別居中の調停の使い分け:円満調停と婚姻費用の分担請求調停
この記事のもくじ
別居中に家庭裁判所で話し合うなら、目的で調停を使い分けます。夫婦の関係を立て直したいなら夫婦関係調整調停(円満)、別居中の生活費を決めたいなら婚姻費用の分担請求調停、離婚そのものを話し合うなら夫婦関係調整調停(離婚)です。どれも、収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手で申し立てられます。この記事では、三つの使い分けと、申立ての手順、不成立になったあとの道筋を順にたどります。
別居中に使える調停は目的で選ぶ
別居中の夫婦が使える調停は、目的ごとに名前も結果も違います。まず、自分が何を決めたいのかを一つに絞って、次の表から入口を選んでください。
| 決めたいこと | 使う調停 | 不成立のあと | 費用 |
|---|---|---|---|
| 関係を戻したい、離婚するか迷っている | 夫婦関係調整調停(円満) | 調停が終了する。離婚を求めるなら離婚訴訟が必要 | 収入印紙1,200円分+郵便切手 |
| 別居中の生活費(婚姻費用)を決めたい | 婚姻費用の分担請求調停 | 審判の手続に移り、裁判官が判断する | 収入印紙1,200円分+郵便切手 |
| 離婚そのものを話し合いたい | 夫婦関係調整調停(離婚) | 調停が終了する。離婚を求めるなら離婚訴訟 | 収入印紙1,200円分+郵便切手 |
円満調停と離婚調停は、同じ「夫婦関係調整調停」という手続で、申立ての趣旨が円満回復か離婚かで分かれます。離婚の調停では、離婚そのもののほか、親権者、養育費、財産分与、年金分割の割合、慰謝料も話し合えます。婚姻費用は、別居中の生活費の分担を決める別の手続です。
どの調停を使うか迷うときは、「いま困っていること」から選ぶと決めやすくなります。生活費が入らず困っているなら婚姻費用、相手の行動を改めさせて関係を戻したいなら円満、離婚を前提に条件を決めたいなら離婚の調停です。
円満調停:関係を戻す、迷っている人のための話し合い
夫婦関係調整調停(円満)は、夫婦関係が円満でなくなった場合に、円満な関係を回復するための話し合いの場です。裁判所が双方から事情を聞き、原因や改善の方法について、解決案の提示や助言を行います。
裁判所のQ&Aは、異性関係や飲酒癖など、夫婦関係が悪くなった原因の行動をやめさせて、円満な関係に戻りたい場合に利用できるとしています。申立ての時点で離婚の意思が固まっている必要はなく、離婚するかやり直すかを、調停の中で決めていきます。離婚を求めて申し立てた後に、話し合いの結果、円満調整に切り替えることもできます。
気をつけたいのは、円満調停には、相手に何かを命じる力がないことです。話し合いがまとまらなければ、調停は不成立で終了します。やり直しの期間や会い方を自分たちで決める方法は別居からの再構築:期間と会い方を決めてやり直すときの注意に、円満調停の流れは円満調停とは?夫婦関係を修復するための家庭裁判所の手続きと流れにまとめました。
婚姻費用の分担請求調停:別居中の生活費を決める
婚姻費用の分担請求調停は、別居中の夫婦の間で、婚姻生活を維持するための費用の分担について、話合いがまとまらないときに使います。民法760条は、夫婦が資産や収入などの事情を考慮して婚姻費用を分担すると定めていて、別居中も続きます。調停では、資産、収入、支出などの事情を聞いて、解決案の提示や助言が行われます。
額の目安は、裁判所の算定表です。裁判所のQ&Aは、双方の収入、子どもの人数や年齢などを考えて、算定表を目安に個別の事情も加味して決めると説明しています。示される額は、子ども全員分の合計です。算定表の読み方は婚姻費用算定表の見方に手順があります。
調停が不成立になった場合は、審判の手続が始まります(家事事件手続法272条4項)。審判に不服があるときは、告知を受けた日から2週間以内に即時抗告ができます。調停が成立すると、調停調書が作られ、婚姻費用の調停ではその記載が確定した審判と同じ効力を持ちます(同法268条1項。強制執行の根拠になります)。支払いが止まったときの手続は婚姻費用を払わない相手には:取り決めの形別に使える手段と子の分の先取特権で扱っています。
2026年4月からは、婚姻費用の事件で、裁判所が当事者に収入と資産の状況の開示を命じることができるようになりました(家事事件手続法152条の2。調停にも準用されます)。正当な理由なく開示しない、または虚偽の情報を開示すると、10万円以下の過料の対象になります。収入に関する資料は、源泉徴収票や給与明細、確定申告書の写しなどを、早めに集めておくと進みます。
申立ての手順と、準備する書類
申立ては、次の順で進めます。
- 申立先を確かめる。相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所です(家事事件手続法245条)。
- 申立ての方法に迷うときは、家庭裁判所の家事手続案内で、手続や必要書類の案内を受ける。案内は手続の説明で、離婚したほうがよいか、いくらもらえるか、といった相談には応じない窓口です。
- 申立書と添付書類を集める。円満調停と婚姻費用の分担請求調停の違いは、婚姻費用のほうに申立人の収入関係の資料(源泉徴収票、給与明細など)と専用の事情説明書がつく点です。書類の一覧は、それぞれ円満調停とは?夫婦関係を修復するための家庭裁判所の手続きと流れと婚姻費用の分担請求調停:申立ての方法・費用・いつの分から請求できるかで確かめられます。
- 収入印紙1,200円分と、連絡用の郵便切手(郵便料は裁判所ごとに異なります)を用意して、裁判所に出す。
- 裁判所から呼出しが届き、期日に出席する。調停は、裁判官1人と、民間から選ばれた調停委員2人以上で構成する調停委員会が進めます。
申立書の写しは、原則として相手方に送られます(家事事件手続法256条)。相手を責める強い言葉は避け、事実と希望を整理して書いてください。避難先の住所など、相手に知られたくない情報は、申立書に書かず、先に秘匿の申出ができる制度があります。認められないこともあるため、手続案内の窓口で先に相談してください。
相手と顔を合わせたくない、遠方で出向けないという場合は、裁判所が相当と認めれば、ウェブ会議を使えます。DVがあって顔を合わせたくないときは、個別の事情に応じて、裁判所構内で顔を合わせない工夫をする裁判所が少なくありません。不安な点は、申立先の家庭裁判所に伝えてください。身の安全が最優先のときは、調停より先に浮気・不倫の相談先一覧:悩み別の窓口と番号・受付時間の早見表の窓口を使ってください。
調停の時間と、不成立のあとの選び方
令和7年(2025年)の司法統計年報(家事編)で、離婚や円満調整を含む婚姻関係事件57,491件の審理期間を見ると、6か月以内に終わったものは累計で58.0%、1年以内に終わったものは累計で87.1%でした(筆者の計算)。事件によって期間は違うため、目安として受け取ってください。決まるまでに時間がかかるため、生活費が止まっているなら、早めに申し立てる選択になります。
円満調停が不成立になると、手続は終了します。そのあとの選択肢は、話し合いを続ける、別の方法でカウンセリングを探す、離婚調停に進む、などです。離婚調停が不成立になった場合は、離婚を求めるなら離婚訴訟を起こすことになります。流れの全体は離婚調停の流れ:申立てから成立・不成立までと浮気が原因のときの準備で確かめられます。
調停は、弁護士に依頼することもできますが、依頼しなくても手続を進められます(裁判所のQ&A)。個別の見通しや、相手との条件の組み立てを相談したいときは、弁護士に頼む選択肢があります。
弁護士に頼むか迷うなら、法テラスや弁護士会の相談窓口で、費用の目安と相談の流れを聞いてから決める方法があります。浮気した側が家を出たときの生活費と離婚の考え方は、前の浮気した側が家を出たら?有責配偶者の別居と婚姻費用の関係に書きました。次は、窓口の全体像を浮気・不倫の相談先一覧で確かめてください。
よくある質問
Q. 離婚するかどうか迷っていても、調停を申し立てられますか?
申し立てられます。裁判所の案内では、夫婦関係調整調停(円満)は、離婚するかどうか迷っている場合にも利用できます。申立ての時点で離婚の意思が固まっている必要はなく、話し合いの中で、離婚を求める方向に切り替えることも、円満に戻る方向で進めることもできます。
Q. 円満調停と婚姻費用の調停は、同時に申し立てられますか?
目的が違う別々の申立てなので、それぞれに手数料(収入印紙1,200円分)と書類が必要です。同時に出したときに期日をどう進めるかは、申立先の家庭裁判所で変わる部分があります。家事手続案内の窓口で、状況を伝えて聞いてください。
Q. 相手が調停に出席しなかったら、どうなりますか?
調停は双方の出席と協力が前提なので、相手が出席しない場合は、不成立として終わるのが基本です。円満調停は不成立で終了します。婚姻費用の調停は審判の手続に移り、裁判官が判断します。離婚を求めるなら、離婚訴訟を起こす必要があります。
出典・参考にした公的な情報
- 夫婦関係調整調停(円満)(裁判所)(裁判所)
- 婚姻費用の分担請求調停(裁判所)(裁判所)
- 夫婦関係調整調停(離婚)(裁判所)(裁判所)
- 家事事件Q&A(裁判所)(裁判所)
- 家事事件手続法 第245条・第256条・第268条・第272条・第152条の2・第258条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 住所・氏名等の秘匿制度(裁判所)(裁判所)
- 令和7年 司法統計年報(家事編)(裁判所)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。