不倫で妊娠したとき:産む・産まないを考えるための相談先と制度
不倫で妊娠が分かったとき、いちばん先にすることは「答えを出すこと」ではなく、一人で抱え込まないように相談先を1つ持ち、受診して妊娠の週数を知ることです。産む・産まないのどちらを選ぶにしても、時期や体の状態によって選べる方法が変わるため、迷っている間に受診と相談を済ませておくと、後で選択肢が狭まりにくくなります。この記事では、相談先、中絶を考えるときの時期の目安、産む場合に関わる認知・養育費・親権の制度、相手や配偶者に伝えるときの考え方を順番に書きます。
妊娠が暴力や脅しの中で起きた場合、いまの生活が危険な場合は、先にこちらです。危険が迫っているときは110番。性暴力の被害は警察の性犯罪被害相談電話 #8103(24時間・通話無料)へ。死にたいほどつらいときは #いのちSOS 0120-061-338(24時間)に電話できます。ほかの窓口の番号と受付時間は浮気・不倫の相談先一覧にまとめています。
不倫で妊娠が分かったとき、最初の数日にすること
頭が真っ白になるのは自然なことです。次の順番で、できるところから進めてください。
- 産婦人科を受診して、妊娠の週数と体の状態を知る。 妊娠検査薬の結果だけでは週数が分からず、中絶を選ぶ場合の方法や時期も決められません。
- 相談窓口を1か所決めて、話す。 全国の「性と健康の相談センター」は、こども家庭庁のページで都道府県・相談内容・相談方法から探せます。国は2022年度からこの事業で、思春期・妊娠・出産など時期に応じた相談を受けています。
- 信頼できる人を一人だけ選んで打ち明ける。 友人でも家族でもかまいません。不倫の事情を全部話せなくても、「妊娠した」ことだけを共有できれば、一人で通院する負担が軽くなります。
- 相手への連絡は、気持ちが落ち着いてからにする。 相手が「産まないで」「早く決めて」と迫ってくる場合は、その言葉を残しておき、窓口に相談してください。
相談窓口が「予期しない妊娠」を受け付けているかどうかは、検索ページに出る各施設の表示で確かめられます。電話やメールで最初に聞く内容は、次の3点で足ります。
文例(最初の電話):「予期しない妊娠かもしれません。まだ誰にも話していません。家族に知られずに相談できますか。産むか産まないか決めていないのですが、いま何をすればよいか教えてください。」
- 受診(妊娠の確認・週数・体の状態)
- 相談窓口(性と健康の相談センターなど)に話す
- 選べる方法と時期を確かめる(産む/産まない)
- 産む場合:認知・養育費・親権・氏の制度を知る/産まない場合:母体保護法にもとづく手続きを受診先で確かめる
- 相手・配偶者・家族に伝える範囲と時期を決める
中絶を考えるときの時期の目安
人工妊娠中絶は、母体保護法2条2項で「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に胎児及びその附属物を母体外に排出すること」と定められています。この「時期」について、厚生労働省は1990年(平成2年)の通知で、通常妊娠満22週未満を基準としています。経口中絶薬(メフィーゴパック)は、子宮内妊娠が確認された妊娠63日(9週0日)以下の人が対象で、母体保護法指定医師が所属する医療機関でだけ使えます。
| 目安 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 妊娠満22週未満 | 人工妊娠中絶を実施できる時期の基準 | 厚生労働省 平成2年3月20日 健医精発第12号 |
| 妊娠63日(9週0日)以下 | 経口中絶薬の対象。指定医師のいる医療機関でのみ使用 | 厚生労働省 |
中絶を行えるのは、都道府県の医師会が指定した「指定医師」です(母体保護法14条1項)。費用、手術の方法、日帰りか入院か、必要な書類は医療機関ごとに違うので、受診の時点で電話や窓口で聞いてください。同意書が必要になる場面の考え方は、不倫で中絶するときの同意書に分けて書きました。
産む場合に関わる制度:認知・養育費・親権・氏
産むことを考えるときは、子と父親の法律上の関係を先に知っておくと、相手に何を伝えるかを整理しやすくなります。
- 認知:結婚していない男女の間に生まれた子と父親の間には、生まれただけでは法律上の親子関係ができません。父親が認知の届出をすることで親子関係ができ、認知は生まれた時にさかのぼって効力を持ちます(民法779条・781条・784条)。生まれる前に認知することもできますが、その場合は子の母の承諾が必要です(783条1項)。
- 父親が認知しないとき:子やその法定代理人が、家庭裁判所に認知調停を申し立てられます。費用は収入印紙1200円分と連絡用の郵便切手で、親子関係を明らかにするために鑑定を行う場合があり、その費用は原則として申立人が負担すると裁判所が案内しています。
- 養育費:認知された父を含め、父母は子が自己と同程度の生活を維持できるよう扶養する責務を負います(民法817条の12第1項。2026年4月1日施行)。養育費の決め方は不倫で生まれた子の認知と養育費で、手続きの順番を書いています。
- 親権と氏:父親が認知した子の親権は母が行います。ただし、父母の協議で、父母の双方または父を親権者と定めることができます(2026年4月施行の改正後の819条4項)。婚姻していない母の子は母の氏を称します(790条2項)。
妊娠した人が結婚している場合は、扱いが変わります。民法772条は、妻が婚姻中に懐胎した子を夫の子と推定するので、生まれた子は、夫との間の子として出生届を出す扱いになるのが原則です。この推定を争う嫡出否認の訴えには、父と子と母それぞれに期限があり(777条。父は子の出生を知った時から、子と母は出生の時から、いずれも3年以内)、不倫相手は否認権者に入っていません。このケースの手続きは複雑なので、早めに弁護士へ相談してください。費用が心配なら法テラスの相談窓口を使えます。
相手や配偶者に伝えるときの考え方
伝えるかどうか、いつ伝えるかは、妊娠した人が決めてかまいません。ただ、認知も養育費も父親との手続きなので、産む方向で考えるなら、遅くとも出産までに「何を求めるのか」を整理しておくと話が進みます。
- 相手に伝える前に:自分が求めること(認知してほしいか、養育費がほしいか、連絡を最小限にしたいか)を紙に書く。
- 伝え方:電話やメッセージで一度に結論を迫らず、「妊娠した。産む方向で考えている。認知と養育費について話したい」と事実と希望を短く伝える。
- 相手が逃げる・脅す・会社や家族に言うと言う場合:やり取りの画面を残し、警察相談専用電話 #9110 か弁護士に相談する。
- 配偶者に話す場合:不倫が明らかになるため、慰謝料や離婚の話に進むことがある。伝える前に、不倫がバレたときにすることを読んで、順番を決めておく。
不倫をやめたい、関係を終わらせたいという気持ちが同時にあるなら、不倫をやめたいのにやめられないときも合わせてどうぞ。
産む場合は、母としての生活費・出産の費用・仕事の見通しも先に考えることになります。自治体の母子保健の窓口や、性と健康の相談センターの相談で、利用できる支援を聞いてみてください。
次に読む:産むと決めた場合の手続きは、不倫で生まれた子の認知と養育費で任意認知・認知調停の流れを順に確かめられます。
よくある質問
Q. 誰にも言えないまま、妊娠のことだけ相談できる場所はありますか?
こども家庭庁の「性や妊娠などの悩みについての相談窓口」で、全国の性と健康の相談センターを都道府県・相談内容・相談方法から探せます。電話かメールか、匿名で受けるかなどは施設ごとに違うので、検索結果の各施設の表示で確かめてください。配偶者や職場に連絡が行くことを心配しているなら、最初の電話で「家族に知られたくない」と伝えて、連絡の取り方を相談してかまいません。
Q. 産むか産まないか、いつまでに決めればよいですか?
人工妊娠中絶ができる時期の基準は、厚生労働省の通知で「通常妊娠満22週未満」とされています。経口中絶薬は妊娠63日(9週0日)以下の人が対象です。週数は受診して初めて分かるので、迷っていても先に受診と相談を済ませておくと、選べる道が狭まりません。決める日を自分で急ぎすぎる必要もありません。
Q. 相手に何も言わずに産んでもよいのですか?
産むかどうかは、妊娠した本人が向き合う決断です。ただ、子の認知や養育費は父親との間の手続きなので、伝えないままだと生まれた後にそれらの話し合いを一から始めることになります。伝える時期や方法は、相談窓口や弁護士に聞きながら決められます。
出典・参考にした公的な情報
- 性や妊娠などの悩みについての相談窓口(性と健康の相談センター)(こども家庭庁)
- 性と健康の相談センター事業(こども家庭庁)
- 母体保護法 第2条・第14条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 優生保護法により人工妊娠中絶を実施する時期の基準の変更について(平成2年3月20日 健医精発第12号)(厚生労働省)
- いわゆる経口中絶薬「メフィーゴパック」の適正使用等について(厚生労働省)
- 民法 第772条・第779条〜第788条・第817条の12・第819条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 認知調停(裁判所)
- 警察庁 犯罪被害者白書 資料9(#8103 ほか)(警察庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。