不倫で中絶するときの同意書:相手の同意が求められる場合の考え方
不倫による妊娠で中絶を考えるとき、同意書の答えは**「母体保護法14条1項は『本人及び配偶者の同意』と定めており、この『配偶者』は妊娠した本人の配偶者のこと(届出をしていなくても夫婦同然の人を含む)。会うだけの不倫相手は、通常これに当たらない」**です。ただ、実際にどんな書類が必要かは受診先の医療機関で変わりうるので、受診前に電話で聞くのが近道です。この記事は、条文の読み方と、厚生労働省の通知で分かっていること、受診前に確かめる点をQ&Aの形で整理します。個別のケースの法的判断はできませんので、迷うときは相談窓口に話してください。
危険が迫っているときは110番。性暴力の被害は #8103(警察の性犯罪被害相談電話、24時間・通話無料)か、ワンストップ支援センター、妊娠そのものの相談は、こども家庭庁のページから探せる性と健康の相談センターへ。死にたいほどつらいときは #いのちSOS 0120-061-338(24時間)です。ほかの番号は浮気・不倫の相談先一覧にあります。
母体保護法14条の「本人及び配偶者の同意」とはどういう意味か
人工妊娠中絶を行えるのは、都道府県の医師会が指定した医師(指定医師)です。母体保護法14条1項は、次のどちらかに当たる人に、「本人及び配偶者の同意を得て」人工妊娠中絶を行えると定めています。
| 号 | 内容 |
|---|---|
| 1号 | 妊娠の継続または分娩が、身体的または経済的な理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの |
| 2号 | 暴行・脅迫によって、または抵抗・拒絶できない間に姦淫されて妊娠したもの |
2項は例外です。配偶者が知れないとき、その意思を表示することができないとき、妊娠後に配偶者が亡くなったときは、本人の同意だけで足りると書かれています。
ここで言う「配偶者」は、母体保護法3条1項が「届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様な事情にある者を含む」と定義しており(以下同じ、とされ14条にも及びます)、妊娠した人と婚姻している夫(または妻)と、届出のない夫婦同然の相手が入ります。条文に「妊娠させた相手」や「子の父親」とは書かれていません。そのため、妊娠した人が結婚していなくて、相手と夫婦同然の生活をしているわけでもなければ、不倫相手は「配偶者」にあたらない読み方になります。妊娠した人が既婚の場合は、その人の夫が「配偶者」です。この読み方は条文の文言にそったものであり、夫婦同然かどうかを含め、実際の取り扱いは、受診先の指定医師の判断と医療機関の方針によって決まります。
ケース別:同意の考え方の早見表
| 状況 | 条文上の「配偶者」 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 妊娠した人が結婚しておらず、相手と夫婦同然の生活でもない | 通常いない(不倫相手は配偶者に当たらない読み方) | 夫婦同然(同居など)の相手なら当たる余地あり。病院が求める書類は受診前に確認 |
| 妊娠した人が結婚している | その人の夫(または妻) | 14条2項の例外に当たるかは受診先と相談 |
| 暴行・脅迫による妊娠(14条1項2号) | 加害者の同意まで求める趣旨ではない(厚生労働省の回答) | 先に警察 #8103、#8891 などへ相談 |
厚生労働省の2020年の通知(令和2年10月20日)は、14条1項2号について、日本医師会からの「強制性交の加害者の同意を求める趣旨ではないと解してよいか」という照会に「貴見のとおり」と答えています。同じ通知は、「配偶者が知れないとき」や「その意思を表示することができないとき」を、法的手続で確認された場合だけでなく事実上の場合も含むと解し、一方で配偶者の所在が分かっていて何らかの方法で意思を表示できる場合は当たらないとしています。
受診の前に確かめること:書類・時期・体の状態
同意書の話の前に、時間の制約があります。人工妊娠中絶ができる時期の基準は、厚生労働省の通知で通常妊娠満22週未満とされています。迷っている間も週数は進むので、受診と相談は早めにします。受診の前に電話で聞くことは、次のとおりです。
- 妊娠の週数を確かめたい。初診で何を持っていくか
- 中絶を考えているが、手術か薬か、どんな方法があるか
- 同意書など、書面で必要なものは何か。相手の署名が必要なのはどういう場合か
- 費用の目安と、支払い方法(受診先で確かめる)
- 家族に連絡が行くか。連絡を避けたいと伝えたらどうなるか
文例(受診前の電話):「中絶について相談したいのですが、初診で必要なものを教えてください。同意書など書面が必要になる場合、誰の署名が要るのかも知りたいです。」
相手にこの電話を代わりにかけてもらう必要はありません。妊娠した本人が、自分の体のことを医療機関に直接聞いてかまいません。不安が強いときは、先に性と健康の相談センターに電話し、中絶を考えていることを伝えたうえで、受診先を一緒に探してもらえるか聞いてみます。
同意書を求められたとき・求めたいときの考え方
妊娠させた側(男性)が、同意書への署名を求められることがあります。このとき、署名は中絶への同意を示すだけで、認知や養育費の責任とは別の話だと押さえておきます。認知は戸籍法の届出でするものです(民法781条)。署名を求められて迷うときは、署名する前に弁護士へ相談してください。責任の全体像は不倫相手が妊娠したと言われた男性へにあります。
妊娠した側が、不倫相手に同意書の署名を頼みにくいと感じる場合もあります。相手の署名が必要かは、受診先に聞く事柄で、相手に頼む前に確かめられます。相手が署名を拒んだり、金銭を求めたり、脅したりしたときは、やり取りを残して警察相談専用電話 #9110 か弁護士に相談します。産む場合の制度や相談先は不倫で妊娠したときの相談先と制度にまとめています。
妊娠の件が配偶者に知られたとき、その後の離婚や慰謝料の話に進むことがあります。離婚を考える段階になったら、浮気・不倫が原因の離婚で準備と手続きの全体像を確かめてください。
次に読む:産む選択をする場合の認知と養育費の手続きは、不倫で生まれた子の認知と養育費で確かめられます。妊娠の相談先から整理し直したいときは不倫で妊娠したときへ戻ってください。
よくある質問
Q. 不倫相手が署名してくれないと、中絶はできませんか?
母体保護法の「配偶者」は、婚姻届を出した配偶者のほか、届出をしていなくても事実上婚姻関係と同様の事情にある人を含むと、3条1項に書かれています。会うだけの交際相手や不倫相手が当然にこれに当たるわけではありませんが、同居して夫婦同然に暮らしている場合などは当たる余地があります。病院が実際にどんな書類を求めるかも医療機関ごとに違いうるため、受診の前に電話で「書類で相手の署名が必要か」を聞いてください。聞きにくいときは、性と健康の相談センターに先に相談する方法もあります。
Q. 同意書に署名すると、認知や養育費の責任が消えますか?
同意書は中絶への同意を示すもので、認知とは別の手続きです。認知は戸籍法の届出でするもの(民法781条)で、署名がその代わりになるわけではありません。同意の署名をしたかどうかと、生まれた子に対する父親の責任の有無は別の問題です。署名を求められて迷うときは、弁護士に先に相談してください。
Q. 暴行や脅迫で妊娠した場合も、加害者の同意が必要ですか?
厚生労働省は2020年の通知で、暴行・脅迫による妊娠の場合に、加害者の同意まで求める趣旨ではないと日本医師会の照会に回答しています。被害に遭った人は、警察の性犯罪被害相談電話
出典・参考にした公的な情報
- 母体保護法 第2条・第3条・第14条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 「母体保護法の施行について」の一部改正について(令和2年10月20日 厚生労働省発子1020第1号)(厚生労働省)
- 優生保護法により人工妊娠中絶を実施する時期の基準の変更について(平成2年3月20日 健医精発第12号)(厚生労働省)
- 性や妊娠などの悩みについての相談窓口(性と健康の相談センター)(こども家庭庁)
- 警察庁 犯罪被害者白書 資料9(#8103 ほか)(警察庁)
- 民法 第781条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 電話相談窓口(#いのちSOS ほか)(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。