不倫相手が妊娠したと言われた男性へ:事実の確かめ方と認知・養育費の責任
不倫相手から「妊娠した」と告げられたとき、男性がまずすべきことは、逃げることでも言い訳をすることでもなく、「本当に妊娠しているか」「いつの妊娠か」「相手が何を望んでいるか」の3点を落ち着いて聞くことです。そのうえで、自分の子である可能性があれば、認知や養育費という父親としての責任が法律上ありうることを知っておく必要があります。頭が真っ白になる場面ですが、決めるのは産む本人であること、あなたが決めるのは「事実を確かめる」「責任の仕組みを知る」「家庭への伝え方を考える」の3つだと整理しておくと、動きやすくなります。
告げられた直後に、まず確かめる3点
連絡は電話、メッセージ、対面など形はさまざまです。最初の反応が、その後の話し合いの空気を決めます。責める、疑いをぶつける、黙って連絡を絶つ、のいずれも避け、次の3点を、相手を詰問しない聞き方で確かめます。
| 確かめること | 聞き方の例 | 控えておくこと |
|---|---|---|
| 妊娠の事実 | 「病院には行った? 何週と言われた?」 | 告げられた日時、文面の画面 |
| 時期 | 「予定日はいつ? 関係のあった時期と合うか、一緒に整理したい」 | 相手が示した予定日・週数 |
| 相手の意向 | 「あなたは、産むことも産まないことも含めて、どう考えている?」 | 相手の要望(認知・お金・連絡の頻度) |
文例:「教えてくれてありがとう。驚いているけれど、あなたの体と気持ちが大事だと思っている。まず、病院での診断と、あなたがどうしたいかを聞かせてほしい。」
避けたいのは、相手の決断を急がせることです。「産まないでほしい」と繰り返す、お金で解決しようとする、返事をしない時間を長くとる、といった行動は、相手を追い詰めます。脅迫や強要の形になれば、刑法223条の強要などが問題になりえます。自分の希望は伝えてかまいませんが、決めるのは妊娠した本人です。
事実の確かめ方:疑いがあるときの順番
「本当に自分の子か」と疑うことは、不自然ではありません。ただし、疑いの伝え方を間違えると、事実を調べる前に関係が壊れます。順番は次のとおりです。
- 妊娠の事実:受診して医師の診断を受けたかを聞く。画面や診察の記録を見せてほしいと頼むかは、相手との関係と状況で判断する。
- 時期:予定日や妊娠週数は医師が診断で決めるものなので、数字を自分で計算して突きつけない。相手の示す週数と、関係のあった日付を並べて、無理がないかを静かに見る。
- ほかの可能性:相手に別のパートナーがいるのかは、問い詰めずに聞く。聞き方は「責めるためではなく、自分の責任を考えるために知りたい」とする。
- 生まれる前に決めない:認知の届出は、いったん出すと取り消せません(民法785条)。疑いが残る段階で届出を出さず、弁護士に事情を伝えて進め方を決める。
認知は、生まれる前でも後でもできますが、胎児のうちにするには母の承諾が必要です(783条1項)。親子関係をはっきりさせたいときは、認知調停で裁判所が必要な事実を調べ、鑑定を行う場合があります。鑑定費用は原則として申立人が負担すると裁判所は案内しており、申立人は子側(母が法定代理人として申し立てる)です。仕組みの全体は不倫で生まれた子の認知と養育費に整理しています。
認知と養育費で、父親に生じる責任
自分の子だと分かった場合、父親には次の責任が生じます。
- 認知:父が戸籍法に従って届け出ると、生まれた時にさかのぼって法律上の父子関係ができます(民法779条・781条・784条)。応じないときも、子の側から調停や訴えで親子関係を調べられます(787条)。
- 扶養の責務:2026年4月1日施行の民法817条の12は、父母が婚姻していなくても、子が自分と同じ程度の生活を維持できるよう扶養する責務を定めています。
- 養育費:認知する場合に離婚時の子の監護の定め(766条〜766条の3)が準用され(788条)、金額や期間は話し合いで決めます。まとまらなければ家庭裁判所の養育費請求調停になります。2026年4月1日以後の認知では、取り決めがなくても請求できる法定養育費(子1人あたり月2万円)という仕組みもあります。これは暫定的な額で、適正な養育費を示すものではありません。
- 支払いが続く期間:「いつまで」は取り決めの内容によります。破産しても、養育費などの子の監護に関する義務の請求権は免責されない請求権として破産法253条1項4号に挙がっています。
養育費の目安は、裁判所の算定表で父母の収入から読み取ります。養育費算定表の使い方を見て、自分の収入だとどのくらいの幅になるかを大づかみに知っておくと、家計の見通しが立てやすくなります。ただ、個別の金額や、いくら払うべきかの判断は、弁護士に相談して決めてください。
- 落ち着いて3点を聞く(妊娠の事実・時期・相手の意向)
- 相手の決断を急がせない(産む・産まない)
- 自分の子の可能性があるなら、弁護士や相談窓口で責任の仕組みを確かめる
- 認知の届出は、事実関係を整理してから
- 養育費の取り決め(話し合い→調停)
- 配偶者・家族に伝える範囲と時期を決める
家庭への影響と、相談の順番
父親になれば、養育費の支払いは長く続き、家計に響きます。また、認知した子は相続人になります(民法887条1項)。配偶者がいる場合は、不倫の事実と子の存在を、いつ・どこまで伝えるかが最大の悩みになります。
順番は次のようにすると整理しやすくなります。
- 自分の気持ちと事実を紙に書く:何があり、何が分かっていないか。
- 弁護士に相談する:認知、養育費、配偶者から請求される可能性のある慰謝料を、まとめて見てもらう。費用が心配なら、法テラスの案内を使う(法テラスとは)。
- 相手との連絡の窓口を一つに決める:感情的なやり取りを減らすため、連絡は書面かメッセージで残す。
- 配偶者に伝える:隠し続けるほど、後で知られたときの傷が大きくなる場合があります。伝える順番と言葉は不倫がバレたときにすることで考えてください。
- 相手が中絶を考えている場合:同意書の扱いは不倫で中絶するときの同意書に書きました。
不倫そのものをやめたいと感じているなら、不倫をやめたいのにやめられないときも読んでください。相手が脅してきたり、会社や家族にばらすと言ってきたりする場合は、警察相談専用電話 #9110 に相談し、やり取りは消さずに残しておきます。
次に読む:中絶を考えている相手から同意書への署名を求められたときの考え方は、不倫で中絶するときの同意書にまとめました。
よくある質問
Q. 「産まないでほしい」と相手に頼んでもよいですか?
産むかどうかは、妊娠した本人が自分の体について決めることです。頼み事の形でも、何度も迫る、金額を示して決断を急がせる、応じなければ関係を絶つと告げる、といった言動は相手を追い詰めます。脅しや強要の形になれば、刑法223条の強要など別の問題になりえます。自分の希望は一度だけ伝え、あとは相談先に話して整理してください。
Q. 妊娠が本当かどうか、自分の子かどうかを疑っています。どうすればよいですか?
疑いを相手にぶつける前に、妊娠の事実(受診したか)と、予定日や週数が関係のあった時期と合うかを落ち着いて聞いてください。生まれる前に認知の届出をする必要はありません。認知は取り消せないと民法785条に定められているので、疑いが残るうちに届出をするのは避け、弁護士に事情を伝えて進め方を相談しましょう。
Q. 認知を拒み続けたらどうなりますか?
認知は父親が応じなくても、子の側から家庭裁判所に認知調停を申し立てられ、不成立なら認知の訴えもできます(民法787条)。裁判所が必要な事実を調べ、親子関係を明らかにするために鑑定を行う場合があります。避け続けても親子関係を調べる道は閉じません。早い段階で相談したほうが、話し合いで進められる範囲が広がります。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第779条〜第788条・第817条の12・第887条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 破産法 第253条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 刑法 第223条(強要)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 認知調停(裁判所)
- 養育費請求調停(法定養育費の案内を含む)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。