財産分与の割合は2分の1が原則?寄与が違うと言えるのはどんな場合
財産分与の割合について、民法は「2分の1」とは書いていません。2026年4月1日に施行された改正後の民法768条3項は、各当事者の寄与の程度について、「その程度が異なることが明らかでないときは、相等しいものとする」と定めています。寄与の差を示す材料がないままでは、寄与は同じとして扱われる枠組みです。この記事では、条文の読み方と、寄与が違うと言えるかを考えるときの材料、話し合いでの決め方を整理します。
「2分の1が原則」は条文のどこにあるのか
改正前の768条3項は、家庭裁判所が「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情」を考慮して分与を定める、という書き方にとどまっていました。割合を示す言葉は条文に出てきませんでした。「2分の1が原則」という言い方は、条文の外で語られてきたものです。
2026年の改正で、3項に次の内容が加わりました。
- 考慮する事情が具体的に並んだ:婚姻中に取得・維持した財産の額とその取得・維持への寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力と扶助の状況、各当事者の年齢・心身の状況・職業・収入、その他一切の事情
- 寄与の程度は、異なることが明らかでないときは相等しいものとする
この「相等しい」は、寄与の程度についての規定です。財産分与の額や方法まで半分ずつにすると書いたものではありません。条文は、分与をさせるかどうか、額、方法を、考慮事項を総合して定めるとしています。割合の話の入口は、まず財産分与の全体像を押さえることです(財産分与とは?対象・割合・請求の期限(離婚から5年)の基本を整理)。
| パート | 条文の内容 | 読み方 |
|---|---|---|
| ① 考慮する事情 | 財産の額と寄与の程度、婚姻の期間、生活水準、協力・扶助の状況、年齢、心身の状況、職業・収入、その他一切の事情 | 割合だけでなく、分与の額と方法も、これらを総合して決める |
| ② 寄与の程度の推定 | 寄与の程度が異なることが明らかでないときは、相等しい | 寄与の差を示す材料がなければ、寄与は同じとして扱う |
| ③ 書かれていないこと | 「異なることが明らか」といえる場合の具体例は条文にない | 例は条文の外(裁判例や個別の事情)で決まり、記事で一律には言えない |
寄与が違うと言えるかを考えるときの材料
条文は「異なることが明らか」な場合の例を挙げていません。ここでは、考慮事項に挙がっている事情を材料に分けて、何を記録しておくとよいかを整理します。どれがあれば寄与が違うといえるかは、個別の事情と裁判所の判断によるもので、ここで結論は出せません。
| 材料(条文の考慮事項) | 見られる事実の例 | 記録しておくもの |
|---|---|---|
| 財産の取得・維持への関わり | 収入の推移、家計への入金の仕方、貯蓄や資産運用の経緯 | 源泉徴収票、確定申告書、預貯金の入出金記録 |
| 婚姻中の協力と扶助の状況 | 家事、育児、介護の分担、仕事を調整したか | 予定表、保育園や学校の連絡帳、介護の記録 |
| 職業と収入 | 共働きか、一方が就労を中断したか、事業を営んでいたか | 雇用契約や決算書、休職・離職の記録 |
| 婚姻の期間・生活水準 | 結婚してからの年数、住まいや暮らしぶり | 婚姻日が分かる戸籍、家計の資料 |
| 年齢・心身の状況 | 就労できる年齢か、病気や障害の有無 | 診断書、通院の記録 |
| 特有財産からの出資 | 住宅の頭金に親からの贈与や婚姻前の貯金を使った | 贈与の資料、送金の記録(対象になる財産・ならない財産の区別は財産分与の対象になる財産・ならない財産の早見表と判断が分かれる例) |
なお、浮気をしたかどうかは、条文の考慮事項に書かれていません。慰謝料は別の制度で、財産分与と一緒に話し合うときも、請求の中身は分けて整理します(浮気した側も財産分与を受けられる?慰謝料との関係の整理)。
記録は、相手に知られず自分で入手できる範囲に絞ります。自分名義の通帳や自分の給与明細、家計簿、写真付きの日記などです。相手のスマートフォンやメールを見てしまうことは、法律で禁じられている行為にあたる場合があるので、避けてください。
話し合いで割合を決めるときの手順と書き方
家庭裁判所の調停に進む前に、夫婦の協議で割合を決めることもできます。次の順番で整理すると、話がまとまりやすくなります。
- 対象の財産を一覧にする:預貯金、不動産、株式、保険、退職金などを、名義・残高・取得時期つきで書き出します。
- 特有財産を分ける:婚姻前から持っていた財産、相続や贈与で得た財産は、対象から外すものとして印を付けます。
- 寄与の材料を並べる:上の表のうち、どこに差があるかを事実で並べます。評価の言葉(「私のほうが頑張った」など)は入れません。
- 割合か金額で案を作る:「全体を何対何で分ける」「この財産は私、この財産は相手」のどちらでも構いません。
- 書面にする:対象の財産、割合または金額、支払いの方法と時期を書き、財産の目録を付けます。
文例:「別紙財産目録に記載の財産について、○○を○割、△△を○割の割合で分与する。○○は、令和○年○月○日までに、△△の口座に、○○円を振り込む。」
この文例は、割合と支払い方法を別の文にして、あとから読み返したときに誤解が出ないようにしています。話し合いがまとまらないときは、離婚前なら夫婦関係調整調停(離婚)、離婚後なら財産分与請求調停を使います(財産分与請求調停の流れ:離婚後に申し立てる方法と費用)。
割合で争いが続くとき
調停では、裁判所が財産に関する事情を当事者双方から確認し、資料の提出を受けながら助言やあっせんをして、合意を目指します。不成立なら審判の手続に移ります。審判では、768条3項の考慮事項と「相等しい」の推定が、判断の枠組みになります。
相手が財産の全体を見せてくれないために、割合の話に進めない場合もあります。2026年4月の改正で、家庭裁判所は、財産分与の審判事件で、当事者に財産の状況の開示を命じられるようになりました(家事事件手続法152条の2第2項)。正当な理由なく開示しない場合などは10万円以下の過料の定めがあります。開示の手続は財産分与で隠し財産が疑われるとき:開示を求める手続きと調べ方で扱います。
寄与の差が大きい事案や、事業・不動産・退職金が絡む事案では、弁護士に資料を見せて、割合の見通しを確かめる選択肢があります。相談の前に、財産の一覧と、上の表の記録をそろえておくと、話が早く進みます。お金の全体像は浮気が原因の離婚とお金:婚姻費用・養育費・財産分与・慰謝料の全体像にまとめています。
よくある質問
Q. 共働きで、相手のほうが収入がずっと高い場合、割合は変わりますか?
条文は、収入の多さだけで割合を決めるとは書いていません。民法768条3項は、財産の額と寄与の程度、婚姻の期間、職業及び収入などの事情を考慮するとしたうえで、寄与の程度が異なることが明らかでないときは相等しいとしています。収入の差が「寄与が異なることが明らか」といえるかは、家事・育児の分担など他の事情と合わせて見られるので、個別の見込みは弁護士に確かめてください。
Q. 夫婦の合意で、2分の1以外の割合に決めることはできますか?
民法768条1項は、協議で財産分与を請求できると定めています。話し合いで決める限り、条文に割合の制限はありません。ただし、あとで争いにならないよう、対象の財産、割合または金額、支払いの方法と時期を書面に書き、財産の目録を付けてください。家庭裁判所の調停・審判に進む場合の判断の考え方は、768条3項になります。
Q. 2026年3月31日以前に離婚した場合も、「相等しい」の規定は使われますか?
令和6年法律第33号の附則2条は、特別の定めがある場合を除き、改正後の民法を施行前に生じた事項にも適用するとしています。家庭裁判所に請求できる期間については、附則4条が従前の例(2年)によると定めています。そのため、2年以内に請求した場合の判断に、改正後の768条3項が使われると読めます。使われ方の細部は、申立ての前に家庭裁判所の手続案内か弁護士で確かめてください。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第762条・第768条・令和6年法律第33号附則第2条・第4条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 財産分与請求調停(裁判所)
- 家事事件Q&A(財産分与の対象と話し合いの進め方)(裁判所)
- 家事事件手続法 第152条の2・第258条(収入・財産の情報開示命令)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について(法務省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。