別居中の不倫と慰謝料:別居の前後で考え方が変わりうる理由
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別居中の不倫で慰謝料が問題になるかどうかは、**「別居していたか」ではなく、「関係が始まった時に婚姻関係がすでに破綻していたか」**で考え方が変わります。最高裁は、婚姻関係がすでに破綻した後に始まった関係については、不倫相手は原則として責任を負わないと判断しています。一方で、別居していても夫婦は法律上の夫婦のままで、別居の理由や時期によっては破綻と見られないこともあります。この記事では、別居の前後の場面ごとに考え方を整理し、断定せずに判断の材料を示します。
別居中の不倫で慰謝料が問題になるかの分かれ目
別居しても、離婚が成立するまでは婚姻は続いています。民法752条の同居・協力・扶助の義務や、760条の婚姻費用の分担は、別居中も夫婦の間に残ります。そのため「別居した=夫婦ではなくなった」とは言えず、別居中の不倫も、慰謝料の問題になりえます。
分かれ目になるのが、最高裁平成8年3月26日判決です。判決は、配偶者と第三者が関係を持った当時、夫婦の婚姻関係がすでに破綻していたときは、特段の事情のない限り、第三者は他方の配偶者に対して不法行為責任を負わないとしました。理由は、不倫が不法行為になるのは「婚姻共同生活の平和の維持」という権利や利益を侵害するからで、すでに破綻していればそうした利益があるとは言えないから、というものです。
ここで大切なのは、この判決が別居の年数で線を引いていないことです。判決の事件では、別居の直後に始まった関係でしたが、それ以前に夫婦の対立が続き、別居を目的にした夫婦関係調整調停の申立て(のち取下げ)などがあり、そうした経緯全体から破綻が認められました。別居から何年たったかではなく、夫婦の関係がどういう状態だったかが見られます。破綻の考え方は婚姻関係の破綻とは何かの記事で詳しく扱います。
別居の前後で考え方が変わりうる4つの場面
自分の状況がどれに近いかを、関係が始まった時期と別居の理由から確かめてください。どの場面でも、最終的な判断は事実関係しだいです。
| 場面 | 例 | 考え方の方向 |
|---|---|---|
| A 別居前から不倫があった | 不倫が原因で別居に至った | 別居前の時点では婚姻関係が続いていたと見られやすく、慰謝料の問題になりうる |
| B 別居の直後に不倫が始まった | 喧嘩をして家を出た数か月後に関係を持った | 別居の理由とそれまでの経緯しだい。一時的な別居なら破綻と見られにくい |
| C 長い対立のすえに別居し、その後に不倫が始まった | 離婚の話し合いや調停を経て別居していた | 当時すでに破綻していたと判断される余地がある(平成8年判決) |
| D 別居中に再構築の話をしていた | 円満調停を申し立てていた、定期的に会っていた | やり直しの動きがあれば、破綻とは言いにくい事情になりうる |
場面Aでは、不倫が別居の原因になっていることが多く、別居後に関係が続いていても、関係の始まりは別居前です。証拠を時期ごとに並べ、関係がいつから始まったかを示せるようにしておきます。場面Bでは、家を出たのが一時的な喧嘩だったのか、離婚を前提にしたものだったのかで見え方が変わります。
場面CとDは、別居中の夫婦のやりとりが材料になります。別居後にメッセージで生活費や子どもの話をしていた、家族の行事には一緒に出ていた、といった事情は、関係が続いていたことを示す材料になりえます。反対に、別居後に離婚の条件だけを話し合っていた場合は、破綻を示す方向の材料として扱われることがあります。どちらの材料も、別居中の連絡はなるべく消さずに残しておきましょう。
不倫相手が「破綻していると思った」と言う場合
別居中の不倫では、不倫相手が「夫婦は別居していて、もう破綻していると聞いていた」と反論してくることがあります。ここで関係するのが、2026年6月5日の最高裁判決です。
この判決は、不倫相手に過失があったかを判断するとき、「離婚したと信じたか」だけでなく、「婚姻関係が破綻していると信じ、かつ、そう信じることに相当の理由があったか」まで検討する必要があるとして、原判決の一部を破棄し、高等裁判所に差し戻しました。事件では、不倫相手は関係を持つ前に、離婚届の用紙や夫婦間のメールを見せられていました。判決に付いた裁判官の補足意見は、関係の有無、破綻の有無と時期、関係の時期との前後、破綻を信じる相当の理由の有無、という順で検討することを示しています。
ただし、この判決は「離婚届を見せられていれば責任がない」と言ったわけではなく、差戻し後の結論は判決からは読み取れません。請求する側にとっては、相手が何を見せられ、何を聞かされていたと主張しそうかを想定して、別居の経緯を説明できるようにしておくことが大切です。相手が既婚と知らなかったと言う場合の整理は不倫相手が既婚者と知らなかったと言うときの記事へ。
別居中の配偶者への慰謝料と、別居の長さが離婚に与える影響
ここまでは主に不倫相手への請求の話でした。別居中の配偶者本人への慰謝料でも、関係が始まった時の夫婦の状態が問題になりえます。期限については、民法159条が、夫婦の一方が他方に持つ権利は婚姻の解消から6か月を経過するまで時効が完成しないと定めています。不倫相手への請求には、損害と相手を知った時から3年という民法724条の期限が別に進むので、両者を分けて管理してください。
別居の長さは、離婚そのものにも関係します。民法770条1項は、裁判で離婚を求められる理由の一つに「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(4号)を挙げています。また、不倫をした側から離婚を求める場合について、最高裁昭和62年9月2日大法廷判決は、別居が当事者の年齢や同居期間と比べて相当の長期間に及ぶこと、未成熟の子がいないこと、相手が離婚で極めて苛酷な状態に置かれるなどの特段の事情がないことを挙げ、これらを総合して判断するとしました。この判決にも、何年という線は出てきません。
| 知りたいこと | 読む記事 |
|---|---|
| 別居期間は離婚の理由になるか | 別居期間は離婚の理由になるかの記事 |
| 浮気した側からの離婚請求 | 有責配偶者とは何かの記事 |
| 別居中の生活費 | 婚姻費用とは何かの記事 |
相談の前に書き出す時系列
別居中の不倫と慰謝料の相談では、日付の並びがいちばんの材料になります。次の項目を、分かる範囲で一枚の時系列にしてから弁護士に見せてください。
- 婚姻した日、子どもの生年月日
- 夫婦の関係が悪くなり始めた時期と、そのきっかけ
- 別居した日、どちらが家を出たか、その理由
- 別居後のやりとり(生活費の支払い、子どもとの面会、やり直しの話、離婚の話)
- 調停の申立てや弁護士への相談をした日
- 不倫に気づいた日、関係が始まったと考える時期とその根拠
- 不倫相手の名前と連絡先が分かった日
慰謝料を請求できるかどうか、不倫相手の反論がどこまで通りそうかは、この時系列と証拠を見たうえで弁護士が判断することです。やり直しを考えているなら、家庭裁判所の夫婦関係調整調停(円満)という話し合いの場もあります。別居中の調停の使い分けは別居中の調停の使い分けの記事で扱います。長い結婚生活のあとで不倫が分かった場合の整理は熟年離婚で慰謝料を考えるときの記事へ続きます。
よくある質問
Q. 別居して何年たてば、不倫しても慰謝料を請求されなくなりますか?
そうした年数の線は、法律にも最高裁の判決にもありません。平成8年の最高裁判決が問題にしたのは別居の年数ではなく、関係を持った当時に婚姻関係がすでに破綻していたかどうかで、それは別居に至る経緯なども含めて事実関係から判断されます。年数だけで安心せず、経緯を整理して弁護士に相談してください。
Q. 別居中の配偶者に恋人ができたことを、離婚の話し合いで持ち出してもよいですか?
話し合いの材料にすること自体はありえますが、相手は「別居の時点で夫婦は破綻していた」と反論してくることが考えられます。持ち出す前に、別居の理由や別居後のやりとり、恋人との関係が始まった時期を時系列で整理し、弁護士にどう扱うかを相談してください。
Q. 家庭内別居の状態で浮気された場合も、別居と同じ扱いになりますか?
同じ家に住んでいるかどうかだけで決まるわけではありません。2026年6月の最高裁判決の事件では、夫婦は同居していても会話がほとんどなく、メールで用件を伝え合う関係でした。破綻していたか、不倫相手がそう信じる相当の理由があったかは、こうした生活の実態を含めて検討されます。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第159条・第709条・第710条・第724条・第752条・第760条・第770条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 最高裁判所 昭和54年3月30日 第二小法廷判決(裁判所)
- 最高裁判所 平成8年3月26日 第三小法廷判決(裁判所)
- 最高裁判所 令和8年6月5日 第二小法廷判決(裁判所)
- 最高裁判所 昭和62年9月2日 大法廷判決(裁判所)
- 夫婦関係調整調停(円満)(裁判所)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。