慰謝料請求は司法書士や行政書士にも頼める?できることの範囲の違い
慰謝料請求を頼める範囲は、資格ごとに法律で決まっています。認定司法書士は、請求する額が140万円以下の民事の争いなら、相手との交渉と簡易裁判所の訴訟を代理できます。行政書士は、示談書や請求書など書面をつくるところまでで、相手と交渉することはできません。140万円を超える請求、離婚とからめた話、家庭裁判所の手続は、弁護士に頼む場面です。
慰謝料請求で、資格ごとに頼めること・頼めないこと
どの資格者も「慰謝料の相談」はできますが、**相手に代わって話をする(代理する)**のか、書類を作るだけなのかで、仕事の範囲が分かれます。不倫の慰謝料に当てはめて、条文の内容を表にします。
| 頼みたいこと | 弁護士 | 認定司法書士 | 行政書士 |
|---|---|---|---|
| 請求書・示談書など、相手に渡す書面の作成 | できる | できる(140万円以下の交渉・相談の範囲) | できる(権利義務・事実証明の書類) |
| 相手との交渉(示談)の代理 | できる | 140万円以下の紛争に限りできる | できない |
| 簡易裁判所の訴訟の代理 | できる | 140万円以下に限りできる | できない |
| 地方裁判所の訴訟の代理 | できる | できない | できない |
| 離婚調停・審判など家庭裁判所の手続の代理 | できる(原則として弁護士に限る) | できない | できない |
| 判決・調書にもとづく強制執行の代理 | できる | できない(少額訴訟債権執行を除く) | できない |
根拠は次のとおりです。
- 司法書士は、認定の有無にかかわらず、法務局・裁判所に出す書類の作成とその相談を業とします(司法書士法3条1項2号・4号・5号)。認定を受けていない司法書士は、ここから先の相手との交渉や訴訟の代理はできません。
- 司法書士のうち、研修を終えて法務大臣の認定を受けた人(認定司法書士)に限り、簡易裁判所の訴訟などの代理と、紛争の目的の価額が裁判所法33条1項1号の額(140万円)を超えない民事の争いについての相談・交渉の代理ができます(同法3条1項6号・7号、2項)。
- 行政書士は、権利義務や事実証明に関する書類の作成と、契約などの書類を代理人として作成すること、その相談を業とします。ただし、他の法律で行うことが制限されている業務はできず(同法1条の3第2項、1条の4ただし書)、弁護士法72条の法律事務にあたる代理や交渉は、この「他の法律」の制限にあたります。
- 弁護士でなければ、地方裁判所の訴訟代理人にも、家庭裁判所の手続代理人にもなれません。例外は、簡易裁判所や家庭裁判所で許可を得た場合です(民事訴訟法54条1項、家事事件手続法22条1項)。
弁護士法72条は、弁護士でない人が報酬を得る目的で、法律事件について代理・和解などの法律事務を業として扱うことを禁じています。法律が別に認めた範囲(認定司法書士の簡裁代理など)だけが例外です。
認定司法書士に頼める範囲:140万円の線
不倫相手や配偶者への慰謝料請求は、「民事に関する紛争」です。認定司法書士が扱えるのは、その紛争の目的の価額が140万円を超えないものです。
頼める例:不倫相手に慰謝料として100万円を請求したい。相手が支払いを渋るので、本人の代わりに交渉してほしい。話がまとまらなければ簡易裁判所の訴訟も任せたい。
頼めない例:請求額が300万円。配偶者との離婚の条件(親権・養育費・財産分与)と一緒に決めたい。家庭裁判所の調停を申し立てて代理人を付けたい。
注意したい点が三つあります。
- 140万円は、慰謝料の目安の額ではありません。 簡易裁判所が受け持つ訴訟の価額の上限(裁判所法33条1項1号)で、それが認定司法書士の代理の線にもなっているだけです。慰謝料の額は事情ごとに決まります(不倫慰謝料の相場の記事)。
- 離婚と一緒の話は範囲の外になりやすい。 離婚の調停や審判は家庭裁判所の手続で、代理人は原則として弁護士です。司法書士は、その申立書など裁判所に出す書類の作成までです。
- 認定を受けていない司法書士は、交渉の代理ができない。 司法書士という肩書だけでは判断できません。日本司法書士会連合会の「司法書士検索」では、個人の司法書士について簡裁代理権の有無が表示されます。依頼の前に確かめます。
請求額が140万円を超えるかどうかの数え方(請求の途中で額を変えたときなど)は、事案によって見方が分かれる部分があります。迷うときは、最初の相談で「この請求額で、どこまで代理をしてもらえるか」を聞いてください。
最初の相談での聞き方の例:「慰謝料として〇〇円を請求する予定です。認定を受けている先生でしょうか。この額なら、交渉と簡易裁判所の訴訟まで代理していただけますか。額が増えたり、離婚の話が加わったりしたら、どうなりますか」
行政書士に頼めること:合意した内容を書面にする
行政書士が慰謝料の話で役に立つのは、条件が決まったあと、その内容を書面に残す場面です。次のような書類は「権利義務に関する書類」にあたり、作成を頼めます。
- 示談書(合意書):慰謝料の額、支払い方法、今後は連絡しない・接触しないといった約束の項目を書く(項目は不倫の示談の進め方の記事)
- 請求書にあたる文書や、内容証明郵便で送る文面
- 誓約書の文案(不倫の誓約書の書き方の記事)
一方で、行政書士にはできないことがあります。相手に連絡して金額を交渉すること、争いになった相手との間を取りもつことです。「行政書士が相手と話をつけてくれる」と読める広告があっても、代理の範囲は法律で決まっています。依頼する前に、「文面を作るだけか、交渉まで含むのか」「交渉が必要になったときは誰が担当するのか」を聞いておけば、行き違いを防げます。
行政書士は、日本行政書士会連合会の会員検索で、氏名・事務所・取扱業務から探せます。取扱業務の選択肢に「離婚」「慰謝料」という項目はなく、近いのは「権利義務・事実証明」です。検索で絞ったあとは、事務所に示談書の作成を扱っているかを直接たずねます。
場面別:誰に頼むか
| あなたの場面 | 頼める相手 | 理由 |
|---|---|---|
| 金額も条件も相手と合意できた。書面にしたい | 行政書士・弁護士・認定司法書士 | 書面づくりだけなら、どの資格でも範囲に入る |
| 請求額が140万円以下で、相手との交渉が必要 | 認定司法書士・弁護士 | 交渉の代理ができるのは、この二つ |
| 請求額が140万円を超える | 弁護士 | 認定司法書士の代理の上限を超える |
| 離婚の条件も一緒に決めたい、離婚調停を考えている | 弁護士 | 家庭裁判所の代理人は原則として弁護士 |
| 合意したのに慰謝料が払われない | 弁護士 | 強制執行は認定司法書士の代理の対象外(強制執行の記事) |
| 相手が弁護士を立ててきた | 弁護士(請求額が140万円以下なら認定司法書士も) | 相手の窓口が弁護士でも、代理の範囲の線は変わらない |
相手が弁護士を立てたり、請求額が大きかったりする場合は、弁護士に頼むことになります。選び方と相談の準備は不倫慰謝料を弁護士に頼むときの選び方の記事、費用の読み方は慰謝料請求の弁護士費用の内訳の記事にあります。
依頼する前に確かめる三つのこと
どの資格者に頼む場合も、次の三つは契約の前に書面か口頭で確かめてください。
- 資格と認定:司法書士なら簡裁代理権の有無を「司法書士検索」で、行政書士なら登録を「会員検索」で確かめる。肩書の下に会社名だけが出ている相手には、書類を誰の名前で作るのか、交渉は誰がするのかをたずねる。
- 頼む範囲:文面づくりだけか、交渉も含むか、訴訟になったらどうするか。範囲の外に出たとき、弁護士へ引き継ぐ段取りがあるか。
- 費用:着手金、報酬、実費、書類作成料のそれぞれの額と払う時期。見積書をもらい、次の段階に進んだときの追加費用も聞く。
法律事務の代理を、資格のない会社が「サポート」の名目で引き受けているように見える広告もあります。個別の会社の適否はここでは判断できないので、「相手と交渉するのは誰か」「その人は弁護士か認定司法書士か」をたずね、答えがあいまいなら契約を急がないことです。
自分で請求する道を選ぶ人もいます。その場合の負担と注意点は慰謝料請求は自分でできるかを比べた記事で、請求全体の流れは浮気・不倫の慰謝料とは?請求できる場面・金額の決まり方・進め方の全体像で確かめられます。
よくある質問
Q. 司法書士に頼んで交渉が進んでから、請求額を上げたくなったらどうなりますか?
認定司法書士が代理できるのは、紛争の目的の価額が140万円を超えない範囲です。請求額を増やして140万円を超える見込みになったときは、そのまま頼めるのかを司法書士に確かめ、頼めないなら弁護士に引き継ぐことになります。算定の細かな扱いは事案で変わるので、請求額を決める前の相談で「140万円を超えそうだ」と先に伝えておくのが安全です。
Q. 行政書士に内容証明の文面を頼めば、相手は払ってくれますか?
文面を整えることと、相手が応じることは別です。行政書士に頼めるのは、請求の内容を書面にまとめるところまでで、相手と金額を交渉して折り合いをつけることは含まれません。相手が争えば、交渉は本人か、代理ができる弁護士や認定司法書士が行う形になります。書面の書き方は[慰謝料の請求書に書く項目の記事](/isharyo-seikyusho/)で確かめてください。
Q. 慰謝料を請求された側も、司法書士や行政書士に頼めますか?
範囲の分かれ方は同じです。請求されている額が140万円以下なら認定司法書士が減額などの交渉を代理できる場合があり、行政書士は示談書など合意した内容の書面づくりまでです。請求額が大きい、離婚の話とからんでいる、すでに裁判になっているときは弁護士の領域になります。
出典・参考にした公的な情報
- 司法書士法 第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 裁判所法 第33条第1項第1号(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 行政書士法 第1条の3・第1条の4(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 弁護士法 第72条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 家事事件手続法 第22条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事訴訟法 第54条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 行政書士会員検索(主な取扱い業務などで検索できる)(日本行政書士会連合会)
- 司法書士検索(簡裁代理権の有無を確かめられる)(日本司法書士会連合会)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。