浮気した側が家を出たら?有責配偶者の別居と婚姻費用の関係
浮気をした配偶者が家を出て行っても、生活費を分担する義務(婚姻費用)が自動的になくなるわけではありません。民法760条には、浮気した側や家を出た側を外す言葉がなく、離婚が成立するまでは夫婦のままだからです。この記事では、出て行かれた側が最初にすること、生活費と離婚の話し合いの考え方、出た側が確かめることを、場面に分けて説明します。個別の金額や結論は出せないので、判断の材料と手続の使い分けを中心に書きます。
出て行かれた側が最初の1か月でしておくこと
浮気をした側が家を出ると、残された側は怒りと不安で動きがちです。まず、あとで事実を説明できるように、次を整えます。
- 相手が家を出た日と、出る前後の発言を、日付つきでメモする
- 相手が家に置いていったもの、持ち出したものを、写真で残す
- 生活費の入金の有無と、最後に入金があった日を記録する
- 相手との連絡は、メッセージなど記録に残る手段を使う
- 子どもがいるときは、子どもがどちらと暮らしているか、学校や園の手続を書き出す
相手に「戻ってきて」と連絡を重ねたくなる時期ですが、感情的な内容は、後で話し合いを不利にする材料になりえます。生活費の話は、感情の話と分けて、事実だけを短く書くのが基本です。
文例:「家を出てから、生活費の入金がありません。今月分の生活費について、いつ、いくら入れてもらえるかを教えてください。話し合う日を決めたいので、都合のよい日を3つ書いてください。」
子どもが相手と会う機会についても、最初の連絡で触れておくと、感情的なやりとりに流れにくくなります。
文例:「子どもが、お父さん(お母さん)に会いたがっています。会う日と場所は、子どもの学校の予定に合わせて決めたいので、都合のよい日を教えてください。子どもの前で、今回のことは話さないようにしましょう」
生活費の請求は、口頭ではなく書面かメールで、いつからいくらを求めるかを書いておきます。
文例:「○月○日から生活費の入金が止まっています。婚姻費用として、毎月○日までに、子どもの分も含めた額を入れてください。額について考えが違うなら、算定表の見方を一緒に確かめたいので、収入が分かる資料(源泉徴収票など)を送ってください」
相手の連絡先が分かっていて返事があるうちは、書面や話し合いで進められます。連絡がつかない、返事がないというときは、家庭裁判所の調停を使う方法があります。
生活費(婚姻費用)は誰が誰に、どう決まるか
婚姻費用は、民法760条が「資産、収入その他一切の事情を考慮して」分担すると定めています。出た側が払う立場になるか、残った側が払う立場になるかは、まず収入と子どもの暮らし方で変わります。裁判所の算定表も、縦軸と横軸を、夫婦それぞれの年収として読む仕組みで、浮気の有無という軸はありません。ただし、浮気をした側が自分の生活費の分を請求する場合の扱いは争点になりうるので、有責配偶者からの婚姻費用の請求はどうなる?浮気した側の考え方で別に整理しています。
| 場面 | 生活費で起こりやすいこと |
|---|---|
| 収入の高い側が出て、子どもと残る側の収入が低い | 出た側が払う立場として、話し合いや調停で額が検討される |
| 子どもを連れて出た側が、収入の低い側 | 請求を受けた側が、浮気の事情をどう主張するかは別の論点(上のリンク先) |
| 夫婦だけで、収入に大きな差がない | 年収の差が小さいほど、目安の額も小さくなる読み方になる |
| 出た側が生活費を止めた | 残った側が、調停で分担を求める手続を選べる |
浮気をした側が請求する場合に、請求が認められるかどうか、どう減額されるかは、有責配偶者からの婚姻費用の請求はどうなる?浮気した側の考え方に分けて書いています。算定表の読み方は婚姻費用算定表の見方で手順を確かめられます。話し合いがまとまらない場合の手続は、次の別居中の調停の使い分け:円満調停と婚姻費用の分担請求調停で説明します。
出た側が離婚を求めてきたときの考え方
浮気をした側から離婚を切り出されると、「浮気したのに勝手だ」と感じるのは自然です。離婚には、協議、調停、裁判の三つの道があります。協議や調停で離婚するかどうかは、夫婦の合意で決まります(民法763条)。応じない選択もでき、相手が離婚を望んでも、あなたが同意しない限り、話し合いでは成立しません。
相手が裁判を起こした場合は、浮気をした側からの離婚請求について最高裁の判断があり、別居の長さや子どもの状況などが総合して見られます。年数の線は示されていません。判決の中身と、別居の年数の考え方は別居期間は何年で離婚できる?年数の考え方と浮気がある場合の違いで、制度の全体像は有責配偶者とは?浮気した側からの離婚請求が問題になる理由で整理しています。
返事をするときに手元に置きたいのは、次の3つです。
- お金の条件:離婚後の養育費、財産分与、慰謝料について、相手が何を示しているか。示されていなければ、示すよう書面で求める
- 子どもの条件:親権者、親子交流の頻度と方法、転校や引越しの有無
- 期限と順番:署名を求められても、その場で応じない。条件の一覧にしてから、弁護士や法テラスで確かめる
文例:「離婚についての考えは受け取りました。お金と子どものことの条件が分からないと判断できないので、養育費・財産分与・慰謝料・子どもとの会い方について、考えを書面で教えてください。回答をもらってから、こちらの考えを伝えます」
出て行った側が「家を出た=悪意の遺棄」と言われるのではと心配する場合は、別居は悪意の遺棄に当たる?判断で見られる事情と浮気が原因の場合も読んでください。
出た側が確かめること、残った側が慰謝料を考えるとき
浮気をした側が家を出た場合、出た側が先に確かめておきたいのは次の点です。
- 生活費を止めないこと。止めると、残った側が婚姻費用の調停を申し立てる理由になります
- 子どもとの会い方を、感情的にならない方法で決めること
- 連絡を絶たず、相手が連絡できる窓口(メールなど)を残しておくこと
- 離婚を急ぐ前に、お金と子どものことの条件を整理すること
残った側が慰謝料を考えるときは、生活費の話と分けて進めます。慰謝料は、民法709条・710条の不法行為に基づく請求で、損害と加害者を知った時から3年で時効にかかります(民法724条)。別居している間も期限は進みます。不倫相手への請求と、配偶者本人への請求は、手続も期限の考え方も分かれる点があるので、別居中の不倫と慰謝料:別居の前後で考え方が変わりうる理由で別居の前後の整理を確かめてください。
| 話題 | 根拠 | 進め方の入口 |
|---|---|---|
| 生活費 | 民法760条(婚姻費用) | 話し合い、ダメなら婚姻費用の分担請求調停 |
| 離婚するか | 民法763条(協議)、770条(裁判) | 協議、離婚調停、裁判の順 |
| 慰謝料 | 民法709条・710条・724条 | 弁護士に相談し、期限を確かめる |
| 戻ってきてほしい | 民法752条(同居・協力・扶助) | 円満調停や再構築の話し合い |
浮気をされた側は、怒りとつらさで、判断が揺れやすい時期です。つらさが強いときは、別居して後悔・つらいとき:戻るか続けるかを考える材料で話せる窓口を紹介しています。
よくある質問
Q. 浮気した側が出て行ったら、もう生活費を払わなくてもよいのですか?
民法760条は、夫婦が資産や収入などの事情を考えて婚姻費用を分担すると定めていて、浮気をした側や家を出た側を除く言葉はありません。別居しても、離婚が成立するまでは夫婦のままなので、分担の問題は残ります。いくらになるかは収入や子どもの人数などで変わるため、調停や弁護士への相談で確かめてください。
Q. 出て行った配偶者から離婚を求められました。応じなければいけませんか?
話し合いや調停で離婚するかどうかは、夫婦の合意で決まります。応じるかどうかを決めるのは、あなたです。相手が裁判を起こした場合は、浮気した側からの離婚請求について最高裁の判断があり、別居の長さや子どもの状況などが総合して見られます。あわてて署名せず、条件を整理してから返事をしてください。
Q. 出て行った配偶者に、慰謝料の請求を後回しにしても大丈夫ですか?
慰謝料には期限があります。民法724条は、損害と加害者を知った時から3年で時効にかかると定めています。生活費の話し合いと慰謝料の話は別なので、請求するかどうかを決めていない人は、早い段階で弁護士に相談して、期限の数え方を確かめておいてください。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第724条・第752条・第760条・第763条・第770条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 最高裁判所 昭和62年9月2日 大法廷判決(裁判所)
- 最高裁判所 平成6年2月8日 第三小法廷判決(裁判所)
- 婚姻費用の分担請求調停(裁判所)(裁判所)
- 養育費・婚姻費用算定表について(説明書)(裁判所)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。