慰謝料・内容証明・示談 / 比較

慰謝料請求は自分でできる?弁護士に頼む場合との違いと注意点

この記事のもくじ
  1. 慰謝料請求を自分でするとき、本人ができること
  2. 自分で進める場合と弁護士に頼む場合の比較
  3. 自分で請求するときに気をつける7つのこと
  4. 自分で進める手順
  5. 途中で弁護士に切り替える目安

慰謝料請求は、弁護士に頼まず自分で進めることもできます。慰謝料を求めるのは本人の権利なので、話し合い、書面での請求、調停や訴訟の申立てまで、本人が自分で行うのに資格は要りません。違いが出るのは、相手との交渉で言い分をどう組み立てるか、相手が弁護士を立てたときにどう対応するか、そして時間と気持ちの負担です。この記事では、本人がしてよいことの範囲、弁護士に頼む場合との比較、自分でやるときの注意を順に示します。

慰謝料請求を自分でするとき、本人ができること

法律が資格を求めているのは、他人のために法律事務を扱う場面です。弁護士法72条は、弁護士でない人が報酬を得る目的で、業として他人の法律事件の代理や和解などを扱うことを禁じています。民事訴訟法54条と家事事件手続法22条も、訴訟や家事事件で「代理人」になれる人を原則として弁護士に限っています(家庭裁判所では、許可を得て弁護士でない人を手続代理人にできる例外があります)。どれも代わりに動く人の資格の決まりで、本人が自分の請求を自分で進めることを制限してはいません。

本人が自分でできることは、次のとおりです。

  • 配偶者や不倫相手と直接話し合い、金額や支払い方法を決める
  • 請求の書面を作り、内容証明郵便で送る
  • 合意した内容を示談書にまとめる
  • 家庭裁判所の調停や、簡易裁判所の民事調停を申し立て、期日に出る
  • 弁護士をつけずに訴えを起こし、法廷で主張する(いわゆる本人訴訟)

裁判所の窓口では、申立ての書式や必要な書類の案内は受けられますが、法律相談はしていません。何を主張するか、いくらを求めるかは自分で決めることになります。

自分で進める場合と弁護士に頼む場合の比較

自分で進めるか頼むかは、「できるかどうか」より、「何を自分で引き受けるか」の違いです。主な違いを表にまとめます。

比較表:慰謝料請求を自分で進める場合と弁護士に頼む場合
比べる点 自分で進める 弁護士に頼む
相手との連絡 自分が窓口になり、相手と直接やり取りする 弁護士が窓口になり、相手と直接話さずに済む
書面の作り方 文面・金額・期限を自分で決める 事情を聞いたうえで、弁護士の名前で通知を出す
相手が弁護士を立てたとき 法律の専門家と一人で向き合う 弁護士どうしのやり取りになる
調停・訴訟 申立書・主張の書面・証拠の出し方を自分で準備する 書面の作成から期日への出席まで代理してもらえる
かかる費用 郵便料金・裁判所の手数料など実費だけ 実費に加えて着手金・報酬金などの弁護士費用
時間と気持ち 平日の期日や書面づくりに時間をとられ、不倫の事実に何度も向き合う 打ち合わせの時間は要るが、相手と向き合う場面は減る
見通し 自分で調べた一般論で判断する 証拠と事情をもとに、個別の見通しの説明を受けられる

弁護士費用の内訳(着手金・報酬金・実費)の見方は慰謝料請求の弁護士費用の内訳で扱っています。費用の公的な基準表はないので、依頼する前に見積もりと委任契約の中身を見せてもらうのが確かめ方です。

全部を自分でやるか、全部を任せるかの二択でもありません。次のような中間の選び方もあります。

  • 相談だけ弁護士に:方針と書面の確認だけ相談し、やり取りは自分でする
  • 認定司法書士に頼む:請求額が140万円以下の民事の争いなら、認定を受けた司法書士も交渉や簡易裁判所の訴訟を代理できる(司法書士法3条1項6号・7号、裁判所法33条1項1号)。認定の有無は日本司法書士会連合会の司法書士検索で「簡裁代理権の有無」を見る。家庭裁判所の手続きの代理はできない
  • 書面の作成だけ行政書士に:合意した内容を示談書にする、請求の文書を作るといった書類の作成は行政書士の業務。相手との交渉や争いの調整はできない

それぞれの範囲の違いは慰謝料請求は司法書士や行政書士にも頼めるかで詳しく比べています。

自分で請求するときに気をつける7つのこと

自分で進めるときにつまずきやすいのは、法律の細かい知識より、感情が先に立って取った行動があとで不利になる場面です。

  1. 脅しに聞こえる言い方をしない:「払わなければ家族にばらす」は、名誉に害を加えると告げたと受け取られうる。刑法222条(脅迫)や249条(恐喝)が問題になるおそれがある
  2. 周囲に知らせない:職場やSNSで不倫を広めると、事実であっても名誉毀損(刑法230条)が問題になりうる
  3. 証拠集めの線を越えない:配偶者のアカウントへのログインや、相手の家への立ち入りには禁じる法律がある。やる前に浮気の証拠集めで違法になりうることで確かめる
  4. 時効を数えておく:損害と相手を知った時から3年(民法724条)。内容証明での請求で延びるのは6か月だけで、くり返しても延びない(民法150条)
  5. 宛先は自宅にする:勤務先あての書面は、本人より先に周りの人の目に触れることがある
  6. やり取りを記録に残す:話し合いの日時と内容、送った書面の控え、相手の返事を保存する。録音するなら、相手との会話を自分で残す範囲にとどめる
  7. 示談書の清算の範囲を確かめる:和解が成立すると、あとで反対の確証が出ても原則として蒸し返せない(民法696条)。「この件について他に請求しない」という条項が何を含むかを、署名する前に読む

もう一つ、相手に「既婚者と知らなかった」と言われたときに、その場で言い負かそうとしないことも大切です。故意や過失があったかは慰謝料の中心の争点になりやすく、何を示せばよいかは事情ごとに違います。考え方は不倫相手が「既婚者と知らなかった」と言うときで整理しています。

自分で進める手順

自分で進めると決めたら、次の順に動くと抜けが少なくなります。

  1. 時系列のメモと資料をそろえ、時効の日付を書き出す
  2. 誰に、何を、いつまでに求めるかを決める(配偶者か不倫相手か、金額、謝罪や接触の禁止など)
  3. 話し合うか、書面で請求するかを選ぶ。書面なら内容証明郵便の仕組みを確かめてから出す
  4. 返事が来たら、合意できる点とできない点を分けて書き出す
  5. 合意できたら示談書にまとめ、清算の範囲と支払い方法を確かめて署名する
  6. 応じてもらえなければ、調停か訴訟へ進むかを決める

それぞれの段階で使う手続きと用意するものは不倫慰謝料の請求方法:話し合い・内容証明・調停・訴訟の流れに、書面の仕組みは内容証明郵便とは?仕組みと出し方にまとめています。

途中で弁護士に切り替える目安

自分で始めても、次のどれかに当てはまったら、弁護士への相談を考える時機です。

  • 相手から弁護士の名前で返事が来た
  • 相手が関係そのものを否定している、既婚と知らなかったと主張している
  • 離婚の条件(親権、財産分与、養育費)と一緒に決める必要が出てきた
  • 相手から逆に請求されそう、または名誉毀損などを言われた
  • 知った時から3年が近づいている
  • やり取りを続けるのが気持ちの面でつらくなった

弁護士を選ぶときに確かめたい点は不倫慰謝料を弁護士に頼むときの選び方に、費用が心配な場合の制度は法テラスの無料相談と費用の立替えにまとめています。相手から脅される、つきまとわれるといった危険があるときは、請求の進め方より安全を先にして、浮気・不倫の相談先一覧の窓口に連絡してください。

よくある質問

Q. 親や友人に、代わりに不倫相手と話してもらってもよいですか?

弁護士法72条が禁じているのは、弁護士でない人が報酬を得る目的で、業として他人の法律事務を扱うことです。家族や友人が無償で同席したり間に入ったりすることまで禁じる条文ではありません。ただ、感情的になりやすい人が間に入ると話がこじれることもあるので、誰に入ってもらうかは慎重に選びます。

Q. 自分で始めた請求を、途中から弁護士に引き継いでもらえますか?

引き継いでもらうことはできます。その場合、それまでに送った書面の控え、相手とのやり取りの記録、相手から届いた返事を全部そろえて相談に持っていくと、弁護士が現在の状況をつかみやすくなります。自分で書いた内容が後の主張と食い違わないかも、そこで確かめてもらえます。

Q. 自分で請求する場合、費用はどれくらいかかりますか?

話し合いだけなら費用はかかりません。内容証明郵便を使えば郵便料金が、調停なら家庭裁判所で収入印紙1,200円分と郵便切手が、訴訟なら請求額に応じた手数料と郵便切手がかかります。弁護士への相談だけを利用する場合は、その相談料も見込んでおきます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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