養育費の相場の調べ方:算定表と司法統計で見る金額の分布
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養育費の「相場」は、1つの数字では言えません。月額は、父母の年収と子の人数・年齢で大きく変わるからです。目安を調べるときの公的な資料は3つあります。家庭裁判所の算定表(収入から標準的な枠を読む)、司法統計(調停などで実際に決まった月額の分布)、全国ひとり親世帯等調査(養育費を受け取っている世帯の平均)です。この記事では、令和7年(2025年)の司法統計の分布を中心に、3つの資料の読み方の違いを示します。
結論:3つの資料は、同じ「相場」を別の角度から見ている
算定表は「この収入ならこの枠」と条件つきの目安を示し、司法統計は「実際に決まった額がどう散らばっているか」を示し、ひとり親世帯等調査は「受け取っている世帯の平均」を示します。同じ数字として比べるものではありません。
| 資料 | 何が分かるか | 向いている使い方 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 算定表(令和元年版) | 父母の年収と子の人数・年齢から、標準的な月額の枠(1万〜2万円の幅) | 自分の条件で目安を読む | 最終的な額は様々な事情で決まるので、常に一致するわけではない |
| 司法統計年報(家事編)令和7年 | 家庭裁判所の調停等で離婚が成立した事件で、決まった月額の件数の分布 | 決まった額の散らばりを知る | 子全員分の合計の月額。協議離婚の取り決めは含まない。平均値は載っていない |
| 全国ひとり親世帯等調査(令和3年度) | 母子世帯の取り決め率・受給率・平均月額 | 国全体の実態を知る | 推計値。調査時点は令和3年11月1日 |
自分の額を調べるときは、まず算定表で条件に合う枠を読み、司法統計の分布は「その額が、実際に決まった額の中でどのあたりか」を見る補助に使うのが現実的です。算定表の読み方は養育費算定表の使い方:表の選び方・収入の読み取り・幅の扱いの手順にあります。
司法統計で見る:調停等で決まった月額の分布(令和7年)
司法統計年報(家事編)令和7年の第25表は、「離婚」の調停が成立した事件、または調停に代わる審判があった事件のうち、母を監護者と定めた未成年の子がいるもの(14,761件)で、養育費の取り決めがどう分布しているかを示しています。支払者が夫の取り決めは12,500件で、月額が定められたのは12,422件です。この月額は、子全員分の合計の月額です。
| 月額(子全員分の合計) | 全体 12,422件 | 子1人 6,416件 | 子2人 4,596件 |
|---|---|---|---|
| 1万円以下 | 362件(2.9%) | 189件(2.9%) | 123件(2.7%) |
| 1万円超2万円以下 | 805件(6.5%) | 410件(6.4%) | 270件(5.9%) |
| 2万円超4万円以下 | 3,358件(27.0%) | 1,985件(30.9%) | 1,079件(23.5%) |
| 4万円超6万円以下 | 3,250件(26.2%) | 1,873件(29.2%) | 1,116件(24.3%) |
| 6万円超8万円以下 | 1,855件(14.9%) | 940件(14.7%) | 775件(16.9%) |
| 8万円超10万円以下 | 1,048件(8.4%) | 393件(6.1%) | 480件(10.4%) |
| 10万円超 | 1,742件(14.0%) | 626件(9.8%) | 752件(16.4%) |
割合は、表の件数から筆者の計算で出したものです。全体の月額12,422件のうち、額が一定でない取り決めが2件あるため、表の7区分を足しても件数が2件ぶん届きません。
この分布から読めることは、次の3点です。
- 「2万円超4万円以下」と「4万円超6万円以下」の2区分で、全体の53.2%(筆者の計算)を占めます。
- 子が1人のときは、この2区分で60.1%(筆者の計算)に集まります。
- 子が2人になると、8万円を超える区分の割合が上がります。10万円を超える割合は、子1人の9.8%に対して、子2人は16.4%です。
読み方の注意が3つあります。第一に、これは家庭裁判所の調停や審判で離婚が成立した事件の数字で、当事者だけで決める協議離婚の取り決めは含まれていません。第二に、月額は子の人数を問わず合算した額です。子1人あたりの額ではありません。第三に、司法統計には平均値や中央値の表がありません。「相場は月4万円」のように、1つの数字に丸めて使うことはできません。
司法統計年報は毎年更新されます。使うときは最新年(2026年10月時点では令和7年)の表を開いてください。
ひとり親世帯等調査で見る:取り決め率と受給率
厚生労働省の令和3年度全国ひとり親世帯等調査(令和3年11月1日時点、推計値)では、離婚による母子世帯のうち、養育費の取り決めをしている割合が46.7%でした。離婚した父親から養育費を「現在も受けている」割合は28.1%で、そのうち養育費の額が決まっている世帯の平均月額は50,485円とされています。
この数字は、司法統計と性質が違います。司法統計は調停等の成立時に決まった額の分布で、この調査は「いま受け取っている世帯」の平均です。受け取っていない世帯、取り決めのない世帯は平均に入っていません。母子世帯の取り決め率が5割に届かないことを示す数字として読み、自分の額の基準には使いません。取り決めておく意味は養育費とは?決め方・算定表・2026年からの法定養育費まででも説明しています。
算定表と統計は、なぜ同じ数字にならないのか
算定表は、父母の年収と子の条件から読む「標準的な額」の枠です。一方、司法統計の分布は、さまざまな年収の父母が、それぞれの事情で決めた額の結果です。第25表は子の人数別の表で、父母の年収別の内訳はありません。年収が違えば算定表の枠も変わるため、分布の山の位置を、そのまま自分の額の目安にはできません。
また、算定表の説明書には、算定表は標準的な額を簡易迅速に算定するためのもので、当事者間の合意でも、様々な事情を考慮して最終的な額を決めることが考えられると書かれています。統計の分布も、算定表から読んだ額をそのまま写したものではありません。
自分の養育費の目安を調べる手順
目安を調べて話し合いに臨むなら、次の順番がおすすめです。
- 双方の年収を、源泉徴収票などの資料で確認する。 手取りではなく、支払金額(給与)や課税される所得金額(自営)を使います。
- 子の人数と年齢に合う表を選び、枠を読む。
- 枠の中で、特別な事情(学費、医療費、住居費の負担)を話し合う。 額が幅を超える主張は、特別な事情が必要です。
- 司法統計の分布で、読んだ額が集まりやすい区分と比べる。 大きく外れていても、収入や子の人数が違えば自然なことがあります。
- 終わりの時期・支払方法・特別費用の分担まで書面にする。 養育費はいつまで?20歳・大学卒業など終わりの決め方で、終わりの書き方を扱います。
相手が算定表の額より低い額しか示さない、収入の資料を出さないといった場面では、離婚の手続を扱う弁護士に、資料の請求の仕方や調停の進め方を相談する選択肢があります。
話し合いが進まないときの調停は養育費調停の流れ:申立て・費用・決まらないときの審判で、全体の位置づけは浮気が原因の離婚とお金:婚姻費用・養育費・財産分与・慰謝料の全体像で確かめられます。
よくある質問
Q. 養育費の平均額は、月いくらですか?
裁判所の司法統計には平均額の表がなく、月額を区分ごとの件数で示しています。国の全国ひとり親世帯等調査(令和3年11月1日時点)には、離婚した父親から養育費を受けている母子世帯で、養育費の額が決まっている世帯の平均月額が50,485円と載っています。ただし受けている世帯の平均で、子の人数や親の年収は世帯ごとに違うため、自分の額の基準にはなりません。
Q. 法定養育費の月2万円は、相場と考えてよいですか?
法定養育費は、2026年4月1日以後に養育費を取り決めずに離婚した場合に、取り決めまでのつなぎとして請求できる額です。裁判所の案内も、暫定的・補充的なもので、適正な養育費の基準ではないと説明しています。相場の目安にはなりません。
出典・参考にした公的な情報
- 司法統計年報(家事編)令和7年(第25表ほか)(裁判所)
- 司法統計年報(家事編)令和7年 PDF版(裁判所)
- 令和3年度 全国ひとり親世帯等調査の結果を公表します(別添1 結果の概要)(厚生労働省(こども家庭庁掲載))
- 養育費・婚姻費用算定表について(説明書)(裁判所)
- 養育費請求調停(裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。