不倫慰謝料の請求方法:話し合い・内容証明・調停・訴訟の流れ
この記事のもくじ
不倫・浮気の慰謝料を請求する方法は、話し合い → 書面(内容証明など)→ 調停 → 訴訟の4つの段階に分けて考えると見通しが立ちます。多くの場合は話し合いか書面から始め、まとまらなければ裁判所の手続きへ段階を上げます。どの手続きを使えるかは、相手が配偶者か、離婚した元配偶者か、不倫相手かで変わります。どの段階でも、損害と相手を知った時から3年という時効(民法724条)が進んでいることを頭に置いてください。
慰謝料請求の流れ:4つの段階と、どこから始めるか
段階を上げるほど、手間と費用はかかりますが、相手が応じなくても結論に近づけるようになります。まず全体の流れを見ておきます。夫の浮気で請求を考える妻は夫の浮気で慰謝料を請求したい妻へ、妻の浮気で請求を考える夫は妻の浮気で慰謝料を請求したい夫へで、請求の前に決める相手と目的を先に整理できます。
| 段階 | 何をするか | 主な相手 | 次の段階へ進む合図 |
|---|---|---|---|
| 1 話し合い | 直接、または電話・メールで請求の意思を伝え、金額や支払い方を話す | 配偶者・不倫相手 | 話し合いを拒まれる、言い分が平行線のまま |
| 2 書面での請求 | 内容証明郵便などで、事実の要点・請求額・期限を書いて送る | 主に不倫相手 | 期限を過ぎても返事がない、支払いを拒まれる |
| 3 調停 | 裁判所で、調停委員を交えて話し合う | 配偶者・元配偶者(家庭裁判所)、不倫相手(簡易裁判所の民事調停を選ぶ場合) | 相手が出てこない、合意の見込みがない |
| 4 訴訟 | 証拠をもとに、裁判所に判断を求める | 配偶者・不倫相手 | 判決、または途中の和解で終わる |
どこから始めるかは、次の分かれ道で考えると整理しやすくなります。
- 離婚も一緒に決める(相手は配偶者):離婚の話し合いの中で慰謝料も決める。まとまらなければ夫婦関係調整調停(離婚)で、離婚と一緒に慰謝料も話し合える
- 離婚した後に請求する(相手は元配偶者):話し合いか書面から始め、まとまらなければ家庭裁判所の慰謝料請求調停を使える
- 不倫相手に請求する:書面での請求から始めることが多い。応じなければ民事調停か訴訟を選ぶ
- 離婚せずに請求する:家計が同じ配偶者への請求は意味を持ちにくい。考え方は不倫の慰謝料は離婚しない場合も請求できるかで整理している
請求を始める前にそろえるもの
どの段階から始めても、最初にそろえるものはほぼ同じです。あとの段階で使う資料を先に作っておくと、手続きを上げるたびに一から説明し直す手間が減ります。
- 時系列のメモ:不倫に気づいた日、相手の名前を知った日、関係が続いた期間、話し合った日と内容を、日付つきで書き出す。「知った日」は時効の数え始めに関わる
- 事実を示す資料:写真、メッセージの画面、領収書など。集め方には禁じる法律がある行為もあるので、浮気の証拠集めで違法になりうることで線を確かめ、並べ方は慰謝料請求の証拠をそろえる手順を参照する
- 相手の氏名と住所:書面も調停も訴訟も、相手の住所が要る。自分で調べ回ると別のトラブルになりやすいので、分からないときは浮気相手を特定したいときの正当な手段を読んでから動く
- 求めることの整理:金額だけでなく、謝罪、接触をやめること、支払いの方法(一括か分割か)など。金額の考え方は慰謝料の相場は計算できるかで、計算ツールの数字の扱い方とあわせて説明している
- 時効の日付:知った日から3年がいつになるかを書いておく
段階1・2:話し合いと書面での請求
話し合いは、費用がかからず、合意すればすぐに終わる方法です。会って話すなら、場所は人目のある落ち着いた所を選び、話した日時と内容をあとでメモに残します。切り出しは、責める言葉より、求めることをはっきり伝える形にすると話が進みやすくなります。
話し方の例:「〇〇さんとの関係について、事実を確認したうえで、慰謝料を請求したいと考えています。金額と支払い方法について、〇月〇日までにお返事をください。」
話し合いや書面で気をつけたいのは、求め方そのものが問題にならないようにすることです。「払わなければ職場に知らせる」といった言い方は、脅しと受け取られるおそれがあります。言い換えの例は不倫慰謝料の内容証明の書き方の表に、周囲に知らせる行為の線引きは不倫を周囲に知らせると名誉毀損になるかにまとめています。
直接話すのが難しい、言った言わないを避けたいときは、書面で請求します。内容証明郵便を使うと、いつ、どんな内容の文書を出したかが郵便局の記録に残ります。内容証明による請求は時効の上では「催告」にあたり、そこから6か月は時効が完成しません(民法150条1項)が、その間に調停や訴えを起こさないと猶予は切れます。内容証明で証明されることとされないこと、出し方は内容証明郵便とは?仕組みと出し方で、文面の組み立ては不倫慰謝料の内容証明の書き方で説明しています。
話し合いで合意できたら、口約束で終わらせず書面に残します。民法695条は、互いに譲歩して争いをやめる約束(和解)を定めており、示談はこの形にあたります。決める項目と残し方は不倫の示談の進め方にまとめています。
段階3:調停(家庭裁判所・簡易裁判所)
当事者だけでは話がまとまらないときは、裁判所の調停を使います。調停は非公開の場で、調停委員を交えて話し合う手続きです。相手によって使う手続きと申立先が違います。
| 相手 | 使える調停 | 申立先 | 費用 |
|---|---|---|---|
| 配偶者(離婚前) | 夫婦関係調整調停(離婚)。離婚と一緒に慰謝料も話し合える | 相手方の住所地の家庭裁判所、または合意で定めた家庭裁判所 | 収入印紙1,200円分+連絡用の郵便切手 |
| 元配偶者(離婚後) | 慰謝料請求調停 | 同上 | 収入印紙1,200円分+連絡用の郵便切手 |
| 不倫相手 | 民事調停(金銭をめぐる民事の争いの話し合い) | 原則として相手方の住所地の簡易裁判所 | 請求する額に応じた手数料(訴訟より安く定められている)+郵便切手 |
郵便切手の額は裁判所ごとに違うので、申し立てる裁判所の案内で確かめます。離婚を裁判で争う場合は、訴える前にまず家庭裁判所の調停を申し立てる決まりがあります(家事事件手続法257条)。調停で合意して調書に書かれると、その記載は確定判決と同じ効力を持ち(家事事件手続法268条1項)、支払いが止まったときの強制執行の根拠になります。民事調停の調書も、裁判所の案内では確定判決と同じ効力を持つとされています。
調停は、相手が出てこない、合意の見込みがないときは不成立で終わります。離婚や慰謝料の調停が不成立になっても、自動で審判に移るわけではなく、続けるなら訴えを起こします。家庭裁判所での流れと書類は慰謝料請求調停の流れと申立ての費用で詳しく扱っています。
段階4:訴訟(簡易裁判所・地方裁判所・家庭裁判所)
話し合いの余地がないとき、事実に大きな争いがあるときは、訴訟で裁判所に判断を求めます。出す裁判所は、請求の中身と額で分かれます。
- 慰謝料だけを請求する訴え:請求額が140万円以下なら簡易裁判所、超えると地方裁判所(裁判所法33条1項1号・24条1号)。不倫相手への請求はこちらが中心
- 離婚の訴えとあわせて請求する:離婚の訴えと、その原因となった事実による損害賠償は、一つの訴えで家庭裁判所に出せる(人事訴訟法17条)。不倫相手の分も一緒にできるかは条文の要件に当たるかで決まるので、出す前に弁護士に確かめる
訴えの手数料は請求額で決まり、2026年5月21日以後に起こす民事訴訟は、書面で出すか電子で出すかで額が分かれています。裁判所の早見表では、請求額300万円の民事訴訟は書面22,500円、電子21,400円です(令和8年9月15日改訂版)。古い記事にある「300万円なら2万円」は今の額ではありません。費用の内訳は不倫の裁判費用の内訳、出す裁判所の分かれ目は慰謝料請求の管轄はどこか、訴状から判決までは不倫の裁判で訴えるときの流れで説明しています。
訴訟の途中で、裁判所から和解をすすめられることも少なくありません。訴えを起こすと、その手続きが終わるまで時効は完成しません(民法147条1項)。
自分で進めるか、弁護士に頼むか
ここまでの段階は、どれも本人が自分で進められます。ただ、相手が弁護士を立ててきた、関係があったこと自体を否定している、離婚の条件と一緒に決めたい、という場面では、文面や主張の組み立てで結果が変わりやすくなります。報酬を受けて相手との交渉を代わりに行えるのは原則として弁護士で、請求額が140万円以下の民事の争いなら認定司法書士も代理できます。
自分で進めている途中で、相手から逆に慰謝料を請求される(反訴される)こともあります。その場合の手順は慰謝料請求をしたら反訴されたときの記事を読んでください。自分で進める場合と頼む場合の違い、自分でやるときの注意は、慰謝料請求は自分でできる?弁護士に頼む場合との違いで比べています。
弁護士に相談するなら、上でそろえた時系列のメモと資料を持っていくと、どの段階から始めるかを具体的に話せます。持ち物の一覧は弁護士に相談する前の準備、慰謝料の全体像に戻るときは浮気・不倫の慰謝料とは?請求できる場面・金額の決まり方・進め方の全体像を読んでください。相手から脅される、暴力を受けているといった危険があるときは、請求より安全を先にし、浮気・不倫の相談先一覧の窓口を使ってください。
よくある質問
Q. 慰謝料の請求は、いきなり調停や訴訟から始めてもよいですか?
不倫相手に慰謝料だけを求める訴えは、話し合いや書面を経ずに起こすこともできます。一方、離婚とあわせて家庭裁判所で争う場合は、訴える前にまず調停を申し立てる決まりがあります(家事事件手続法257条)。どこから始めるのが合うかは、相手が話し合いに応じそうか、離婚の手続きと一緒に進めるかで考えます。
Q. 配偶者と不倫相手に、別々のやり方で請求してもよいですか?
相手ごとに手続きを分けることはできます。たとえば配偶者とは離婚調停の中で話し合い、不倫相手には書面で請求する、という進め方です。ただし二人から重ねて損害の全額を受け取れるわけではないので、片方と合意するときは、もう片方への請求にどう響くかを合意の前に確かめておきます。
Q. 請求を始めたことは、相手の家族や職場に知られますか?
書面は相手本人あてに自宅へ送るのが基本で、こちらから家族や職場に知らせる必要はありません。家庭裁判所の調停は非公開です(家事事件手続法33条)。訴訟は原則として公開の法廷で審理される(憲法82条)ので、知られたくない事情がある場合は、訴える前に弁護士へ相談して進め方を考えます。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第147条・第150条・第151条・第695条・第724条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 日本国憲法 第82条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 家事事件手続法 第33条・第245条・第257条・第268条・第272条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 人事訴訟法 第4条・第17条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 裁判所法 第24条・第33条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 刑法 第222条・第230条・第249条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 夫婦関係調整調停(離婚)(裁判所)
- 慰謝料請求調停(裁判所)
- 民事調停(裁判所)
- 手数料・手数料額早見表(令和8年9月15日改訂)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。