法定養育費とは?2026年4月以後の離婚で取り決めがない場合の仕組み
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法定養育費とは、2026年4月1日以後に、養育費を取り決めないまま離婚した場合に、離婚の日から子1人あたり月2万円を請求できるという民法の仕組みです。取り決めができるまでの暫定的な額で、収入に応じた本来の養育費とは別のものです。2026年3月31日以前に離婚した人には使えません。この記事では、条文と法務省令に沿って、請求できる人、額、始まりと終わり、支払う側が拒める場合、経過措置を整理します。
法定養育費の仕組み:誰が・いくら・いつからいつまで
法定養育費は、民法766条の3と、額を定める令和7年法務省令第56号(2条)で決まっています。要点を表にまとめます。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 使える場面 | 父母が養育費の定めをしないで離婚した(協議離婚。裁判上の離婚や認知にも準用) | 民法766条の3第1項・771条・788条 |
| 請求できる人 | 離婚の時から引き続き、子の監護を主として行う親 | 同条1項 |
| 請求の相手 | もう一方の親 | 同条1項 |
| 額 | 子1人あたり月2万円(子が2人なら月4万円) | 法務省令2条1項 |
| 払う時期 | 離婚の日から、毎月末 | 民法766条の3第1項 |
| 離婚の月・終わりの月 | その月の日数をもとに日割り | 同条2項・法務省令2条2項 |
| 終わる日 | ①養育費を協議で定めた日、②養育費の審判が確定した日、③子が成年(18歳)に達した日のうち、いちばん早い日 | 民法766条の3第1項・4条 |
日割りの例を示します(筆者の計算)。2026年6月10日に離婚し、子が1人の場合、6月は10日から30日までの21日分が対象で、その月の日数は30日なので、2万円×21÷30=1万4,000円です。7月からは、毎月末に2万円が生じます。終わる日の直前の月も、同じように日割りで数えます。
ここで押さえたいのは、**法定養育費は「取り決めがない間のつなぎ」**だという点です。養育費を父母の協議で定めた日、または審判が確定した日に終わり、以後は取り決めた額が基準になります。月2万円を「養育費の相場」と受け取ってしまうと、本来受け取れる額との差を見落とします。裁判所のページも、法定養育費は暫定的・補充的なもので、適正な養育費の基準ではないと説明しています。
支払う側が拒める場合と、家庭裁判所の調整
法定養育費は、支払う側の事情に配慮した仕組みも入っています。
- 支払能力がないとき:もう一方の親は、支払能力を欠くため払えないこと、または払うと生活が著しく窮迫することを証明したときは、全部または一部の支払を拒めます(民法766条の3第1項ただし書)。証明する責任は支払う側にあります。
- 家庭裁判所が養育費を定めるとき:養育費を定める、または変更するときに、支払能力を考えて、法定養育費の債務の全部または一部の免除や支払の猶予を命じることができます(同条3項)。
- 父母の協議で低い額にするとき:裁判所のQ&Aは、子と別居する親の収入が乏しい場合には、協議で法定養育費より低い額の養育費を取り決めることもできると案内しています。
「月2万円なら払えるはず」と決めつけず、収入や生活の状況を示す資料が、話し合いでも調停でも土台になります。
2026年3月31日以前の離婚には使えない:経過措置
法定養育費が使えるかどうかは、離婚した日で決まります。令和6年法律第33号の附則3条2項は、766条の3は、施行日(2026年4月1日)前に離婚した場合には適用しないと定めています。裁判所のQ&Aも、令和8年4月1日より前に離婚した場合は法定養育費は発生しないと案内しています。
| 離婚した日 | 養育費の取り決め | 法定養育費 | 次の一手 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月31日以前 | なし | 発生しない | 父母の協議、または養育費請求調停で取り決める |
| 2026年3月31日以前 | あり(払われていない) | 対象外 | 取り決めた書面に基づいて請求する |
| 2026年4月1日以後 | なし | 離婚の日から生じる | 請求の意思を伝え、取り決めを進める |
| 2026年4月1日以後 | あり | 生じない(取り決めた日以後は取り決めた額) | 取り決めた書面に基づいて請求する |
「離婚の時に決めていなかったから、法定養育費でよい」と考える前に、離婚した日が4月1日の前か後かを、戸籍の記載で確かめてください。前の離婚なら、過去の分を含めた取り決めの考え方は養育費はさかのぼって請求できる?取り決めなしの離婚の過去分と請求日の残し方で整理しています。
法定養育費を請求する手順と、取り決めへの移り方
法定養育費は、請求して初めて支払を受けられます。相手が払わないときは、次の順で進めます。
- 対象に当たるか確かめる:離婚の日が2026年4月1日以後か、養育費の取り決めがないか、あなたが子を主として監護しているかを確かめます。
- 請求の意思を書面で伝える:離婚の日、子の名前と人数、法定養育費の請求であることを書いて、日付が残る形で送ります。
- 本来の養育費の話し合いに進む:月2万円はつなぎの額です。収入を踏まえた額、払う期間、支払日を、算定表を目安に話し合います。
- まとまらなければ養育費請求調停を申し立てる:収入印紙は子1人につき1,200円分と連絡用の郵便切手が要ります。不成立なら審判に移ります。手続は養育費調停の流れ:申立て・費用・決まらないときの審判で扱います。
- 取り決めたら書面に残す:公正証書にしておくと、払われないときに強制執行しやすくなります(養育費を公正証書にする手順:強制執行できる文言と費用)。
払われない場合の差押えや、養育費などの債権が他の債権者より優先して取り立てられる先取特権の仕組み(法務省令では月8万円に子の数を掛けた額が上限)は、養育費を払わない相手には:先取特権・強制執行と相談先の使い分けで扱います。法定養育費にも先取特権(民法308条の2)が付くため、養育費の取り決めがなくても、担保権実行(差押え)の手続がとれると裁判所は案内しています。
他の改正点との関係と、相談先
2026年4月1日の改正では、法定養育費のほかにも、共同親権を選べるようになったこと、財産分与の請求期間が離婚から5年になったことなどが変わっています。全体は離婚の法改正2026年4月施行:共同親権・法定養育費・財産分与の変更点にまとめました。再婚や養子縁組で養育費の見直しが問題になる場面は、再婚したら養育費はどうなる?減額が問題になる場面と手続きで扱います。
法定養育費の額は、法務省令の附則で、施行後の状況などを考えて検討するとされており、将来変わる可能性があります。請求するときは、法務省の特設ページと裁判所のページで、現在の内容を確かめてください。養育費の相談は、養育費・親子交流相談支援センターや法テラスで受けられます(番号と受付時間は浮気・不倫の相談先一覧:悩み別の窓口と番号・受付時間の早見表)。お金の全体像は浮気が原因の離婚とお金:婚姻費用・養育費・財産分与・慰謝料の全体像で見渡せます。
よくある質問
Q. 法定養育費は、離婚すると自動的に振り込まれるのですか?
自動的には払われません。民法766条の3は、子を主として監護する親が、もう一方の親に対して請求できると定めています。相手が任意に払わないときは、話し合いや養育費請求調停で支払を求めることになります。請求の意思を示した日が後から分かるよう、書面で伝えておきます。
Q. 法定養育費の月2万円より高い養育費を求めることはできますか?
できます。月2万円は取り決めができるまでの暫定的な額で、適正な養育費の基準ではないと裁判所も説明しています。収入に応じた額は、父母の話し合いや調停で、算定表を目安に取り決めます。取り決めた日以後は、取り決めた額が基準になります。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第766条の3・第4条・第771条・第788条、令和6年法律第33号 附則第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法の一部を改正する法律の施行に伴う法務省令(令和7年法務省令第56号)第2条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について〔令和8年4月1日施行〕(法務省)
- 家事事件Q&A(法定養育費とはどのようなものですか/令和8年4月1日より前に離婚した場合/収入が乏しい場合)(裁判所)
- 養育費請求調停・養育費に関する手続(裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。