始まりと終わり 始まりの月、終わりの時期(18歳、20歳、大学卒業など) 終わりの条件は、月や年で特定する
進学・病気 入学金、私立の学費、大きな医療費の分担 月額に含めるのか、別に協議するのかを書く
事情の変更 収入や家族構成が変わったときの協議 条項があっても、事情が変われば変更を求められる
住所等の通知 住所・勤務先・連絡先が変わったときに知らせる 差押えの手続で相手の勤務先が必要になる
強制執行認諾 払わないときは直ちに強制執行を受ける旨の陳述 金銭の支払について入れる

日本公証人連合会は、養育費は事情が変われば合意や家庭裁判所の調停で変更でき、「これ以上請求しない」といった条項があっても将来の変更を妨げるものではないと案内しています。一括で受け取る場合の考え方は養育費の一括払いを提案されたら:受け取る側の利点・注意点と税金で扱っています。

額に迷うときは、裁判所の算定表(令和元年版)が目安になります。表の読み方は養育費算定表の使い方:表の選び方・収入の読み取り・幅の扱いの手順を見てください。

公証役場での手順

公証役場での手続は、おおむね次の順です。公証業務の相談は無料です(日本公証人連合会「手数料」Q1)。

  1. 父母で内容に合意する:上の項目を、メールや書面で確認し合います。
  2. 公証役場に相談・予約する:近くの公証役場に連絡し、合意の内容と、離婚の予定日や済んでいるかを伝えます。
  3. 原案をやり取りする:公証人が条項を整えます。法令に違反する内容や無効な内容は書けないため(公証人法26条)、直しを求められることがあります。
  4. 必要書類をそろえる:本人の確認は、印鑑登録証明書と実印、運転免許証と認印、マイナンバーカードと認印などのいずれかで行います。印鑑登録証明書などは発行後3か月以内のものに限られます。離婚の公正証書では、戸籍謄本(離婚前なら現在の戸籍、離婚後なら離婚後の各自の戸籍)も求められます。役場ごとに追加を求められることがあるので、事前に確かめます。
  5. 作成の日に内容を確かめて署名する:2025年10月1日以後は、法務大臣が指定する公証人が作る公正証書は原則として電子データ(PDF)で作られ、電子サインを行います。
  6. 手数料を払い、正本・謄本を受け取る:原則として正本などの交付時に、現金かクレジットカードで払います。

代理人による嘱託もできますが、1人が双方の代理人を兼ねることは一般にできません。ウェブ会議で作る方法は、嘱託人の申出、他の嘱託人に異議がないこと、公証人が相当と認めることがそろったときに限られます。パソコン・カメラ・マイクなどが必要で、スマートフォンやタブレットは使えません。相手と顔を合わせたくない事情があるときは、早めに公証人に伝えて相談します。住所が相手に知られることで生命・身体に危害のおそれがある場合は、住所が分からない措置をして閲覧させる規定があります(公証人法42条5項)。危険を感じているときは、先に浮気・不倫の相談先一覧:悩み別の窓口と番号・受付時間の早見表の窓口に連絡してください。

強制執行認諾文言の意味と、強制執行できないもの

強制執行認諾文言とは、「債務者が、金銭の支払を怠ったときは、直ちに強制執行を受けても異議がない」という趣旨の陳述です。①一定額の金銭を支払う合意と、②この陳述が書かれた公正証書は、裁判をしなくても強制執行ができます。

注意したい点が3つあります。

  • 金銭の支払に限られる:養育費は金銭なので対象ですが、親子交流(面会交流)の取り決めのようなお金以外の約束は、公正証書にしても直接強制執行はできません。
  • 強制執行には別の手続がある:払われなかったときは、公証人に執行文の付与を申し立て、相手への送達の手続を経て、裁判所に差押えを申し立てます。
  • 養育費の特例がある:養育費などの定期金は、一部が払われないとき、期限の来ていない分も給料の差押えを始められます(民事執行法151条の2)。差押えが禁止される給料の範囲も、通常の4分の3ではなく2分の1とされています(152条3項)。

調停や審判で決めた養育費が払われないときは、家庭裁判所に履行勧告を申し出られます(無料)。これに対し、公正証書など当事者間の合意による取り決めは、履行勧告の対象外です。公正証書にした場合は、強制執行を使える代わりに、履行勧告は使えないという違いがあります。

公証人の手数料の調べ方と計算例

公証人の手数料は、公証人手数料令で決まっています。養育費の部分は、全期間の総額ではなく、5年分を超えない額を目的の価額として基本の手数料を出します(手数料令13条1項)。2025年10月1日改定後の基本の手数料は、次のとおりです(手数料令9条・別表)。

目的の価額 手数料
50万円以下 3,000円
50万円超100万円以下 5,000円
100万円超200万円以下 7,000円
200万円超500万円以下 13,000円
500万円超1,000万円以下 20,000円

計算例を2つ示します(筆者の計算。実際の額は公証役場に見積もりを出してもらって確かめます)。

  • 月4万円を子が20歳になるまで(10年超)払う場合、5年分の上限で4万円×60か月=240万円。200万円超500万円以下の13,000円です。
  • 月3万円を子が18歳になるまで13年間払う場合、5年分の上限で3万円×60か月=180万円。100万円超200万円以下の7,000円です。

養育費のほかに慰謝料や財産分与を同じ証書に入れると、行為ごとに手数料を計算して合計します。そのほかにかかる費用は、枚数が一定を超えたときの加算(超えた1枚ごとに300円)、正本・謄本を紙で受け取るときの1枚300円または電子データでの2,500円、強制執行のときの執行文の付与2,000円と送達1,600円です。送達の郵便料などの実費は別にかかります。手数料は、当事者が2人以上なら連帯して払う義務があります。誰が負担するかは、父母で決めてかまいません。

条項の書き方や額に迷うときは、離婚に詳しい弁護士に原案を見てもらう選択肢があります。相談するときは、収入の資料、子の年齢、決まっている項目を持参すると話が進みます。費用は事務所ごとに違うので、相談前に料金表で確かめます。

相手が応じないとき、取り決めが済んでいないとき

公正証書は、父母の合意を書面にするものなので、相手が応じなければ作れません。話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所の養育費請求調停を使います(養育費調停の流れ:申立て・費用・決まらないときの審判)。調停で決まった内容は調停調書になり、これも強制執行の根拠になります。

養育費の取り決めを再婚などで見直す場面は再婚したら養育費はどうなる?減額が問題になる場面と手続き、離婚全体の公正証書は離婚公正証書の作り方:公証役場での流れと強制執行できる条項、手数料の全体は離婚の公正証書の費用:公証人手数料の決まり方と必要書類で扱っています。払われないときの差押えは養育費の強制執行の流れ:給与の差押えの手続きと必要な書類の一覧で順を追って説明します。

よくある質問

Q. 公正証書にすれば、相手は養育費を払うようになりますか?

払うことを保証するものではありません。強制執行認諾文言のある公正証書は、払われなかったときに、裁判を経ずに給料などの差押えを申し立てられる書面になるという意味です。強制執行をするには、執行文の付与と、相手への送達の手続が別に必要です。

Q. 公証人に、養育費の金額を決めてもらえますか?

公証人は養育費の額を算定しません。額は父母が話し合って決め、公証人はその合意を法令に沿った書面にします。額の目安は、裁判所が公表している算定表(令和元年版)で調べ、収入の資料をそろえて話し合います。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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