別居は悪意の遺棄に当たる?判断で見られる事情と浮気が原因の場合
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別居しただけで悪意の遺棄になると決まるわけではありません。悪意の遺棄は、民法770条1項2号が離婚の裁判を起こせる理由の一つとして挙げる言葉ですが、条文は「悪意」「遺棄」の中身を書いておらず、当てはまるかは裁判所が事案ごとに判断します。この記事は、判断の材料として整理できる4つの事情(別居の理由・生活費・期間・連絡)と、浮気が原因で家を出た側、出て行かれた側それぞれの立場で残しておく記録を示します。結論の断定はせず、最後は相談先に渡します。
悪意の遺棄とは:条文の位置づけと、別居との違い
民法770条1項は、離婚の訴えを起こせる場合を「次に掲げる場合に限り」として挙げ、2号に「配偶者から悪意で遺棄されたとき」を置いています。別に752条が、夫婦は「同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定めています。悪意の遺棄は、この同居・協力・扶助の義務に関わる場面として問題になります。
押さえておきたい点は3つあります。
- 別居と悪意の遺棄は同じではない。別居は住まいを分けた事実で、遺棄にあたるかは、別居の理由や生活費など別の事情で見られます。
- 離婚の裁判の理由であって、協議や調停には要らない。夫婦の合意があれば、理由を問わず離婚できます(民法763条)。
- 2項で請求が退けられる余地もある。770条2項は、1号から3号の事由があっても、裁判所が一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却できるとしています。
2026年4月の改正で、旧4号(強度の精神病)が削除されましたが、悪意の遺棄はこれまでどおり2号です。別居の長さそのものが離婚の判断でどう見られるかは、別居期間は何年で離婚できる?年数の考え方と浮気がある場合の違いで別に整理しています。
判断の材料として整理できる4つの事情
条文が同居・協力・扶助を軸にしているため、争いになったときは、次の4つに分けて事実を並べると整理しやすくなります。どれをどの重さで見るかは、事案ごとに裁判所が決めるため、表は判断基準ではなく、記録を作るための整理の枠として使ってください。
| 事情 | 並べて見る点 | 残しておく記録 |
|---|---|---|
| 別居の理由 | 浮気が分かった、暴力や脅しを避けた、話し合いのために距離を置いた、など。理由が説明できるか | 家を出た日、きっかけの出来事、出る前後のやりとり |
| 生活費 | 出たあとも、相手と子の生活費を分担していたか | 送金の日と額、振込の控え、請求のメール |
| 期間 | 一時的な別居か、先の見えない別居か。戻る話があったか | 別居の開始日、戻る・戻らない話をした日 |
| 連絡・交流 | 連絡を絶っていないか。子との交流の機会を設けていたか | 連絡の記録、子との面会の日程 |
生活費の分担は民法760条の婚姻費用の問題で、決まらないときは家庭裁判所の婚姻費用の分担請求調停を使えます。収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手で申し立てられます。仕組みは婚姻費用とは?別居中の生活費を請求する仕組みと決め方で扱っています。
浮気が原因で、どちらが家を出たか:立場ごとの整理
浮気が絡む別居では、どちらが出たかで、整理の仕方が変わります。
| 立場 | 状況 | 気をつけること |
|---|---|---|
| A 浮気をされた側が、家を出た | 浮気が分かり、顔を合わせられず家を出た | 出た理由を、日付つきで書き残す。出たあとの生活費は婚姻費用の請求を考える(収入の差による)。連絡と子の面会の機会を絶たない |
| B 浮気をした側が、家を出た(自分から) | 気まずさや相手の希望で家を出た | 出た経緯と、生活費を払い続けている記録を残す。生活費が止まると不利な事情として見られうる |
| C 浮気をした側が出て行き、された側が残った | 相手が不倫相手のもとへ行ったなど | 出て行った日と、その後の生活費の支払い状況を記録する。支払いが止まっているなら、婚姻費用を請求する |
| D 浮気をされた側が、相手に出て行かれた | 浮気をした配偶者が、話し合いなく家を出た | 出る前の説明の有無、出たあとの連絡と生活費を記録する。感情的な文面を送らず、事実だけを記録に残す |
浮気の事実があっても、それで他方の事情がなくなるわけではありません。たとえば、浮気をされた側が家を出た場合でも、出たあとに生活費の請求をせず、連絡も絶った状態が長く続くと、その事情が見られることはありえます。反対に、浮気をした側が出た場合でも、出た経緯と生活費の支払いが整理できていれば、状況は違って見えます。当たるかどうかは個別の判断になるため、ここで結論は出しません。
家を出る側は、出る前に相手へ理由を伝えておくと、あとで「何も言わずに出た」と言われにくくなります。
文例:「いま同じ家にいるのが苦しいので、しばらく実家で過ごします。生活費と子どものことは、これまでどおり連絡を取り合って決めたい。落ち着いたら話し合う場を作りましょう」
暴力や脅しから逃れるために出る場合は、このような連絡で居場所を明かす必要はなく、安全の確保が先です。DVなどから避難するための転居は、法務省のQ&Aでも、子に関する父母の責務の違反にあたらない例として挙げられています。窓口は浮気・不倫の相談先一覧:悩み別の窓口と番号・受付時間の早見表にあります。
浮気した側が家を出たとき、出て行かれたとき
浮気をした側が家を出た場合、その後の婚姻費用の請求や離婚請求の見られ方は、浮気した側が家を出たら?有責配偶者の別居と婚姻費用の関係で整理します。浮気が離婚の理由として認められる条件、旧4号の削除を含む離婚理由の全体は、離婚の理由として認められるもの:民法770条と2026年4月の改正にあります。
どちらの立場でも、次の3点は共通です。
- 「出た・出られた」日と理由を、その日のうちに書き残す。メモ、メッセージ、日記のどれでも構いません。
- 生活費の請求と支払いを、記録の残る方法で行う。口頭だけで済ませません。
- 感情的なやりとりを控える。相手を責める文面は、あとで事実の整理を難しくします。
当たるかどうかを一人で決めない:相談の使い方
悪意の遺棄は、当事者が「これは遺棄だ」「遺棄ではない」と言い合っても決まらず、離婚の裁判になれば裁判所が判断します。そこまで進む前の段階では、次のように使い分けます。
- 別居の前:離婚で弁護士に相談するタイミング:浮気発覚・別居前・調停前の3時点を参考に、家を出る前に弁護士へ相談すると、別居の仕方と記録の残し方を聞けます。
- 費用が心配:法テラスで離婚の相談をするには:無料相談と費用の立替えの条件を確かめます。
- 切り出し方:家を出ることを相手に伝える場面は別居の切り出し方:浮気が原因のときに伝える順番と言い方の例で扱います。
慰謝料を考える場合は、遺棄の判断とは別の話になるので、不貞行為の慰謝料は民法の何条?709条・719条・724条と最高裁の考え方で根拠の違いを確かめてください。相談に持って行くのは、上の整理表を埋めた時系列です。別居を始める前に押さえておくことの全体は浮気が原因の別居:始める前の準備・別居中のお金・その後の選択に置いています。
よくある質問
Q. 浮気をした配偶者に追い出され、家を出ました。悪意の遺棄を問われますか?
家を出た事実だけでは決まらず、出た理由と経緯が見られます。追い出された、身の危険があった、話し合いのために離れたなどの理由があれば、その日付ともやりとりを残してください。出たあとの生活費と連絡も材料になります。当たるかどうかは裁判所が事案ごとに判断するので、弁護士に整理を見せて相談します。
Q. 生活費を払い続けていれば、悪意の遺棄にならないのですか?
生活費の支払いは、協力・扶助の義務(民法752条)と婚姻費用の分担(同760条)を果たしているかを示す材料の一つです。ただし、支払いだけで当たる・当たらないが決まるとは言えません。出た理由、期間、連絡の有無なども合わせて見られるため、払った日と額に加えて、これらの記録も残します。
Q. 悪意の遺棄が認められると、慰謝料も請求できますか?
民法770条1項2号は、離婚の訴えを起こせる理由を定めた規定です。慰謝料は別に、不法行為などを根拠に請求するかどうかを考えます。離婚の理由に当たることと、慰謝料が認められることは、同じではありません。慰謝料の仕組みは、本文の最後に案内する記事で整理しています。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第752条・第760条・第770条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後の子の養育に関する見直し)Q&A(民法編)(法務省)(法務省)
- 婚姻費用の分担請求調停(裁判所)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。