親権と監護権の違い:2026年改正後に分けて決めるときの考え方
親権は子に関する権利義務の全体、監護権は子の日々の世話と教育、居所の決定を担う部分、と整理すると違いがつかめます。親権には、子の世話や教育をする身上監護のほか、子の財産の管理、子に代わって契約などをする代理が含まれます。「監護権」という言葉は民法に書かれた権利名ではありませんが、民法766条で「子の監護をすべき者」(監護者)を定めると、その人が身上監護の部分を担います。
2026年4月1日に施行された改正(令和6年法律第33号)で、離婚後も父母の双方を親権者にできるようになり、親権者とは別に監護者を決める意味が増しています。共同親権にしても、監護者を一方に定めれば、日々の世話や居所の決定はその親が単独で進められるからです。裁判所の案内は、居所の決定、重大な医療、進学先の選択といった重大な行為も、監護者なら単独で決められると説明しています。この記事では、親権と監護権の違い、分けて決める方法、手続きと費用を整理します。
親権・監護者・監護の分掌の違い
三つの言葉を表にまとめます。
| 言葉 | 中身 | 決め方 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 親権 | 身上監護、財産管理、子に代わる契約などの代理 | 協議、調停、審判、判決で、双方または一方を定める | 民法818条・819条 |
| 監護者 | 身上監護(日々の世話、教育、居所の指定、職業の許可)を担う人 | 協議、調停、審判で定める | 民法766条1項・824条の3 |
| 監護の分掌 | 監護を担当する期間を分ける、または教育などの一部の事項を一方に委ねる | 協議、調停、審判で定める | 民法766条1項(改正で追加) |
監護者に指定された親は、居所の指定・変更、教育、営業の許可などを単独でできます(民法824条の3)。ほかの親権者は、これを妨げてはいけません。ただし、財産の管理や、身分行為の法定代理(養子縁組の代諾など)は、監護者だけでは単独でできません(裁判所の案内)。
分けて決める意味は、日々の生活を担う親と、重要事項を共同で考える親を、役割で整理できることにあります。たとえば、共同親権のまま、子と一緒に暮らす親を監護者にすると、転校や転居、日々の習い事といった判断を、その親が単独で決められます。共同親権の行使の決まりは共同親権とは?2026年4月施行の仕組みと選ぶときの考え方で、親権の決まり方全体は親権とは?2026年4月からの共同親権・単独親権の決め方で扱います。
親権の共同行使と日常の行為:監護者を決めないとどうなるか
民法824条の2は、親権は父母が共同して行うのを原則としつつ、次の場合は一方が行えるとしています。
- 一方のみが親権者のとき
- 他の一方が親権を行えないとき
- 子の利益のために急迫の事情があるとき
また、双方が親権者でも、監護及び教育に関する日常の行為は単独でできます(同条2項)。法務省のQ&Aは、日常の行為の例として、食事・服装・健康診断・給食手続・学校行事への参加同意・短期の観光旅行・通常のワクチン接種・習い事を挙げています。反対に、転居、入学・退学・転学、長期留学、生命に関わる医療、氏の変更、養子縁組は、日常の行為に当たらないとされています。
つまり、監護者を決めていない共同親権では、転居や転校のような重い判断で、父母の意見が合わないと動けなくなる場面が出ます。そこで、監護者を定めておくと、これらを監護者が単独で決められます。学校の手続でも、法務省の行政手続・支援編のQ&Aは、監護者は保護者が行う手続を単独で行え、意向が異なるときは監護者の意向が優先すると説明しています。
意見が折り合わない事項が少数に限られるときは、監護者の指定よりも、その事項だけを一方が単独で行えるようにする「親権行使者の指定」(民法824条の2第3項)のほうが合う場合があります。
監護者の指定・監護の分掌を決める方法と費用
まず、協議で決めます(民法766条1項)。子の利益を最も優先して考慮します。協議が調わない・できないときは、家庭裁判所の調停や審判を使います。
| 項目 | 子の監護者の指定調停 | 監護の分掌調停 |
|---|---|---|
| 対象 | 別居中の父母、または共同親権で離婚した父母 | 共同親権で離婚した父母や別居中の父母 |
| 申立人 | 父、母 | 父、母 |
| 申立先 | 相手方の住所地の家庭裁判所、または合意で定める家庭裁判所 | 同左 |
| 費用 | 収入印紙1,200円分(子1人につき)と連絡用の郵便切手 | 同左 |
| 主な書類 | 申立書とその写し、未成年者の戸籍謄本、子についての事情説明書、進行に関する照会回答書、送達場所等届出書 | 同左 |
| 不成立のとき | 審判に移り、裁判官が判断 | 審判に移り、裁判官が判断 |
調停では、これまでの養育状況、双方の経済力や家庭環境、子の性格・就学・生活環境などの事情から、子の利益を優先して話が進みます。裁判所の案内は、監護者の指定は子の健全な成長を助けるものである必要がある、とも説明しています。手続きの全体像は親権で争うときの調停・審判・裁判の流れと家庭裁判所調査官の調査にあります。
別居中に子を連れて家を出る前に考えることは別居するとき子供をどうする?連れて出る前に考えたいことで、子と別居する親との交流は親子交流(面会交流)とは?決め方と取り決めておく内容で扱います。
戸籍への記録と、離婚後に見直したくなったとき
法務省のQ&Aによると、親権者は戸籍に記録されます(住民票には記録されません)。一方、親権の行使者の定めや、監護者・監護の分掌の定めは戸籍には記録されず、調停調書や審判書に記載されます。協議で決めた場合は、後で誰が決めた内容かを示せるよう、書面にして残しておくのが安全です。離婚の公正証書に監護者や親子交流の定めを入れる方法もあります。
一度決めた後で見直したいときは、監護者や監護の分掌は民法766条3項で、家庭裁判所が必要に応じて変更できます。親権者そのものを変えたい場合は、別の手続きになります。親権者変更の手続き:離婚後に家庭裁判所で考慮される事情で整理しています。
養育費は、監護者の指定があっても取扱いは変わりません。養育費とは?決め方・算定表・2026年からの法定養育費までで別に決めます。
| 組み合わせ | 日々の世話・居所 | 財産管理・法定代理 |
|---|---|---|
| 単独親権(監護者の指定なし) | 親権者が単独 | 親権者が単独 |
| 共同親権+監護者を一方に指定 | 監護者が単独 | 父母が共同(日常の行為は単独可) |
| 共同親権+監護の分掌 | 担当する期間や事項ごとに分担 | 父母が共同 |
よくある質問
Q. 監護者は、親権者とどこが違うのですか?
親権は、子の世話や教育、財産の管理、子に代わって行う契約などを含む広い権利と義務です。監護者は、そのうち子の日々の世話や教育、居所の決定などの身上監護を担います。監護者に指定された親は、これらを単独でできますが、財産の管理や、子に代わって行う法律行為は単独ではできません。
Q. 親権者や監護者は、戸籍に載りますか?
法務省のQ&Aによると、親権者は戸籍に記録されますが、住民票には記録されません。親権の行使者や監護者の定めは戸籍には記録されず、調停調書や審判書に書かれます。学校などに示すときは、調停調書や審判書の写しなどが手がかりになります。
Q. 監護者を決めると、養育費の扱いは変わりますか?
法務省のQ&Aは、監護者の指定や監護の分掌があっても、養育費の扱いは変わらないと説明しています。養育費は、子の監護に要する費用の分担として、別に取り決めます。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第766条・第820条・第824条の2・第824条の3(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 子の監護者の指定調停(裁判所)
- 監護の分掌調停(裁判所)
- 離婚後の親権者の定めに関する手続等(裁判所)
- 民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)について・Q&A解説資料(民法編)(法務省)
- Q&A解説資料(行政手続・支援編)(法務省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。