慰謝料・内容証明・示談 / Q&A

依頼した弁護士を変えたいとき:慰謝料請求の途中で確かめること

この記事のもくじ
  1. 依頼中の弁護士は変えられる:解約の仕組みと気をつける点
  2. 変える前に:不満を言葉にして説明を求める
  3. 解約の前に確かめる3つ:契約・お金・資料
  4. 新しい弁護士への引き継ぎ:順番と時期
  5. 次の弁護士を選ぶときに見直したい点

依頼した弁護士は、慰謝料請求の途中でも変えられます。弁護士への依頼は法律上の「委任」(法律行為でない事務の委託なので正確には準委任で、委任の規定が準用されます。民法656条)にあたり、民法651条1項は、委任は各当事者がいつでも解除できると定めています。ただ、解約すれば着手金や実費の精算、預けた証拠の返却、相手方への連絡の切り替えといった後始末が生じます。変える前に、委任契約書の中途解約の定め・お金の精算・資料の受け取りの3点を確かめ、次の弁護士を決めてから解約を伝える順番にすると、交渉や裁判が止まる期間を短くできます。

依頼中の弁護士は変えられる:解約の仕組みと気をつける点

弁護士との委任契約は、依頼者の側からいつでも解除できます(民法651条1項)。理由を詳しく説明する義務もありません。ただし、同じ条文の2項は、相手方に不利な時期に解除した場合などには損害を賠償しなければならないとし、やむを得ない事由があったときは除くとしています。通常の解約で賠償が問題になる場面は多くありませんが、弁護士がちょうど和解の期日に向けて準備を終えた直後など、時期によっては精算でもめることがあります。

報酬については、委任が途中で終わったとき、弁護士はすでにした仕事の割合に応じて報酬を請求できます(民法648条3項2号)。「成果が出たら払う」という成功報酬の約束は、成果が出ていなければ原則として発生しません(648条の2)。実際の精算は委任契約書の定めが先なので、手元の契約書のどこに解約時の扱いが書かれているかを最初に確かめてください。

慰謝料請求がすでに裁判になっている場合は、代理人の交代に手続きが伴います。訴訟代理権がなくなったことは、本人または代理人から相手方に通知しなければ効力を生じないと定められています(民事訴訟法59条で準用する36条1項)。裁判所や相手方への届け方は、旧・新どちらの弁護士にも確かめ、空白の期間に期日が来ないように調整します。

変える前に:不満を言葉にして説明を求める

「連絡が遅い」「方針が見えない」という不満は、説明を求めることで解けることもあります。弁護士には、依頼者の求めがあればいつでも事件の処理の状況を報告する義務があります(民法645条)。乗り換えを決める前に、聞きたいことを書面かメールで伝え、返事の中身で判断すると、後で「言ってくれれば直した」という行き違いを避けられます。

文例:「○○様への慰謝料請求の件で、現在の進み具合を伺いたくご連絡しました。①相手方からの最後の回答の内容と日付、②次に何をいつ行う予定か、③これまでにかかった実費と預り金の残額、の3点を、○月○日までにメールでお知らせいただけますか。」

よくある不満 解約の前に確かめること
連絡がつかない・返事が遅い 連絡の窓口(担当の弁護士か事務員か)と、返事までの目安を聞いたか
方針や見通しの説明がない 次の手続きと時期を書面で聞いたか。相手方の回答の写しをもらったか
示談を急かされる・金額に納得できない 急ぐ理由(時効・相手の資力など)の説明を求めたか
費用の説明があいまい 契約書の報酬の定めと、実費の明細を見せてもらったか
話しにくい・相性が合わない 不満の中身を一度伝えたか。伝えにくければ乗り換えを考えてよい

費用の精算で弁護士と話がまとまらないときは、その弁護士が所属する弁護士会に紛議の調停を求める方法があります(弁護士法41条)。職務上の重大な問題があると考える場合の懲戒の請求(弁護士法58条)は、費用を取り戻す手続きではなく、弁護士の処分を求める手続きなので、目的を分けて考えます。

解約の前に確かめる3つ:契約・お金・資料

乗り換えで損をしやすいのは、お金と資料の後始末です。解約を伝える前に、次の表で手元の状況を確かめておきます。

チェックリスト:弁護士を変える前に確かめること
分類 確かめること 根拠・見る場所
契約 中途解約のときの着手金・報酬の扱い 委任契約書の解約・精算の条項
契約 成功報酬が発生する条件(成果の定義) 委任契約書の報酬の条項、民法648条の2
お金 実費の預り金の残り、すでに使った実費の明細 預り金の精算書(書面で求める)
お金 相手方から受け取った示談金などが事務所の口座に入っていないか 民法646条1項(受け取った金銭の引渡し)
資料 預けた証拠の原本、事務所が作った書面の控え 返却を求める一覧を作る
資料 相手方とのやり取り(通知書・回答書・示談案)の写し 新しい弁護士への引き継ぎに要る
時期 次の期日・回答期限・時効の満了が近くないか 期日の呼出状、内容証明の日付

受け取ったお金について、民法646条1項は、受任者は委任事務の処理にあたって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならないと定めています。相手方がすでに一部を支払っている場合は、その扱いを精算書で確かめます。

資料は、証拠の原本(写真・調査報告書・やり取りの記録)と、事務所が作った内容証明の控え、相手方からの回答書をそろえて受け取ると、新しい弁護士がすぐに状況をつかめます。事務所によっては記録の写しの作成に実費がかかることがあるので、何を返してもらい、何を写しでもらうかを一覧にして頼むと行き違いが少なくなります。

新しい弁護士への引き継ぎ:順番と時期

空白をつくらないために、次の順番で進めます。

  1. 新しい弁護士に相談する:委任契約書、経過のメモ、相手方とのやり取りの写しを持参し、引き受けてもらえるか、費用はいくらかを確かめます。相談の準備は弁護士に相談する前の準備:時系列メモと持ち物・聞くことの一覧が使えます。
  2. 今の弁護士に解約を伝える:口頭だけでなく、メールや書面で日付を残します。
  3. 精算と資料の返却を受ける:上の表の項目を一つずつ確かめます。
  4. 新しい弁護士と委任契約を結ぶ:新しい弁護士から相手方へ、代理人になった旨の通知を出してもらいます。

文例:「本件の委任契約を、○月○日をもって解除いたします。つきましては、①着手金・報酬・実費の精算書、②お預けした資料の原本と、相手方とのやり取りの写しの返却を、○月○日までにお願いいたします。今後の相手方との連絡は、新たに依頼する弁護士から改めてご連絡します。」

時期で特に注意したいのが時効です。不倫の慰謝料は、損害と加害者を知った時から3年で時効にかかるとされており、乗り換えの間に満了が近づいていないかを最初の相談で伝えます。数え方は不倫の慰謝料の時効は3年と20年:いつから数えるかの考え方で整理しています。

着手金は、新しい弁護士にも改めて払うのが一般的なので、二重の負担になることがあります。費用の内訳の見方は慰謝料請求の弁護士費用の内訳:着手金・報酬金・実費の見方、法テラスの立替えを使って依頼している人は、乗り換える前に法テラスとは?浮気・離婚の相談で使える無料相談と費用の立替えの条件で手続きの入口を確かめ、法テラスにも連絡してください。

次の弁護士を選ぶときに見直したい点

乗り換えで同じ不満を繰り返さないために、最初の相談で次の点を聞いておきます。

  • 慰謝料請求や離婚の事件をどのくらい扱っているか、事務所としての進め方
  • 連絡の取り方(メール・電話・面談)と、返事までの目安
  • 着手金・報酬金・実費の見積もりと、途中で解約したときの精算の方法
  • 今の段階から引き継いだ場合に、最初の1か月で何をするか

「浮気に強い」という広告の言葉より、上のような説明が具体的かどうかで選ぶほうが、相性のずれを防げます。広告の言葉の読み方は「浮気に強い弁護士」の見分け方:広告の言葉と確かめるべき点、選び方全体は不倫慰謝料を弁護士に頼むときの選び方:取扱い分野・費用・相談の準備にまとめています。新しい弁護士と、相手方との示談をどう進めるかを話し合う段階になったら、不倫の示談の進め方:話し合いで決める項目と合意の残し方で決める項目を先に見ておくと、打ち合わせが早く進みます。慰謝料請求の全体像に戻りたいときは浮気・不倫の慰謝料とは?請求できる場面・金額の決まり方・進め方の全体像を見てください。

よくある質問

Q. 弁護士を途中で変えたら、最初に払った着手金は返ってきますか?

返金されるかどうかは、委任契約書の中途解約の定めと、それまでに弁護士が進めた仕事の量で決まります。民法648条3項は、委任が途中で終わったときは、すでにした履行の割合に応じて報酬を請求できるとしています。契約書に精算の方法が書かれていればそれに従うので、解約を伝える前に契約書を読み、精算の明細を書面でもらうよう頼みます。

Q. 今の弁護士に知らせないまま、別の弁護士に意見を聞いてもかまいませんか?

かまいません。依頼中の事件について別の弁護士に相談すること自体を禁じる法律はなく、相談を受けた弁護士には職務上知った秘密を守る義務があります(弁護士法23条)。相談には委任契約書、これまでの経過のメモ、相手方とのやり取りの写しを持っていくと、今の進め方に問題があるのか、乗り換える意味があるのかを判断してもらいやすくなります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

「浮気に強い弁護士」の見分け方:広告の言葉と確かめるべき点

不倫慰謝料を弁護士に頼むときの選び方:取扱い分野・費用・相談の準備

慰謝料請求の弁護士費用の内訳:着手金・報酬金・実費の見方

不倫の示談の進め方:話し合いで決める項目と合意の残し方